薬剤師の残業を減らすには、まず自分の残業を1週間記録して、「自分で減らせる分」と「店の仕組みでしか減らない分」に分けるのが近道です。分けないまま効率化だけ頑張っても、人数や営業時間から来る残業はそのまま残ります。
自分の残業が多いかどうかは、2つの数字と比べると見えます。薬剤師の平均残業は月8時間です(令和6年賃金構造基本統計調査)。36協定で残業させられる時間は、原則として月45時間までです(労働基準法36条4項)。
毎日1時間残ると月20時間前後で、平均の2倍を超えます。毎日2時間なら月40時間前後で、原則の上限が見えてきます。
僕は28歳から2年、ドラッグストア併設の調剤薬局で月45時間ほど残業していました。今の調剤薬局に移ってからは残業が減り、いまは管理薬剤師としてシフトを組む側、本部に数字を報告する側にいます。両方の立場から、減らす順番をまとめます。
- 調剤4年→DS2年→調剤4年
- いまは管理薬剤師(34歳)
- 転職を3回経験し、うち2回は失敗。
- 3回目で年収480万→610万にアップ
- 人気転職エージェント5社を全部利用
「同じ失敗をしてほしくない」という思いで、薬剤師のリアルを本音で書いてます。
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薬剤師の残業が多くなる原因は職場の構造
薬剤師の残業の出どころは、大きく3つです。処方箋の量に対する人数、営業時間と業務の幅、そして閉局後に回される作業です。業態によって、どれが効いてくるかが違います。
調剤薬局:枚数と人数の釣り合い
調剤薬局の残業は、処方箋の枚数に対して薬剤師が何人いるかで大きく変わります。薬剤師の人数は、薬局の業務を行う体制を定める省令で「1日平均の処方箋数を40で割った数」以上と決められています。
この40枚は人数の最低ラインで、余裕のある配置ではありません。最低ラインちょうどで回している店だと、日中は投薬と監査で埋まり、薬歴や在庫の作業が閉局後に押し出されます。
ドラッグストア:閉店時間と兼務
ドラッグストア併設の調剤は、店が夜まで開いていることと、調剤以外の仕事が回ってくることで残業が増えやすいです。
僕がいたDS併設の調剤では、調剤に加えてOTCの接客、レジ、品出しまで担当していました。週の半分は遅番で、閉店後の品出しで夜10時になる日もありました。これは調剤の手際を上げても減らない種類の残業です。
病院:シフト+夜勤・当直
病院は当直や夜勤がシフトとして組まれることが多く、日勤の残業とは別に夜の勤務が入ります。病棟業務やカンファレンスが日勤の終わりに重なると、そこが残業になりがちです。
僕自身は病院で働いたことがないので、病院の細かい事情は求人ごとに確かめてください。業態ごとの勤務時間とシフトの型は薬剤師の勤務時間は何時から何時かをまとめた記事に分けています。
薬剤師が自分で残業を減らす5つの方法
①1週間、残業の中身を記録する
最初にやるのは効率化ではなく記録です。1週間だけ、毎日の退勤時刻と「何で残ったか」をメモします。
- 閉局間際の処方箋
- 薬歴の書き残し
- 発注・在庫・品出し
- 新人の指導やフォロー
- 在宅の準備や訪問
理由ごとに時間を足すと、自分の工夫で減らせる分と、人数や営業時間のせいで残る分が分かれます。この記録は、あとで上司に相談するときの材料にもなります。残業代がきちんと出ているかを確かめるときにも使えます。出ていない場合の考え方は薬剤師の残業代が出ないのは違法かをまとめた記事にあります。
②自分の業務と他人の業務を分ける
責任感の強い人ほど、事務スタッフや後輩の仕事まで巻き取りがちです。「これは誰の業務か」を一度書き出して、自分が抱えなくていいものを戻すだけでも、閉局後の作業は減ります。
新人がついている時期は、この線がいちばん引きにくいです。教えている時間ぶんだけ自分の調剤が後ろにずれる話は新人の指導で疲れる原因を分けた記事に回したので、後輩を見ながら残業が増えている人はそちらも見てください。
③応需パターンを覚えて先回り準備
処方箋の来かたには、曜日や時間帯、季節で波があります。週明けに患者さんが集中する、花粉の時期に特定の処方が増える、といった波をつかむと、空いた時間に準備を前倒しできます。
在宅や施設の定期処方も同じです。調剤日と準備の段取りを患者さんごとに決めておくと、急な作業が閉局後にずれ込みにくくなります。
④薬歴は要点を指導直後に書く
薬歴で残っている人は、書き方より書くタイミングを見直すほうが早いです。閉局後にまとめて書くと、書く作業より思い出す作業に時間を取られます。
書く量についても、ルールは会話の書き起こしを求めていません。調剤報酬の留意事項通知(令和8年度)は、聞き取りや指導の内容を「要点を記載することで差し支えない」とし、そのうえで「指導後速やかに記載を完了させること」としています。
ひとつ注意があります。同じ通知は「定型文を用いて画一的に記載する」ことを認めていません。電子薬歴の入力補助で確認項目の枠を呼び出すのはいいとして、中身はその日の患者さんの話で書く必要があります。
記載事項や、薬歴が構造的に終わらない薬局の見分け方は薬歴が終わらない原因と最低限の書き方にまとめました。
⑤持ち帰り仕事をやめる
家で薬歴や在庫の資料に手をつけると、その時間は記録に残らない残業になります。表の残業が減ったように見えるぶん、店の側も問題に気づけません。患者さんの情報を家に持ち出すことにもなります。
