薬剤師の転職は、今も売り手市場です。ただ人手が足りないのは病院と地方に偏っていて、どこでも好条件で決まるわけではありません。
失敗しやすいのは「年収の数字だけで選ぶ」「焦って職場を確かめない」の2つです。僕はこの両方をやりました。
管理薬剤師のたろうです。薬剤師歴10年目・34歳で、転職は3回、そのうち2回は失敗しています。今は求人を出す側として、応募者の一次面接もしています。
この記事は、薬剤師の転職の全体像をまとめた入口です。市場、業態別の年収と働き方、失敗パターン、うまくいく条件、進め方の要点の順に書きます。細かい段取りや個別の悩みは、それぞれ詳しく書いた記事へ案内します。
どのエージェントに登録するかだけ先に知りたい人は、薬剤師転職エージェントのおすすめランキングを先に見てもらうのが早いです。
- 調剤4年→DS2年→調剤4年
- いまは管理薬剤師(34歳)
- 転職を3回経験し、うち2回は失敗。
- 3回目で年収480万→610万にアップ
- 人気転職エージェント5社を全部利用
「同じ失敗をしてほしくない」という思いで、薬剤師のリアルを本音で書いてます。
詳しい筆者の経歴はこちら
薬剤師の転職市場は今どうなっているか
まだ薬剤師が選べる側の市場です。ただし「どこでも足りない」わけではなく、足りない場所と余っている場所がはっきり分かれています。
求人倍率は3倍台が続く
厚労省の職業安定業務統計では、薬剤師は「医師、歯科医師、獣医師、薬剤師」とひとまとめの区分で集計されています。
この統計をマイナビ薬剤師がまとめた数字では、パートを除く有効求人倍率は2023年3月から3倍台で、2025年3月は3.24倍でした。
医師なども含む区分なので、薬剤師だけの数字ではない点は割り引いて見てください。それでも、求人が少なくて動けない状況ではありません。
不足は病院と地方に偏る
厚労省が2023年に示した薬剤師偏在指標は、1.0を下回ると「足りていない」という目安です。全国の値は、病院薬剤師が0.80、薬局薬剤師が1.08でした。
病院薬剤師は、すべての都道府県で1.0を下回っています。薬局薬剤師は東京1.42・神奈川1.25など都市部で高く、青森0.88・福井0.73のように地方で低い傾向です。
都市部の薬局は応募が集まりやすく、条件で差がつきにくい。地方や病院は人を探している。数字からはそう読めます。引っ越しができる人や病院に興味がある人は、選べる幅が広がります。
地方で年収を考えるときの注意点は地方・田舎の薬剤師の年収の記事にまとめています。
求人の中身は店舗ごとに違う
僕は今、管理薬剤師として欠員募集に関わる側にいます。うちの会社では求人原稿を作るのは本部で、店から上げるのは「欠員の理由」「希望する勤務時間帯」「常勤かパートか」の3つだけです。
求人票の文面は会社単位でも、実際の忙しさや人間関係は店舗単位で決まります。市場が売り手でも、入る店を見て選ばないと外れを引く。これが求人を出す側に回って分かったことです。
薬剤師の転職先は4つ|業態別の年収と働き方
転職先は大きく、調剤薬局・ドラッグストア・病院・企業の4つです。年収は、厚労省の調査で数字が出ている業態と、公的な統計が見当たらない業態に分けて書きます。
| 業態 | 年収の目安 | 働き方 |
|---|---|---|
| 調剤薬局 | 約479万円 管理薬剤師 約725万円 | 門前の診療科で 忙しさが変わる |
| ドラッグ ストア | 公的統計 なし | OTC・レジ・ 品出しもある |
| 病院 | 約581万円 | 当直・夜勤の 有無は病院次第 |
| 企業 | 公的統計 なし | 求人が少なく 職種で差 |
表の数字は、2025年に行われた第25回医療経済実態調査のうち、直近の事業年度の値です。給料には時間外手当なども含まれます。平均なので、転職時の提示額とは別物として見てください。
調剤薬局は役職で差が出る
保険薬局の常勤薬剤師は、給料約425万円+賞与約55万円で合計約479万円。管理薬剤師は約725万円で、差は約246万円あります。
ただ、この差には経験年数や店舗の規模も混ざっています。僕の会社の管理薬剤師手当は月3〜5万円なので、差の全部が役職の手当というわけではありません。
参考までに、僕が新卒で入った地方の内科門前の調剤薬局は、4年目で年収420万円、昇給は年5千〜1万円でした。統計の平均より低めの一例です。
管理薬剤師の仕事の中身は管理薬剤師の仕事内容と1日の流れ、調剤薬局のしんどさは調剤薬局がきついと感じるときの記事で書いています。
ドラッグストアは中身を確認
ドラッグストアの薬剤師に絞った公的な年収統計は、見つけられませんでした。僕の例では、調剤薬局の420万円からドラッグストア併設の調剤に移って550万円になりました。
その代わり、調剤に加えてOTCの接客・レジ・品出しがあり、週の半分は遅番で、月の残業は45時間でした。年収の上がり方だけでなく、何をどれだけやるのかを求人と見学で確かめてください。
