訪問薬剤師になるために必須の資格や研修はありません。薬剤師免許があれば、在宅をやっている薬局に入って始められます。未経験からでも入れます。
ただ、訪問に出られるかどうかは本人ではなく薬局の届出と体制で決まります。「在宅あり」と書かれた求人でも、訪問がほとんど無い店もあれば、毎日回る店もあります。
そこでこの記事では、個人と薬局それぞれの条件を2026年6月の調剤報酬改定の内容で整理したうえで、応募先が在宅にどれくらい力を入れているかを応募前に公開資料で確かめる方法まで書きます。給与とオンコールの見方もあわせて説明します。
書いているのは、在宅対応をしている調剤薬局で管理薬剤師をしているたろうです。欠員募集のときは応募者の一次面接も担当しています。
- 調剤4年→DS2年→調剤4年
- いまは管理薬剤師(34歳)
- 転職を3回経験し、うち2回は失敗。
- 3回目で年収480万→610万にアップ
- 人気転職エージェント5社を全部利用
「同じ失敗をしてほしくない」という思いで、薬剤師のリアルを本音で書いてます。
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訪問薬剤師になる条件は薬剤師免許だけで、研修や認定は必須ではない
まず個人の条件です。ここは短く済みます。
薬剤師個人に必要な条件
必要なのは薬剤師免許と、保険薬局で働くための保険薬剤師の登録だけです。保険薬局に勤めている人なら、どちらもすでに持っています。
在宅の点数(在宅患者訪問薬剤管理指導料)の算定要件にも、訪問する薬剤師個人に研修修了や認定を求める規定はありません。求められているのは薬局としての届出と体制です。
読者在宅専門の資格がいるんだと思ってました
在宅の認定資格は後から取るもの
在宅に関する資格として名前が出やすいのは、日本在宅薬学会の「在宅療養支援認定薬剤師」です。これは民間の認定で、申請には次の条件があります。
- 実務経験3年以上
- 研修認定薬剤師などの取得
- 在宅業務の5事例の報告
- 学術大会への参加
- バイタルサイン講習会の受講
このほか、学会の研修講座で3年以内に40単位以上が必要です(日本在宅薬学会「新規申請手続き方法」)。
見てのとおり、在宅の事例報告が申請条件に入っています。つまり在宅をやったことがある人が後から取る資格で、訪問を始める前に取るものではありません。入職前に準備しておくべきものは、個人の側にはほぼ無いということです。
運転免許・移動手段の実情
運転免許は法律上の条件ではありません。ただ、車で回る薬局では求人の応募条件に「普通免許」が入っていることがよくあります。
訪問先の範囲にはルールがあり、薬局から患者さんの家までが16kmを超えると、特殊な事情がない限り在宅の点数は算定できません(調剤報酬点数表 区分15 在宅患者訪問薬剤管理指導料)。地方でも片道16kmの範囲に収まる、ということです。
求人を見るときは、移動手段が社用車か自家用車か、自家用車ならガソリン代や保険の扱いがどうなるかまで確認しておくと、入ってからの出費で驚かずに済みます。
訪問薬剤師として働けるかは薬局の届出と体制で決まる
個人の条件が軽いぶん、条件の中心は薬局側にあります。ここを知っておくと、求人の「在宅あり」の中身が読めるようになります。
薬局側に必要な届出の条件
医療保険で訪問の点数を取るには、薬局があらかじめ「在宅患者訪問薬剤管理指導を行う旨」を地方厚生局に届け出ている必要があります(関東信越厚生局「在宅患者訪問薬剤管理指導の届出」)。
介護保険の患者さん(居宅療養管理指導)のほうは、保険薬局の指定を受けた時点で指定があったものとみなされます(介護保険法第71条)。別に申請しなくても、保険薬局なら原則として介護保険の訪問はできる仕組みです。
届出そのものは難しくないので、出しているだけの薬局も珍しくありません。届出があることと、実際に訪問していることは別です。その差の見分け方は後の章で書きます。
薬剤師1人の訪問は週40回まで
在宅の点数は、保険薬剤師1人につき週40回までしか算定できません。患者さん1人あたりは原則月4回までで、2026年6月の改定からは「週1回まで」という数え方になりました(厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】」)。
この上限は、求人の「在宅専任」「在宅中心」を読むときの物差しになります。個人宅を1日に何軒も回るのか、施設で複数の方をまとめて見るのかで、同じ「在宅中心」でも1日の動き方はまったく違います。面接や見学では、個人宅と施設の割合を聞いてください。
2026年改定で夜間の連絡先が必須に
2026年6月の改定で、訪問の点数の要件に夜間・休日の連絡体制が加わりました。原則として初回の訪問時に、薬剤師と連絡がとれる電話番号や緊急時の注意事項を文書で渡すこと、出られなかった電話には速やかに折り返すことが求められています(同資料)。
