薬剤師のオンコールがきついのは、電話が鳴らない夜でも「いつでも出られる状態」を保ち続け、翌朝は普通に開局するからです。根性や慣れの問題というより、当番の回数と職場の体制で決まる部分が大きいです。
しかも2026年6月の調剤報酬改定で、在宅をやる薬局に新しい要件が加わりました。夜間・休日の連絡先を、患者さんに文書で渡すことです。在宅をしている薬局では、夜の電話当番がこれからも続くと考えておいたほうが現実的です。
僕は在宅対応のある調剤薬局で管理薬剤師をしていて、スタッフのシフトを組む側と、採用の一次面接をする側にいます。その立場から、手当と労働時間の見方、当番を減らす交渉の順番、オンコールのない職場の見分け方をまとめました。
- 調剤4年→DS2年→調剤4年
- いまは管理薬剤師(34歳)
- 転職を3回経験し、うち2回は失敗。
- 3回目で年収480万→610万にアップ
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「同じ失敗をしてほしくない」という思いで、薬剤師のリアルを本音で書いてます。
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薬剤師のオンコールがきついのは当たり前【鳴らない夜も休めない】
オンコールとは、勤務時間外に自宅などで待機して、電話や呼び出しがあれば対応する働き方です。薬局なら、閉局後に患者さんやご家族、訪問看護師からの電話を受ける当番です。病院なら、緊急の調剤で呼び出される待機を指すことが多いです。
電話そのものは、毎晩のように鳴るわけではありません。営業時間外や定休日の問い合わせは、1薬局あたり月に中央値2.5回でした。日本保険薬局協会の管理薬剤師アンケート(2023年6月実績・4,513薬局)で、厚生労働省の検討会資料にも載っている数字です。
それでもきついのは、鳴る回数ではなく「鳴るかもしれない」状態が一晩中続くからです。湯船に長く浸かれない、お酒を飲まない、スマホを手放さない。何も起きなかった夜でも、眠りが浅いまま朝を迎えやすいのがオンコールの特徴です。
一方で、当番が特定の人に偏っている職場もあります。厚生労働省の委託調査では、夜間・休日の対応を週に数回以上している薬剤師が27%いました。令和5年度「薬局の機能に係る実態調査」(n=608)の結果で、同じ資料に載っています。
同じ「オンコールあり」でも、月1回の人と週に何度も当番の人とでは負担がまったく違います。だから「慣れれば平気」で片づけず、回数・翌日の配慮・手当の3つを自分の職場で確かめるところから始めてください。
- 鳴る回数より待機の長さがきつい
- 当番が偏る職場ほど負担が重い
- 手当は払い方の設計で見る
- 続けるなら回数→免除→手当
- 離れるなら在宅なしの職場へ
薬剤師のオンコールの何がきついのか|鳴らない夜も、鳴った夜も
きつさを言葉にできると、職場や家族に説明しやすくなります。大きく分けると次の3つです。
- ①鳴らなくても神経が休まらない
- ②鳴った翌日も通常勤務がある
- ③病院は当直と待機で性質が違う
鳴らなくても休めない夜
当番の夜は、体は家にいても頭の一部が職場に残っています。電話に気づけるよう音量を上げ、入浴や外出も短く切り上げる人が多いと思います。
飲酒も多くの職場で控えるのが前提です。法律で一律に禁止されているわけではありません。ただ、呼び出しに対応できない状態は問題になるので、当番日は飲まないと決めている職場が多いはずです。
人の眠りは「もう何も起きない」と安心できて深くなります。オンコールはその安心を差し出す働き方なので、当番の回数が多い人ほど、疲れが抜けない日が増えていきます。
当番でない日まで寝つきが悪くなってきたら要注意です。眠りの浅さが続いている人は、夜眠れない薬剤師のストレス対処を書いた記事も合わせて読んでみてください。
鳴ったら鳴ったで、翌日がきつい
夜の電話は、薬の飲み方の確認から、痛みや副作用が疑われる症状の相談まで幅があります。内容によっては処方医や訪問看護師への連絡、薬の準備まで必要になります。
電話を切ったあとも、説明が伝わったか気になってすぐには眠れないことがあります。そして翌朝は、いつもどおり開局です。「呼び出された翌日は遅出でいい」といった決まりがない職場では、分断された睡眠の上に通常勤務が乗ってきます。
調剤も監査も集中力が要る仕事です。寝不足のまま監査台に立つことになるのが、夜の対応そのもの以上にオンコールのきつさの本体だと僕は考えています。
訪問や看取りといった在宅業務そのもののしんどさは、在宅薬剤師のきつさを場面別にまとめた記事に分けて書いています。この記事は夜間待機の話に絞りますね。
