疑義照会の電話が怖い。医師に怒られそうで、受話器を取る手が止まる。そんな薬剤師は少なくありません。
先に答えを書きます。疑義照会は薬剤師法で決められた義務で、遠慮して省いていい確認ではありません。日本薬剤師会の調査では、薬学的な疑義照会の74.88%で処方が変更されています。あなたが迷って電話する確認は、多くの場合ちゃんと役に立っています。
怖さの中身は、たいてい「準備不足」「伝え方」「職場の体制」のどれかです。この記事では、電話前のメモと伝え方の型、怒られたときの対応を順番に書きます。電話そのものを減らすプロトコル(事前合意)にも触れます。
- 調剤4年→DS2年→調剤4年
- いまは管理薬剤師(34歳)
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「同じ失敗をしてほしくない」という思いで、薬剤師のリアルを本音で書いてます。
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疑義照会が怖い・緊張するのは、薬剤師のあなただけじゃない
疑義照会の電話が怖いと感じる薬剤師は多いです。最初から平気な人のほうが珍しいと僕は思っています。
怖さの正体が分かると、少し楽になります。原因はだいたい次の2つに集まります。
「医師に否定される」が怖いだけ
疑義照会は、構造としては「相手の書いた処方に疑問を投げる」行為です。だから無意識に、医師の領域に踏み込んで怒られるのでは、と身構えてしまいます。
でも本来は、医師のミスを責める電話ではありません。患者さんの安全を一緒に確かめる作業です。立場を「対立」ではなく「同じチーム」と置き直すだけで、声のトーンは変わります。
頭で分かっていても、体が緊張するのは別の問題です。すぐに平気にならなくても、焦らなくて大丈夫です。
準備不足で頭が真っ白になる
怖さの半分くらいは、準備不足からくるパニックです。何を聞くか整理しないまま電話すると、相手が出た瞬間に頭が真っ白になります。
「えーと、その、〇〇さんの処方の…」と詰まると、向こうもいら立ち、こちらはさらに焦る。この悪循環が「怒られた」という記憶になりやすいんです。
逆に言えば、準備で消せる怖さがかなりあります。その前に、疑義照会がどういう位置づけの仕事なのかを確認しておきます。
管理薬剤師たろう怖いと感じるのは、確認の重さを分かっている証拠だと僕は思います。
疑義照会は薬剤師の義務で、多くが処方変更につながる
「こんなことで電話していいのかな」とためらう人ほど、ここを知っておいてほしいです。疑義照会は、薬剤師の気づかいや判断で「してもしなくてもいい」ものではありません。
薬剤師法24条で照会は義務
薬剤師法第24条は、処方箋に疑わしい点があれば医師に問い合わせることを求めています。確かめた後でなければ、調剤してはいけません。
この規定に違反した場合の罰則もあります(第32条、50万円以下の罰金)。電話しないで出すほうが、法律上は問題になるということです。
医師が忙しそうでも、疑問を持ったまま調剤しない。これは薬剤師が守るべき線で、遠慮の問題ではありません。そう考えると、受話器を取る理由が少しはっきりすると思います。
薬学的照会の約75%で処方変更
日本薬剤師会の平成27年度全国薬局疑義照会実態調査は、2015年7月の7日間の記録です。818薬局の処方箋約29.7万枚が集計されています。
- 疑義照会率:2.56%
- うち薬学的な照会:78.10%
- 薬学的照会の処方変更率:74.88%
疑義照会があったのは処方箋100枚のうち2〜3枚ほどです。そのうち用法・用量や重複、残薬などの薬学的な照会では、4件に3件が処方変更につながっていました。
もちろん、残りは「変更なし」で終わっています。それでも、確かめたうえで「このままで大丈夫」と分かることにも意味があります。電話する前から「どうせ自分の勘違いだ」と決めつけなくていいんです。
回答は処方箋に記録する
照会した結果は、口頭で終わりにしません。薬剤師法施行規則第15条で、疑わしい点を確かめた場合はその回答の内容を処方箋に記入すると決まっています。医師の同意を得て変更した場合は、その変更の内容も記入します。
誰に、いつ、何を聞いて、どう答えてもらったか。記録が残ると、あとで「言った・言わない」になったときに自分を守る材料にもなります。
