個別指導の実施通知が届いたら、最初に知っておいてほしいことが2つあります。
先に結論を書きます。個別指導は監査ではありません。そして準備の8割は当日の受け答えではなく、事前に提出する書類です。ここを取り違えると、いちばん時間のかかる作業を後回しにしてしまいます。
僕は地方の調剤薬局で管理薬剤師をしているたろうです。管理薬剤師になって2年目の年に、自分の店で個別指導を1回受けました。通知が来たのは実施日のおよそ1か月前で、事前書類の作成に土日を2回使い、前日は薬歴を直そうとして深夜まで残っています。結果は文書での指摘が数点で、返還にはなりませんでした。
この記事では、通知が届いた日から当日までにやることを順番に書きます。厚生局が配っている事前提出書類の中身、事務員さんの出席と役割、厚生局が公表している主な指摘事項も、一次資料に沿って説明します。
- 調剤4年→DS2年→調剤4年
- いまは管理薬剤師(34歳)
- 転職を3回経験し、うち2回は失敗。
- 3回目で年収480万→610万にアップ
- 人気転職エージェント5社を全部利用
「同じ失敗をしてほしくない」という思いで、薬剤師のリアルを本音で書いてます。
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薬局の個別指導と監査は別物です

準備の話に入る前に、ここだけは分けておきます。混同したまま調べ始めると、必要のない恐怖で手が止まるからです。
指導は教えるため、監査は調べるため
保険薬局が受ける「指導」は、健康保険法にもとづいて地方厚生局が行うものです。保険の請求が制度どおりかを確認して、ずれていれば直してもらう。目的は教育と是正です。
一方の監査は、不正や著しい不当が疑われるときに事実関係を調べる手続きです。行き先も重さもまったく違います。ついでに言うと、都道府県の薬務課が薬機法にもとづいて来る立入検査も、これらとは別の話です。
指導には集団指導、集団的個別指導、個別指導があります。個別指導は「一対一で見てもらう」という段階であって、監査の前段階そのものではありません。仕組みの全体は、厚生労働省の指導大綱・監査要綱に書かれています。
管理薬剤師たろう呼ばれた時点で黒、ではないです。ここは本当に誤解が多い
集団的個別指導との違い
名前が似ていて混同しやすいのが、集団的個別指導です。これは調剤報酬明細書1件あたりの平均点数が高い薬局を一定の場所に集めて、少数のレセプトをもとに簡便な面接懇談で行う指導です。
厚生労働省の選定の概要によると、薬局が対象になるのは次の条件に当たる場合です。
- 平均点数が県平均の1.2倍超
- かつ上位からおおむね8%
- 前年度・前々年度の受講薬局は除く
結果はその場で口頭で説明され、個別指導のような事前提出書類の山はありません。ただ、翌年度も高点数に当たると、翌々年度に個別指導の対象になります。集団的個別指導の通知が来たら、1件あたりの点数が高くなっている理由を店で説明できるようにしておくのが実質の準備です。
個別指導に呼ばれる主なルート
指導大綱が挙げる選ばれ方のうち、薬局に関係が深いのは次のあたりです。
- 保険者や患者などからの情報提供
- 集団的個別指導の翌年度も高点数
- 前回の個別指導が再指導だった
- 前回が経過観察で改善なし
これとは別に、新しく保険薬局の指定を受けた薬局には、集団指導に続いて新規個別指導があります(厚生労働省の指導・監査の流れ)。
厚生局のサイトでも、事前提出書類の案内は「個別指導・新規個別指導」という並びで書かれています。開局したばかりの薬局が呼ばれるのは、悪いことをしたからではなく順番です。
ちなみに僕の店は開局から年数が経っていたので、新規個別指導は経験していません。通知の書面に選定の理由が細かく書いてあるわけでもないので、そこを推理するのに時間を使うのはおすすめしません。
個別指導が来る頻度の目安
「うちにはどのくらいの頻度で来るのか」は気になるところです。厚生労働省の資料では、個別指導は医科・歯科・薬局の区分ごとに、全体の4%程度を実施する方針とされています。