病院の当直とオンコールの違い
病院では、夜の体制に「当直」と「オンコール」があります。当直は院内に泊まり込んで対応する形、オンコールは自宅で待機して、呼ばれたら病院へ向かう形です。
オンコールは呼ばれたら出勤するので、待機中も病院まで戻れる範囲にいる必要があります。休日でも遠出しにくいのは、病院のオンコールならではの負担です。
夜勤は、夜間も日中と同じように業務を続ける勤務なので、当直やオンコールとは別物です。求人票で「夜勤」「当直」「オンコール」のどれが書かれているかは分けて読んでください。
薬剤師のオンコールは2026年改定でどう変わったか|薬局の夜間体制
「在宅をやる以上、夜の電話は仕方ない」と言われる背景には、調剤報酬のルールがあります。ここを知っておくと、職場の説明が本当か、交渉の余地があるかを判断しやすくなります。
在宅の要件に夜間の連絡先
2026年6月の改定で、在宅患者訪問薬剤管理指導料の要件に夜間・休日の連絡体制が加わりました(厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】」)。
原則として初回の訪問時に、薬剤師と連絡がとれる電話番号や緊急時の注意事項を、患者さんやご家族に文書で渡すことになっています。出られなかった電話には、速やかに折り返すことも求められています。
在宅の点数を算定している薬局では、夜の電話を誰かが持つことがほぼ前提になった、ということです。訪問薬剤師として働く場合の条件は訪問薬剤師になる条件と薬局の見分け方で詳しく書いています。
1人で抱えない仕組みもある
同じ要件には、自分の薬局だけでなく「在宅協力薬局」と連携して時間外に対応する形も書かれています。その場合は、協力薬局の名称や連絡先も患者さんに渡す文書に載せます(同資料)。
地域の薬剤師会が休日・夜間の輪番を組んでいる地域もあります。厚生労働省の資料でも、薬剤師の夜間・休日対応の負担を減らす方法として、薬局内での当番制や輪番が多く挙げられていました(同 検討会資料)。
つまり制度上は、夜の電話を特定の1人が毎晩持つ形でなくてもよいということです。人数の少ない薬局でも、協力薬局との連携や当番の分け方で負担を配る余地はあります。
かかりつけ24時間は今も必要?
「かかりつけ薬剤師なんだから夜間対応は当然」と言われてきた人もいると思います。ただ2026年6月の改定で、かかりつけ薬剤師指導料そのものが廃止されました(同 改定概要)。
かかりつけ薬剤師の評価は、服薬管理指導料の中で「かかりつけ薬剤師が行った場合」として扱われる形に変わっています。僕も現職でかかりつけの同意患者をピーク時に約30名持っていましたが、会社のかかりつけ手当はゼロでした。
夜間の負担をどう配るかは、薬剤師個人の我慢ではなく薬局側の設計の問題です。かかりつけの打診を断りたい人はかかりつけ薬剤師になりたくない人向けの断り方もどうぞ。
薬剤師のオンコール手当と労働時間の扱い|払い方の設計で見る
きつさを我慢する価値があるかは、対価と扱いを見ないと判断できません。ここは手当と労働時間の話です。
- 薬剤師の手当の公的統計はない
- 待機分と出動分を分けて見る
- 労働時間かは実態で個別に判断
- 対応した日時は自分で記録
手当の相場を示す公的データはない
薬剤師のオンコール手当について、厚生労働省や薬剤師会が公表している金額の統計は、調べた範囲では見つかりませんでした。ネットで見かける「相場」の多くは看護師の訪問看護などの数字で、薬剤師にそのまま当てはまるものではありません。
なので、金額の高い安いより「どういう払い方か」で見てください。確認したいのは次の3つです。
- 待機1回ごとの手当があるか
- 電話や出動の分が別に出るか
- 翌日の勤務に配慮があるか
待機の分と、実際に対応した分を分けて払う職場は、負担をちゃんと数えている職場です。反対に、鳴った夜も鳴らない夜も同じ一律の額だと、きつい夜ほど損をする設計になります。
月の当番回数×1回の手当を出して、時給に直してみるのもおすすめです。同じ額でも、月1回と週2回では意味がまったく違います。求人票の手当欄に書かれていなければ、面接で金額と支給条件を聞いてかまいません。
自宅待機は労働時間になるのか
労働時間かどうかは、就業規則の書き方ではなく、実態として使用者の指揮命令下にあるかで客観的に判断されます。厚生労働省のガイドラインでは、指示があればすぐ業務に就くことを求められている待機を「手待時間」と呼んでいます。労働から離れることが保障されていないこの時間は、労働時間として扱うとされています。
