「ダブルチェックがない薬局って、違法じゃないの?」「昼休みの交代で一人になる時間、監査は自分だけ。ミスしたら全部自分のせい?」そんな不安で検索した薬剤師さんへ、先に答えを書きます。
薬剤師同士のダブルチェックは、法令上の義務ではありません。その代わり、薬局の開設者には調剤の手順書と、事故を報告する体制を整える義務があります。「2人で見る」は決まっていなくても、「一人でも事故を防ぐ仕組みを作る」は決まっている、ということです。
僕は管理薬剤師のたろうです。いまの薬局ではスタッフのシフトを組む側で、一人の時間帯をどう作らないか・どう守るかを考える立場にいます。この記事では、法令で決まっていること、一人で監査するときの確認の型、過誤が起きたときの報告先、職場を変えるか決める基準を、一次資料を付けて順に書きます。
- 調剤4年→DS2年→調剤4年
- いまは管理薬剤師(34歳)
- 転職を3回経験し、うち2回は失敗。
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「同じ失敗をしてほしくない」という思いで、薬剤師のリアルを本音で書いてます。
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薬剤師のダブルチェックは法律上の義務なのか
不安がずっと消えないのは、「何が義務で、何が自分の責任なのか」がぼんやりしているからだと思います。まず法令で決まっていることを4つに分けて整理します。
2人で確認する義務はない
薬剤師法にも薬機法にも、「調剤した薬を別の薬剤師がもう一度確認すること」を定めた条文はありません。一人で調剤から監査まで行う時間帯があっても、それだけで違法にはなりません。
ただ、「義務じゃない=何もしなくていい」ではありません。ここを取り違えている職場は、次の項目で書く義務のほうが抜けている可能性があります。
手順書と事故報告の体制は義務
薬局の体制を決めている薬局並びに店舗販売業及び配置販売業の業務を行う体制を定める省令(体制省令)の第1条は、調剤の医療安全のために、指針の策定や従事者の研修などの措置を求めています。その措置には、次のものが含まれると書かれています。
- 医薬品の安全使用の責任者
- 従事者からの事故報告の体制
- 調剤の業務手順書の作成
- 手順書どおりの業務の実施
- 情報を集めて改善する方策
つまり、どの薬局にも「調剤の手順書」があるはずです。一人で監査する時間帯の確認方法がそこに書かれていないなら、個人の注意力に任せたままになっている、ということ。まず自分の薬局の手順書を読んでみるのが、不安を具体的な話に変える最初の一歩です。
一人薬剤師は処方箋40枚が目安
同じ体制省令の第1条第1項第2号で、薬剤師の人数は「1日平均の処方箋枚数÷40」以上と決まっています(眼科・耳鼻咽喉科・歯科の処方箋は3分の2で数えます)。1日平均40枚までなら、薬剤師1人の配置でも基準は満たします。
これは前年の平均で見る最低ラインです。忙しい曜日や時間帯に一人になることまでは縛っていません。「基準を満たしている」と「一人の時間帯が安全」は、別の話として考えたほうがいいです。
事務さんの確認は監査にならない
2019年の厚労省通知「調剤業務のあり方について」(いわゆる0402通知)で、薬剤師以外のスタッフもピッキングなど一部の作業ができると整理されました。条件は、薬剤師の指示のもとで、薬剤師の目が届く場所で、判断の余地が少ない機械的な作業であることです。
同じ通知で、調剤した薬の最終的な確認は薬剤師が自ら行うことも明記されています。事務さんに「名前と薬袋が合っているか」を見てもらうのは取り違え防止に役立ちますが、それで薬剤師の監査の代わりになるわけではありません。
過誤の責任は誰が負うのか
日本薬剤師会の調剤行為に起因する問題・事態が発生した際の対応マニュアルでは、調剤事故で賠償責任を問われうるのは開設者や管理薬剤師だけでなく、調剤した薬剤師個人のこともあると説明しています。開設者が払った賠償の一部を関わった薬剤師に求める「求償」の可能性にも触れています。
「全部自分のせいになる」とまでは言えませんが、「会社がすべて引き受けてくれる」とも言い切れません。同じマニュアルは、勤務薬剤師も薬剤師賠償責任保険に入っておくことが望ましいとしています。職場の保険が勤務薬剤師個人まで対象にしているかは、一度確認しておくと安心です。