疑義照会の電話前に作るメモ1枚
怖さを減らすのに一番効くのが、電話の前に小さなメモを1枚作ることです。付箋でも処方箋の控えでもいいので、次の4つを書き出します。
- 患者名と処方の何の話か
- 何が疑問か(一言で)
- 確認したい結論
- 想定される回答パターン
たとえば「ワーファリンと追加薬の相互作用」「減量か、併用のままか」と書きます。結論の選択肢まで先に書いておくのがコツです。
想定される回答ごとに、次に何をするかも一言添えておきます。「減量なら何mgか聞く」「変更なしなら理由を一言もらう」。頭が真っ白になっても、メモを読み上げれば会話は成立します。
電話の前に一度深呼吸して、最初の一文だけ小声で口に出してみるのも効きます。出だしさえ滑り出せば、あとは意外と流れていきます。
生年月日や根拠(添付文書など)、代わりの提案まで入れたメモの項目は、コミュ障の薬剤師が場面別に使える会話の型の疑義照会の節に書きました。服薬指導や同僚との会話の型も一緒に載せています。
疑義照会の怖さが消える「伝え方の型」3ステップ
緊張する人ほど、話の順番がぐちゃぐちゃになりがちです。型を決めておくと、考えなくても口が動くので楽になります。
僕がおすすめしたいのは、シンプルな3ステップです。
①名乗りと用件を最初に
最初に「〇〇薬局の薬剤師の〇〇です。本日の〇〇様の処方について確認したいことがあります」と、名乗りと用件を一息で言い切ります。
ここで「お忙しいところすみません…」を長々とやると、相手は何の話かつかめません。謝罪は一言でいいので、まず用件の入口を見せるのが大事です。
医師も看護師さんも、用件がはっきりした電話のほうが対応しやすいはずです。これは相手のためでもあります。
②結論から30秒で伝える
次に、疑問の中身を結論から短く伝えます。「〇〇と△△の併用で相互作用が気になります。減量の必要はないでしょうか」のように、確認したい点を先に出します。
背景や経緯を最初に長く説明すると、聞く側は「結局何を聞きたいの?」となります。最初の30秒で「何を確認したいか」が伝われば、ほぼ成功です。
補足は、相手に聞かれてから足せば十分です。先回りして全部説明しようとしないほうが、むしろ伝わります。
③復唱して終わる
回答をもらったら、必ず復唱して終わります。「では〇〇mgに減量、ということで承知しました。ありがとうございます」という形です。
復唱は聞き間違いを防ぎますし、処方箋に記録する内容の確認にもなります。終わり方が決まっていると、電話全体が怖くなくなります。
慣れるまでは、メモに①②③と番号を振っておくのもおすすめです。
疑義照会で医師に怒られたときの対応
準備して型どおりに話しても、強い口調で返されることはあります。診察の合間で医師に余裕がないときもあるからです。怒られたときに大事なのは、その場の対応とあとの整理を分けることです。
その場では用件だけ確かめる
強く言われると、謝って電話を切りたくなります。でも、疑問が解けないまま切ると、法律上も調剤を進められません。
口調には反応せず、「確認したいのは1点だけです」と用件に戻します。回答をもらったら復唱してお礼を言い、そこで終わりにして大丈夫です。
怒られやすい原因を切り分ける
電話のあとで、原因が自分の伝え方にあったのか、相手の状況にあったのかを分けて考えます。伝え方で見直しやすいのは、次のような点です。
- 前置きが長かった
- 何を聞きたいか曖昧だった
- 根拠を示せなかった
- 前回と同じ内容を聞いた
最後の「前回と同じ内容」は、薬歴を見れば防げることが多いです。以前に同じ照会をして「このままで」と回答をもらっていないか、電話の前に確認しておきます。
どれにも当てはまらないなら、相手の忙しさや機嫌の問題だった可能性が高いです。そこまで自分の責任として背負わなくていいと思います。
記録を残して先輩と共有する
回答の内容は処方箋と薬歴に残します。強い口調だったことも含めて、先輩や管理薬剤師に一言共有しておくと、次に同じ医師へ電話するときの作戦を一緒に考えられます。
管理薬剤師の立場から見ると、困るのは「怒られたから次は照会しない」ことのほうです。1人で抱え込まずに、店の問題として扱ってもらってください。
