40代の薬剤師が転職すると、年収は下がることもありますが、必ず下がるわけではありません。下がりやすいのは、業態を変えるとき、管理薬剤師などの手当が外れるとき、薬剤師以外の仕事に移るときです。
数字で見ると、40代前半の男性薬剤師の年収の目安は約695万円です(令和6年賃金構造基本統計調査から算出)。職種を問わない国の調査では、40代前半で転職した人のうち前職より賃金が「減った」のは29.0%、「増えた」のは45.9%でした。
僕は34歳の管理薬剤師で、40代での転職は経験していません。そのかわり、店に欠員が出たときは応募者の一次面接をしています。この記事では統計と、面接する側から見た40代の応募者の見え方をまとめます。
- 調剤4年→DS2年→調剤4年
- いまは管理薬剤師(34歳)
- 転職を3回経験し、うち2回は失敗。
- 3回目で年収480万→610万にアップ
- 人気転職エージェント5社を全部利用
「同じ失敗をしてほしくない」という思いで、薬剤師のリアルを本音で書いてます。
詳しい筆者の経歴はこちら
40代薬剤師の年収の平均(令和6年の統計)
転職で下がるかを考える前に、いまの自分の年収が同年代の中でどのあたりかを確かめておきます。比べる相手がずれていると、「下がる」「下がらない」の判断もずれるからです。
男性40代は約695〜703万
元にしたのは、厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査の、職種・性・年齢階級別の表です。残業代を除いた月の給与(所定内給与額)を12倍し、年間賞与を足して年収の目安にしました。
| 年齢 | 男性 | 女性 | 男女計 |
|---|---|---|---|
| 35〜39歳 | 約632万 | 約521万 | 約582万 |
| 40〜44歳 | 約695万 | 約546万 | 約616万 |
| 45〜49歳 | 約703万 | 約586万 | 約643万 |
| 50〜54歳 | 約775万 | 約658万 | 約716万 |
40代前半の男性は、月の給与が48.6万円、賞与が112.7万円で、年収の目安は約695万円です。40代後半は約703万円で、前半からの伸びは小さめです。
男性薬剤師全体の平均は約618万円なので、40代男性は全体より80万円ほど上にいます。ただしこの40代の人たちは、平均で12年ほど同じ会社に勤めています。長く勤めて積み上がった年収が平均に入っている、という点は覚えておいてください。
数字の出どころは令和6年賃金構造基本統計調査(職種・性・年齢階級別)です。男性薬剤師全体の数字と、ほかの職業との比べ方は薬剤師の男は負け組?男性の平均年収と伸ばし方に書いています。
女性40代は約546〜586万
同じ表で女性を見ると、40代前半が約546万円、40代後半が約586万円です。表はフルタイムで働く人だけの集計で、パートや短時間勤務は入っていません。
男女で差がありますが、平均年齢や勤続年数、役職に就いている人の割合も違います。「同じ仕事で女性だけ低い」という意味には読めないので、自分と比べるときは性別より、勤続年数と役職の有無をそろえて見るほうが正確です。
業態と会社の規模でも差が出る
業態別の年齢ごとの統計はありませんが、全年齢の平均なら厚労省の第25回医療経済実態調査に出ています。
- 薬局の薬剤師:約479万
- 薬局の管理薬剤師:約725万
- 病院の薬剤師:約581万
ドラッグストアと企業は、同じ条件で比べられる公的な統計が見当たりませんでした。業態ごとの違いは薬剤師の転職ガイド(業態別の年収)にまとめています。
会社の規模でも見ておきます。40代前半の薬剤師(男女計)の年収の目安は、従業員1,000人以上で約600万円、100〜999人で約605万円、10〜99人で約676万円でした。大手に移れば上がる、とは限りません(職種・年齢階級・経験年数階級別の表から算出)。
40代薬剤師の転職で年収が下がる典型パターン
まず、40代の転職でどれくらいの人が下がっているかです。薬剤師だけの統計はないので、職種を問わない厚労省の令和6年雇用動向調査(転職入職者の賃金変動状況)を見ます。
| 転職時の年齢 | 増えた | 変わらない | 減った |