自宅でのオンコール待機がこれに当たるかは、一律には決まりません。応答の義務の強さ、行動の制限、呼び出しの頻度などから個別に判断され、裁判でも事案によって結論が分かれています。
はっきりしているのは、実際に電話で対応したり出動したりした時間は業務をしている時間だということです。その分に賃金も手当も付いていないなら、手当が安いという話とは別の問題かもしれません。
気になる人は、電話が来た日時、対応した時間、内容を自分でメモしておくのがおすすめです。記録があるだけで職場との話し合いの土台が変わります。扱いに納得できないときは、都道府県労働局の総合労働相談コーナーに相談できます。
薬剤師がオンコールを減らす・外れる交渉はどこまで通るのか
辞める前に、交渉で変わる余地を確かめておくと後悔が減ります。シフトを組む側の管理薬剤師として考えていることも添えて書きますね。
交渉が通りやすいのは、薬剤師の人数に余裕があって当番を分散できる職場です。5人で回している当番から1人減っても、残る人の負担増は小さいので。
逆に、在宅の件数が多いのに薬剤師が2〜3人の職場だと、あなたが抜けた分は誰かに直撃します。気持ちの問題ではなく数の問題なので、この場合は協力薬局との連携など体制そのものの話になります。
切り出すなら、いきなり「外してください」より次の順番がおすすめです。
- 当番の回数を減らす
- 期間を区切って免除してもらう
- 手当や翌日の配慮を見直す
事情は具体的に伝えてください。「子どもの寝かしつけと重なって、夜間の対応の質が落ちるのが不安」は、管理する側から見て無視できない情報です。
タイミングも大事です。シフトや当番表が組み上がった後だと動かせる余地が減るので、次の当番表を作る前に面談の形で切り出すのがやりやすいです。
「きつい」だけで終わらせず、「当番を月◯回までにしてほしい」と着地点まで言葉にして持っていくと通りやすくなります。回数を1回減らす案や手当の見直しなら、角も立ちにくいです。
読者そうか、「外れる」の前に「減らす」交渉があるのか…!
シフトを組む側から言うと、言ってもらえないと気づけません。限界まで抱えて、ある日突然「辞めます」と言われるのがいちばんつらいパターンです。
一方で、交渉せずに勢いで辞めても、在宅をやっている薬局に移れば当番はたいてい付いてきます。辞めるなら「オンコールがない職場タイプ」を狙って辞める。ここを外すと、転職そのものが無駄打ちになります。
オンコールなしで働ける薬剤師の職場タイプと求人の見分け方
オンコールの有無は、職場のタイプでかなり読めます。
- 在宅をやっていない調剤薬局
- 企業(メーカー・CROなど)
- OTC中心のドラッグストア
- 当直なし・日勤のみの病院
いちばん現実的なのは、在宅をやっていない調剤薬局です。閉局したら業務が終わる働き方なので、夜の電話当番とは基本的に無縁になります。
ただ、在宅を始める薬局は今後も出てきます。「今はやっていない」だけだと数年後に始まる可能性があるので、面接で在宅の予定まで聞いておくと安心です。
企業(メーカーの学術やCRO、コールセンターなど)も夜間待機とは無縁の働き方です。求人数が少なめで経験も問われやすいので、狙うなら早めに動いたほうが選択肢は多いです。
OTC中心のドラッグストアも、閉店すれば業務が終わります。ただ遅番や閉店後の作業で帰りが遅くなることはあるので、「夜の電話がない」と「夜が早い」は別物として見てください。
病院は全部きついと思われがちですが、「当直なし・日勤のみ」を明記した病院求人もあります。当直やオンコールの有無は病院ごとに違うので、求人票の書き方で確かめてください。
オンコールなしの職場は、夜間の手当が付かない分、額面が下がることもあります。今の年収を維持したいなら、「オンコールなし」と「年収の下限」を両方の条件として最初に決めておくと、探す範囲がぶれません。
在宅の有無は名簿で分かる
応募先が在宅にどれくらい力を入れているかは、地方厚生局が公開している施設基準の届出受理名簿で確かめられます。在宅薬学総合体制加算などの届出があれば、在宅の体制を持っている薬局です。
2026年の改定では、地域支援・医薬品供給対応体制加算の施設基準にも、休日・夜間の開局時間外の調剤や在宅業務に対応できる体制が入っています(同 改定概要)。名簿の見方は訪問薬剤師の条件の記事にまとめています。
求人票に当番は書かれにくい
オンコールの有無や回数まで書いてある求人は少数派です。僕は管理薬剤師として欠員募集に関わっていますが、求人票の文面を作るのは本部です。店から上げるのは、欠員の理由・希望の時間帯・常勤かパートか、くらいです。
