薬剤師の転職で最初にやることは、エージェント登録ではありません。「何月に新しい職場で働き始めたいか」を仮に決めて、そこから逆算することです。
在職中に動くなら、入社したい月の3〜4か月前に始めると無理がありません。転職活動そのものは1〜2か月で終わる人もいますが、退職の申し出から最終出勤日までにも1〜2か月かかるからです。
この記事では、情報収集から内定、退職の申し出、入社前の手続きまでを「いつ・何をするか」の順に並べました。僕は管理薬剤師として欠員が出たときの一次面接も担当しているので、送り出す側・迎える側の段取りもあわせて書いています。
転職そのものをするか迷っている段階なら、先に薬剤師の転職の全体像と、僕が2回失敗した話を読んでもらうほうが合っていると思います。この記事は「動くと決めた人の段取り表」です。
- 調剤4年→DS2年→調剤4年
- いまは管理薬剤師(34歳)
- 転職を3回経験し、うち2回は失敗。
- 3回目で年収480万→610万にアップ
- 人気転職エージェント5社を全部利用
「同じ失敗をしてほしくない」という思いで、薬剤師のリアルを本音で書いてます。
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薬剤師の転職は何から始める?最初の1週間でやること


求人を眺め始める前に、手元で確認できることが3つあります。どれも今の職場に知られずにできて、あとの段取りを全部決める材料になります。
入社したい月を仮に決める
「4月から新しい職場」「夏のボーナスをもらってから」のように、まず仮の入社月を置きます。ゴールがないと、求人サイトを開いては閉じる状態がずるずる続きがちです。
ボーナスをもらってから辞めたい人は、支給日に在籍していることが支給の条件になっていないかも見ておきます。書いてあるのは就業規則や賃金規程です。時期ごとの向き不向きは薬剤師の転職タイミングの記事で詳しく書いています。
就業規則の退職ルールを見る
次に、今の職場の就業規則で「退職は何か月前までに申し出るか」を確認します。1か月前、2か月前など、会社によって書き方が違います。
民法では、期間の定めのない雇用は申し入れから2週間で終わると定められています(民法第627条)。ただ、引き継ぎや有給消化を考えると、実際は就業規則の期限に合わせて相談する人がほとんどです。この期限が、逆算のいちばん大事な起点になります。
あわせて、有給の残日数も給与明細や勤怠システムで確かめておきます。最終出勤日と退職日をいつにするかは、この日数で決まります。
不満と条件3つをメモする
最後に、今の不満を具体的に書き出し、「次の職場で絶対に外せない条件」を3つに絞ります。「人間関係がきつい」より「質問すると『自分で考えて』と返される」のほうが、面談でも見学でも確かめやすくなります。
僕は1回目の転職で、年収550万円という数字だけを条件にしてドラッグストア併設の調剤に移りました。結果は月45時間の残業で、何のために年収を上げたのか分からなくなりました。条件が1つだけだと、その1つが満たされた時点で他を見なくなります。業態ごとの違いから条件を考えたい人は薬剤師の職場の選び方も参考にしてください。
- 仮の入社月を決める
- 退職の申し出期限を確認
- 有給の残日数を確認
- 外せない条件を3つに絞る
「そもそも薬剤師を続けるか」で迷っているなら、薬剤師を辞めたい・働きたくないときの記事が先かもしれません。
薬剤師の転職の流れ|入社日から逆算した時期別スケジュール


