かかりつけ薬剤師になりたくないなら、断って大丈夫です。なりたくないのは、生活を守るためのまともな感覚です。
ひとつ知っておいてほしいのは、2026年6月の改定で「かかりつけ薬剤師指導料」は廃止されたものの、かかりつけ薬剤師そのものは残ったことです。服薬管理指導料の中の区分になり、新しい加算も付きました。だから「廃止されたのに、まだ打診される」ことが普通に起きています。
僕は地方の調剤薬局で管理薬剤師をしているたろうです。研修認定を取ってかかりつけの同意患者を多いときで30名ほど持ち、同時に、本部から降りてくる店舗の同意件数目標をスタッフに割り振る側でもありました。
この記事では、改定後に何が変わって何が残ったか、配る側から見た断り方、もうなってしまった人の降り方まで書きます。
- 調剤4年→DS2年→調剤4年
- いまは管理薬剤師(34歳)
- 転職を3回経験し、うち2回は失敗。
- 3回目で年収480万→610万にアップ
- 人気転職エージェント5社を全部利用
「同じ失敗をしてほしくない」という思いで、薬剤師のリアルを本音で書いてます。
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かかりつけ薬剤師になりたくない理由5つ【全部まともな感覚】
まず、あなたが感じている「嫌だ」を分解します。管理する側から見ても、理由はだいたいこの5つに集約されます。
24時間対応の重さ
いちばん多い理由がこれです。かかりつけ薬剤師の看板は「いつでも相談できる担当」なので、休みの日でも自分の患者さんから連絡が来るかもしれない、という前提を背負うことになります。
実際には、時間外の電話を当番制で回したり、薬局の他の薬剤師が受けたりと、運用は薬局ごとにかなり違います。ただ、電話の回数より「鳴るかも」と構えている時間の長さが消耗の元です。
時間外の対応をどう回すかは、制度より自分の店のルールで決まります。打診されたら、まずそこを確認してください。オンコール全般のしんどさは薬剤師のオンコールがきつい話にも書いています。
同意件数のノルマ
「今月あと3件、同意を取ってきて」。これを言われて好きになれる制度はないです。
本来は、患者さんが「この人にお願いしたい」と選んで成立する関係です。そこに営業ノルマのような数字が降ってくる。患者さんのためという建前と、会社の数字という本音のねじれが、真面目な人ほどきついと思います。
僕自身、月5件前後の店舗目標をスタッフに割り振っていた側です。言う側も気持ちよくはありません。
患者さんを選べない
かかりつけは患者さんが薬剤師を選ぶ仕組みで、薬剤師の側から相手を選ぶ仕組みではありません。相性が合わない方や要求の多い方でも、選ばれれば毎回の服薬指導を担当することになります。
しかも「自分から担当を外れたい」とは言い出しにくい。その患者さんが来る日は自分が対応する前提でシフトが回り、急ぎの調剤で手一杯でも呼ばれます。選べない相手と長く付き合う不安は、かなり本質的です。
負担のわりに給料が増えない
露骨な話をします。かかりつけ手当を出す会社と出さない会社があって、僕の会社は手当ゼロです。算定しても給与には反映されません。
手当の有無や金額は会社ごとにばらばらなので、打診されたら就業規則や給与規程で確認するのが先です。手当がないなら、それは交渉や判断の材料になります。
「やりがいはあるけど、割に合うかは別問題」。30名ほど持っていた僕の正直な感覚です。
断ると評価が下がる空気
かかりつけ薬剤師になるかどうかは、本来は本人の意思です。でも現場には「要件を満たしてるのにやらないの?」という無言の圧があります。
しかも2026年6月の改定で、薬局での在籍期間の要件が「1年以上」から「6か月以上」に短くなりました(要件の新旧)。転職や異動をしても、打診が来るまでが早くなったということです。
悩む男性まさに全部当てはまります…。やっぱり逃げたら駄目なんでしょうか。