つまり、夜の当番の回数は、求人票ではなく現場に聞かないと分からないことが多いです。見学や面接では、次のように聞くと答えやすいと思います。
- 夜の電話は何人で回していますか
- 当番は月に何回くらいですか
- 夜の電話は月に何件くらいですか
- 当番の手当と出動の扱いは
- 対応した翌日の配慮はありますか
見学で聞くことの全体は転職前の薬局見学で質問することにまとめています。僕は2回目の転職で見学を自分から断り、入った薬局を2ヶ月で辞めています。夜の当番も、入る前に確かめられる項目のひとつです。
聞きにくいなら転職サービスで
面接で「夜の呼び出しは多いですか」とは聞きづらい、という人は多いと思います。転職サービスを使うなら、希望条件に「在宅なし」や「夜間当番の回数」を最初に入れて、担当者から応募先に確認してもらう方法があります。
ファゲットは中小の調剤薬局や病院の求人を扱う薬剤師向けの転職サービスです。オンコールの条件を伝えて求人を出してもらい、気になる薬局は見学で当番の実態を確かめる、という使い方ができます。
いきなり正社員で決めるのが不安なら、MC-ファーマネットは紹介予定派遣や派遣の働き方も選べます。一定期間働いてから正社員になるかを決める形なので、夜の当番の実態を見てから判断できます。
ほかのサービスとの違いは薬剤師転職エージェントのおすすめランキングで比べています。どこを使う場合も、当番の回数は担当者任せにせず、見学で自分でも確かめてください。



当番の回数まで事前に聞けるなら、入ってから後悔しなくて済みそうですね。
薬剤師のオンコールに関するよくある質問
最後に、オンコールで悩む人が抱えがちな疑問に答えておきます。
- オンコール手当の相場はいくらですか?うちは安すぎでしょうか。
薬剤師のオンコール手当について、公的な統計は調べた範囲では見つかりませんでした。額そのものより、当番の回数、待機分と出動分が分けて払われるか、対応した翌日の配慮があるかをセットで見てください。実際に対応した時間に何も付いていないなら、安い高い以前の問題かもしれません。
- オンコール当番の頻度はどれくらいが普通ですか?
職場ごとの差が大きく、決まった基準はありません。厚生労働省の委託調査では、夜間・休日の対応を週に数回以上している薬剤師が27%いました。薬局の人数と在宅の件数で大きく変わるので、面接や見学で「何人で回しているか」を聞くのが確実です。
- オンコール当番の夜にお酒は飲めますか?
法律で一律に禁止されているわけではありません。ただ、呼び出しに対応できない状態は問題になるので、当番日は飲まないと決めている職場が多いはずです。月の当番回数を「飲めない夜・出かけられない夜の数」と考えると、負担を職場や家族に説明しやすくなります。
- 在宅をやっている薬局は必ずオンコールがありますか?
2026年6月の改定で、在宅の点数を算定する薬局は夜間・休日の連絡先を患者さんに文書で渡すことが要件になりました。ただ、在宅協力薬局と連携して対応する形も認められているので、自分が当番に入るかどうか、何人で回すかは薬局によって違います。
- オンコールなし(在宅なし)の求人はどう探せばいいですか?
求人票の「在宅対応」「夜間・休日対応」の欄をまず確認してください。書いていない求人も多いので、応募先の薬局名を地方厚生局の届出受理名簿で照らすか、見学で当番の有無を聞くのが確実です。転職サービスを使うなら、「在宅なし」を最初の条件として伝えておきましょう。
- オンコールなしの職場に移ると、年収は下がりますか?
夜間の手当が付かない分、額面が下がることはあります。ただ手当の額は職場ごとに違うので、下がるとは決まっていません。「オンコールなし」と「年収の下限」を両方の条件にして求人を比べると、どこまで譲れるかが見えやすくなります。
薬剤師のオンコールがきついときのまとめ|我慢より先に回数と体制を見る
薬剤師のオンコールがきついのは、鳴らない夜も待機が続き、翌日も通常勤務があるからです。疲れは気のせいでも甘えでもありません。
- 鳴る回数より待機の長さがきつい
- 在宅の夜間連絡は2026年に要件化
- 協力薬局や輪番で分ける形もある
- 手当は払い方の設計で見る
- 対応した日時は自分で記録
- 続けるなら回数→免除→手当
- 離れるなら在宅なしの職場へ
オンコールを減らすのは逃げではなく、翌日の患者さんの安全を守る判断でもあります。寝不足のまま監査台に立つ怖さは、当番をしている人ならよく分かると思います。
交渉で変わる職場なら、この記事の順番で話してみてください。人数や体制の問題で変わらない職場なら、オンコールなしの条件で求人を絞れる転職エージェントの比較から始めると遠回りしません。