|---|---|---|---|
| 35〜39歳 | 45.5% | 28.0% | 24.3% |
| 40〜44歳 | 45.9% | 23.7% | 29.0% |
| 45〜49歳 | 46.4% | 26.9% | 23.8% |
| 55〜59歳 | 27.4% | 33.6% | 36.6% |
40代は、転職で賃金が減った人より増えた人のほうが多い年代です。大きく減る人が増えてくるのは50代後半からです。40代で年収が下がるのは「年齢のせい」というより、どこへ移るかの影響が大きいと考えています。ここからは、下がりやすい4つのパターンです。
①DSから調剤・病院へ移る
ドラッグストアから調剤薬局や病院へ移ると、年収が下がる例は多いです。病院の平均は約581万円で、薬局の管理薬剤師の約725万円とは大きな差があります。
僕自身、30歳のときにドラッグストア併設の調剤から調剤薬局へ移り、年収は550万円から480万円に下がりました。月45時間の残業から早く抜けたくて、下がるのを承知で動いた転職です。
働き方を変えるための転職なら、下がること自体は悪い選択ではありません。ただ、いくらまでなら下がってもいいかを先に決めておかないと、あとで家計が苦しくなります。DSから戻る人の注意点はドラッグストアから調剤薬局に戻る転職にまとめています。
②役職と手当が外れる
40代で管理薬剤師や薬局長をしている人が、一般の薬剤師として入り直すと、役職の手当がそのまま消えます。僕の会社の管理薬剤師手当は月3〜5万円なので、年にすると36万〜60万円の差です。
加えて、同じ会社に長くいて少しずつ積み上がった昇給分も、転職先の給与テーブルで決め直しになります。基本給・手当・賞与を分けて、どこが残ってどこが消えるかを見ないと、提示額を見たときに「思ったより低い」となりがちです。
③住む地域を変える
子どもの進学や親の介護で住む場所を変えると、年収が動くことがあります。ただ、「都会に出れば下がる」「地方に行けば上がる」と一律には言えません。
令和6年の都道府県別の統計では、薬剤師の年収の目安は広島が約693万円、愛知が約622万円、東京が約572万円、福岡が約515万円でした。地域による差の見方は薬剤師が年収を上げる方法に詳しく書いています。移る先の県の平均より、通える範囲の求人の提示額で比べるほうが確かです。
④薬剤師以外の仕事へ移る
薬剤師の資格を使わない仕事や、企業の未経験職種に移る場合は、年収が下がる前提で考えたほうが安全です。企業は中途の募集自体が少なく、40代の未経験で入れる枠はさらに限られます。
どんな仕事があって資格がどう活きるかは、薬剤師の異業種転職で整理しています。
40代薬剤師が年収を下げずに転職する条件
管理薬剤師の枠で入る
いちばん現実的なのは、同じ業態の中で、管理薬剤師の枠で入ることです。統計でも薬局の管理薬剤師の平均は約725万円で、一般の薬剤師の約479万円と大きく違います。
ただ、この差には年齢や経験の違いも入っていて、手当だけの差ではありません。求人を見るときは、入社時から管理薬剤師なのか、「候補」として入っていつ任されるのかを確かめてください。候補のままだと、手当が乗るまで年収は下がったままです。
管理薬剤師になると、発注・在庫・監査対応・シフト・本部への報告まで仕事が増えます。中身は管理薬剤師の仕事内容と1日に書いています。
エリアマネージャーや本部を狙う
管理薬剤師や店長の経験がある40代なら、エリアマネージャーや本部の仕事も選択肢に入ります。ただし枠は少なく、エリアマネージャーだけの公的な年収統計もありません。
役職手当が増えても、担当店舗の巡回や報告で働く時間が増えると、時間あたりでは下がることもあります。年収の公表例と時給での比べ方は薬剤師エリアマネージャーの年収にまとめました。
在宅などの経験を具体的に示す
在宅や施設への対応、無菌調剤など、店によってできる人が限られる経験は、応募先の求めているものと合えば評価の材料になります。
とはいえ、専門の経験がそのまま手当になる会社ばかりではありません。「在宅を月何件、何年担当したか」のように数字で話せるようにしておくと、提示額の話をするときの根拠になります。