働く側にとっては、夜の電話を誰が持つのかが、在宅をやる薬局では必ず決まっていることになります。当番制か、管理薬剤師が持つのか、近くの在宅協力薬局と分担しているのか。訪問薬剤師を目指すなら、給与と同じくらい先に聞いておきたい点です。
「在宅薬剤師」と「訪問薬剤師」の違いは呼び方だけ
どちらも正式な職種名ではなく、患者さんの自宅や施設を訪問して薬の管理をする薬剤師の通称です。求人サイトや薬局によって書き方が違うだけで、仕事は同じです。
制度上で名前が分かれるのは、患者さんがどの保険を使うかの部分です。
| 患者さん | 保険 | 制度上の名前 |
|---|---|---|
| 要介護認定なし | 医療保険 | 在宅患者訪問 薬剤管理指導 |
| 要介護・要支援 | 介護保険 | 居宅療養管理指導 |
介護保険の患者さんはケアマネジャーとのやり取りが加わりますが、薬の管理や残薬の確認、医師への報告といった中身は変わりません。
訪問薬剤師が在宅に強い薬局を応募前に見分ける方法
ここがこの記事でいちばん伝えたいところです。在宅にどれくらい力を入れている薬局かは、応募する前に公開資料である程度分かります。
厚生局の名簿で加算の届出を見る
地方厚生局は、保険薬局ごとに施設基準の届出を受理した状況を名簿として公開しています。都道府県別のPDFやExcelで、毎月更新されています(例:近畿厚生局「施設基準の届出受理状況」)。
名簿は薬局名で検索できます。見るのは「在宅薬学総合体制加算」の届出があるかどうかで、名簿上は「在薬総1」「在薬総2」のような略称で載ります。略称の正式名は、各厚生局が出している略称一覧で確かめられます。
- 応募先の県の厚生局を開く
- 保険薬局の受理名簿を開く
- 薬局名で検索する
- 在薬総1・2の有無を見る
加算の段階で在宅の規模が分かる
この加算は、在宅の実績と体制がある薬局しか届け出られません。2026年6月の改定後の主な要件は次のとおりです(厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】」)。
| 名簿の表示 | 主な要件 | 読み取れること |
|---|---|---|
| 届出なし | ― | 在宅は少ないか 始めたばかり |
| 在薬総1 | 訪問実績 年48回以上 麻薬小売業の免許 在宅の研修参加 | 継続して 訪問している |
| 在薬総2 | 加算1に加え 個人宅の訪問 年240回以上など 常勤換算3名以上 | 在宅が 業務の柱 |
加算2は、個人宅への訪問が年240回以上で在宅全体の2割以上、または年480回以上で1割以上という実績が条件です。さらに医療用麻薬の訪問指導や無菌製剤処理、小児の在宅のいずれかの実績も求められます。
年240回は、月にならすと約20回です。加算2の薬局なら、個人宅への訪問が日常業務として回っていると考えてよいと思います。逆に届出がない店の「在宅あり」は、入ってから訪問がほとんど無いこともあり得ます。
加算1の要件に「在宅業務に関する研修(認知症・緩和医療・ターミナルケア)や学会への参加」が入っている点も見ておきたいところです。届け出ている薬局は、薬剤師が在宅の研修を受ける前提で動いています。
名簿で分からないことは見学で聞く
名簿で分かるのは、薬局としての実績の下限までです。自分が入ったらどう動くかは、見学や面接で聞くしかありません。聞くのは次の4つで足ります。
- 月の訪問件数と担当者
- 個人宅と施設の割合
- 訪問中の店内の人数
- 夜間の電話を持つ人
一次面接をする側から言うと、この4つは店の管理薬剤師ならその場で数字を出せる質問です。答えがぼんやりしているときは、「先月は何件でしたか」と期間を区切って聞き直してください。
見学で聞くこと全体の組み立ては転職前の薬局見学で質問すること5つにまとめています。在宅の質問はその中の処方元の話と一緒に聞くと自然です。
訪問薬剤師は未経験からでも始められる
在宅の経験がなくても応募できますし、在宅未経験を前提にした求人も普通にあります。個人に必須の資格が無いので、制度の面で止められることはありません。
差が出るのは入ったあとです。未経験の人が確認しておきたいのは、次の3点です。
- 先輩の同行が何回あるか
- 一人で回るのはいつからか
- 報告書の書式と確認者
訪問のあとは医師やケアマネジャーへの報告書、薬歴、計画書の作成があります。書式と、最初のうち誰が目を通してくれるかが決まっている薬局なら、未経験でも覚えやすいはずです。
面接では「在宅をやりたい」だけでなく、個人宅を回りたいのか、施設を含めて件数をこなしたいのかまで言えると話が早く進みます。薬局側も、どの担当に入ってもらうかを考えやすくなるからです。
訪問薬剤師の給与とオンコールは手当と当番の決まりで見る
在宅を担当すると給料が上がるのか、夜の呼び出しはあるのか。どちらも薬局ごとの決まりで大きく変わるので、求人票のどこを見るかを書きます。
在宅で年収は上がるのか
在宅を担当したから基本給が自動的に上がる、という仕組みの会社ばかりではありません。薬局に入る点数と、薬剤師個人の給与は別の話だからです。
