閉局後の薬局で、残った薬歴の件数を数えたことはありませんか。20件、下手をすると30件。今日も持ち帰りかと思った瞬間に、この記事にたどり着いたのかもしれません。
先に言います。薬歴が終わらないのは、要領の問題ではありません。書く時間が業務の中に確保されていないだけです。
僕は地方の調剤薬局で管理薬剤師をしているたろうです。20代の頃はドラッグストア併設の調剤で月45時間残業していて、その半分は薬歴でした。いまは薬歴を監査して本部に数字を報告する側にいます。
この記事では、薬歴が終わらない原因、監査する側から見た「通る薬歴」の基準、書き方の変え方、そして構造的に終わらない薬局の見分け方まで書きます。
- 調剤4年→DS2年→調剤4年
- いまは管理薬剤師(34歳)
- 転職を3回経験し、うち2回は失敗。
- 3回目で年収を480万円→610万円にアップ
- 薬剤師向けの人気転職エージェント5社を全部利用
「同じ失敗をしてほしくない」という思いで、薬剤師のリアルを本音で書いてます。
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薬剤師の薬歴が終わらない5つの原因

まず原因を分けます。自分で変えられるものと、変えられないものがあるからです。
順番に見ていきます。
投薬から時間が空きすぎる
これがいちばん大きいです。投薬した直後なら30秒で書けることが、3時間後には5分かかります。
患者さんの顔と会話を思い出すところから始まるからです。「あの人、血圧の薬のとき何か言ってたよな」で、まず記憶をたどる時間が発生します。
薬歴にかかる時間の半分は、思い出す時間です。書くのが遅いのではありません。
管理薬剤師たろう思い出す時間はゼロにできます
書く時間が予定に無い
処方箋の枚数からシフトを組むとき、薬歴を書く時間を計算に入れていない薬局がかなりあります。
1件3分としても、40枚なら120分です。この2時間がどこにも確保されていなければ、閉局後に押し出されるのは当然のことです。
僕がシフトを組む側になって最初に驚いたのが、ここでした。前の職場では誰も計算していませんでした。
何を書くか毎回考える
毎回ゼロから文章を考えていると、1件に5分以上かかります。しかも悩んでいる時間のほうが長い。
疾患ごとに「次回これを確認する」の型を持っている人は速いです。型があると、書くのが埋める作業になります。
逆に、毎回きれいな文章を書こうとする人ほど遅くなります。薬歴は作文ではないので、読み手に必要な情報が渡ればそれで足ります。
新人のうちは「これで足りているのか」が分からず長く書いてしまうものです。僕もそうでした。基準を教えてもらえないと、不安の分だけ字数が増えます。
人員が投薬に張り付く
薬剤師2人で1日80枚のような薬局だと、日中に手が空く瞬間がありません。
これは個人の工夫では動かせない部分です。人員配置の問題なので、書き方を変えても限界があります。
目安として、薬剤師1人が1日に扱う枚数が40枚を超えてくると、日中に薬歴を触る時間はほぼ消えます。調べるまでもなく、投薬と監査と電話で1日が終わります。
ここが原因の薬局にいるなら、努力の方向を変えたほうがいいです。判断の材料は後半に書きます。
監査基準が共有されていない
意外と多いのがこれです。何をどこまで書けば足りるのかが人によって違うので、みんな不安で長く書きます。
長い薬歴が良い薬歴だと思われている職場だと、全員の作業量が増えます。次の章で、監査する側の基準を書きます。
僕の店舗では、新しく入った人に最初の1週間で「この形なら通ります」という実例を3件見せるようにしました。それだけで平均の記載時間が目に見えて短くなります。
管理薬剤師として薬歴を監査する側になって分かったこと


