ミスばかりで辞めたいとき、先に決めたいのは「辞めるかどうか」より「ミスが続く原因がどこにあるか」です。
原因が自分の手順や知識にあるなら、今の職場で直せます。人手や仕組みにあるなら、あなたが頑張るほど消耗します。職場側の原因が大きく、相談しても変わらないなら、辞めるのは薬剤師ではなく今の職場で十分です。
どちら寄りかは、2週間ほどミスとヒヤリの条件を記録するとかなり見えてきます。僕は薬剤師歴10年目の管理薬剤師で、スタッフの教育や薬歴の監査も担当しています。転職は3回、そのうち2回は失敗しました。
この記事では、ミスが続く原因の切り分け方と、続けるか辞めるかの判断基準を順に書きます。ミスをした直後の報告や落ち込みの抜け方は、調剤ミスをやらかして落ち込む薬剤師向けの記事にまとめています。
- 調剤4年→DS2年→調剤4年
- いまは管理薬剤師(34歳)
- 転職を3回経験し、うち2回は失敗。
- 3回目で年収480万→610万にアップ
- 人気転職エージェント5社を全部利用
「同じ失敗をしてほしくない」という思いで、薬剤師のリアルを本音で書いてます。
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薬剤師のミスが続く原因は「自分側」と「職場側」に分けて考える
ミスが続くと「自分は薬剤師に向いていない」と一つの答えに飛びがちです。実際のミスは、本人の要因と職場の条件が重なって起きることが多いです。
公的なデータで見てみます。日本医療機能評価機構の薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 2024年年報には、調剤に関するヒヤリ・ハット事例が19,304件あります。その「発生要因」(複数回答)の上位は次のとおりです。
| 発生要因 | 件数 | 年報の分類 |
|---|---|---|
| 判断誤り | 9,407 | 当事者の行動 |
| 繁忙であった | 9,037 | 発生時の状況 |
| 慣れ・慢心 | 8,322 | 当事者の背景 |
| 焦り・慌て | 5,647 | 当事者の背景 |
| 医薬品の名称類似 | 3,866 | 薬剤・設備 |
| 薬局内のルールや管理の体制・仕方 | 3,627 | 薬局内の管理 |
| 手順不遵守 | 2,892 | 当事者の行動 |
| 知識不足 | 2,824 | 当事者の背景 |
「判断誤り」や「慣れ・慢心」など本人側の要因が並ぶ一方で、「繁忙であった」が2番目にきています。名称類似や薬局内のルールのように、本人の努力だけでは変えにくい要因も上位です。
複数回答なので、1件のミスに本人側と職場側の要因が一緒に挙がっていることも多いと読めます。「焦り・慌て」も、忙しさと切り離しにくい要因です。
自分側で直せる原因
次のような原因は、記録と手順の見直しで減らせる余地があります。
- 薬の知識が追いついていない
- 確認の手順が自己流
- 慣れて確認を省いている
- 寝不足や体調不良が続く
新人のうちは知識不足、慣れてきた頃は確認の省略が出やすいと思います。どちらも「自分がダメ」ではなく、直す場所がはっきりしている状態です。
職場側にある原因
一方で、次のような条件がそろっている職場では、本人の注意だけでミスを減らすのは難しいです。
- 人手が足りず常に忙しい
- 調剤中に何度も呼ばれる
- 似た名前の薬が隣に並ぶ
- 監査の仕組みがない
- 質問しにくい空気がある
監査を一人で抱える職場については、ダブルチェックがない薬局での守り方で詳しく書きました。
僕のDS時代は職場側だった
28歳で年収に釣られて移ったドラッグストア併設の調剤は、月の残業が45時間ほどありました。調剤に加えてOTCの接客、レジ、品出しがあり、週の半分は遅番でした。閉店後の品出しで夜10時になる日もありました。
上の表で言えば「繁忙であった」が毎日当てはまる職場です。調剤の手を止めて別の仕事に移る働き方で、同じ集中力を保てていたとは今でも思えません。
質問しにくい空気も、ミスの芽を放置する職場側の要因です。30歳で入って2ヶ月で辞めた調剤薬局では、質問すると「自分で考えて」と返ってきました。分からないことをその場でつぶせない職場では、確認できないままの調剤が残ります。
薬剤師のミスの原因を切り分ける2週間の記録のつけ方
ミスをした夜に布団の中で反省会をしても、原因はなかなか見えてきません。頭の中の反省は感情に飲まれやすいからです。