駄目じゃないです。ただその前に、制度が今どうなったかだけ知っておいてください。
【2026年6月〜】かかりつけ薬剤師指導料は廃止。現場はどうなったか
2026年度の調剤報酬改定で、かかりつけ薬剤師の評価の仕組みは大きく変わりました。改定前に書かれた記事も多いので、厚生労働省の改定概要(令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】)をもとに整理します。
指導料76点が廃止された
かかりつけ薬剤師指導料(76点)と、かかりつけ薬剤師包括管理料は廃止されました。代わりに、服薬管理指導料の中に「イ かかりつけ薬剤師が行った場合」「ロ それ以外」という区分ができています。
点数はイもロも同じです(3か月以内の再来局で手帳ありなら45点、それ以外は59点)。かかりつけというだけで点数が上乗せされる仕組みはなくなった、ということです。
かかりつけ自体は残った
ここを勘違いしやすいのですが、患者さんが特定の薬剤師を選ぶ「かかりつけ薬剤師」は残っています。同意を取ったら、患者さんのお薬手帳に薬剤師の氏名と「かかりつけ」の文字などを記入し、そのページの写しを薬局で保管する流れです。
かかりつけ薬剤師になれる人の要件も、少し変わりました。
| 要件 | 改定前 | 2026年6月〜 |
|---|---|---|
| 薬局勤務経験 | 3年以上 | 3年以上 |
| 週の勤務時間 | 32時間以上 | 31時間以上 |
| その薬局の在籍 | 1年以上 | 6か月以上 |
| 研修認定 | 必要 | 必要 |
| 地域活動への参画 | 必要 | 必要 |
つまり「なりたくない」という悩みは、廃止で消えたわけではありません。要件を満たす人が打診される構図は、そのまま続いています。
ノルマは形を変えて残った
「廃止=解放」と思った人、ごめんなさい。僕の会社の本部から来る指示は、「同意件数」から「フォローアップ実績の件数」に置き換わっただけでした。
会社がかかりつけを手放さない理由は、改定概要を読むと分かります。
- フォローアップ加算 50点
- 訪問加算 230点
- 地域支援体制の実績に算入
新設の「かかりつけ薬剤師フォローアップ加算」(3か月に1回)は、かかりつけ薬剤師が電話などで服薬や残薬の状況を継続して確認・指導した場合の評価です。「かかりつけ薬剤師訪問加算」(6か月に1回)は、患者さんの家を訪ねて残薬などを確認した場合の評価。どちらも、かかりつけの区分で算定している患者さんが対象です。
さらに「地域支援・医薬品供給対応体制加算」の実績要件には、かかりつけ薬剤師の区分での算定回数(処方箋1万枚あたり年20回または40回以上)が入っています。薬局としては、かかりつけ患者を持つ理由も、電話フォローの回数を数える理由もあるわけです。
一方で、1回ごとの点数の上乗せがなくなったぶん、「とにかく同意を取れ」という圧は弱まる余地があります。数字の中身が「同意の数」から「実際にやった支援の数」へ移った、というのが現場での実感です。
今は交渉のチャンスでもある
制度の切り替わり期は、現場ルールを見直す口実に使えます。「指導料の仕組みが変わったので、当番や時間外対応の運用も整理しませんか」という提案は、今なら筋が通ります。
改定を無視して旧運用のまま同意件数だけ追わせる会社なら、それも判断材料です。制度が変わっても現場を変えない会社は、次の改定でも変わりにくいと思います。



うちの薬局、改定後も普通に「かかりつけ取ってきて」って言われてます…。
かかりつけ薬剤師の同意件数を配る側だった僕の本音
ここからは、管理薬剤師としてノルマを「振る側」から見えていた景色です。
ノルマはこう降りてくる
僕の会社では、目標は本部から店舗ごとに降りてきました。店舗の同意件数の目標は月5件前後。それを管理薬剤師の僕が、スタッフの勤務時間や要件を見ながら割り振る形です。