在職中に進める場合の目安を、入社日から逆算して並べるとこうなります。退職の申し出期限が1か月の職場なら、全体を少し後ろにずらせます。
| 時期の目安 | やること |
|---|---|
| 4か月前 | 条件整理・エージェント登録 |
| 3か月前 | 書類作成・職場見学 |
| 2〜3か月前 | 応募・面接・内定 |
| 内定後すぐ | 条件確認・返事 |
| 1.5〜2か月前 | 上司へ退職の申し出 |
| 最後の1か月 | 引き継ぎ・有給消化 |
| 入社2週間前 | 書類・保険薬剤師登録 |
ポイントは、内定をもらうまで今の職場には何も言わないことです。先に辞めると収入が止まり、焦って決める原因になります。
4か月前:情報収集と登録
条件が3つ決まったら、転職エージェントに2〜3社登録して面談を受けます。この時点では「すぐ転職するか分からない、まず相場を知りたい」と伝えても問題ありません。
複数にするのは、紹介される求人と担当者の相性が会社ごとに違うからです。1社だけだと、その担当者の提案がすべてになります。理由は転職エージェントを複数登録する効果にまとめています。
どこに登録するか迷ったら、希望に合わせて選ぶのが近道です。当サイトで口コミや公式情報を調べたうえでの目安は次のとおりです。
- 都市部の調剤・病院:ファゲット
- 地方・派遣も視野:MC-ファーマネット
- 派遣も転職も比べたい:アプロ・ドットコム
この3社は僕が転職で使ったところではありません。向き不向きの詳しい理由はファゲットの評判とMC-ファーマネットの評判に書いています。全体を比べたい人は薬剤師の転職エージェントおすすめ比較からどうぞ。
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面談では、過去の転職で失敗したことや、辞めたい本当の理由も話しておくと提案がずれにくくなります。3回目の転職で僕が変えたことの1つです。担当者が合わないと感じたら、担当者を変える方法もあります。エージェントを使わずに探したい人はエージェントを使わない選択肢も読んでみてください。
3か月前:書類と職場見学
気になる求人が出てきたら、履歴書と職務経歴書を用意します。職務経歴書には、1日の処方箋枚数、主な診療科、在宅の有無、管理薬剤師経験などを書くと伝わりやすいです。書き方は履歴書の書き方と職務経歴書の書き方にまとめています。
そして、応募を決める前に職場見学を入れます。求人票に書かれていないこと、たとえば常勤薬剤師が何人いるか、今回の募集が欠員補充か増員かは、見学や面談で聞かないと分かりません。
求人を出す側の話をすると、僕の職場では求人原稿を作るのは本部です。店から上げるのは欠員の理由、希望する勤務時間帯、常勤かパートか、くらいです。求人票は現場の人が書いた職場紹介ではないと思って読むほうが安全です。見るポイントは求人票の「アットホーム」の読み方と職場見学のチェックリストにあります。
2か月前:面接と内定
見学で「ここなら働けそう」と思えたところに応募し、面接を受けます。聞かれることは転職理由、志望動機、今の業務内容、希望条件、いつから働けるか、あたりが中心です。
「いつから働けるか」には、最初に確認した退職の申し出期限と有給の日数から答えます。ここが具体的だと、受け入れる側もシフトや研修の予定を組みやすくなります。一次面接をする立場として、僕もここはかなり気にして聞いています。
質問への答え方は面接で聞かれる質問と答え方、最後の逆質問は逆質問の例を参考にしてください。転職理由の言い換えは転職理由の例文にまとめています。
内定後:条件を比べて返事
内定が出たら、返事をする前に労働条件を書面で確認します。給与の内訳、賞与、残業代の扱い、休日、勤務地や異動の範囲などです。2024年4月からは、就業場所と業務の「変更の範囲」も書面で示すことになりました(厚生労働省:労働条件明示のルール改正)。
年収の交渉をするなら、承諾の返事をする前です。僕は3回目の転職で、提示された560万円を交渉で初年度610万円にしてもらいました。やり方は年収交渉の手順に書いています。
内定が複数ある、今の職場と迷っている、という人は、最初に決めた「外せない条件3つ」に照らして比べます。比べ方と返事の決め方をまとめた有料のガイドもnoteに置いています。
→ 薬剤師の転職、内定に迷ったら|給与・働き方を比べて、返事を決める実践ガイド(本編は有料。無料部分で内容と対象の人を確認できます)
薬剤師が在職中に転職活動を進める段取り


調剤薬局もドラッグストアも、営業時間中は電話に出られない働き方がほとんどです。在職中の転職活動は、連絡と日程の決め方で負担がかなり変わります。
連絡の時間と手段を決める
エージェントに登録したら、最初の面談で「平日は昼休みと19時以降のみ」「電話よりLINEかメールで」のように伝えておきます。言っておかないと、投薬中にスマホが何度も鳴ることになります。
見学と面接は休みに入れる
職場見学と面接は、休みの日か半休に寄せます。シフト制の職場なら、希望休を出す締め日から逆算して、見学候補日を先にエージェントへ伝えておくとスムーズです。
ここは僕の反省でもあります。2回目の転職のとき、職場見学を提案されたのに「日程が合わない」と自分から断りました。早く今の職場を抜けたかったからです。結果、入った薬局を2か月で辞めることになりました。
職場では話さない
内定が出て退職を申し出るまでは、仲の良い同僚にも話さないほうが無難です。店舗の人数が少ない薬局ほど、話は上司の耳に早く届きます。職場のパソコンやメールで転職サイトを見るのも避けましょう。
在職中の不安や、バレたときの対応は在職中の転職が不安なときの記事で詳しく書いています。
薬剤師の退職交渉の進め方|申し出から最終出勤日まで


