薬剤師になるには、6年制の薬学部を卒業し、薬剤師国家試験に合格して免許を登録する必要があります。高校卒業から最短で6年、ほかのルートはありません。
学費は国立で6年約350万円、私立は授業料などだけで約1,090万円が目安です。そしてもう一つ、進路を決める前に知っておいてほしい数字があります。
文部科学省の調査では、薬学部に入った人のうち6年で国家試験まで合格したのは約6割でした。留年や退学が珍しくない学部なので、大学選びでは偏差値だけでなく「6年で卒業できる割合」も見ておくのが大事です。
僕(たろう)は私立の薬科大を24歳で卒業し、国家試験は1回で合格しました。今は薬剤師歴10年目、34歳の管理薬剤師です。この記事では、なるまでの流れ・費用・大学選びで見る数字・向き不向き・なった後の年収を、公的な資料と僕の実額を分けて整理します。
「そもそも薬剤師って毎日何をしているの?」という段階なら、先に薬剤師の仕事内容をざっくり見ておくと、6年通った先の姿がイメージしやすくなります。
- 調剤4年→DS2年→調剤4年
- いまは管理薬剤師(34歳)
- 転職を3回経験し、うち2回は失敗。
- 3回目で年収480万→610万にアップ
- 人気転職エージェント5社を全部利用
「同じ失敗をしてほしくない」という思いで、薬剤師のリアルを本音で書いてます。
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薬剤師になるには?高校から免許登録までの最短6年の流れ
薬剤師になるには、6年制の薬学部を卒業し、国家試験に合格して登録することが必要です。受験資格は薬剤師法で決まっていて、通信制や夜間だけで取れる道はありません。
- 高校で化学を含む理系を選ぶ
- 6年制の薬学科に入学・卒業
- 薬剤師国家試験に合格
- 免許を登録して薬剤師に
高校では理系科目を選んでおく
薬学部の入試では化学がほぼ必須で、加えて数学・英語・生物か物理を課す大学が多いです。文系クラスのままだと受験科目が足りなくなりがちなので、高1〜高2の科目選択で理系を選んでおくのが安全です。
入試の難易度は大学によってかなり幅があります。「今の成績だから無理」と決めつけるのはまだ早いです。ただ、入りやすさだけで選ぶと入学後に苦労することもあるので、次の章の「6年で卒業できる割合」とセットで考えてください。
4年制の学科では受験資格がない
意外と見落としやすいのが学科の違いです。薬学部には6年制の「薬学科」と、4年制の「薬科学科」などを置く大学があります。
薬剤師国家試験を受けられるのは、原則として6年制の課程を卒業した人です。4年制は研究者や企業の開発職などを目指す課程なので、薬剤師になりたいなら出願の時点で6年制かどうかを必ず確認してください。
6年制薬学部の中身と実務実習
6年間の前半は化学・生物・物理などの基礎、後半は薬理学や薬物治療といった専門を学びます。4年次ごろには、実習に出る前の共用試験(知識を問う試験と、実技の試験)があります。
5年次には、薬局と病院で合わせて約22週間の実務実習に出ます(文部科学省 薬学実務実習に関するガイドライン)。実際の患者さんと話す初めての機会で、向き不向きを実感しやすい時期でもあります。
実習がしんどいと感じたときの乗り切り方は、薬局実習がしんどい薬学生へ向けた記事にまとめています。
国家試験と免許登録
国家試験は6年生の2月に2日間で行われます。2026年の第111回は2月21日・22日に実施され、新卒の合格率は86.25%、既卒を含む全体では68.49%でした(厚生労働省 第111回薬剤師国家試験の合格発表)。
合格したら薬剤師名簿への登録を申請し、登録されて初めて薬剤師として働けます。新卒の合格率だけを見ると「8割以上受かるなら安心」と思いがちですが、この数字には落とし穴があります。次の章で説明します。
管理薬剤師たろう僕は国家試験は1回で合格しました。合格の報告は、親より先に祖母に電話したのを覚えています。
薬剤師を目指す大学選びで見るべき「6年で卒業・合格できる割合」
薬学部は、入学した人が全員6年で卒業できる学部ではありません。文部科学省は毎年、大学ごとの修学状況を公表しています。
2025年度の調査で2019年度に入学した人を追うと、全国の6年制学科の入学者10,894人のうち、6年で卒業したのは67.7%、6年で国家試験まで合格したのは58.8%でした(文部科学省 薬学部における修学状況等)。
| 2019年度入学者 | 6年で卒業 | 6年で合格 |
|---|---|---|
| 国立 | 88.4% | 80.0% |
