在宅薬剤師がきついと言われる場面は、だいたい次の7つに分かれます。移動、一包化や残薬の手間、夜間・休日の電話、急変や看取り、多職種とのやり取り、店舗との板挟み、そして書類です。
このうちどれが重いかは、本人の性格より職場の決まりで大きく変わります。訪問中に店に何人残るか、夜の電話を何人で回すか、1人に何件持たせるか。ここが薄い職場ほど、同じ在宅でもきつさがはっきり増えます。
書いているのは、在宅対応をしている調剤薬局で管理薬剤師をしているたろうです。店のシフトを組む側として、在宅が店の人数にどう響くかを見てきました。場面ごとのきつさを厚生労働省の資料で確かめたうえで、今の職場で相談できることと、職場を変えるときの見方まで書きます。
- 調剤4年→DS2年→調剤4年
- いまは管理薬剤師(34歳)
- 転職を3回経験し、うち2回は失敗。
- 3回目で年収480万→610万にアップ
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「同じ失敗をしてほしくない」という思いで、薬剤師のリアルを本音で書いてます。
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在宅薬剤師がきついと言われる7つの場面
ひとくちに「在宅がきつい」と言っても、原因はばらばらです。自分がどれに当たるかで、取るべき手が変わります。
①移動と段取りで一日が削られる
在宅は、訪問先を回る移動そのものが仕事の一部です。個人宅を1軒ずつ回るのか、施設で複数の方をまとめて見るのかで、1日の動き方はまったく違います。
訪問の時間は読みにくいものです。残薬の確認に時間がかかったり、家族から別の相談を受けたりすると、次の訪問も店に戻る時間も後ろへずれます。体力より、予定が崩れたときに組み直す負担のほうが重く感じやすい部分です。
訪問先の距離には制度上の上限もあり、薬局から16kmを超える患家は原則として在宅の点数を算定できません。訪問できる範囲や1人あたりの回数の決まりは、訪問薬剤師になる条件と在宅に強い薬局の見分け方にまとめています。
②一包化・残薬調整の手間
在宅の患者さんは、薬の種類が多い方が少なくありません。飲み忘れを防ぐための一包化、服用時点ごとのセット、飲みにくい薬の剤形の相談など、外来より調剤の前後の手間が増えます。
訪問先で残薬が見つかれば、数を数えて医師に報告し、次の処方を調整してもらう流れになります。訪問の時間だけでなく、店に戻ってからの作業が積み上がるのがこの場面のきつさです。
③夜間・休日の電話と臨時対応
在宅をしている薬局では、開局時間外の連絡に誰かが対応します。厚生労働省の検討会資料に載っている調査では、在宅患者の夜間・休日対応として「電話で相談に応じる」薬局が79.3%、「訪問して対応する」薬局が28.3%でした(在宅訪問を行う薬局1,423施設、令和4年度診療報酬改定の結果検証調査。厚生労働省 検討会資料)。
つまり夜間の中心は電話で、出動は一部です。ただ鳴らない夜も電話を持って待つこと自体が負担になります。2026年6月の改定では、在宅の点数の要件に、夜間・休日の連絡先や緊急時の注意事項を患者さんに文書で渡すことが加わりました(厚生労働省 令和8年度改定の概要【調剤】)。在宅を続ける薬局で、夜の電話がなくなることはまず考えにくいです。
電話が月に何回くらい鳴るのか、手当や当番の減らし方は薬剤師のオンコールがきつい理由と当番の減らし方に分けて書いています。
④急変・看取りの精神的な重さ
在宅の患者さんには、終末期の方もいます。在宅訪問を行う薬局の98.9%が麻薬小売業の免許を持ち、そのうち65.1%で半年間に医療用麻薬の調剤実績がありました(令和4年度の同調査。中医協 総-3 令和5年11月8日)。痛みの緩和に関わる薬を届けることは、在宅では珍しい仕事ではありません。
先に挙げた検討会資料には、在宅での看取りに多く関わる薬局への調査(全国薬剤師・在宅療養支援連絡会、2023年)も載っていて、深夜・早朝に緊急の処方へ対応して訪問した例が示されています。何度も顔を合わせた方の状態が落ちていくのを見る重さは、数字に出ないきつさです。
ここは慣れで片付く話ではないと思います。平気かどうかは、在宅の向き不向きをかなり左右します。
⑤医師・ケアマネとの連携