実際の件数も公表されています。令和6年度の実施状況では、薬局の数字は次のとおりでした。
- 個別指導:809件
- 新規個別指導:2,098件
- 集団的個別指導:4,639件
- 監査:0件
毎年必ず回ってくるものではない一方で、管理薬剤師を何年も続けていれば、一度は当たってもおかしくない数です。なお、この全国集計には結果の区分(概ね妥当・経過観察・再指導・要監査)ごとの割合は載っていません。「再指導になる割合」をネットで見かけても、出典を確かめてから受け止めたほうがいいです。
それでも準備が要る理由
怖がる必要はない、でも準備は要ります。理由は2つあって、1つは算定が不適切だと判断されれば自主返還の話になるからです。
もう1つは、指摘の多くが個人のミスではなく薬局の体制に向かうからです。薬歴の書き方も、加算の実績も、突き詰めると「誰がいつやる決まりになっているか」の話になります。
ついでに書いておくと、指導の結果によっては監査へ進む場合もあります。呼ばれた時点では監査ではない、という話と、絶対に監査にならない、という話は別物です。そこを混ぜて安心すると、準備が甘くなります。
で、その体制を説明する立場に立たされるのが管理薬剤師です。だから準備は、自分の身を守る作業でもあります。
個別指導の通知が届いた日にやること


封筒を開けた日にやることは、実は多くありません。ただ、順番を間違えると後半が地獄になります。
提出期限と提出先を予定に入れる
実施通知には、日時、場所、事前に出す書類の提出期限、提出先が書かれています。ネットで拾った日程感より、手元の通知が唯一の正解です。
僕の店に通知が来たのは、実施日のおよそ1か月前でした。1か月あると聞くと余裕がありそうですが、書類の提出はその前に来ます。実質の作業期間は3週間くらいだと思ってください。
その日のうちにやるのは、提出期限と実施日をカレンダーに入れることだけで構いません。ここを口頭の記憶で持つと、後で日付がずれやすいです。
そのうえで、残りの3週間をどう割るかだけ先に決めておきます。動く順番の目安はこうです。
- 提出期限と実施日を予定に入れる
- 1週目:平面図・見取図・流れ図を作る
- 1週目:名簿の元データを本部に頼む
- 2週目:月次データを1年分出す
- 2週目:様式1の欄をベンダーに確認
- 3週目:全様式を提出し控えを取る
- 提出後は対象患者の薬歴を読む
事前提出書類のひな形を取りに行く
事前提出書類は自作ではなく、厚生局が用意した様式を使います。たとえば関東信越厚生局は「個別指導・新規個別指導に係る事前提出書類について」というページで、保険薬局用の現況及び連絡票を配っています。
PDFとエクセルの両方が置いてあるので、作業はエクセルのほうが早いです。この案内は2026年7月14日更新の内容で、様式の中身も提出先も厚生局ごとに違います。必ず自分の管轄の厚生局を見てください。
ここを「当日持って行けばいいだろう」と思っていると詰みます。中身は次の見出しで開いていきます。
対象患者が示されたら薬歴から読む
個別指導では、対象になる患者があらかじめ示される分と、直前や当日に追加される分があります。僕の店のときも、事前に知らされた患者に加えて、当日に追加で示されました。事前に分かっている患者は、薬歴を1件ずつ読み直しておくと当日が楽です。
いつ何人分が知らされるかは、通知に書かれた案内が正解です。医科については、1週間前と前日に分けて通知されると東京都医師会の解説にありますが、薬局の人数や時期は手元の通知で確かめてください。患者名が出るのは実施日の直前になるので、それまでは書類に集中して大丈夫です。
つまり、名前が出るまでの期間は書類に全振りしていいということです。薬歴の読み直しは、名前が出てからで間に合います。
読むときは、直したくなっても直さないでください。後から書き足した形跡が残るほうが、記載が薄いことより重く見られます。
やるのは「聞かれたら何と説明するか」を決めることです。処方の意図、疑義照会したかどうか、次回の確認事項。この3つが言えれば足ります。
当日誰が答えるかを決めておく