管理薬剤師たろう一人の監査が怖いのは、気にしすぎじゃないです。その緊張感は持っていていいと思います。
一人で監査する薬剤師がミスを減らす確認の型
二人目の目がないなら、「時間」「手順」「機械」「患者さん」に二人目の役をしてもらうのが基本の考え方です。今日から一人でできるものを先に並べます。
調剤と監査のあいだに間を置く
自分で集めた薬を直後に自分で見ると、「さっき取ったのはこれ」という記憶で目が滑ります。調剤を終えたら、薬歴の確認や別の処方箋の入力を一つ挟んでから監査に戻る。それだけで、他人の調剤を見るときの目に近づきます。
待合が混んでいると数十秒でも惜しく感じますが、監査の最初に処方箋を読み直すところからやり直す、と決めておけば、間を置いた分の時間はほとんど増えません。
見る順番を固定して声に出す
見る順番がその日の気分で変わると、抜ける項目も毎回変わります。順番は例えば次のように決めて、処方箋と薬を指でなぞりながら小さく声に出します。
- 患者さんの名前
- 薬品名(接尾字まで)
- 規格・含量
- 数量・日数
- 用法と薬袋の記載
日本薬剤師会の新任薬剤師のための調剤事故防止テキストでも、配合剤の取り違えの原因として「接尾字まで確認していない」ことが挙げられています。名前が似た薬が多いほど、読み上げる効果は大きいと思います。
危ない薬だけは2回見る
全部の処方を二度見るのは、一人の時間帯では現実的ではありません。間違えたときの害が大きいものだけ、監査を2回に分けると決めておきます。
- 抗凝固薬
- 糖尿病薬・インスリン
- 抗がん剤
- 小児の体重換算の量
- 規格が複数ある薬
対象は薬局ごとに違っていいので、手順書に「一人の時間帯はこの薬を2回見る」と書いてもらうと、人が替わっても同じ確認が残ります。
監査システムに任せる範囲を知る
バーコードで薬品を照合する仕組みや、錠剤の画像・重量で数を確かめる監査システムがあれば、取り違えや数え間違いは機械が拾ってくれます。一人の時間帯の支えとしては、いちばん頼れるものです。
一方で、用法・用量が患者さんに合っているか、併用薬との相互作用はどうかは、機械では判断できません。「照合は機械、処方の中身は自分」と分けて考えると、機械があっても気を抜く場所を間違えずにすみます。
導入されていないなら、会社に「一人の時間帯の過誤対策として」と理由を添えて相談する価値はあります。返事の中身で、その会社が仕組みで守る気があるかも見えてきます。
交付時に患者さんと確かめる
投薬台は、患者さんに渡す前の最後の確認の場でもあります。薬の実物と薬剤情報提供文書の写真を並べて見せながら説明すると、違いに気づけることがあります。
先ほどの日本薬剤師会のテキストにも、監査で見落としたインスリンの規格違いに、説明中に製剤写真の違いから気づいて渡さずにすんだ事例が載っています。いつもと見た目が違う薬は、「前回と色や形が変わっていますが」と一言添えて、患者さんと一緒に確かめるのが自然です。
一人の時間帯を減らすために薬剤師が職場に頼めること
確認の型は自分を守るものですが、一人の時間帯そのものを減らせるのは職場の仕組みです。シフトを組む側の管理薬剤師から見て、現場から言ってもらえると動きやすいことを挙げます。
- 手順書を見せてもらう
- 一人の時間帯を書き出す
- 休憩の交代時刻をずらす
- ヒヤリ・ハットを記録する
「一人が怖いです」だけだと、気持ちの話で終わりがちです。「火曜の13時台は薬剤師が一人で、処方箋が集中する」のように時間帯と枚数で伝えると、シフトの話として受け取れます。管理薬剤師は全員の休憩を組み合わせてシフトを作っているので、交代の時刻を少しずらすだけで一人の時間を短くできることもあります。
ヒヤリ・ハットの記録は、一人の時間帯が危ないことを数字で示す材料になります。日本医療機能評価機構の薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業のように、事例を集めて共有する仕組みもあります。自分の薬局が参加しているかを聞いてみるのも一つです。
一人薬剤師の働き方そのものがしんどい場合は、一人薬剤師がきついと感じる理由と抜け出し方に、休憩や責任の重さの面からまとめています。