ここからは、僕が管理薬剤師として薬歴を見る側になってから気づいたことです。
順にどうぞ。
長い薬歴は評価されない
正直に書きます。監査する側は、長い薬歴を読んでいません。
見るのは、必要な項目が入っているかどうかです。患者さんの訴え、それに対して何を確認したか、次回どうするか。この3つがあれば十分に成立します。
会話をそのまま再現したような長文は、むしろ読み飛ばされます。時間をかけた分だけ評価される仕組みには、なっていません。
ただし、短くしていい部分と、外してはいけない部分があります。服薬管理指導料で確認が求められる項目は、削ると算定の根拠が消えます。
- 前回からの変化の確認
- 残薬の状況
- 副作用と体調の確認
- 指導した内容
この4つが1行ずつあれば形になります。削るのは会話の再現部分で、確認した事実は削らない。線引きはここです。
見られるのは次回への申し送り
いちばん価値があるのは、次に投薬する人へのメモです。
- 次回に確認すること
- 患者さんが気にしていた点
- 医師に伝えた内容と返答
- 変更があった理由
これが書いてある薬歴は、次の担当者の投薬時間を短くします。逆にここが空欄だと、次の人がまた一から聞くことになります。
患者さんからすると「前も同じこと聞かれた」になります。薬歴が薄い薬局は、投薬の時間も長くなるという悪循環に入ります。
だから僕は、時間がない日ほど申し送りだけは書いてほしいと伝えています。ここだけは、あとから埋められません。
監査前日は僕も胃が痛い
管理薬剤師といっても、行政の指導や本部のチェックが来る前日は普通に胃が痛いです。
未記載が残っていないか、算定と記録が合っているか。自分の分だけでなく店舗全体を確認するので、正直しんどい時間です。
だから僕は、スタッフに「その日のうちに1行だけでも入れておいて」と言い続けています。未記載ゼロが、いちばん双方が楽になる形だからです。



完璧より、空欄をなくすほうが大事です
薬剤師が薬歴を投薬直後に終わらせる書き方


ここからは、明日から変えられる部分です。順番に試してみてください。
上から順に効きます。
投薬直後に1行だけ入れる
完成させなくていいです。投薬から戻った30秒で、患者さんが言ったことを1行だけ入れてください。
「膝の痛みが夜だけ強いと」だけでも構いません。これがあるだけで、閉局後の1件あたりの時間が半分以下になります。
僕が月45時間の残業から抜け出したとき、最初にやったのがこれです。書く量ではなく、書くタイミングを変えました。
やってみると、閉局後に残る件数が20件から5件くらいに減りました。5件なら15分です。帰る時間が1時間以上変わりました。
次の患者さんがすぐ呼ばれて30秒も取れない日もあります。そのときは端末に触らず、処方箋の控えに単語を2つだけ書いてください。「膝・夜」で十分です。あとで見れば会話が戻ってきます。



完成させなくていい、が大事です
疾患ごとの型を3つ作る
門前の診療科でよく来る処方は限られています。上位3つの型を先に作ってしまってください。
降圧薬なら「血圧の自己測定値・ふらつきの有無・次回に確認すること」。この枠さえあれば、埋めるだけになります。
僕が使っている型はこの3つです。門前によって中身は変えてください。
- 降圧薬:自己測定値・ふらつき
- 糖尿病薬:低血糖の有無・食事
- 抗菌薬:飲み切り・下痢の有無
SOAPで書く職場なら、時間をかける場所はAとPです。SとOは聞いた事実をそのまま短く置けば足ります。Sを会話体で長々と書くのが、いちばん時間を食う癖です。
コピペと言われそうですが、確認項目の型を持つことと、内容を使い回すことは別です。中身は毎回その人のものを書きます。
迷ったら次回確認に逃がす
判断に迷う話が出たとき、その場で結論を書こうとすると手が止まります。
そういうときは「次回、体重の変化を確認」と申し送りに落としてください。悩んで空欄にするより、次につながります。
まとめ書きの日を作らない
週末にまとめて書く、をやると必ず地獄を見ます。件数が増えるほど1件の時間も伸びるからです。
それに、未記載が長く残るのは記録としても好ましくありません。ためた瞬間に、作業量は倍になります。
薬歴残業が構造的に終わらない薬局の特徴