給与に反映されるとすれば、在宅手当、オンコール手当、夜間に出動したときの手当のどれかです。求人票の手当欄にこれらが書かれているか、書かれていなければ面接で金額と支給条件を聞いてください。
僕の会社では、かかりつけ薬剤師の手当がゼロでした。点数を取っていても給与には入らなかったので、在宅も同じことが起こり得ると思っておいたほうが安全です。年収全体の考え方は薬剤師の年収ランキングにまとめています。
オンコールの有無と手当
先に書いたとおり、2026年6月からは在宅をやる薬局に夜間・休日の連絡先が求められています。訪問薬剤師として働くなら、夜の電話当番が回ってくる可能性は高いと考えておいてください。
確認するのは、当番の頻度、手当の額、実際に出動したときの扱いの3つです。在宅協力薬局と分担している薬局なら、自分の当番が少なくなることもあります。
手当の相場と当番を減らす交渉の順番は薬剤師のオンコールがきついのは当然で詳しく書いています。



給料より先に、夜の電話のことを聞かないといけないんですね
訪問薬剤師に向いている人・大変な点
条件を満たしていても、合う・合わないはあります。店内の調剤と比べて、次のことが苦にならない人は在宅に向いています。
- 運転や移動が苦にならない
- 多職種とのやり取り
- 報告書などの書類作成
- 予定が崩れても立て直せる
大変なのは、移動と書類で1日が組み立てにくいことと、夜間の電話や看取りの場面があることです。ただ、そのきつさの何割かは本人の向き不向きではなく、店の人数や当番の決まりから来ます。だから職場選びでかなり変えられる部分です。
在宅のきつさを場面ごとに分けた話は在宅薬剤師がきつい7つの場面に書いています。応募する前に一度読んでおくと、見学で聞くことがはっきりします。
訪問薬剤師の求人を探すときに転職サービスを使う場合
名簿で候補を絞るには、まず候補の薬局名が必要です。在宅の求人を一から集めるなら、転職サービスの検索条件を使うのが早いと思います。
ファゲットは、求人検索のこだわり条件に「在宅業務あり」「未経験可」「研修充実」があります。在宅未経験で探す人は、この3つを組み合わせて候補を出し、薬局名を厚生局の名簿で照らす使い方ができます。
在宅を正社員でいきなり決めるのが不安なら、MC-ファーマネットは働き方の選択肢に紹介予定派遣と派遣があります。一定期間働いてから正社員になるかを決める形なので、在宅の件数や当番を実際に見てから判断できます。
ほかの転職サービスとの違いは薬剤師転職エージェントのおすすめランキングで比べています。どのサービスを使う場合も、在宅の件数や夜間の当番は担当者任せにせず、見学で自分の目で確かめてください。僕は2回目の転職で見学を自分から断り、入った薬局を2ヶ月で辞めています。
訪問薬剤師に関するよくある質問
- 訪問薬剤師は年収が上がりますか?
-
在宅を担当するだけで基本給が上がるとは限りません。在宅手当やオンコール手当があるかどうかで変わるので、求人票の手当欄と面接で金額・支給条件を確認してください。
- 運転が苦手でも訪問薬剤師はできますか?
-
訪問先が近い都市部や、施設への訪問が中心の薬局なら負担は小さめです。求人票で移動手段(車・自転車・徒歩)と、社用車か自家用車かを確認してください。
- 訪問薬剤師は何件くらい回りますか?
-
薬局によって大きく違います。制度上は保険薬剤師1人につき週40回までが算定の上限です。個人宅中心か施設中心かで1日の件数は変わるので、見学で先月の件数を聞くのが確実です。
- 在宅未経験でも転職できますか?
-
できます。個人に必須の資格はありません。入る前に、先輩の同行が何回あるか、一人で回るのはいつからかを確認しておくと安心です。
- 在宅療養支援認定薬剤師は取っておくべきですか?
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訪問を始めるのに必要ありません。申請には実務経験3年以上や在宅業務の5事例の報告が必要なので、在宅を経験してから目指す資格です。
- パートでも訪問薬剤師になれますか?
-
雇用形態で制度上の制限はありません。ただ、訪問の担当を常勤に限っている薬局もあるので、応募前にパートが訪問に出ているかを聞いてください。
訪問薬剤師になる条件のまとめ
訪問薬剤師になるのに、個人として必要なのは薬剤師免許だけです。研修や認定資格は始めてから考えれば間に合います。
働けるかどうか、どれくらい訪問するかは薬局で決まります。応募前に厚生局の名簿で在宅薬学総合体制加算の届出を確かめ、見学で件数・店内の人数・夜間の当番を聞いてください。
- 個人に必要なのは免許だけ
- 薬局に厚生局への届出が必要
- 運転免許は求人の条件
- 在宅の規模は名簿で分かる
- 未経験は同行期間を確認
- 給与は手当と当番で見る
転職そのものの進め方に不安がある方は、薬剤師の転職の基本ものぞいておくと安心です。