薬局側は開設者(またはこれに代わる者)と管理薬剤師が出るのが基本で、必要に応じて保険薬剤師なども呼ばれます。法人の店舗だと、本部の人が同席することも多いです。
ここで決めておきたいのが役割です。算定と請求のことは誰、薬歴のことは誰、体制と手順のことは誰。全部を管理薬剤師が背負う形にすると、答えの精度が落ちます。
あと、薬局側だけの席ではありません。指導大綱では、厚生局が都道府県薬剤師会に立会いを依頼する仕組みになっていて、薬剤師会の立会いの人が同席します。弁護士の帯同が認められることもありますが、質問に答えるのは結局こちらなので、そこは期待しすぎないほうがいいです。



本部の人が来るなら、来る前に一度は電話で擦り合わせておきたいところです
事務員は当日出席するのか
事務員さんから「私も行くんですか」と聞かれることがあると思います。指導大綱では、出席を求めるのは開設者(またはこれに代わる者)と管理者で、必要に応じて保険薬剤師や請求事務の担当者の出席も求めると書かれています。
つまり、事務員が呼ばれるかどうかは薬局ごとに違います。通知の「出席者」の欄に書かれているので、届いた日に一緒に確認してください。
出席しない場合でも、事務員さんの仕事は書類のあちこちに出てきます。
- 様式1:レセプトの作成・点検担当
- 様式2:事務員も全員を名簿に
- 様式7:事務職員のアクセス権限
- 受付から請求までの流れ図
当日は、レセプトを誰が作って誰が点検しているか、入力の設定はどうなっているかを聞かれることがあります。厚生局が公表している指摘事項にも、レセコンの初期設定のせいで要件を満たさない算定が自動で入る例が載っています。事務員さんにお願いするなら、請求事務の流れを口で説明できるようにしておいてもらうのがいちばん効きます。
個別指導の事前提出書類でつまずくのはここ


ここが準備のいちばん重いところです。関東信越厚生局が配っている保険薬局の現況(2026年7月14日更新)は、様式1から様式7までと、任意様式の図が3点という構成になっています。ほかの厚生局も似た構成ですが、細部は違うので自分の管轄の様式で確認してください。
様式1はレセコンの設定まで聞かれる
様式1は「保険薬局の概要」という名前ですが、開局時間や休業日のような表向きの情報だけでは埋まりません。届出済みの施設基準にチェックを入れる欄があって、その下にシステムの欄が続きます。
具体的にはこのあたりを書かされます。
- 運用管理規程を定めた年月日
- 権限が無制限か一部制限か閲覧のみか
- IDが個別か共用か一部共用か
- パスワードの桁数と変更の頻度
- 追記や書換ができるか履歴は残るか
- 記録の確定処理が手動か自動か
薬剤師が自力で答えられる項目ではありません。この欄はレセコンのベンダーに電話して聞くのが最短です。
加えて、調剤報酬明細書を「診療の都度」作っているか「後刻」なのか、作成と内容点検と調剤録との照合をそれぞれ誰がやっているかも書きます。事務員任せの実態があるなら、そこは正直に書くしかありません。日々の請求事務でどこに負荷が寄っているかは、事務員がレセプトで詰まる場所を整理した記事でも触れています。
様式2は辞めた人も1年分書く
様式2は保険薬剤師等の概要、つまり職員の名簿です。薬剤師だけでなく事務員も全員書きます。
見落としやすいのが注記です。直近1年間に従事者でなくなった人、つまり辞めた人も書くよう指示されています。しかも採用年月日は法人としての採用日ではなく、その薬局で働くことになった日です。
異動が多い法人だと、ここは本部の人事データを取り寄せないと埋まりません。備考欄には受付事務、調剤業務、請求事務のように担当を書きます。名簿づくりは早く着手するほど楽になります。
様式3は加算の呼び名が変わっている
様式3は後発医薬品調剤割合の一覧です。指導前月からさかのぼって1年分、全医薬品の規格単位数量と、後発医薬品ありの先発品を含めた数量と、後発医薬品の数量を月ごとに並べます。
ここで出す数字はカットオフ値の割合と新指標の割合の2種類です。移動して3か月ずつ計算する形になっているので、月次の数字をレセコンから拾っておかないと組み立てられません。