在宅では、医師、訪問看護師、ケアマネジャー、施設の職員とのやり取りが増えます。処方の変更を提案する、服薬状況を伝える、訪問の日程を合わせる。どれも相手の都合に左右されます。
介護保険の患者さんでは、ケアマネジャーへの情報提供も仕事に入ります。相手ごとに伝え方を変える気疲れは、店のカウンターの中にいるときより大きくなりやすい部分です。
⑥店舗業務との板挟み
薬剤師が訪問に出ている間、店の薬剤師は1人減ります。シフトを組む側から見ると、在宅の日は店の人数から訪問に出る人を引いて考える必要があります。
ギリギリの人数で回している店だと、訪問から戻ったら処方箋がたまっている、ということが起こります。訪問する人は戻りを急ぎ、店に残った人は外来を抱える。どちらもきつくなる形です。
逆に言えば、訪問中も店に十分な人数が残る職場なら、同じ件数でも体感はかなり違います。在宅のきつさの何割かは、在宅そのものより人手の薄さから来ていると考えています。
⑦報告書と記録が多い
訪問のあとは、薬歴に加えて、医師への報告書や訪問の計画書などの書類があります。訪問が続いた日は、書類が夕方以降に回りがちです。
書式が決まっているか、誰が最初に目を通してくれるかで、慣れるまでの負担は変わります。未経験で在宅に入る人ほど、ここを先に確かめておくと楽になります。
在宅薬剤師のきつさは本人より職場の体制で変わる
7つの場面を並べると、本人の向き不向きで決まるのは④の看取りと、①の運転くらいです。残りの多くは、職場の決まり方で重さが変わります。
- 1人あたりの訪問件数
- 訪問中に店に残る人数
- 夜の電話を持つ人数
- 書類の書式と確認者
制度上、在宅の点数は薬剤師1人につき週40回までしか算定できません。件数がこの上限に近い職場と、月に数件の職場とでは、同じ「在宅あり」でもまったく別の仕事です。求人票の「在宅あり」だけで比べないほうがいい理由はここにあります。
応募先の在宅の規模は、地方厚生局が公開している届出の名簿で「在薬総1・2」の有無を見るとおおよそ分かります。見方は訪問薬剤師の条件の記事に手順つきで書いています。
在宅薬剤師のきつさと引き換えのやりがい
在宅には、店のカウンター越しでは見えないものがあります。患者さんがどこに薬を置き、どう飲んでいるかを生活の場で確かめられることです。
飲めていない理由が分かれば、剤形の変更や服用回数の見直しを医師に提案できます。外来では推測するしかないことを、実際に見て判断できる。ここに面白さを感じる人は、きつさがあっても在宅を続けやすいと思います。
在宅薬剤師が向いている人・向いていない人
7つの場面のどれが自分にとって重いかで、向き不向きはだいたい見えます。
在宅が向いている人
- 予定の崩れを流せる
- 運転や移動が苦にならない
- 多職種と話すのが平気
- 生活の場に踏み込める
調剤室にこもるより外に出たい人にも合います。書類が多い点さえ受け入れられれば、仕事の幅は広がります。
在宅がきつい・向かない人
- 予定変更で強く消耗する
- 感情を持ち帰りやすい
- 運転がどうしても苦手
- 夜の電話で眠れない
これは弱さではなく相性の問題です。当てはまる項目が④の看取りなら在宅の少ない職場、⑥の板挟みなら人数の多い職場、というように、何がきついかで次の手が変わります。
職場の人間関係がしんどさの中心なら、人間関係がつらい薬剤師向けの記事のほうが近いかもしれません。
在宅薬剤師がきついときに今の職場でできること
辞める前に、今の職場で変えられるかを一度確かめる価値はあります。管理薬剤師の立場から言うと、次の3つは相談されれば検討できる話です。
- 担当件数の配分
- 訪問日の店の人数
- 夜間当番の回数
伝えるときは「きつい」だけでなく、先月の訪問件数や、戻ったときに残っていた処方箋の量など、数で話すと通りやすくなります。店の人数や件数を決める権限が本部にある会社でも、管理薬剤師から本部に上げる材料になります。
夜間当番の交渉の順番は、オンコールがきついときの記事で詳しく書いています。
在宅薬剤師がきつくて職場を変えるときの選び方
相談しても人数や件数が変わらないなら、職場を変えるのも選択肢です。そのときは「在宅があるか・ないか」だけでなく、何がきつかったかに合わせて条件を決めます。
- 看取りが重い→在宅少なめ
- 板挟み→店の人数が多い
- 夜の電話→当番の少ない所
- 移動→訪問範囲が狭い所