| 公立 | 83.6% | 75.9% |
| 私立 | 65.8% | 56.8% |
| 全体 | 67.7% | 58.8% |
私立の平均は、入学者のおよそ3人に1人が6年で卒業できていない計算です。私立の中でも大学ごとの差が大きく、同じ表の中で、6年で合格した割合が1割台の大学もあれば、8割を超える大学もあります。
もう一つ、国家試験の数字にも目を向けてください。第111回では新卒の出願者8,856人に対して、実際の受験者は7,781人でした。出願したのに受験しなかった新卒が約1,000人いたことになります(理由の内訳は公表されていません)。
つまり「新卒合格率○%」は、卒業して試験を受けた人の中での割合です。大学のパンフレットで高い合格率を見たら、入学した人のうち何人がそこまでたどり着いたかも確認しておくと安心です。
- 6年で卒業した割合
- 6年で国試に合格した割合
- 国試の出願者と受験者の差
どれも文部科学省のページにある大学別の表で見られますし、多くの大学が自校のサイトでも公開しています。留年すると学費も1年分増えるので、この数字は次の費用の話ともつながっています。
薬剤師になるまでにかかる費用は?学費は国立約350万・私立約1,090万〜
6年という時間と並んで重いのが学費です。進路を決めるご家庭にとって一番気になるところだと思うので、公的な資料の金額で出します。
- 国立:6年で約350万円
- 私立:6年で約1,090万円+α
- 実習費・教材・生活費は別
- 留年すると1年分増える
国公立と私立で学費はどれくらい違う
国立大学は国が示す標準額が授業料年535,800円・入学料282,000円なので、6年で約350万円です。ただし標準額より高い授業料を定めている国立大学もあるので、志望校の金額は必ず確認してください。
私立の薬学部は、2025年度入学者の平均で授業料が年約142万円、入学料約33万円、施設設備費が年約34万円でした(文部科学省 私立大学等の令和7年度入学者に係る学生納付金等調査結果)。6年分に直すと約1,090万円で、ここに実験実習料や教材費が加わります。
同じ免許を取るのに、学費だけで3倍ほどの差です。国公立は数が少なく難易度も高いので、「届きそうなら国公立を本気で狙う、難しければ私立+奨学金」という二段構えで考えると、選択肢を狭めずに済みます。
奨学金は返済まで計算しておく
私立の薬学部に進む人の多くは、奨学金や教育ローンを併用しています。僕も私立6年制で奨学金を使いました。社会人になった今も、残りはそれなりにあります。
日本学生支援機構の奨学金は、貸与が終わった月の翌月から数えて7か月目に返還が始まります(日本学生支援機構 奨学金の返還)。新卒1年目の、手取りがまだ少ない時期から返済が重なるということです。
薬剤師は就職後の収入が比較的安定しているので、長い目で見れば返していける人が多い資格だと思います。とはいえ留年で1年延びると、学費も借入額も増えます。借りる額と卒業の見込みは、入学前に家族で一度計算しておくと安心です。
薬剤師に向いている人・後悔しやすい人|管理薬剤師が見る適性
進路サイトによく載っている「几帳面でコミュ力があって探究心のある人」というリスト、あれを全部満たしている人はそう多くありません。現場にいる立場から、何が本当に大事かを書きます。
- 丁寧さを後から学べる人
- 地味な確認を続けられる人
- 人見知りでも誠実なら大丈夫
- 確認を面倒がる人は後悔しやすい
向いてる人:意外と「普通の人」です
向いているのは、特別な天才ではなく「地味な確認作業を、毎日きちんと続けられる人」です。薬の名前や量が1文字違うだけで患者さんに影響が出るので、派手さより「ちゃんと止まって確認できる」ことが何より価値になります。
コミュ力もよく誤解されています。求められるのは話のうまさではなく、不安そうな患者さんに目線を合わせて、わかる言葉で説明する誠実さです。
僕は今の薬局で、応募してきた薬剤師の一次面接を担当しています。その立場で一緒に働きたいと思うのは、流暢に話せる人より、分からないことを分からないと言えて、確認を省かない人です。
後悔しやすい人の特徴
後悔しやすいのは、地道な確認や勉強を「面倒くさい」と感じてしまうタイプです。薬は毎年新しいものが出ますし、薬局の制度もたびたび変わるので、資格を取った後も勉強が続きます。
もう一つは、「安定しているから」だけで選んで、仕事の中身を知らないまま入学するケースです。6年と大きな学費をかける前に、薬局や病院で実際に何をしているかを一度見ておくと、入ってからのギャップが小さくなります。