内定を承諾したら、いよいよ今の職場に伝えます。目安は入社日の1.5〜2か月前ですが、基準にするのは就業規則の申し出期限です。
最初に伝えるのは直属の上司
最初に伝える相手は直属の上司です。薬局なら薬局長や管理薬剤師、エリアマネージャーが上司という会社もあります。同僚や本部の知り合いに先に話すと、上司が人づてに知ることになり、話がこじれやすくなります。
伝えるのは、患者さんがいない時間に「お時間をいただけますか」と声をかけてからにします。切り出し方の例文は退職の伝え方と例文にあります。
退職日は就業規則を軸に相談
退職日は「この日で辞めます」と一方的に決めるより、就業規則の期限と入社日を示したうえで相談するほうがまとまりやすいです。入社日は転職先と約束した日なので、そこは動かせないと最初に伝えます。
送り出す側の事情も書いておきます。常勤が1人辞めると、店は本部に欠員を伝え、求人を出し、面接をして後任を探します。僕も管理薬剤師としてその流れを経験していますが、早く知らされるほどシフトの穴を埋める手が打てます。
引き止めには理由を1つだけ
「給料を上げる」「店舗を異動させる」と引き止められることもあります。理由をいくつも並べると、1つずつ解決策を出されて話が長引きます。「次の職場で働くと決めた」という結論を1つ、落ち着いて繰り返すのが一番です。
引き止めの条件に気持ちが揺れたら、それが最初に書いた不満を本当に解決するかで判断します。給料が上がっても、辞めたい理由が人間関係なら状況は変わりません。
管理薬剤師は早めに伝える
今あなたが管理薬剤師なら、ほかの薬剤師より早めに伝えることをおすすめします。管理者が変わると、薬局開設者は変更の届出をしなければなりません(医薬品医療機器等法第10条)。後任を誰にするかが決まらないと、店としては退職日を受け入れにくいのが実情です。
引き継ぎと有給消化の順番
有給を消化するなら、最終出勤日を先に決め、そこから退職日までを有給にあてるのが一般的です。引き継ぎは最終出勤日までに終わらせます。
- 在宅や施設の担当患者
- 服薬フォロー中の患者
- 発注・在庫の管理方法
- 疑義照会の多い医師の傾向
引き継ぐ項目は職場によって違いますが、上のように「患者さんに影響するもの」から紙に書き出すと漏れにくいです。有給と失業保険の扱いは退職時の有給消化と失業保険の記事にまとめています。
薬剤師が内定から入社までにやる手続き


入社直前になって慌てやすいのが書類です。一般的な会社員の転職と同じものに加えて、保険薬局で働くなら保険薬剤師の登録も確認が必要です。
前の職場から受け取る書類
- 源泉徴収票
- 雇用保険被保険者証
- 離職票(必要な人のみ)
源泉徴収票は、新しい職場で年末調整をするときに必要です。雇用保険被保険者証は、入社時から自分で持っている人も、退職時に返してもらう人もいます。離職票は、退職から入社まで間があいて失業給付を申請する人が使うものです。
保険薬剤師登録を確認する
保険薬局で保険調剤をするには、保険薬剤師の登録が要ります。病院や企業から薬局に移る人で、まだ登録していない場合は、地方厚生(支)局への登録申請が必要です。勤務開始に間に合うよう、内定が出た時点で転職先に確認しておきましょう。
すでに登録している人でも、登録している地方厚生(支)局の管轄を越えて異動や転居をしたときは、10日以内に届出が必要です(関東信越厚生局:管轄地方厚生(支)局長変更の届出)。県をまたぐ転職をする人は、自分が対象になるか確認してください。
新しい職場に出すもの
- 薬剤師免許証(原本・写し)
- 保険薬剤師登録票
- 基礎年金番号が分かるもの
- 源泉徴収票
- 扶養控除等申告書
基礎年金番号は、2022年4月以降は年金手帳ではなく「基礎年金番号通知書」で知らされています(日本年金機構)。求められる書類は会社で違うので、内定後に届く案内をそのまま確認してください。
薬剤師が転職の流れでつまずきやすい3つの場面