提示額を交渉する
最初の提示額が最終額とは限りません。僕は30歳の3回目の転職で、前職480万円に対して提示が560万円、担当を通じて交渉して初年度610万円になりました。
40代は前職の年収が高いぶん、提示額との差も出やすい年代です。交渉のときに何を材料にしたかは薬剤師の年収交渉に書いています。
一次面接をする管理薬剤師から見た40代の応募者
ここからは統計ではなく、店で一次面接をする立場からの考えです。僕はまだ40代の方を面接した経験はありません。もし40代の方が応募してきたら何を確かめたいか、として読んでください。
求人の年齢制限は原則禁止
まず前提として、募集や採用で年齢にかかわりなく均等な機会を与えることは、労働施策総合推進法第9条で事業主に義務づけられています。求人票だけでなく、書類選考や面接で年齢を理由に落とすことも認められていません(厚生労働省:募集・採用における年齢制限禁止について)。
例外として、長く育てる前提で経験不問の若い人を正社員で募集する求人などはあります(同法施行規則 第1条の3第1項第3号イ)。経験者を即戦力で探す中途求人は、この例外に当たりにくいはずです。
うちの会社では求人原稿を作るのは本部で、店から上げるのは「欠員の理由」「希望する勤務時間帯」「常勤かパートか」の3点だけです。年齢はそこに入っていません。年齢制限の例外や求人票の読み方は薬剤師の転職は35歳で遅い?年齢制限の実態でも書いています。
年下の管理薬剤師と働けるか
40代の方がうちの店に入ると、34歳の僕が管理薬剤師として上に立つ形になります。面接で確かめたくなるのは、年齢より、その形で気持ちよく働けそうかどうかです。
経験が長い人ほど、自分のやり方が身についています。それは強みですが、薬歴の書き方や店のルールは店ごとに違います。「まずこちらのやり方を覚えます」と言ってもらえると、一緒に働く側としては安心できると思います。
希望年収の中身を話せるか
40代の応募者は、前職の年収が店の相場より高いことがあります。そのときに「前と同じ額がほしい」だけだと、話が前に進みにくいはずです。
基本給・役職手当・賞与・残業代の内訳と、その額に見合う経験を分けて話してもらえると、面接する側も本部に伝えやすくなります。面接で何を聞き返されるかは薬剤師の面接の逆質問も参考にしてください。
40代男性薬剤師が転職先を決める手順
家計を支える立場の40代男性は、年収が下がったときの影響が大きくなりがちです。勢いで決めないために、次の順番で考えるのをおすすめします。
- 今の年収を内訳に分ける
- 同年代の平均と比べる
- 下げてよい幅を家計で決める
- 求人で自分の相場を知る
- 条件通知書で並べて決める
内訳は、源泉徴収票と給与明細から、基本給・手当・賞与・残業代に分けます。転職で消えやすいのは、役職手当と残業代です。
次に上の表と並べます。平均より上にいる人は、同じ額を出せる求人が限られるので、下げてよい幅を先に家計で決めておきます。平均より下の人は、同じ業態の中で動くだけで上がる余地があります。
40代の転職は、この先20年近く働く職場選びになることもあります。年収だけでなく、業態の将来性も合わせて見ておくと判断しやすいです。調剤薬局とドラッグストアの将来性も参考にしてください。
相場を知るには、実際の求人の提示額を見るのが早いです。転職を決めていなくても、薬剤師向けの転職サービスに登録すれば、担当者が希望に合う求人と条件を教えてくれます。
僕自身は使っていませんが、調剤薬局の中で条件を比べたい人にはファゲットがあります。公式サイトでは中小の調剤薬局や病院の求人を強みとして挙げています。地方で探す人や、派遣も含めて考えたい人はMC-ファーマネットも候補です。
内定が出たら、口頭の説明ではなく労働条件通知書で、年収・残業・休日・役職の予定を並べてから返事をしてください。内定の返事に迷っている人向けに、給与と働き方を比べて返事を決める手順を、有料noteの薬剤師の転職、内定に迷ったら|給与・働き方を比べて、返事を決める実践ガイドにまとめました。無料部分で対象や中身を確かめられて、本編は有料です。
40代薬剤師の転職と年収に関するよくある質問
- 40代の転職で年収が下がるのは確定ですか?