「几帳面じゃないかも」という不安は、入学前の今の自分の話です。丁寧さは実習や現場で鍛えられます。大事なのは性格そのものより、丁寧であろうとする意思があるかどうかです。
管理薬剤師の僕が薬剤師を目指した理由と、なってから分かったこと
きっかけは高校時代でした。祖母が10種類以上の薬を飲んでいて、かかりつけ薬局の薬剤師さんが一つずつかみ砕いて説明してくれていたんです。祖母の不安そうな顔が安心に変わっていくのを見て、こういう仕事がしたいと思いました。
ただ、動機はそれだけではありません。「手に職がほしい」「安定がほしい」という現実的な理由も同じくらいありました。志望理由がきれいじゃなくても大丈夫だと思っていて、その話は薬剤師になりたい理由は薄くていいという記事に書いています。
なってみて分かったのは、資格を取ってからのほうが働き方の差が大きいということです。僕は新卒で調剤薬局に4年勤めたあと、年収に惹かれてドラッグストア併設の調剤薬局に移り、月45時間の残業で体力を削りました。
その後の転職では2回目に失敗もしています。今の薬局で管理薬剤師になってからは、医薬品の管理や監査への対応も背負う立場です。



正直、今でも監査の前日は胃が痛いです。それでも、あのとき祖母の顔が安心に変わった場面を思い出すと、この仕事を選んでよかったと思えます。
僕がどんな10年を歩いたかは、自己紹介の記事に書いています。薬剤師になった後の働き方を具体的に知りたい人はのぞいてみてください。
社会人・主婦から薬剤師になるには?今からでも目指せるルートと注意点
社会人や主婦からでも薬剤師は目指せます。ただしルールは高校生と同じで、6年制薬学部に入り直して卒業し、国家試験に合格する必要があります。
入学に年齢制限はありません。大学によっては社会人入試や、他の大学を出た人向けの編入学を設けていることもありますが、募集の有無や入れる学年は大学ごとに違うので、志望校の募集要項で確認してください。
注意したいのはコストです。私立なら約1,090万円以上の学費に加えて、6年間は働いて得られたはずの収入も減ります。仕事や家庭と両立しながらその期間を確保できるか、家族とよく話し合ってから決めることをおすすめします。
一方で、薬剤師の現場は幅広い年代が働いていて、前職で身につけた接客や段取りの力は患者さん対応で活きる場面が多いと思います。年齢のハードルが気になる人は、30代から未経験で薬剤師を目指せるのかを別記事で書いたので、先に読んでみてください。
薬剤師になった後の年収と働き方|統計と僕の実額
6年と学費をかける以上、「なった後の生活」も気になりますよね。ここは統計の平均と、僕個人の実額を分けて書きます。混同すると「自分は低いのかも」と無用に不安になってしまうからです。
1年目の年収:平均と僕の実額
厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査で計算すると、経験1〜4年の薬剤師の年収は平均約493万円です(所定内給与×12+年間賞与、残業代は含まない。e-Stat)。
ただし1年目は賞与の計算期間に満たないことが多く、同じ調査で経験0年の年間賞与は約15.7万円でした。1年目の年収は、この平均より低めに出やすいと考えてください。
僕個人の実額は、地方の内科門前の調剤薬局で1年目約380万円でした。その後はこう推移しています。
- 1年目 約380万
- 2年目 約395万
- 3年目 約405万
- 4年目 420万
昇給は1回あたり月額5千〜1万円ほどで、頭打ち感がありました。これは僕一人のケースで、就職先によって初任給も昇給も変わります。年代別の数字は薬剤師20代の年収で詳しく書いています。
働き方と将来性:年収は動かせる
薬剤師の働き先は、調剤薬局・ドラッグストア・病院のほか、製薬企業や行政などもあります。どこで働くかで、年収も生活リズムも変わります。
厚生労働省の第25回医療経済実態調査では、薬剤師の平均年収は病院で約581万円、薬局の一般の薬剤師で約479万円、管理薬剤師で約725万円でした(厚生労働省 第25回医療経済実態調査)。
僕自身は、ドラッグストア併設の調剤薬局で年収550万円まで上がったものの残業が重く、今は調剤薬局の管理薬剤師として年収610万円で働いています。10年目の手取りまで含めた話は薬剤師10年目の年収を解説した記事にまとめました。
将来性については、資格の価値はまだ十分にあると感じています。ただ「資格さえあれば一生安泰」という時代ではなくなりつつあり、学び続けられる人ほど選べる職場が増える仕事だと思います。
薬剤師になるための学費・受験・進路のよくある質問
- 薬剤師になるまで何年かかりますか?