それと注記が更新されています。対象は地域支援・医薬品供給対応体制加算の算定に係るデータで、令和8年5月までは後発医薬品調剤体制加算として記載する扱いになっています。名前が変わった前後をまたぐ年度なので、ここは様式の注記どおりに書くのが安全です。
様式4の処方箋調べは2枚つくる
個人的に、いちばん事故が起きやすいのが様式4です。処方箋の受付回数と受付枚数を、眼科、耳鼻咽喉科、歯科、その他に分けて月ごとに書きます。
1日平均取扱処方箋枚数の計算式も様式に書いてあります。眼科と耳鼻咽喉科と歯科を足して3分の2を掛け、その他を足して、実営業日数で割る形です。何となくの平均値を書く欄ではありません。
そして最大の落とし穴がここです。この表は「指導前年5月から本年4月まで」と「指導実施月の4か月前から前月まで」を別の紙で2枚つくります。実施月が1月から5月なら、前者はさらに1年前にずれます。様式の欄外に小さく書かれている指示なので、見落として1枚で済ませないように注意してください。
最後に処方箋を発行している医療機関の上位5機関と、それぞれが全体の何パーセントかを書く欄があります。門前の集中率が数字で並ぶので、ここは書きながら少し緊張します。
様式5から7は実績と体制の裏取り
様式5は在宅です。在宅患者訪問薬剤管理指導料と居宅療養管理指導費と介護予防居宅療養管理指導費について、算定回数と実施患者数を直近1年分並べます。
様式6はかかりつけ薬剤師の実績とオンライン服薬指導です。服薬管理指導料の1のイと2のイの算定回数を書く欄があり、かかりつけ薬剤師指導料とかかりつけ薬剤師包括管理料は令和8年5月までの欄として残っています。さらに、かかりつけとして服薬管理指導を行う薬剤師の氏名と、その薬局での在籍期間まで書きます。
5月で欄が切れているのは、2026年6月の改定でかかりつけ薬剤師まわりの算定の扱いが変わったためです。改定をまたぐ1年分を出すので、令和8年5月までは旧来の欄、6月以降は新しい欄に分けて書きます。片方だけで埋めると、実績の数字が抜けます。区分の名前や点数は、様式の注記と改定の通知で確かめてから書いてください。
在籍期間を書かせるのは、算定要件との突き合わせだと思っています。オンライン服薬指導はシステム名と提供会社名、調剤済みの薬の配送方法も書きます。
様式7は医療情報システムの概況で、様式1のシステム欄と地続きです。電子薬歴を入れていない薬局も書く決まりで、システム構成図、運用の流れの図、運用管理規程と障害対応マニュアルの添付を求められています。これも本部やベンダーに頼まないと出てこない書類なので、様式1と同じタイミングで依頼しておくと楽です。



要件を満たしているつもりの加算ほど、書き出すと手が止まります
平面図と流れ図は自作するしかない
様式のない提出物が3つあります。薬局の平面図、薬局付近の見取り図、それと業務の流れ図です。
見取り図には近所の薬局と医療機関も入れます。流れ図のほうは、患者を受け付けてから帰るまでの薬局内の動きと、調剤報酬明細書をつくって審査支払機関へ請求するまでの事務の動きの2本です。
様式は任意なので、手書きでも作れます。この3点は前日にやると雑になりやすいので、いちばん最初に片づけてください。
薬局の個別指導でよく出る指摘事項


何を指摘されるのかは、実は公開されています。厚生局は毎年、個別指導で改善を求めた主な指摘事項をまとめて出しています。たとえば東北厚生局の令和6年度版(薬局)には、次のような項目が並んでいます。
- 疑義照会の内容が残っていない
- 処方変更の内容が処方箋にない
- 調剤済処方箋の記載漏れ
- 調剤録に薬剤師名や点数がない
- 電子保存が安全管理指針に未準拠
- レセコン初期設定で自動算定
- 薬歴の記載が遅い・定型文
- 届け出た事項の掲示がない
こうして並べると、個人の知識不足より、記録の残し方と店の決まりごとの話が大半だと分かります。電子保存の項目では、パスワードの桁数や変更の間隔まで具体的に指摘されています。様式1でパスワードの欄を書かされるのは、ここにつながっています。