代わりに、ミスやヒヤリが出た日に5分だけ、そのときの条件を書き出してください。感情ではなく条件を書くのがコツです。記録は職場のヒヤリ・ハット報告とは別の、自分用のメモで構いません。
記録する6つの項目
- 起きた時刻と混み具合
- たまっていた処方箋の枚数
- 直前の電話や呼び出し
- ミスが出た工程
- 取り違えた薬の組み合わせ
- 前日の睡眠と体調
患者さんの名前など個人を特定できる情報は、自分用のメモに書かないでください。「夕方・処方箋8枚待ち・電話の直後・計数」のように条件だけで十分です。
記録から原因を振り分ける
2週間ほどたまったら、傾向を見て次の表に当てはめます。
| 記録に出た傾向 | 寄っている側 | 次の一手 |
|---|---|---|
| 同じ薬や同じ工程で起きる | 自分側(知識・手順) | 確認の手順を決めて固定する |
| 混む時間や呼ばれた直後に集中 | 職場側(繁忙・中断) | 中断後の再開ルールを相談する |
| 名前や見た目が似た薬で起きる | 職場側(配置) | 棚の配置や注意表示を相談する |
| 寝不足の日に増える | 自分側(体調) | 休養を優先し、続くなら受診 |
| 時間も工程もばらばら | 両方が重なっている | 記録を持って上司と見直す |
書き出してみると、ミスが「自分の人格の欠陥」ではなく「条件の重なり」に見えてきます。自分を責める時間が減るだけでも、翌日の調剤は落ち着きやすくなります。
2週間はあくまで目安です。ミスの数が少ないうちは、もう少し長く続けたほうが傾向がはっきりします。
自分側の原因なら薬剤師が今の職場で試すこと
記録が自分側に寄っていたら、辞める前に今の職場で手を打てます。ここは管理薬剤師として、スタッフを見ている立場から書きます。
確認の手順を1つに決める
ミスが同じ工程に集まっているなら、その工程だけ確認のやり方を固定します。規格は声に出して読む、計数は数え直す、などです。
途中で呼ばれたときは、戻ったらその処方の最初から確認し直すと決めておくと安心です。どこまで見たかを記憶に頼らないのがポイントです。職場に手順書があるなら、自己流よりそちらを優先してください。
報告の速さは一流になれる
調剤の腕は経験に比例するので、新人が先輩に勝てないのは当たり前です。でも報告の速さだけは、1年目から一流になれます。
ミスやヒヤリに気づいたら、すぐに報告する。報告が遅れるほど、患者さんが薬を飲んでしまう可能性が上がるからです。取り返しがつくかどうかは、報告の速さに大きく左右されます。
報告して詰められるかどうかは、職場の問題です。「報告したら責められるから言いにくい」と感じるなら、それは職場側の要因です。判断基準の章でもう一度触れます。
聞ける人を1人確保する
知識不足が原因なら、分からないことをその場で聞ける人がいるかどうかで差がつきます。「これ合ってますか」と聞ける先輩を1人でも作っておくと、確認できないままの調剤が減ります。
見分け方は、先輩同士が気軽に確認し合っているかです。ベテラン同士が「これ合ってる?」と言い合える職場なら、新人も聞きやすいはずです。
記録を持って上司に相談
記録に職場側の要因も混ざっていたら、それを持って管理薬剤師や上司に相談してください。「夕方の電話の直後に計数ミスが続いています」と具体的に言われると、相談を受ける側は対策を考えやすくなります。
管理薬剤師の立場から言うと、配置や手順を変えるには理由が要ります。本人の記録は、その理由として一番使いやすい材料です。
ミスへの恐怖そのものが強くて手が止まる人は、調剤のミス・監査が怖い薬剤師へ書いた記事も参考にしてください。
薬剤師がミスばかりで辞めるか続けるかを決める判断基準
判断の軸は「職場側の原因が、相談して変わるかどうか」です。自分側の原因は自分で直せますが、職場側の原因は職場が動かないと変わりません。
記録を持って相談したあと、どう変わるかを見る期間を自分で決めておくと迷いにくくなります。そのうえで、次の表のどちらに近いかを見てください。
| 続けて立て直せる | 職場を変えたほうがいい | |
|---|---|---|
| 相談したとき | 配置や手順を一緒に見直す | 気合いの話で終わる |
| 人手 | 一時的に忙しいだけ | 欠員が何か月も埋まらない |
| 報告したとき | 責めずに原因を聞く | 責められて終わる |
| 記録の傾向 | 自分側に寄っている | 職場側に寄っている |