僕は転職を3回して、そのうち2回失敗しています。どちらも、流れの中の特定の場面で判断を急いだのが原因でした。
見学の日程を自分で潰した
2回目の転職では、今の職場を1日でも早く抜けたくて、見学を「日程が合わない」と断りました。入った調剤薬局は、挨拶が返ってこない、質問すると「自分で考えて」と言われる職場でした。入社2か月で退職しています。
長いあいだ「求人票に騙された」と思っていましたが、あとで読み返すと求人票に嘘はありませんでした。騙されたのではなく、確かめなかったんです。短期離職のその後は2か月で辞めた職歴の扱いに書いています。
年収だけで決めて疲れ切った
1回目の転職は、新卒の調剤薬局で年収420万円まで上がったところで、550万円の求人に移りました。調剤に加えてOTCの接客やレジ、品出しもあり、閉店後の品出しで夜10時になる日もありました。
年収だけで比べると、残業や業務の範囲が見えなくなります。内定後に条件を比べるときは、残業の実態や業務の範囲も同じ表に並べてみてください。
3回目に変えた進め方
3回目の転職で変えたのは次の3つです。
- 雰囲気を最優先にした
- 応募前に必ず見学した
- 過去の失敗を担当に話した
今の職場はそうして決めたところで、2年目に管理薬剤師になりました。ほかの人の失敗例は薬剤師の転職失敗談に、ブラックな職場の見分け方はブラック薬局の見分け方にまとめています。
薬剤師の転職の流れと準備によくある質問


- 転職活動を始めてから入社まで、どれくらいかかりますか?
-
在職中なら3〜4か月を見ておくと余裕があります。登録から内定までが1〜2か月、退職の申し出から最終出勤日までが1〜2か月というのが目安です。退職の申し出期限が短い職場なら、もっと早く進むこともあります。
- 何から始めればいいですか?
-
入社したい月を仮に決め、就業規則で退職の申し出期限と有給の残日数を確認するところからです。そのあと、外せない条件を3つに絞ってからエージェントに登録すると、提案がずれにくくなります。
- 仕事を辞めてから転職活動をしてもいいですか?
-
できなくはありませんが、収入が止まると焦りやすくなります。体調を崩しているなど事情がある場合を除けば、内定が出てから退職を申し出る順番のほうが、条件を落ち着いて比べられます。
- エージェントからの連絡に仕事中は出られません。
-
最初の面談で、連絡してほしい時間帯と手段(LINE・メールなど)を伝えておけば大丈夫です。それでも合わないときは、担当者の変更を頼むこともできます。
- 退職は何か月前に伝えればいいですか?
-
まず就業規則の申し出期限を確認し、それより前に伝えます。引き継ぎと有給消化を考えると、入社日の1.5〜2か月前が目安です。民法では期間の定めのない雇用は申し入れから2週間で終わるとされていますが、円満に辞めるなら職場と相談して決めるのが現実的です。
- 内定の返事はいつまでにすればいいですか?
-
期限は求人先によって違うので、内定の連絡を受けたときに確認します。返事の前に労働条件を書面で確かめ、年収の交渉をするならこのタイミングで行います。
- 保険薬剤師の登録は転職のたびに必要ですか?
-
すでに登録している人が転職のたびに登録し直す必要はありません。ただし、登録している地方厚生(支)局の管轄を越えて異動や転居をした場合は、10日以内に届出が必要です。まだ登録していない人が保険薬局に移るときは、新しく登録申請をします。
- ボーナスをもらってから辞めても大丈夫ですか?
-
問題ありません。ただ、支給日に在籍していることを条件にしている会社もあるので、就業規則や賃金規程で確認してから退職日を決めてください。
- 転職回数が多いと不利になりますか?
-
回数そのものより、在籍期間が極端に短い職歴が続いていないか、転職の理由を筋道立てて説明できるかが見られます。僕も2か月で辞めた職歴がありますが、なぜ辞め、次に何を変えたかを話せるようにして次の転職に臨みました。
- エージェントの登録にお金はかかりますか?
-
一般的な人材紹介サービスは、求職者側は無料で使えます。紹介手数料は採用した側が払う仕組みです。途中で転職をやめても費用はかかりません。
薬剤師の転職の流れのまとめ|今日やること


薬剤師の転職は、入社したい月から逆算すると、やることの順番がはっきりします。今日やるのは、仮の入社月を決めて、就業規則の退職の申し出期限と有給の残日数を確認することです。
- 入社月から逆算して動く
- 内定までは職場に言わない
- 応募前に職場見学を入れる
- 返事の前に条件を書面で確認
- 申し出は就業規則の期限内に
- 保険薬剤師登録を確認する
そこまで済んだら、エージェントに2〜3社登録して、今の条件でどんな求人があるかを見てみてください。登録先を比べたい人は、各社の強みと向いている人をまとめたランキング記事が参考になると思います。
\ 各社の違いを見てから選びたい /
管理薬剤師がまとめた比較記事