会社の指示で行う作業は、場所にかかわらず労働時間として扱うのが基本です(厚生労働省 労働時間の適正な把握のためのガイドライン)。終わらない作業は、持ち帰らずに記録へ残すほうが、あとで職場を変える材料になります。
DS時代の閉店後の品出しは、どれだけ手際よく調剤しても減りませんでした。自分の工夫で減る残業と減らない残業を分けておくと、次にどこへ相談するかが決めやすくなります。
薬剤師の残業を店の仕組みで減らす方法
人数・営業時間・業務の割り振りから来る残業は、個人の工夫では消えません。管理薬剤師や本部を巻き込んで、仕組みを変えてもらう必要があります。
相談は時間の数字で持っていく
管理薬剤師として本部に上げるのは、基本的に数字です。「忙しいです」という相談は、そのままでは本部に伝える形になりません。
①で取った記録を、「閉局後の薬歴で週5日、毎日40分」のように、理由と時間の形にして持っていくと話が進めやすいです(数字は例です)。何に時間を取られているかが分かれば、シフトの組み方や作業の割り振りを考える材料になります。
取り揃えは条件つきで分担可
薬剤師がすべて抱えなくていい作業もあります。厚生労働省の通知「調剤業務のあり方について」(平成31年4月2日)は、薬剤師の指示のもとで薬剤師以外の人が行ってよい業務を整理しています。
- PTPシートの薬の取り揃え
- 監査前の一包化の数量確認
- 納品された薬の棚入れ
条件は、薬剤師の目が届く場所で行うこと、最終的な確認は薬剤師が自分で行うことです。薬局側には手順書の整備や研修が求められています。軟膏・水剤・散剤を直接計量・混合するのは、薬剤師以外には認められていません。
自分の店でどこまで分担しているかは、店の方針で決まります。記録を見て取り揃えに時間を取られているなら、管理薬剤師に手順書を作って分担できないか相談する価値があります。
閉局後の作業を日中に移す
発注、在庫の確認、翌日の準備、薬歴。こうした作業が「閉局後にやるもの」になっている店は、残業が毎日の決まりごとになります。
シフトを組む側から見ると、処方箋の枚数は数字で見えますが、薬歴や在庫にかかる時間は見えにくいです。だからこそ、日中の比較的空く時間帯にこれらの作業を担当として割り当てる、という提案は通しやすい部類だと思います。分包機や監査システムの入れ替えのような設備の話も、どの作業に何分かかっているかの数字があると本部に上げやすくなります。
薬剤師の残業が少ない薬局と多い薬局の違い
今の職場で相談しても変わらないのか、それとも職場を選び直すべきなのか。判断するときは、残業が出にくい構造かどうかを次の5点で見ます。
| 見る点 | 少ない薬局 | 多い薬局 |
|---|---|---|
| 営業時間 | 夕方〜夜の早い時間に閉局 | 夜遅くまで営業 |
| 人数 | 枚数に対して余裕がある | 最低ラインちょうど |
| 欠員時 | 1人欠けても回る | 残業が連鎖する |
| 業務の幅 | 調剤と薬歴が中心 | レジ・品出しも兼務 |
| 管理薬剤師 | 在籍が長い | 交代が多い |
拘束時間が何時間を超えたら要注意かの目安と、長い職場の特徴は薬剤師の拘束時間が長い職場の特徴で詳しく書いています。
薬剤師が転職で残業を減らすときの確かめ方
記録を持って相談しても変わらない。原因が人数や営業時間にある。原則の上限の月45時間に近い月が続いている。こうした場合は、職場を変えるほうが早いと思います。僕もDS併設の調剤を離れて、残業を減らしました。
ただ、焦って決めると同じ失敗をします。僕は2回目の転職で職場見学をせずに決めて、入社2ヶ月で辞めました。次の3つは応募前に確かめてください。
職場見学で夕方の様子を見る
残業は閉局前後に出るので、見学できるなら夕方の時間帯を選ぶのがおすすめです。待合の混み方、薬剤師の人数、閉局時刻に片付けがどこまで進んでいるかを見ます。見る項目は職場見学チェックリストにまとめました。
面接で残業を数字で聞く
求人票の「残業少なめ」だけで判断しないでください。僕の会社では、求人原稿の文面は本部が作り、店から上げるのは欠員の理由や勤務時間帯などの3点だけです。上がってきた原稿を見て「うちの残業はこんなに少なくない」と思ったことがありますが、店に書き換える権限はありませんでした。
だから面接では、次の3つを数字で聞きます。
- 直近3ヶ月の平均残業
- 繁忙期の最大の残業
- 残業代の計算の仕方
一次面接をする側から見ても、数字で聞かれるのは自然な質問です。答えがあいまいな職場は、実態を把握していない可能性があります。
エージェントに上限を数字で伝える
エージェントを使うなら、「残業は月10時間以内」のように上限を数字で伝えます。「少なめがいい」だと、求人票の表現どおりの求人が集まるだけです。求人先に残業の実態を確認してもらえるかも、最初に聞いておくといいと思います。
残業を減らしたい薬剤師の転職相談先
相談先として、ここではファゲットを挙げます。僕が転職したときには使っていないサービスなので、公式に書かれていることだけ紹介します。公式が強みとして挙げているのは中小の調剤薬局と病院の求人で、夜遅くまで営業するDS併設から離れたい人は候補にしやすいと思います。
働く時間を契約で決めたい人には、派遣と転職の両方を扱うアプロ・ドットコムもあります。派遣の働き方は派遣薬剤師のメリット・デメリットで確認してから動くと安心です。
ほかの会社と比べてから決めたい人は、薬剤師転職エージェントのおすすめ比較を見てください。
薬剤師の残業に関するよくある質問
- 残業を減らすには、まず何から手をつければいいですか?
