統計で見る限り、薬剤師の男は負け組ではありません。厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査では、男性薬剤師の年収の目安は約618万円。残業代を除いた月給で比べても、男性の労働者全体より8万円ほど高い水準です。
それでも「負け組」と言われるのは、医師と比べられることと、同じ会社にいると給料が伸びにくいことが大きいと僕は見ています。
僕は34歳の管理薬剤師で、年収は610万円です。この記事では統計と僕個人の経験を分けて書きます。負け組と言われる理由、実際の数字、管理薬剤師・エリアマネージャー・業態の変更で年収を伸ばす道の順に整理しました。薬剤師の男性との結婚を考えている人に向けた章もあります。
- 調剤4年→DS2年→調剤4年
- いまは管理薬剤師(34歳)
- 転職を3回経験し、うち2回は失敗。
- 3回目で年収480万→610万にアップ
- 人気転職エージェント5社を全部利用
「同じ失敗をしてほしくない」という思いで、薬剤師のリアルを本音で書いてます。
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男性薬剤師の年収を統計で見ると負け組ではない
男性薬剤師の年収は約618万
元にしたのは、令和6年賃金構造基本統計調査の職種別の表です。残業代を除いた月の給与(所定内給与額)を12倍し、年間賞与を足して年収の目安にしました。
| 区分 | 平均年齢 | 月の給与 | 賞与 | 年収の目安 |
|---|---|---|---|---|
| 男性 | 42.7歳 | 44.5万 | 84.1万 | 約618万 |
| 女性 | 39.3歳 | 37.5万 | 80.9万 | 約531万 |
| 男女計 | 40.9歳 | 40.7万 | 82.4万 | 約571万 |
男女で約87万円の差がありますが、男性のほうが平均年齢が3歳ほど高く、勤続年数も長めです。役職に就いている人の割合の違いも入っているので、「同じ仕事で男性だけ高い」とは読めません。
対象は従業員10人以上の事業所で働くフルタイムの人で、パートは含みません。数字の出どころは、厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査(職種・性別)です。
男性労働者全体より月8万高い
残業代を除いた月の所定内給与で比べると、男性薬剤師は44.5万円、男性の労働者全体は36.3万円です。差は月8.2万円で、賞与を除いても年に約98万円になります。
医療職どうしでも並べてみます。同じ表で年収の目安を出すと、男性の看護師は約486万円、男性の医師は約1,291万円でした。医師と比べれば半分以下ですが、医療職の中で下のほうにいるわけではありません。
男性の労働者全体の数字は、令和6年賃金構造基本統計調査の概況(性、年齢階級別賃金)から取りました。
年代別では50代前半まで伸びる
薬剤師の年代別の数字は、男女を合わせたものしか公表されていません。残業代を除いた月給×12+賞与で並べると、次のとおりです。
| 年齢 | 年収の目安 |
|---|---|
| 25〜29歳 | 約467万 |
| 30〜34歳 | 約530万 |
| 35〜39歳 | 約582万 |
| 40〜44歳 | 約616万 |
| 45〜49歳 | 約643万 |
| 50〜54歳 | 約716万 |
| 55〜59歳 | 約686万 |
平均で見ると、30代前半から50代前半にかけて約190万円伸びています。「薬剤師は20代で頭打ち」という話と、統計の平均は一致しません。
会社の規模でも見ておきます。男性薬剤師の年収の目安は、従業員1,000人以上で約589万円、100〜999人で約637万円、10〜99人で約644万円でした。大手のほうが高いとは限りません。
年代別の出どころは令和6年賃金構造基本統計調査(職種・年齢階級別)です。業態別・年代別の相場をもっと細かく見たい人は、薬剤師の年収ガイドにまとめています。
薬剤師の男が負け組と言われる4つの理由
①医師と比べられてしまう
同じ6年制で、同じ医療の国家資格です。この並びで医師と比べられると、年収は半分以下に見えます。
医学部も考えて薬学部に来た人や、身近に医師がいる人ほど、この比較から抜けにくいと思います。ただ比べる相手を男性の労働者全体に変えると、前の章のとおり平均より上にいます。負け組かどうかは、誰と比べるかでほぼ決まってしまう話です。仕事そのものの評価は、薬剤師はすごいのかで別に考えました。
②同じ会社だと昇給が小さい