両方で働いた比較は調剤薬局とドラッグストアの将来性、戻るときの注意はドラッグストアから調剤薬局に戻る転職にまとめています。
病院は賞与が厚め
一般病院の常勤薬剤師は、給料約465万円+賞与約116万円で合計約581万円。開設者別では、国立が約603万円、公立が約627万円、医療法人が約540万円でした。
「病院は給料が安い」とよく言われますが、この調査では薬局の一般の薬剤師より高く出ています。ただ勤続年数の違いも混ざった平均なので、転職1年目から同じ額になるとは限りません。
僕は病院で働いたことがありません。当直や夜勤の有無、病棟業務の範囲は病院ごとに違うので、求人と面接で確認してください。病院薬剤師を辞めたい人向けの記事では、病院から外に出る側の選択肢を書いています。
企業・派遣は条件で選ぶ
製薬会社のMR、治験のCRC・CRA、薬事などの企業求人は、薬局や病院に比べて数が少なく、職種ごとに求められる経験が違います。詳しくはMRへの転職、CRO・治験コーディネーターの仕事、異業種転職で後悔しないための記事へ。
正社員にこだわらないなら、派遣やパートで時給を上げる働き方もあります。派遣薬剤師のメリット・デメリットとパートの時給相場も参考にしてください。
年代別・男女別まで含めた年収は薬剤師の年収完全ガイドで掘り下げています。
薬剤師の転職でよくある失敗パターン3つ
転職の失敗は、職場を選ぶ基準がずれているところから起きます。僕が実際にやった2つと、求人を出す側になって気づいた1つを書きます。
年収の数字だけで選ぶ
28歳のとき、新卒の調剤薬局から、年収550万円のドラッグストア併設調剤に移りました。420万円からの大幅アップです。
ただ、閉店後の品出しで帰りは夜10時、月の残業は45時間。お金は増えたのに、使う時間も体力もなくなりました。暗い部屋で「俺、何のために年収上げたんだっけ」と思ったのを覚えています。
その金額が何時間の労働と引き換えなのかまで見ないと、同じことが起きます。
焦って職場を確かめない
30歳のとき、ドラッグストアを1日でも早く抜けたくて、年収を480万円に下げてでも別の調剤薬局へ移りました。
入ってみると、挨拶が返らない、質問すると「自分で考えて」、定時で帰ると無言の圧。駐車場で車を停めたまま動けない朝が続き、入社2ヶ月で退職しました。
長いあいだ「求人票に騙された」と思っていました。でも本当は、職場見学の提案を「日程が合わない」と自分で断っていたんです。騙されたのではなく、確かめなかった。これが2回目の失敗の正体です。
求人票の空白を聞かない
あとで読み返すと、その薬局の求人票に嘘は1行もありませんでした。「アットホームな職場です」は主観の言葉で、給与や休日の記載は実際と合っていました。
足りなかったのは、書かれていないことです。
- 常勤の薬剤師は何人か
- 欠員補充か、増員か
- 前任者はいつ辞めたか
今は求人を出す側なので分かりますが、原稿は本部が作り、店の忙しさまでは書かれません。僕も上がってきた原稿を見て「うちの残業はこんなに少なくない」と思ったことがあります。店に書き換える権限はありません。
書かれていない部分は、面接か見学で聞くしかありません。見落としやすい行は求人票の「アットホーム」の記事で、ほかの失敗例は薬剤師転職の失敗と回避法と薬剤師の転職失敗談で詳しく書いています。
薬剤師の転職がうまくいく人の3つの条件
3回目の転職は、結婚して家庭を持った頃でした。「次こそ失敗できない」と、選び方そのものを変えました。
結果、提示560万円を交渉で初年度610万円にしてもらい、2年目に管理薬剤師になりました。2回目の480万円から見ると130万円のアップです。変えたのは次の3つで、担当の良さもありましたが、核心は自分の基準を変えたことだと思っています。
守りたい条件を1つ決める
年収・残業・人間関係・通勤。全部を満たす職場はまずないので、いちばん守りたい条件を1つだけ決めます。僕は3回目で、年収より人間関係と職場の雰囲気を最優先にしました。
1位が決まっていると、提示額の高い求人に揺れても「でも1位は満たしていない」と判断できます。
応募前に職場を見る
雰囲気はその場に立たないと分かりません。3回目は応募前に必ず見学を入れ、スタッフの表情や声のかけ合いを自分の目で見てから決めました。
見る場所と聞くことは職場見学チェックリストと見学で質問すること5つにまとめています。
過去の失敗も担当に話す
担当には、過去2回の失敗を恥を忍んで全部話しました。隠したままだと、担当は条件の良さで求人を選ぶしかありません。何で失敗したかを伝えることが、同じ失敗を避けるための材料になります。
短期離職を面接でどう話すかは短期離職を突っ込まれたときの答え方、職歴の書き方は2ヶ月で退職したときの職歴の記事へ。