対人で詰まりやすい人は、服薬指導の会話例もあわせて読むと、フレーズの引き出しが増えると思います。
疑義照会の電話を減らすプロトコル(事前合意)
医師がいら立ちやすい電話には、毎回ほぼ同じ答えになる問い合わせもあります。銘柄や剤形の変更、残薬による日数調整などです。こうした確認を減らす仕組みが、医療機関と薬局の「事前合意プロトコル」です。
形式的な確認は事前合意で減る
厚生労働省の通知「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について」(2010年)には、薬剤師を活用したい業務が並んでいます。その一つが、医師・薬剤師が事前に作成・合意したプロトコールに基づく薬の変更です。
これを院外処方箋に広げた例として、京都大学医学部附属病院の「院外処方箋における問い合わせ簡素化プロトコル」があります。合意書を交わした薬局では、たとえば次のような変更を問い合わせなしで行えます。
- 同じ成分の銘柄変更
- 剤形・規格の変更
- 患者希望などでの一包化
- 残薬による日数調整
どれも患者さんへの説明と同意が前提で、麻薬は対象外です。変更した内容は病院へFAXで連絡し、残薬調整はトレーシングレポートでの情報提供が求められています。
地域の薬剤師会と病院で合意した例もあります。岐阜市の報告(薬学雑誌 2023年143巻9号)では、照会が不要になった処方で患者さんの待ち時間が短くなっていました。照会が必要な処方と比べた結果です。
自分の薬局が応需している病院にプロトコルがあるか、管理薬剤師に聞いてみてください。合意済みの範囲を知っているだけで、「これも電話しなきゃいけないのか」という迷いが一つ減ります。
薬学的な疑いは電話で確かめる
注意したいのは、プロトコルが対象にしているのは「調剤上の典型的な変更」だという点です。京大病院は名称を「疑義照会簡素化」から「問い合わせ簡素化」に改めています。薬剤師法23条(同意を得た変更)と24条(疑義照会)を区別するためです。
用量が多すぎる、併用に禁忌がある、副作用が疑われる。こうした薬学的な疑問は、プロトコルがあってもこれまでどおり医師に確かめます。電話が減るぶん、残った電話は「本当に確かめる必要があるもの」と考えると、受話器を取る迷いも小さくなるはずです。
それでも疑義照会が怖い…が「職場のせい」なこともある
ここまで慣れ方を書いてきましたが、全部が自分の問題とは限りません。職場の環境が、怖さを必要以上に大きくしているケースもあります。
準備して型を覚えても毎回胃が痛いままなら、原因は別にあるかもしれません。
高圧的な医師が固定されている
門前のクリニックが1つだけで、その医師がいつも高圧的だと、毎日が憂うつになります。薬剤師個人の努力でどうにかなる範囲を超えていることもあります。
相手の機嫌に毎回振り回されるなら、あなたが弱いのではなく、その関係がしんどいだけです。
どうしても無理な相手なら、複数の医療機関の処方を受ける薬局のほうが、精神的には楽な場合があります。電話の相手が1人に固定されないからです。
相談できる先輩がいない一人体制
一人薬剤師だと、判断を全部自分で背負うので、疑義照会の怖さも大きくなります。「これは照会すべきか」を相談できる相手がいないのは、想像以上にきついものです。
人がいても相談できない職場もあります。僕が30歳で入って2ヶ月で辞めた調剤薬局Cでは、質問すると「自分で考えて」と返されました。照会すべきか迷ったときに聞ける人がいるかどうかで、電話のハードルはまったく違います。
今の職場の体制そのものがしんどいなら、それは転職で変えられる部分かもしれません。詳しくは一人薬剤師がきつい理由の記事に書いています。
次の職場を探すなら、薬剤師の人数や応需している医療機関の数は、求人票だけでは分かりにくい部分です。職場見学や、転職エージェントへの相談の段階で確かめておくと安心です。エージェントの比較は薬剤師転職エージェントのおすすめ比較にまとめています。
- まずメモと型で場数を踏む
- 先輩に相談できるか確認
- それでも毎日つらいか見極め
- 環境が原因なら職場を検討
疑義照会が怖い薬剤師のよくある質問
最後に、疑義照会の怖さや緊張について、よくある疑問にまとめて答えておきます。
- 疑義照会の緊張はいつ慣れますか?