統計の平均は50代まで伸びますが、1つの会社の中では昇給が小さいことがよくあります。僕が新卒で入った地方の門前薬局では、年収が1年目の約380万円から4年目で420万円。昇給は月5千〜1万円でした。
平均が伸びているのは、役職が付いた人や、転職で上げた人も含まれているからだと考えられます。役職が付かないまま同じ職場にいると、平均から少しずつ離れていくことはありえます。40代の人は40代薬剤師の転職と年収も参考にしてください。
③薬局では男性が少数派
令和4年の医師・歯科医師・薬剤師統計では、薬剤師のうち男性は38.4%です。薬局で働く人に絞ると35.1%で、3人に2人が女性の職場です。店舗によっては、男性が自分1人ということもあります。
「女性の多い職場で働く男」という見られ方を気にする人もいますが、それは職業の評価とは別の話です。次の章で書くとおり、昇格の数字で見ると少数派であることは不利に出ていません。
④独立開業の道が細くなった
薬局の開設者や法人の代表者で、管理者も兼ねている薬剤師は令和4年に13,587人。2年前より656人減っています。個人で薬局を開いて稼ぐ、という昔のイメージは描きにくくなりました。
ただ、独立しないから負け組ということはありません。雇われたまま役職や業態で年収を上げる道のほうが、今は現実的だと思います。
薬剤師数と男女比は、厚生労働省の令和4年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況(薬剤師)によります。
僕は28歳のとき、年収550万円のドラッグストア併設の調剤に移りました。でも残業は月45時間で、家には寝に帰るだけ。年収の数字だけでは勝ち負けは決まらないと、そこで思い知りました。
男性薬剤師が年収を伸ばす道|管理薬剤師・エリアマネージャー・業態
薬局の男性の約36%が管理薬剤師
薬局で働く男性の薬剤師は66,876人。そのうち勤務者として管理者(管理薬剤師)を務める人は24,413人で、約36%です。女性は約19%でした。
管理薬剤師の人数は男女でほぼ同じなので、少数派の男性のほうが就いている割合は高くなります。年齢構成や勤続の違いもあるので「男性が優遇される」とまでは言えません。それでも、男性が昇格の候補に挙がりやすいことをうかがわせる数字です。
管理薬剤師の手当は月3〜5万円ほどです。その分、監査や行政対応の矢面に立ち、発注・在庫、スタッフのシフト、採用の一次面接、本部への数字の報告が増えます。手当だけを見て引き受けると、割に合わないと感じる人もいます。仕事の中身は管理薬剤師の仕事内容と1日のスケジュールに書きました。
エリアマネージャーは枠が少ない
管理薬剤師の次は、複数の店舗を見るエリアマネージャーや本部の職です。年収は会社ごとの差が大きく、公的な統計でも役職別の薬剤師の年収は出ていません。
気をつけたいのは枠の数です。管理薬剤師は店舗の数だけいますが、エリアマネージャーは数店舗に1人です。同じ会社で待つだけだと、席が空くまで時間がかかります。
僕は管理薬剤師として本部に数字を報告し、欠員の募集では応募者の一次面接もしています。こうした経験は、社内で上を目指すときにも、転職で役職付きの求人に応募するときにも説明の材料になります。職場を選ぶときは、面接で次の2点を聞いておくと判断しやすいです。
- 管理薬剤師からの登用実績
- 役職ごとの手当と評価基準
業態を変える:企業・DS
男性の薬剤師の17.4%は、製薬会社などの医薬品関係企業で働いています。女性は7.8%です。企業で働く薬剤師の58.1%は男性で、薬局とは男女比が逆になります。
MRや開発の仕事は、薬局とは給与の仕組みも仕事の中身も違います。未経験から入れるかは年齢や採用の時期しだいなので、MR薬剤師への転職で確かめてください。
ドラッグストアは、調剤薬局より高い年収を提示されることがあります。僕も550万円の提示で移りましたが、OTCの接客やレジ、品出しまで重なり、残業が月45時間になりました。年収と一緒に、仕事の範囲と残業の実績を確かめてから決めてください。両方で働いた比較は調剤薬局とドラッグストアの将来性に書いています。
在宅や専門性は給与に出にくい
在宅や認定薬剤師で専門性を積むのは、仕事の幅を広げるうえで大事です。ただ、それが給与に反映されるかは会社しだいです。
僕は研修認定を取って、かかりつけ薬剤師として一時は約30名の患者さんを担当しました。それでも、会社のかかりつけ手当はゼロでした。専門性で年収を上げたいなら、資格手当や評価の仕組みがある職場かを先に確かめたほうがいいです。
転職で上げるなら交渉まで
僕は3回目の転職で、前職の480万円から、提示560万円を交渉して初年度610万円にしました。やり方は薬剤師の年収交渉にまとめています。