僕の経歴をもっと詳しく知りたい方は運営者の自己紹介ページもどうぞ。
薬剤師の転職の進め方|流れ・期間・費用の要点
流れは次の5段階です。
- 守りたい条件を1つ決める
- 業態と相場を調べる
- エージェントを2〜3社比べる
- 見学・面接で中を確かめる
- 条件を比べて返事・退職
入社したい月から逆算した時期別の段取り、退職交渉、保険薬剤師登録などの手続きは、薬剤師の転職の流れと準備にまとめています。ここでは、判断を間違えやすい要点だけにします。
エージェントは2〜3社で比べる
1社だけだと、紹介された求人や条件が妥当か比べられません。僕は転職で5社使いましたが、最初から全部はいりません。2〜3社で十分です。見るのは次の3つです。
- 担当者と話しやすいか
- 希望を外さない求人か
- 悪い情報も話してくれるか
希望と違う求人ばかり届く、良いことしか言わない、返事を急かす。こういう担当なら、担当者の変更を申し出るか、別の会社に絞ってください。複数登録の回し方は複数登録の記事に書いています。
今申し込めるところでは、全国対応で地方や中堅薬局の求人も扱うファゲット、地方の求人や派遣も見たい人向けのMC-ファーマネットがあります。どちらも僕は使っていないので、調べた範囲での紹介です。
管理薬剤師たろう僕が転職で使った5社の本音と、今申し込める3社の違いはランキングにまとめています↓
参考記事:薬剤師転職エージェントおすすめ3選|5社使った管理薬剤師のガチレビュー!


期間は3〜4ヶ月を見ておく
活動を始めてから内定までは1〜2ヶ月が目安です。在職中で、退職の申し出から最終出勤、入社の手続きまで含めると、3〜4ヶ月あると余裕を持って進められます。見学を飛ばさずに済むのも、この余裕があるからです。
法律上は、期間の定めのない雇用なら、退職を申し入れてから2週間で雇用が終わります(民法627条)。ただ就業規則で「1ヶ月前まで」などと決めている職場もありますし、引き継ぎもあります。
期限を切りすぎると、僕の2回目のように確かめる工程を削りがちです。時期別の進め方は入社日から逆算した段取り、退職の切り出し方は退職の伝え方、管理薬剤師が辞めるときは管理薬剤師の変更届の段取りも確認してください。
求職者の費用はかからない
有料の職業紹介事業者は、原則として求職者から手数料を取れません(職業安定法32条の3)。エージェントの費用は採用する側が払う仕組みなので、相談だけして「今は動かない」と決めてもお金はかかりません。
かかるとすれば、見学や面接に行く交通費くらいです。「転職お祝い金」をうたうサービスについてはお祝い金の記事で経緯を書いています。
内定後は条件を並べて決める
内定が出たら、給与だけでなく、残業の実態・休日・通勤・管理薬剤師を任される時期まで並べて比べます。年収は交渉の余地があることもあり、僕は提示560万円から610万円になりました。やり方は年収交渉の記事に書いています。
返事を急かされても、労働条件が書面で示されてから決めるのが安全です。
内定が出て「受けるか断るか」で迷っている人向けに、給与と働き方を比べて返事を決めるまでの手順をnoteにまとめました。無料部分で内容と対象者を確認でき、本編は有料です。薬剤師の転職、内定に迷ったら|給与・働き方を比べて、返事を決める実践ガイド
薬剤師は何年目で転職すべき?年次別の考え方
年次そのものより、転職の目的と準備ができているかのほうが大事です。そのうえで、年次ごとの考え方の目安を書きます。時期の選び方は転職タイミングの記事でも詳しく扱っています。
1〜3年目:学べる環境か
調剤の正確さ、患者対応、薬歴の書き方など、土台になるスキルが身につく時期です。今の職場で学べているかを基準に考えるといいと思います。
とはいえ、パワハラや体を壊すほどの環境なら、年数を待つ必要はありません。「3年は続けろ」は、根拠の薄い目安だと僕は思っています。
4〜9年目:経験を条件に変える
一通りの業務を一人で回せるようになり、即戦力として見てもらいやすい時期です。僕が動いたのも、この時期の28歳と30歳でした。
在宅、かかりつけ、後輩の指導など、何をやってきたかを説明できると、面接や条件の話し合いで材料になります。
10年目〜:働き方を選び直す
僕は今ちょうど10年目です。この年次になると、年収より「どう働きたいか」を選び直す人が増えます。管理薬剤師として責任ある立場を目指す道もあれば、あえて役職を外して時間にゆとりを持つ道もあります。
年次別の年収は10年目の年収を掘り下げたページ、30代後半・40代の動き方は35歳の転職の記事と40代の転職の記事にまとめています。
「もう薬剤師として働きたくない」とまで思い詰めている方は働きたくないと感じたときの記事を、「もっとのんびり働きたい」方はのんびり働ける職場の探し方を読んでみてください。
薬剤師の転職でよくある質問
- 薬剤師の転職は何から始めればいいですか?