厚生労働省も、共同指導での主な指摘事項(薬局)と、自分で点検するための保険調剤確認事項リストを指導・監査のページで公開しています。書類を出し終えたら、自分の店が算定している項目のところだけ確認事項リストで点検する。次の見出しの5つは、その点検を店の現場に落としたものです。
個別指導の当日までに薬局の現場で見直す5つ


書類が出せたら、次は店です。全部を完璧にするのは無理なので、見られる確率の高いところから順に見ます。
薬歴はその日に書いたかが形に残る
薬歴で見られるのは文章のうまさではありません。投薬した日に記録されているか、指導した内容と次回の確認事項が書かれているかです。
厳しいことを言うと、まとめ書きの癖がある薬局は当日ではもう間に合いません。だからこそ、通知が来た時点から今日の分をその日のうちに書く運用へ戻すほうが効きます。薬歴が毎日残ってしまう構造そのものに心当たりがあるなら、指導は運用を戻すいい機会になります。
管理薬剤師として薬歴を点検する側にいると分かりますが、書けていない人は忙しい人ではなく、書く時間が決まっていない人です。順番の問題なので、精神論では直りません。
調剤録と処方箋を突き合わせる
対象患者が示されているなら、その患者の処方箋と調剤録と請求内容を並べて見ます。日付、変更の記録、調剤した薬剤師の記名。ここがそろっていない例は、意外と出ます。
疑義照会をした処方は、いつ誰に照会して何と回答があったかが処方箋の裏や備考に残っているかを確認します。口頭で済ませた記憶があるものほど怪しいです。
入力の癖でずれが生まれることもあります。手が止まる人が店にいるなら、レセコン入力を自宅で練習する手順を渡しておくと、指導が終わったあとにも効いてきます。
麻薬と向精神薬は帳簿と現物照合
麻薬の帳簿、向精神薬の記録、廃棄の記録。ここは数が合うか合わないかの世界なので、直前に慌てても数え直すしかありません。
鍵のかかる場所に保管されているか、鍵の管理者が決まっているかも見ておきます。棚のいちばん奥に眠っている期限切れは、この機会に処理してください。
掲示物と手順書は置き場所が問われる
掲示は「あるか」だけでなく「患者から見えるか」も大事です。指摘事項の一覧には、届け出た事項の掲示がない、明細書の発行状況をウェブサイトに載せていない、といった例が並んでいます。届出を変えたのに掲示が古いまま、というずれも見ておきます。
業務手順書も同じで、金庫のような場所にしまってあるより、スタッフが手を伸ばせる場所にあるほうが実態に合います。研修の記録も日付が飛んでいないか見ておきます。
算定している加算を口で言えるように
届出をしている施設基準について、要件と実績を口で説明できるかを確認します。様式1でチェックを入れた項目が、そのまま質問のリストになると思ってください。
数字が言えないと、体制がないと受け取られます。逆に、数字を持って説明できると話は早く終わります。書類づくりで拾った月次のデータは、この場面でそのまま使えます。
個別指導の準備をしすぎて当日に潰れないための線引き


ここは僕の失敗の話です。準備の量より、当日に頭が回るかのほうが結果を左右します。
前日に全部直そうとして失敗した話
僕は前日の夜、薬歴を全部直そうとして閉局後も残り、深夜までやっていました。
結果どうだったかというと、当日いちばん頭が回らなかったのが僕自身でした。準備した内容は頭にあるのに、順番に説明できない。それが最大の反省です。
前日にやるのは、書類の控えと持ち物をそろえて寝ることだけで十分です。指導の前夜に胃が痛くなる感覚そのものについては、前日に眠れなくなるプレッシャーとの付き合い方のほうに書きました。
持ち物を自分で考える必要もありません。指導大綱では、実施通知に「準備すべき書類等」を書くことになっています。対象患者の処方箋・調剤録・薬歴、届出の控えなどが並ぶことが多いので、前日はその紙を見ながら1つずつ確認するだけにします。それと、事前に提出した書類は必ず同じものの控えを手元に残してください。当日の質問はほぼその書類の中身から始まります。
後日回答しますは逃げではない