ただ、その前の1回目は年収だけでドラッグストアを選んで残業に追われました。2回目は焦って入った薬局を2ヶ月で辞めています。年収が上がるかどうかより、上がった年収で働き続けられるかを先に見たほうが失敗しにくいです。ほかの上げ方は薬剤師が年収を上げる方法7選で紹介しています。
薬剤師の男性との結婚を考える人が見ておきたい点
相手が薬剤師の男性で、「負け組と聞いて心配」という人もいると思います。収入は、前の章のとおり男性の労働者全体より高めです。資格の仕事なので、引っ越しても仕事を探しやすい職種でもあります。
年収より差が出やすいのは働き方です。話し合っておくと、結婚後の生活が想像しやすくなる点を挙げます。
- 土曜や夜の勤務があるか
- 転勤のある会社か
- 残業が月どのくらいか
- 役職や転職をどう考えているか
調剤薬局は土曜も開いている店が多く、ドラッグストアには遅番があります。僕は30歳ごろに結婚し、同じ頃に残業の少ない今の職場へ移ってから、家族との時間が取れるようになりました。結婚相手としての見方は薬剤師との結婚はどう?、職場での出会いの事情は薬剤師の出会いと職場恋愛に書いています。
負け組と感じた男性薬剤師がまずやること
- 統計の同年代と比べる
- 今の会社の昇給と役職を確かめる
- 求人で自分の相場を知る
まずは上の年代別の表と自分の年収を並べてください。平均より上にいるなら、負け組感の正体は年収ではなく、比べている相手か働き方のほうです。
平均より下なら、今の会社で上がる見込みを確かめます。先輩の昇給のペースや、管理薬剤師の席がいつ空きそうかは、社内でも聞ける範囲です。
社内で上がる見込みが薄ければ、求人を見て自分の相場を知るのが早いです。転職を決めていなくてもできます。薬剤師向けの転職サービスは、登録すると担当者が希望に合う求人を紹介してくれます。
僕自身は使っていませんが、年収の条件で求人を比べるならファゲットがあります。地方で探す人や、派遣も含めて考えたい人はMC-ファーマネットも候補です。
薬剤師の男は負け組に関するよくある質問
- 薬剤師の男はなぜ負け組と言われるんですか?
同じ医療の国家資格である医師と比べられやすいからです。ほかにも、同じ会社だと昇給が小さいこと、薬局では男性が少数派なこと、独立開業が難しくなったことが理由に挙がります。年収そのものは、男性の労働者全体より高い水準です。
- 男性薬剤師の平均年収はいくらですか?
令和6年の賃金構造基本統計調査から計算すると、約618万円です(平均42.7歳、残業代を除き賞与を含む)。従業員10人以上の事業所で働くフルタイムの人が対象です。
- 薬剤師の男は結婚で不利ですか?
収入の面では不利とは言えません。統計上は男性の労働者全体より高めです。結婚前には、土曜や夜の勤務、転勤の有無、残業の多さといった働き方を話し合っておくと安心です。
- 男性の薬剤師は出世しやすいですか?
薬局で働く男性のうち管理薬剤師は約36%で、女性の約19%より高い割合です。ただ年齢や勤続年数の違いも含んだ数字なので、男性だから必ず昇格できるわけではありません。
- 薬剤師の男は年収1000万円に届きますか?
統計の平均では、50代前半でも約716万円(男女計・残業代を除く)です。薬局の勤務だけで1000万円に届く人は多くないと思います。現実のラインは薬剤師の年収1000万は無理?にまとめました。
- 女性ばかりの職場が気まずいです。
薬局は3人に2人が女性なので、そう感じる人は少なくないと思います。どうしても合わなければ、男性が半数を超える製薬会社などの企業に移るのも選択肢です。
- 30代後半からでもキャリアは変えられますか?
管理薬剤師やエリアマネージャーは、年齢より現場の経験で決まることが多いです。企業への未経験の転職は、年齢が上がるほど求人が絞られやすいので、早めに求人を見ておくと判断しやすくなります。
- 転職エージェントを使うと年収は上がりますか?
条件の交渉を任せられるのは大きいです。僕は3回目の転職で、提示560万円を交渉で610万円にしてもらいました。担当との相性で差が出るので、合わなければ担当の変更や別の会社の併用を考えてください。
薬剤師の男は負け組かのまとめ
薬剤師の男は、統計で見れば負け組ではありません。男性薬剤師の年収の目安は約618万円で、残業代を除いた月給は男性の労働者全体より8万円ほど高い水準です。
負け組と感じる原因は、医師との比較と、同じ会社での昇給の小ささにあることが多いです。伸ばすなら、管理薬剤師からエリアマネージャーを目指すか、企業やほかの薬局へ業態・職場を変えるか。どちらも、年収と一緒に働き方を確かめてから選んでください。