一人の監査で過誤が起きたときの薬剤師の報告先
一人の時間帯の過誤は、「自分しか知らない」状態になりやすいのが怖いところです。ここでは報告の流れだけを整理します。
- 患者さんの安全を確認
- 管理薬剤師・開設者へ報告
- 処方医へ連絡・報告
- 重大なら薬剤師会へ報告
体制省令で「従事者から薬局開設者への事故報告の体制」が義務になっているのは、まさにこのためです。一人のときに起きたことでも、黙って自分だけで処理しないでください。
日本薬剤師会の対応マニュアルでは、調剤事故は原則として所属の薬剤師会に報告して相談することが大切だとしています。死亡や重大な傷害のおそれがある場合などは所定の様式で報告し、健康被害が重い・複数の患者さんに及ぶ場合は、薬剤師会と相談のうえ保健所などの行政機関にも報告する流れです。勤務薬剤師が一人でそこまで判断するのではなく、管理薬剤師や開設者と一緒に進めるものです。
ミスに気づいた直後の具体的な動き方や、落ち込んだ気持ちの立て直し方は、調剤ミスをして落ち込む薬剤師が最初にやることで順番に書いています。
ダブルチェックがない薬局を薬剤師が離れていい基準
ダブルチェックがないこと自体より、「一人でも守れる仕組みを作る気があるか」で職場を見たほうが判断を誤りにくいです。次の3つに当てはまるなら、我慢し続けなくていいと思います。
過誤対策を話しても変わらない
手順書の確認をお願いしても出てこない。監査システムや休憩の組み方を相談しても「気をつければいい」で終わる。手順書は法令で求められているものなので、それすら整っていないなら、会社の姿勢の問題です。
仕組みで守ろうとしない職場は、事故が起きたときも個人の注意不足で片づけやすい、と僕は考えています。
枚数に対して人が足りなすぎる
40枚の基準はあくまで最低ラインです。一人の時間帯に処方箋が集中して、昼休みも取れない日が続くなら、ミスが出やすい負荷が常態になっています。増員や休憩の組み直しを相談しても、何か月も動かないなら、そこで頑張り続けるのは分の悪い賭けです。
ヒヤリを言うと責められる
日本薬剤師会のマニュアルは、ヒヤリ・ハットの報告を受けたときに個人の責任を追及するのではなく、組織として再発防止を考える体制を作るよう求めています。報告した人が怒られる職場では、みんな黙るようになり、同じミスが繰り返されます。
不安を口にしても取り合ってもらえない、報告すると責められる。この2つがそろっているなら、一人の時間帯の怖さは今後も減らないと思います。
次の職場の監査体制を薬剤師が転職前に確かめる方法
環境を変えると決めたなら、同じ不安を持ち越さないように、監査の体制を入る前に確かめてください。
僕は2回目の転職で入った薬局を、2ヶ月で辞めています。長いあいだ求人票のせいにしていましたが、本当は早く前の職場を抜けたくて、職場見学の提案を自分から断っていました。確かめなかったのは僕です。
いまは管理薬剤師として、欠員募集のときに求人票の元になる情報を本部に上げる側にいます。その経験から言うと、求人票に時間帯ごとの薬剤師の人数や監査のやり方は、書かれていないことが多いです。聞かないと分からない項目だと思ってください。
- 常勤薬剤師は何人か
- 一人になる時間帯はあるか
- その時間帯の監査方法
- 監査システムの有無
- 1日の処方箋枚数
- 欠員補充か増員か
見学では、監査台がどこにあるか、昼の時間帯に調剤室に何人いるかを見ておくと、答えと実態が合っているか確かめられます。見学で何を見て何を聞くかは、薬剤師の職場見学チェックリストに14項目でまとめました。
僕は一次面接をする側でもありますが、監査体制を質問されても、マイナスには受け取りません。安全を気にする人だと分かるからです。自分で聞きにくければ、転職エージェントに確認を頼む方法もあります。今申し込めるところでは、ファゲットや、地方・派遣の求人を扱うMC-ファーマネットがあります。僕自身はどちらも使っていないので、各社の特徴は薬剤師転職エージェントのおすすめランキングで比べてみてください。
転職の進め方全体は、2回失敗した僕の転職手順に書いています。
薬剤師のダブルチェックに関するよくある質問
- ダブルチェックがないのは法律違反ですか?