| 体調 | 休めば戻る | 出勤前の不調が続く |
左側が多いなら、今の職場で立て直せる見込みがあります。右側が多く、相談しても変わらないなら、同じ条件のまま次のミスが起きやすい状態です。
体のサインが出たら先に休む
判断の前に、体の状態を確認してください。心の限界は自覚しにくいですが、体には先に出ます。
- 出勤前に胃が痛む
- 寝つけない・夜中に起きる
- 休日もミスを考えてしまう
- 通勤中に動悸や涙が出る
- 駐車場や玄関で足が止まる
僕が2ヶ月で辞めた調剤薬局では、人間関係のしんどさから出勤前に胃がキリキリしました。駐車場に車を停めたまま、降りられない朝もありました。きっかけがミスでも人間関係でも、体に出たら無理を続けないほうがいいと思います。
この状態で「もっと注意しよう」と頑張ると、疲れでかえってミスが増えやすくなります。不調が続くなら、心療内科や産業医に相談してください。厚生労働省のこころの耳(相談窓口案内)では、働く人向けの相談窓口を探せます。
人間関係のつらさも重なっている人は、人間関係がつらい薬剤師への記事も判断材料にしてください。
辞めるのは薬剤師より職場
「薬剤師を辞めるか」と「今の職場を辞めるか」は別の問題です。ミスが続いた原因が職場の条件なら、職場を変えるだけで状況が変わる可能性があります。
調剤薬局でも、門前の診療科や人員の厚さで忙しさはかなり違います。病院、在宅に力を入れる薬局、派遣で職場を試してから決めるやり方もあります。一つの職場が合わなかったことで、免許を手放す必要はありません。
新人の方は、薬剤師1年目が辛い時の乗り越え方に辞める目安と退職の手順をまとめています。
辞める前に薬剤師が外の選択肢を持っておく理由
判断基準で「変えたほうがいい」側に寄っていても、今すぐ退職届を出す必要はありません。先に、外の求人を見られる状態にしておくのがおすすめです。
転職にはリスクがありますが、情報を集めること自体にはほとんどリスクがありません。外の選択肢があるかどうかで、同じミスをしたときの受け止め方も変わると思います。
| 逃げ道なし | 逃げ道あり | |
|---|---|---|
| ミスした夜 | 「もう終わりだ」と追い込まれる | 「最悪ここを出ればいい」と思える |
| 上司への相談 | 嫌われたら困るので言えない | 改善を提案しやすい |
| 職場の異常さ | 普通だと思い込んで耐える | 外の求人と比べて気づける |
求人票で人手は分からない
次の職場を探すときに気をつけたいのが、ミスの一番の温床になる人手不足は、求人票からはほぼ読めないことです。
僕は今、管理薬剤師として欠員募集に関わっています。求人票の文面を作るのは本部で、店から上げるのは「欠員の理由」「希望する勤務時間帯」「常勤かパートか」の3点だけです。上がってきた原稿を見て、「うちの残業はこんなに少なくない」と思ったこともあります。
2ヶ月で辞めた調剤薬局の求人票も、あとで読み返すと嘘は1行もありませんでした。足りなかったのは、書かれていなかったことです。次を探すなら、この3つは必ず確かめてください。
- 常勤の薬剤師は何人か
- 欠員補充か増員か
- 前任者はいつ辞めたか
3回目の転職では、応募前に必ず職場見学を入れ、エージェントの担当者に過去2回の転職の失敗を正直に全部話しました。見学では、忙しい時間帯の人の配置や、監査を誰がしているかも見ておくと安心です。
管理薬剤師たろう求人票を出す側になって、書かれていないことのほうが大事だと分かりました。
内情はエージェント経由で聞く
上の3点は、応募前の自分からは聞きにくい質問です。転職エージェントを通せば、担当者に確認してもらえます。登録は無料で、登録したからといって転職しないといけないわけでもありません。
今申し込めるところでは、中小の調剤薬局や病院の求人を強みに挙げるファゲット、地方や派遣の求人に強いMC-ファーマネットがあります。派遣で職場を試してから決めたい人は、派遣・転職を扱うアプロ・ドットコムも選択肢です。
僕自身はこの3社を使っていません。違いは薬剤師転職エージェントのおすすめランキングで比べられるようにしています。口コミはファゲットの口コミ・評判とMC-ファーマネットの口コミ・評判にまとめています。
求人を見るだけの相談でもOKです
短期間で辞めた経験の伝え方など、転職での失敗は僕と現場の薬剤師の転職失敗談にまとめています。
薬剤師のミスと辞めたい悩みに関するよくある質問
ミスが多いと薬剤師に向いていないのでしょうか?