その場で分からないことを推測で答えるのが、いちばんまずい対応です。事実と違う説明をすると、そこから話が広がります。
分からないときは、確認して後日回答しますと言っていいです。記録を見ないと答えられないことは、実務では普通にあります。
あと、指摘をその場で全否定しないことです。指摘の意図を聞いて持ち帰るほうが、店に持って帰れるものが増えます。
指導が終わった時点で、指導担当者から口頭で結果の説明があります。正式な結果と措置は後日、文書で届き、指摘した事項については改善報告書の提出を求められます。当日のメモは、その報告書を書くときの材料になります。
返還になったとき払うのは薬局です
準備中に気になって手が止まりやすいのが、返還になったら誰が払うのか、という話です。
結論から書くと、返還するのは保険薬局です。保険薬局の指定を受けているのは開設者なので、返還同意書を出すのも返還金を負担するのも法人や開設者であって、管理薬剤師が個人で払う仕組みにはなっていません。社内でどう扱うかは別の話ですが、制度としてはそうです。
ただし範囲は広いです。個別指導で返還の話になると、指摘されたレセプトだけで終わりません。同じ指摘に当たる分を、過去1年分まで自主点検して返す運用だと、東京都医師会の解説にもあります。監査に進むと、監査要綱で返還期間は原則5年とされています。指導と監査の重さの差は、ここに数字で出ます。
返し方は、今後の調剤報酬から差し引く形か、保険者へ直接返す形になります。どちらにしても1年分のレセプトを引っ張り出す作業が要るので、月次データがすぐ出せる会社かどうかで負担がまるで変わります。



「1年分を出し直せますか」は、書類を作っている段階で本部に聞いておくといいです
一人で徹夜しないと回らない薬局は体制のほうを疑っていい


ここまで書いてきた準備を、管理薬剤師が一人で全部やる薬局は珍しくありません。でも、それが当たり前かというと違います。
準備が属人化している薬局の共通点
本部が書類の作り方を持っていない、前回の指導の記録が店に残っていない、聞ける先輩管理薬剤師がいない。この3つがそろうと、準備は全部その人の休日から出ていきます。
逆に、体制のある会社は前回の提出書類の控えがそのまま出てきます。様式の枠や図をゼロから作らずに済むので、準備の重さがまるで違います。
これは指導に限った話ではありません。人が足りない前提で回している薬局は、確認の手順を人数で組めていない店とだいたい重なります。指導の準備は、その店の体力が数字で出る機会でもあります。
面接で聞くと店の実力が出る質問
もし今回の準備で「この会社にずっといるのは無理かもしれない」と思ったなら、覚えておくと役に立つ質問があります。前回の個別指導はいつで、書類は誰が作ったのか、という質問です。
求人票には絶対に載らない情報ですが、答え方でその会社の管理体制がだいたい見えます。本部が支援している会社は具体的に答えますし、丸投げの会社は言葉が濁ります。
僕自身が転職で使ったのは別の5社ですが、こういう変化球の確認事項は担当者に先に渡しておくと通ります。求人を比べる段階なら、ファゲットのような薬剤師向けの求人サービスで、管理薬剤師の業務範囲と本部の支援体制を先に確認したいと伝えておくと話が早くなります。ほかの選択肢も比べたいなら、薬剤師転職エージェントのおすすめ比較にまとめています。
もちろん、指導が終わった直後の消耗した頭で決める話ではありません。落ち着いてからで十分です。
薬局の個別指導の準備でよくある質問


準備中に出てきやすい疑問をまとめます。
- 通知が来てから当日まで、だいたいどのくらいありますか?
-
僕の店に届いたときは実施日の約1か月前でした。ただ厚生局や事務所によって運用が違うので、手元の実施通知に書かれた日付だけを見てください。書類の提出期限は実施日より前に来ます。
- 事前提出書類の様式はどこで手に入りますか?
-
自分の管轄の地方厚生局のサイトです。関東信越厚生局なら個別指導の事前提出書類のページで、保険薬局の現況及び連絡票がPDFとエクセルで配布されています。様式は厚生局ごとに違います。
- 前任の管理薬剤師の時期の分まで、自分が責任を負うのですか?