-
最短で6年です。6年制の薬学部を卒業して、6年生の2月にある国家試験に合格する流れが基本です。ただ実際には、入学者の約3人に1人は6年で卒業できていないので、留年の可能性も含めて考えておくと安心です。
- 学費はトータルでいくらかかりますか?
-
国立は標準額で6年約350万円、私立は授業料・入学料・施設設備費の平均で6年約1,090万円です。これに実験実習料や教材費、一人暮らしなら生活費が加わります。
- 4年制の薬学部でも薬剤師になれますか?
-
原則なれません。薬剤師国家試験の受験資格は6年制の課程を卒業した人が対象です。同じ薬学部でも学科によって4年制のことがあるので、出願前に確認してください。
- 文系からでも薬剤師になれますか?
-
なれます。ただ薬学部は化学を中心に理系科目が必須なので、文系のままだと受験科目が足りません。今から理系科目を補強するか、浪人して理系受験に切り替える必要があります。
- 浪人しても薬剤師になれますか?
-
なれます。国家試験にも就職にも浪人歴の制限はありません。一次面接を担当している僕も、浪人歴を判断材料にはしていません。
- 国家試験の難易度はどれくらいですか?
-
2026年の第111回は新卒の合格率が86.25%、既卒を含む全体で68.49%でした。6年間の勉強を積み上げていれば極端に狭き門ではありませんが、既卒になると合格率は大きく下がります。
- 大学はどうやって選べばいいですか?
-
学費と入試の難易度に加えて、6年で卒業した割合と、6年で国家試験に合格した割合を見てください。文部科学省が大学別の表を毎年公表しています。
- 社会人や主婦からでも薬剤師になれますか?
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なれます。入学に年齢制限はなく、6年制薬学部を卒業して国家試験に合格すれば何歳からでも薬剤師になれます。学費と6年間の収入減を家族で計算してから決めるのがおすすめです。
- 通信制や夜間で薬剤師資格は取れますか?
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取れません。受験資格は6年制薬学部の卒業が前提で、実務実習もあるので、基本は昼間に通学するルートになります。
- なった後、本当に食べていけますか?
-
統計では経験1〜4年の平均年収が約493万円です。僕は1年目約380万円からのスタートで、今は管理薬剤師として610万円です。一生安泰とまでは言えませんが、働き方を選び直せる資格だと感じています。
薬剤師になるには:6年の道のり・学費・大学選びのまとめ
薬剤師になるには、6年制薬学部の卒業と国家試験の合格という決まった道のりがあり、学費もそれなりにかかります。そのうえで、6年で国家試験まで届くのは入学者の約6割という現実も、大学選びの段階で知っておいてください。
- 6年制薬学部→国家試験が必須
- 6年で国試合格は入学者の約6割
- 学費は国立約350万・私立約1,090万〜
- 向くのは確認を続けられる人
- なった後も働き方は選び直せる
一番大事なのは、几帳面さや頭の良さより「丁寧であろうとする意思」です。自信がなくても、この道を目指していいと僕は思います。
進路を決める前に、6年通った先で毎日どんな仕事をするのかを知っておくと、「思っていたのと違う」を減らせます。