ミスの多さだけで適性は決まりません。ヒヤリ・ハットの発生要因には、本人の要因と並んで「繁忙であった」や薬局内のルールなど職場側の要因も多く挙がっています。まずは記録で、原因がどちらに寄っているかを確かめてください。
調剤ミスをしてしまったとき、まず何をすべきですか?
隠さず、すぐに上司へ報告することが最優先です。患者さんの安全確認や処方医への連絡は、薬局として動く必要があります。直後の対応の順番は、調剤ミスで落ち込む薬剤師向けの記事で詳しく書いています。
ミスが怖くて出勤前に体調が悪くなります。どうすれば?
動悸や不眠、食欲不振などの体のサインが出ているなら、無理を続けないでください。心療内科や産業医への相談、職場から距離を取ることも選択肢です。免許は逃げないので、立て直してから戻れます。
新人なのにミスが多いです。辞めるのは早すぎますか?
新人のうちは知識不足からミスが出やすいので、まず確認の手順を固め、聞ける人がいるかを見てください。指導が雑で相談もできない職場なら、早めに離れる判断もありです。我慢だけが正解ではありません。
何年も働いているのに、最近ミスが増えました。
ヒヤリ・ハットの発生要因では「慣れ・慢心」も上位にあります。慣れた工程ほど確認を省きやすいので、記録でミスが出る工程を探し、そこだけ確認の手順を固定してみてください。忙しさや体調の変化が重なっていないかも見てください。
2ヶ月など短期間で辞めると次の転職に響きますか?
僕自身2ヶ月で辞めた職場がありますが、そのあと次の職場に転職できました。短期離職の理由と、次に何を重視するかを正直に話せれば、それだけで道が閉ざされるわけではないと思います。
ミスが減る職場かどうか、面接で見抜けますか?
面接だけでは難しいので、職場見学をおすすめします。常勤の薬剤師の人数、欠員補充か増員か、前任者がいつ辞めたかは求人票に書かれにくいので、担当者経由で確認してください。
辞める前に上司に相談したほうがいいですか?
相談できる上司なら、記録を持って人手や仕組みの改善をお願いする価値はあります。相談しても変わらない、相談自体ができない空気なら、職場側の問題が大きいと考えていいです。
転職エージェントに「ミスが多くて辞めたい」と正直に言っていい?
言っていいです。正直に話したほうが、相談しやすい職場や監査体制が整った求人を探してもらいやすくなります。僕も3回目の転職では、過去2回の失敗を担当者に全部話しました。
調剤自体が向いてない気がします。違う働き方もありますか?
あります。同じ調剤でも門前の診療科や人員で忙しさは変わりますし、病院や在宅、派遣など働き方の選択肢もあります。一つの職場が合わないだけで、薬剤師を諦める必要はありません。
辞めるか決めていないのに転職エージェントに登録してもいいですか?
問題ありません。登録も利用も無料で、転職しない選択も自由です。外の求人を知る目的だけで使って構いません。合わなければ連絡を止めればいいだけです。
薬剤師がミスばかりで辞めたいときのまとめ
ミスが続くときは、自分を責める前に原因を「自分側」と「職場側」に分けてください。2週間の記録があれば、どちらに寄っているかと次の一手が見えてきます。
薬剤師を辞める前に、職場を辞める。この順番だけは間違えないでください。
あなたが悪いのか環境が悪いのかは、記録と、外の選択肢との比較で見えてきます。無料でできる情報収集から、静かに始めてみてください。