個人差が大きく、何か月で慣れるとは言い切れません。メモと型を使って回数を重ねるほど、出だしで詰まることは減っていきます。焦らなくて大丈夫です。
- 医師に怒られたらどうすればいいですか?
口調には反応せず、確認したい1点だけを伝えて回答をもらい、復唱して切り上げます。回答は処方箋と薬歴に記録し、先輩や管理薬剤師に共有しておきましょう。
- 言い方のテンプレはありますか?
「名乗り+用件」→「結論から疑問」→「復唱」の3ステップが基本です。最初の一文を口に出して練習しておくと、出だしで詰まりにくくなります。
- 自分の指摘が間違ってたら恥ずかしいです
「念のため確認させてください」という形で聞けば問題ありません。日本薬剤師会の調査でも、薬学的な照会の約4分の1は処方変更なしで終わっています。確認はミスではありません。
- 新人でも疑義照会していいんですか?
もちろんです。疑わしい点を確かめるのは、経験年数に関係なく薬剤師の義務です。不安なら先輩に内容を見てもらってから電話すると、落ち着いて話せます。
- 電話より疑義照会のFAXのほうが楽では?
医療機関がFAXでの照会を受け付けていて、急がない内容なら選択肢になります。回答まで時間がかかることもあるので、患者さんを待たせる場合は電話のほうが早いこともあります。
- 声が震えてしまうのを直したいです
電話の前に一度深呼吸して、最初の一文を小声で言ってから受話器を取ると落ち着きやすいです。メモを読み上げる形にすれば、声が震えても用件は伝わります。
- 忙しそうな時間に電話するのが申し訳ないです
患者さんの安全に関わる確認は、遠慮しすぎなくていいです。急がない内容なら時間帯に配慮しつつ、必要な照会はしましょう。疑問を残したまま調剤しないのが薬剤師の役目です。
- 毎回怖くて仕事を辞めたいレベルです
その場合は職場環境が原因のことも多いです。高圧的な医師が固定されていたり、相談相手がいない体制だと負担は大きくなります。環境を変える選択肢も考えていいと思います。
- 疑義照会が苦手な人は薬剤師に向いてない?
そうは思いません。怖いと感じるのは、確認の重さを分かっているからです。苦手さは準備と型でかなり補えるので、向き不向きをすぐに決めなくて大丈夫です。
疑義照会が怖い薬剤師へのまとめ
疑義照会は薬剤師法で決められた義務で、薬学的な照会の多くは処方変更につながっています。怖くても、あなたの確認は患者さんの役に立っています。
電話の前にメモを1枚作り、名乗り→結論→復唱の型で話す。怒られても用件は確かめ、記録して先輩と共有する。形式的な確認は、プロトコルがあれば電話そのものを減らせます。
それでも毎日つらいなら、自分ではなく環境のせいかもしれない、ということも頭の隅に置いておいてください。
- 怖いのは新人なら普通のこと
- 照会は薬剤師法24条の義務
- 電話前にメモを1枚作る
- 名乗り→結論→復唱で話す
- 怒られても記録して共有
- 環境が原因なら職場も検討
「職場そのものがしんどい」と感じている人は、人間関係がつらい薬剤師へも読んでみてください。