いきなり登録するより先に、今の職場の何が嫌で、次に何をいちばん守りたいかを書き出すのがおすすめです。1位の条件が決まると、求人を見たときに迷いにくくなります。
- 在職中と退職後、どちらで動くのがいいですか?
基本は在職中をおすすめします。収入が途切れないので、焦らず見学や比較ができるからです。僕の2回目の失敗は「早く辞めたい」焦りが原因でした。
- エージェントは何社登録すべきですか?
2〜3社が目安です。僕は転職で5社使いましたが、最初から全部はいりません。まず2社で始めて、合わなければ入れ替える形で十分です。
- エージェントを使うとお金はかかりますか?
求職者側は無料です。職業安定法で、有料の職業紹介事業者は原則として求職者から手数料を取れないと決まっています。相談だけで終えてもお金はかかりません。
- 短期離職があると不利になりますか?
面接で理由を聞かれることは多いと思います。僕にも2ヶ月で辞めた経歴があります。なぜ辞めたかと、次は何を確かめて選ぶかをセットで話せるように準備しておくと落ち着いて答えられます。
- 転職すると年収は上がりますか?
上がる人も下がる人もいます。僕は最終的に130万円上がりましたが、2回目は激務から抜けるために下げました。年収だけを目的にしないほうが、結果的に長く働ける職場を選びやすいと思います。
- 職場見学は本当に必要ですか?
必要だと思っています。求人票では分からない空気を、自分の目で確かめられる機会だからです。見学を受け入れてもらえない職場なら、それ自体が判断材料になります。
- 担当者に急かされたらどうすればいいですか?
担当の変更を申し出てかまいません。返事の期限を自分から伝えるのも有効です。断り方はエージェントが怖いと感じたときの記事に書いています。
- 転職回数が多いと不利ですか?
回数そのものより、それぞれの理由を説明できるかが見られると思います。僕の感覚は転職は何回までならセーフかの記事に書きました。
薬剤師の転職で次に読む記事|悩み別の入口
ここまでで全体像はつかめたと思います。いま詰まっている段階に合わせて、詳しく書いた記事を選んでください。
転職サービスの評判・口コミ
気になる会社があるなら、評判の記事で強みと弱みを見てから登録すると、担当とのやり取りで迷いにくくなります。
派遣や単発で時給を上げる働き方も気になるなら、登録して求人を見たファル・メイトの評判レビューもどうぞ。
薬剤師の転職で大事なことのまとめ
薬剤師の転職市場は売り手ですが、足りないのは病院と地方に偏っていて、職場の中身は店舗ごとに違います。年収は業態と役職で差が出ます。
失敗の多くは、年収の数字だけで選ぶこと、焦って確かめないこと、求人票に書かれていない部分を聞かないことから起きます。僕は2回やって、3回目でようやく選び方を変えました。
- 売り手市場でも偏りがある
- 年収は業態と役職で差が出る
- 守りたい条件を1つ決める
- 応募前に職場を見る
- 求人票の空白を聞く
- エージェントは2〜3社で比べる
今すぐ辞める必要はありません。情報を集めて比べてから決めても遅くないですし、相談だけして「今は動かない」と決めるのも立派な選択です。
どこから登録すればいいか迷ったら、順位の理由まで書いたランキングを見てみてください。





