ここで知っておいてほしいのは、目標を決めているのは店の上司ではなく本部だということ。管理薬剤師は本部と現場の間に立っていて、目標そのものを消す権限はたいてい持っていません。
だから、上司に「嫌です」とだけ言っても、上司は本部に説明する言葉を持てません。断るときに「理由」と「代わりにできること」が要るのは、このためです。
断る人をどう見ていたか
理由を言って断る人を、僕は低く評価しません。
育児や介護で時間外の連絡が難しいなら、それは事実です。むしろ最初に言ってもらえればシフトを組みやすい。困るのは、曖昧に引き受けて後から回らなくなるパターンの方です。
ただ、会社によっては賞与や人事評価の項目に算定実績を入れています。現場の上司が理解してくれても、会社の数字は別に動くことがある。この二重構造は知っておいてください。
角が立たない断り方の条件
管理する側から見て、受け取りやすい断り方には共通する条件があります。
- 理由が生活の事実ベース
- 代わりの貢献を先に出す
- 「今は」と期限を付ける
逆にいちばんもったいないのは「なんとなく嫌なので」で突っぱねることです。気持ちは分かります。でも管理者側に説明材料がないと、かばいようがなくなります。
かかりつけ薬剤師の断り方3ステップ
配る側の事情を踏まえて、実際に断る手順に落とします。
①その場で即答しない
打診されたら「家族と相談して、今週中にお返事します」で一度持ち帰ってください。その場の流れで引き受けると、あとから降りるのがいちばん大変です。
持ち帰っている間に、次の3つを確認します。
- かかりつけ手当の有無
- 時間外の連絡の回し方
- 評価項目に実績があるか
改定後にフォローアップの件数目標が新しくできていないかも、あわせて聞いておくと安心です。古い前提のまま交渉すると、話がかみ合いません。
②事実の理由+代替貢献で断る
断り文句は「気持ち」ではなく「事実」で組みます。使いやすい型はこうです。
「育児で時間外の電話対応が現実的に難しいので、今はかかりつけを引き受けられません。そのぶん在宅の同行や薬歴の監査は積極的にやります」。
事実の理由で断り、店の役に立つ代わりの案を同じタイミングで出す。この形なら、管理する側は本部に説明できます。少なくとも僕は「助かる」と受け取る側です。
③記録に残る形で伝える
口頭で断った内容は、上司が変わると消えがちです。異動の多い会社なら特にです。
面談で伝えたあと、「先ほどの件、記録として残しておきます」と社内チャットやメールで一言送っておく。これで「言った言わない」や、次の上司からの同じ打診をかなり防げます。



断りは「感情の主張」じゃなく「運用の相談」に変えるのがコツです。
かかりつけ薬剤師をやめたい人の降り方
すでにかかりつけ薬剤師になっていて、やめたい人もいると思います。降りることはできます。ただ、相手は患者さんなので、黙ってフェードアウトはできません。
順番はこうです。
- 上司に理由を伝える
- 新規の同意を止める
- 既存患者の引き継ぎを相談
- 患者さんに説明する
いきなり全員を外れるより、まず新しい同意を受けないところから始めると、店も患者さんも混乱しません。今いる患者さんは、要件を満たす別の薬剤師に引き継げるか、上司と一緒に考えます。
かかりつけは患者さんが選ぶものです。引き継ぎ先を決めるのも最終的には患者さんなので、説明は上司と相談した内容に沿って行い、手帳や薬歴の扱いは店のルールに合わせてください。
理由の伝え方は、上の断り方の②と同じ型が使えます。「今の勤務の状況では、かかりつけとして十分な対応ができない」という事実で話すのがいちばん通りやすいです。
かかりつけ薬剤師を断れない薬局なら、環境ごと変えるのも手
3ステップで断っても、「全員必須だから」で押し切ってくる会社はあります。改定で仕組みが変わったのに、数字の締め付けだけ残す会社もあります。