在宅の中身は求人票ではほとんど読めません。僕は2回目の転職で職場見学を自分から断り、入った薬局を2ヶ月で辞めています。3回目は見学を必ず入れました。在宅のある薬局なら、見学で「先月の訪問件数」「訪問中の店の人数」「夜の電話は何人で回すか」を聞くと、体制がかなり見えます。
求人を集めるところから始めるなら、転職サービスの検索条件を使うと早いです。ファゲットは中小の調剤薬局や病院の求人を扱う薬剤師向けの転職サービスで、求人検索に「在宅業務あり」などのこだわり条件があります。在宅なしや夜間当番の条件を担当者に伝え、候補の薬局の体制を確認してもらう使い方ができます。
いきなり正社員で決めるのが不安なら、MC-ファーマネットには紹介予定派遣や派遣という働き方があります。一定期間働いてから、在宅の件数や当番を実際に見て判断できます。ほかのサービスとの違いは薬剤師転職エージェントのおすすめランキングで比べています。
在宅薬剤師のきつさに関するよくある質問
- 在宅薬剤師は未経験でもできますか?
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できます。訪問する薬剤師個人に必須の資格や研修はありません。入る前に、先輩の同行が何回あるか、一人で回るのはいつからかを確認しておくと安心です。
- 在宅は店舗勤務よりきついですか?
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きつさの種類が違います。移動・夜間の電話・看取りが加わる一方、店の中だけでは見えない服薬の実態を見られます。どちらが楽かは、7つの場面のどれが自分に重いかで変わります。
- 在宅対応で残業は増えますか?
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職場の体制しだいです。訪問中の店の人数が少ないと、戻ってからの調剤や書類で残業が増えがちです。見学で訪問日の店の人数を聞いておくと見当がつきます。
- 夜間や休日に呼び出されることはありますか?
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在宅をしている薬局では、夜間・休日の連絡に誰かが対応します。厚生労働省の資料では電話対応が約8割、訪問しての対応は約3割でした。当番の回数と手当は面接で確認してください。
- 看取りに関わるのが怖いです。
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怖いと感じるのは自然なことだと思います。どうしても重いなら、在宅の件数が少ない職場や、在宅のない職場を選ぶ方法があります。
- 運転が得意でなくても大丈夫ですか?
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訪問先が近い都市部や施設中心の職場なら負担は小さめです。求人票で移動手段と訪問範囲を確認しておくと安心です。
- 在宅をすると年収は上がりますか?
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在宅だから一律に上がるわけではありません。在宅手当やオンコール手当があるかで変わります。年収全体の考え方は10年目の年収の記事が参考になります。
- きついと感じたら辞めてもいいですか?
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合わない働き方を無理に続ける必要はないと思います。ただ、在宅そのものが合わないのか、今の職場の体制がきついだけなのかを先に切り分けると、次の職場選びを間違えにくくなります。
在宅薬剤師のきつさのまとめ|場面と体制で分けて考える
在宅薬剤師のきつさは、移動・一包化や残薬・夜間の電話・看取り・多職種連携・店舗との板挟み・書類の7つに分かれます。看取りや運転のように本人の相性で決まるものもありますが、多くは件数・店の人数・夜間当番の決まりで重さが変わります。
- きつさは7つの場面
- 夜間は電話対応が中心
- 人手の薄さが一番効く
- まず件数と当番を相談
- 変えるなら体制で選ぶ
- 見学で件数と人数を聞く
何がきついのかを一つ決めてから、今の職場で相談するか、条件を決めて職場を変えるかを選んでください。