-
確定ではありません。職種を問わない令和6年の国の調査では、40代前半で転職した人のうち賃金が減ったのは29.0%、増えたのは45.9%でした。下がりやすいのは、業態を変える、役職の手当が外れる、薬剤師以外の仕事へ移るといった場合です。
- 40代薬剤師の平均年収はいくらですか?
-
令和6年賃金構造基本統計調査から残業代を除いて計算すると、40代前半は男性約695万円・女性約546万円、40代後半は男性約703万円・女性約586万円です。男女を合わせると、40代前半が約616万円、後半が約643万円です。
- ドラッグストアから調剤に戻ると、どれくらい下がりますか?
-
会社と役職で違うので、決まった下げ幅はありません。僕は30歳のとき、ドラッグストア併設の調剤から調剤薬局へ移って550万円から480万円に下がりました。提示額が出たら、いまの年収の内訳と並べて、どこが減るのかを確かめてください。
- 求人に「40歳まで」とあったら応募できませんか?
-
募集・採用での年齢制限は、労働施策総合推進法で原則禁止されています。例外として年齢の上限をつける場合は、理由を示す決まりもあります。理由が書かれていなければ、採用担当やエージェントに確認してみてください。
- 40代の転職回数が多いと不利ですか?
-
回数そのものより、1年未満の退職が何回あるかと、辞めた理由のつながりが見られると考えています。面接する側がいちばん気にするのは、採用してまたすぐ欠員になることです。40代の転職の進め方は薬剤師の40代の転職は遅い?にまとめています。
- 40代の転職活動にはどれくらいかかりますか?
-
活動を始めてから内定まで1〜2か月、在職中で退職や入社の手続きまで含めると3〜4か月が目安です。退職を伝える時期は薬剤師の転職タイミングを参考にしてください。
- ブランクがある40代でも年収は戻せますか?
-
免許があれば、教育の仕組みがある薬局を選んで復職する道はあります。ただ最初はパートや一般の薬剤師からになりやすく、年収は経験を積み直しながら戻していく形になると思います。進め方は薬剤師ブランク復職ブログにまとめています。
- 管理薬剤師の手当は年収にどれくらい効きますか?
-
僕の会社の管理薬剤師手当は月3〜5万円なので、年にすると36万〜60万円です。転職で一般の薬剤師として入るとこの分が消えるので、求人を見るときは基本給と手当を分けて確認してください。
40代薬剤師の転職で年収が下がるかのまとめ
40代の薬剤師が転職で年収を下げるかは、年齢よりも、どこへどの立場で移るかで決まります。男性40代の平均は約695〜703万円で、長く勤めて積み上がった分も含んだ数字です。
下がりやすいのは、業態を変える、役職の手当が外れる、薬剤師以外の仕事へ移るとき。下げにくいのは、同じ業態で管理薬剤師の枠に入るとき、提示額を交渉するときです。
まずは今の年収を内訳に分けて、同年代の平均と並べるところから始めてください。求人の探し方で迷ったら、薬剤師転職エージェントのおすすめ比較で選び方をまとめています。