そういう職場で消耗し続けるなら、かかりつけの運用がゆるい職場に移る方が早いです。選択肢は2つあります。
- 運用がゆるい調剤薬局
- 病院など薬局以外
かかりつけ薬剤師は保険薬局の仕組みなので、病院薬剤師には同じ形の同意ノルマはありません(ただし病院には病院の当直やオンコールがあります)。調剤薬局の中でも、どこまで数字を追わせるかは会社や店舗でかなり違います。
問題は、この運用が求人票にまず書かれないことです。僕は管理薬剤師として欠員募集を出す側も経験していますが、求人の原稿を作るのは本部で、店の運用の細かいところは載りません。面接や職場見学の前に、次のことを確かめておくと入ってからの事故を防げます。
- かかりつけの件数目標
- フォローアップの件数目標
- 時間外の連絡の当番
- 手当と評価への反映
自分で聞きにくいなら、転職エージェントに確認を頼むのが手です。たとえばファゲットは、公式サイトで中小の調剤薬局や病院の求人を強みとして挙げています。大手チェーンの本部主導の数字管理から離れたい人は、候補の出し方を相談してみてください。僕は使っていませんが、評判はファゲット薬剤師の評判で調べてまとめています。
求人票に載らない情報の取り方は薬剤師の職場の選び方に、エージェントの比較はランキング記事にまとめています。
かかりつけ薬剤師になりたくない人からよくある質問
- かかりつけ薬剤師を断ると、クビや減給になりますか?
かかりつけは患者さんが選んで同意する仕組みで、薬剤師に引き受けを義務づける制度ではありません。ただし賞与や人事評価の項目に算定実績を入れている会社はあるので、就業規則と評価シートは確認しておいてください。不利益な扱いが心配なら、やり取りを記録に残しておくと後で説明しやすくなります。
- かかりつけ薬剤師制度は2026年になくなったんですか?
なくなったのは「かかりつけ薬剤師指導料(76点)」と「包括管理料」です。かかりつけ薬剤師そのものは、服薬管理指導料の「かかりつけ薬剤師が行った場合」の区分として残り、フォローアップ加算や訪問加算が新しくできました。
- 要件を満たしていることを黙っておくのはアリですか?
研修認定や勤務年数は会社が把握しているので、隠すのはほぼ無理です。黙るより「今は引き受けられない理由」を先に伝えておく方が、結果的に打診の回数が減ります。
- 一度なってしまったかかりつけを辞めることはできますか?
できます。新規の同意を止め、今の患者さんの引き継ぎを上司と相談し、患者さんに説明する流れです。詳しくはかかりつけ薬剤師をやめたい人の降り方に書きました。
- なりたくない自分は薬剤師に向いてないのでしょうか?
向き不向きの話ではないです。特定の患者さんを長く受け持つ働き方が合わない薬剤師はたくさんいて、調剤の正確さや在宅・監査で貢献する道もあります。働き方の選択の問題であって、適性の欠陥ではありません。
- 転職先でもまたかかりつけを迫られたら意味なくないですか?
だからこそ、入る前に運用を確認するのが大事です。僕は2回目の転職で職場を自分の目で確かめずに決めて、2か月で辞めました。件数目標や時間外の当番を面接前に確認するだけで、同じ事故はかなり防げます。失敗パターンは薬剤師転職の失敗談にまとめています。
まとめ:かかりつけ薬剤師になりたくないなら、ならなくていい
かかりつけ薬剤師になりたくないのは、逃げでも甘えでもなく、自分の生活を守る判断です。
指導料は2026年6月に廃止されましたが、かかりつけ薬剤師は形を変えて残り、ノルマもフォローアップの件数に移っています。だから、断るなら3ステップで「運用の相談」として伝える。もうなっている人は、新規を止めるところから降りる。それでも通らなければ、自分が変わるより、職場を選び直す方が早いです。
役職や数字と距離を置きたい気持ちの整理には、管理薬剤師になりたくない話も参考になると思います。同じ構造の悩みなので。