-
1週間、退勤時刻と残った理由を記録するところからです。理由ごとに時間を足すと、自分で減らせる分と、人数や営業時間のせいで残る分が分かれます。どちらかで打つ手が変わります。
- 効率化だけで残業ゼロにできますか?
-
自分の作業から出る残業は減らせますが、人数や営業時間から出る残業は残ります。処方箋の枚数に対して人が足りない店や、閉店後の作業が決まっている店では、個人の工夫には限界があります。
- 薬剤師の平均残業はどれくらいですか?
-
令和6年賃金構造基本統計調査では、薬剤師の残業(超過実労働時間)は月8時間です。企業規模別では1,000人以上で月13時間、100〜999人で月4時間、10〜99人で月3時間でした。
- ドラッグストア併設だとやっぱり残業は多いですか?
-
多くなりやすいです。夜まで営業していて、調剤のほかにレジや品出しまで回ってくるからです。僕はDS併設の調剤で月45時間ほど残業していました。給料は高めのことが多いので、何を優先するか次第です。
- 事務スタッフに薬の取り揃えを頼んでもいいですか?
-
厚生労働省の通知「調剤業務のあり方について」では、薬剤師の指示のもと、目の届く場所で、PTPシートの薬を取り揃えることは差し支えないとされています。最終確認は薬剤師が行い、薬局は手順書や研修を整える必要があります。計量・混合は薬剤師以外にはできません。
- 薬歴を家に持ち帰って書くのはありですか?
-
おすすめしません。記録に残らない残業になるうえ、患者さんの情報を持ち出すことにもなります。薬歴は要点でよく、指導後速やかに完了させるのが通知上のルールなので、閉局後や家にまとめるより指導直後に書くほうが負担は軽くなります。
- 面接で残業時間を聞いたら印象が悪くなりませんか?
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一次面接をする側から見ても、数字で聞かれるのは自然な質問だと思います。「直近3ヶ月の平均」のように具体的に聞くと、相手も答えやすいです。あいまいな答えしか返ってこない職場は、実態を把握していない可能性があります。
- 管理薬剤師は残業代が出ないと聞きました。本当ですか?
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管理薬剤師であることと、残業代の対象外になる管理監督者であることは別の話です。権限や待遇の実態によって扱いが変わります。判断の目安は薬剤師の残業代が出ないのは違法かをまとめた記事で整理しています。
- 残業を減らしたいなら年収は下がる覚悟が必要ですか?
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必ずしもそうではありません。僕は3回目の転職で、提示された560万円を交渉で610万円にしてもらい、残業も減りました。業態と店の選び方次第なので、年収と働く時間はセットで比べてください。
- 転職してまた残業の多い店に当たらないか不安です。
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その不安は普通です。僕も2回失敗しています。職場見学を必ず入れること、残業を数字で聞くこと、条件だけで決めないこと。この3つで外す確率は下げられると思います。
薬剤師の残業を減らす方法のまとめ
薬剤師の残業を減らす順番は次のとおりです。
- 1週間、残業を記録する
- 自分で減らせる分を減らす
- 残りは数字で店に相談する
- 変わらなければ職場を選び直す
平均の月8時間を大きく超えていても、それがすべて自分の要領のせいとは限りません。記録を取れば、どこに手を打つべきかが見えてきます。
勤務時間の基本は薬剤師の勤務時間の記事、職場を選び直すときの見る順番は薬剤師の職場の選び方、気持ちが限界に近いときは薬剤師のストレスを溜めない方法もどうぞ。