-
提出書類は薬局として出すもので、期間も薬局の実績で区切られています。個人の在任期間で切り分けられる作りにはなっていません。分からない時期のことは、推測で書かずに本部や前任者に確認してください。
- 薬歴の記載が薄い分を、今から書き足してもいいですか?
-
やめてください。電子薬歴なら更新履歴が残りますし、記録をあとから作り替えたと受け取られれば、指導ではなく監査の話になります。記載が薄いことより明らかに重い扱いです。今日の分から運用を戻すほうが、結果的に評価されます。
- 当日は管理薬剤師が一人で出席するのですか?
-
出席を求められるのは開設者(またはこれに代わる者)と管理者で、必要に応じて保険薬剤師や請求事務の担当者も呼ばれます。法人であれば本部が同席する形も多く、薬剤師会の立会いの人も同席します。弁護士の帯同が認められることもありますが、答えるのは薬局側です。誰が何を答えるかを事前に決めておくと、当日の受け答えがぶれません。
- 指摘を受けたら必ず返還になりますか?
-
指摘イコール返還ではありません。ただし返還の話になった場合は、指摘されたレセプトだけでなく、同じ指摘に当たる分を過去1年分まで自主点検して返す運用です。返還するのは保険薬局で、管理薬剤師が個人で負担するものではありません。僕の店のときは文書での指摘が数点で、返還にはなりませんでした。
- 結果はいつ、どんな形で来ますか?
-
指導の終わりに口頭で説明があり、正式な結果は後日、文書で通知されます。結果は「概ね妥当」「経過観察」「再指導」「要監査」の4つです。届くまでの期間は厚生局によって違うので、社内には「文書待ち」と報告しておけば十分です。指摘事項には改善報告書の提出を求められ、再指導になると同じ準備をもう一度やることになります。
- 準備のために店を休みにしてもいいですか?
-
当日は薬剤師が指導に出るので、店の体制を先に会社と相談してください。準備そのものを理由に閉局するより、書類作成の時間を勤務時間の中に確保してもらうほうが現実的です。
- 事務員も個別指導に出席するのですか?
-
指導大綱では、開設者と管理者の出席を求め、必要に応じて保険薬剤師や請求事務の担当者の出席も求めることになっています。呼ばれるかどうかは実施通知の出席者欄で確認してください。呼ばれなくても、レセプトの作成・点検の流れは書類で聞かれます。
- 集団的個別指導と個別指導は何が違いますか?
-
集団的個別指導は、レセプト1件あたりの平均点数が高い薬局を集めて、少数のレセプトで簡単に面談する形です。個別指導は事前提出書類をそろえ、対象患者の記録を見ながら個別に面談します。集団的個別指導の翌年度も高点数だと、翌々年度に個別指導の対象になります。
- 個別指導はどのくらいの頻度で来ますか?
-
決まった周期はありません。厚生労働省は区分ごとに全体の4%程度を実施する方針で、令和6年度の薬局の個別指導は809件でした。情報提供や前回の結果、集団的個別指導の後の点数などで選ばれます。
まとめ:個別指導の準備は逆算するだけの作業です


個別指導は監査ではありません。呼ばれた理由を推理するより、通知に書かれた提出期限から逆算するほうが、手も気持ちも前に進みます。
この記事の要点をまとめます。
- 指導と監査は目的も重さも違う
- 準備の8割は事前提出書類
- 様式は管轄の厚生局から取る
- 処方箋調べは期間違いで2枚
- 指摘事項の一覧で自己点検
- 平面図と流れ図を最初に片づける
- 前日は書類をそろえて寝る
- 返還は薬局が前1年分を自主点検
僕が個別指導を受けた年、いちばん堪えたのは指摘の中身ではありませんでした。土日を2回書類に使い、前日も深夜まで残った準備の重さのほうです。そして前日の夜更かしは、当日の自分を助けてくれませんでした。
今日やることは1つだけです。封筒をもう一度開けて、書類の提出期限と実施日をカレンダーに入れてください。そこさえ押さえれば、あとは順番に潰していく作業になります。
それと、準備の重さが毎回そのまま自分の休日に乗ってくるなら、それは個人の段取りではなく会社の体制の話です。指導が終わって落ち着いたころに、一度だけ振り返ってみてください。