書き方を変えても消えない残業があります。その場合、原因は薬局の側にあります。
順に見ます。
薬剤師1人あたりの枚数が多い
1人で1日40枚を超えてくると、日中に薬歴を書く隙間はほぼ消えます。
ここは個人の工夫でどうにかなる範囲を超えています。人が増えるか、枚数が減るかしかありません。
残業を申請させない空気
薬歴の時間は労働時間です。タイムカードを切ってから書かせる薬局は、それだけで問題があります。
僕もDS時代にやっていました。当時の月45時間のうち、記録に残っていた分は半分もありません。くわしくは薬剤師の残業代が出ないのは違法かの話に書きました。
持ち帰りが常態化している
患者さんの情報を薬局の外に持ち出すこと自体が、本来あってはいけない話です。
それが当たり前になっている職場は、薬歴だけの問題ではありません。他の管理も同じようにゆるいことが多いです。判断の材料はブラック薬局の見分け方にまとめています。
見学で聞けば分かること
転職を考える段階なら、見学のときに1つだけ聞いてください。「薬歴はいつ書いていますか」です。
「閉局後にまとめて」と即答されたら、その薬局の残業は構造的なものです。「投薬の合間に」と答える薬局は、人員に余裕があります。
もう1つ聞くなら、1日の処方箋枚数と薬剤師の人数です。この2つを割れば、1人あたりの負荷がその場で計算できます。
求人票にこの情報は載りません。だから僕は、見学ができる形で探すことをすすめています。求人を並べて比べるならファゲットのような薬剤師向けの求人サービスで、勤務時間と人員体制の条件を先に伝えておくと話が早いです。



この質問1つで、だいぶ見えます
薬剤師の薬歴が終わらない悩みのよくある質問


- 薬歴が終わらないのは僕の要領が悪いからですか?
-
多くの場合は違います。書く時間がシフトに入っていないだけです。1人あたりの処方箋枚数を先に確認してください。
- SOAPのどこを短くしていいですか?
-
SとOは聞いた事実を短く置けば足ります。時間をかけるのはAとPです。会話をそのまま書き起こすのが一番時間を食います。
- 薬歴を家に持ち帰って書いてもいいですか?
-
やめてください。患者さんの情報を外に出すことになります。持ち帰りが前提の職場は、そこ自体を見直す場面です。
- 薬歴を書く時間は労働時間になりますか?
-
業務なので労働時間です。タイムカードを切ってから書く運用になっているなら、それは正しい状態ではありません。
- 薬歴は長く書いたほうが評価されますか?
-
されません。監査する側が見るのは、訴え・確認したこと・次回の申し送りの3点です。長文は読み飛ばされます。
- 薬歴のテンプレートを使うのは問題ないですか?
-
確認項目の型を持つのは問題ありません。中身まで使い回すのが問題です。型は枠、中身はその日の患者さんのものにしてください。
- 未記載のまま数日たってしまいました。
-
気づいた時点で入れてください。件数が多いなら、次回の申し送りだけでも先に埋めると次の担当者が助かります。
- 薬歴の残業を上司に相談しても大丈夫ですか?
-
大丈夫です。感覚ではなく「1日あたり何件・何分」と数字で出すと動きます。管理する側は枚数しか見ていないことが多いです。
- 薬歴残業が理由で転職しても大丈夫ですか?
-
十分な理由になります。ただ同じ構造の薬局に移ると変わらないので、見学で「薬歴はいつ書いていますか」を必ず聞いてください。
- 薬歴残業のない薬局は本当にありますか?
-
あります。人員に余裕がある店舗は投薬の合間に書けています。僕の現職がそうで、閉局後に残ることはほぼありません。
まとめ:薬剤師の薬歴が終わらないのは、書く速さの問題ではない


薬歴が終わらない原因は、書くのが遅いことではなく、書くタイミングと人員の配置にあります。自分を責める必要はありません。
あらためて、この記事の内容をまとめます。
- 時間の半分は思い出す時間
- 投薬直後に1行だけ入れる
- 長い薬歴は読まれていない
- 1日40枚超えは構造の問題
- 見学で書くタイミングを聞く
僕はDS時代、月45時間の残業のうち半分を薬歴に使っていました。あの2年で失ったのは時間だけでなく、家に帰ってからの気力です。
まず明日、投薬直後の30秒だけ変えてみてください。3か月やっても閉局後の件数が減らないなら、それは薬局の構造です。そのときは残業を減らす方法をまとめた記事もあわせて読んでみてください。
それと、まとめ書きの癖がいちばん怖いのは厚生局の個別指導です。投薬した日に書けているかが記録として残るので、通知が来ている人は個別指導の準備で薬歴をどう扱うかを先に確認しておいてください。
薬歴は、次に投薬する人へのメモです。完璧に書くことより、空欄を残さないことのほうが、たぶんずっと大事です。