薬剤師同士のダブルチェックを義務づける条文はありません。ただし体制省令で、調剤の手順書の作成と、それに沿った業務、事故報告の体制は薬局に求められています。
- 一人薬剤師でミスしたら誰の責任ですか?
日本薬剤師会のマニュアルでは、開設者や管理薬剤師のほか、調剤した薬剤師個人が賠償責任を問われることもあるとしています。一人で抱えず管理者に報告し、賠償責任保険の加入状況も確認しておくと安心です。
- 薬剤師1人の薬局は法律上問題ないですか?
体制省令では、薬剤師の人数は1日平均の処方箋枚数を40で割った数以上とされています。1日平均40枚までなら1人でも基準は満たします。
- 機械の監査だけで本当に大丈夫ですか?
取り違えや数量の照合はかなり頼れますが、用法・用量や相互作用の判断は薬剤師が行う必要があります。照合は機械、処方の中身は自分、と分けて考えるのがおすすめです。
- 事務さんにチェックを頼むのはアリですか?
名前と薬袋の取り違え防止には役立ちます。ただし0402通知で、調剤した薬の最終的な確認は薬剤師が自ら行うこととされているので、監査の代わりにはなりません。
- ダブルチェックがある職場のほうが安全ですか?
2人いても、2人目が「1人目が見ているはず」と流すと効果は薄れます。人数だけでなく、手順書どおりに確認が回っているかを見るのが大事だと思います。
- 改善提案は誰にすればいいですか?
まず管理薬剤師へ。一人になる時間帯と処方箋枚数を具体的に伝えると、シフトの話として検討しやすくなります。動かなければ本部やエリア長に相談します。
- 不安で辞めたいけど甘えでしょうか?
甘えではないと思います。対策を相談しても何も変わらない職場なら、離れるのも選択肢です。次の職場では、一人になる時間帯と監査の方法を入る前に確かめてください。
- 監査体制をエージェントに聞いてもらえますか?
自分で聞きにくいことを確認してもらう使い方はできます。聞いてほしい項目(一人になる時間帯、監査システムの有無など)をこちらから具体的に伝えるのがコツです。
薬剤師のダブルチェックがない薬局の不安のまとめ
ダブルチェックは義務ではありませんが、手順書と事故報告の体制は薬局の義務です。一人で監査する時間帯は、間を置く・順番を固定する・危ない薬は2回見る・機械と患者さんに手伝ってもらう、の型で守れます。
- ダブルチェック自体は義務ではない
- 手順書と事故報告の体制は義務
- 一人の監査は「型」で守る
- 過誤は隠さず管理者へ報告
- 仕組みを作らない職場は離れていい
それでも職場が仕組みを作ろうとしないなら、無理に居続けなくていいと思います。次は一人になる時間帯と監査の方法を、入る前に確かめてください。





