薬剤師の時給は、たしかに高めです。令和6年の統計で、パート薬剤師の平均は1時間2,639円。パートで働く人全体の平均1,476円の約1.8倍です。
理由は、調剤が薬剤師にしかできないことと、薬局に置く薬剤師の人数が法律で決まっていることです。人が1人欠けるだけで、薬局は回らなくなることがあります。
「派遣なら時給3,000円」という話も本当でした。2026年9月24日に派遣会社1社の公開求人を数えると、派遣の約7割が時給3,000円以上です。ただし直接雇用のパートでは、3,000円以上は2%もありません。
僕は薬剤師歴10年目の管理薬剤師です。欠員が出たときの一次面接も担当しています。この記事では、時給が高い理由を統計と法律で確かめ、派遣3,000円の中身と、自分の時給を上げたい薬剤師が取れる手を書きます。
- 調剤4年→DS2年→調剤4年
- いまは管理薬剤師(34歳)
- 転職を3回経験し、うち2回は失敗。
- 3回目で年収480万→610万にアップ
- 人気転職エージェント5社を全部利用
「同じ失敗をしてほしくない」という思いで、薬剤師のリアルを本音で書いてます。
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薬剤師の時給は本当に高すぎるのか、統計で比べる
パート平均は2,639円
厚生労働省の賃金構造基本統計調査(令和6年)では、短時間で働く薬剤師の1時間あたりの所定内給与は2,639円でした(短時間労働者 職種第1表)。残業代や賞与を含まない、基本の時給です。
同じ調査で、短時間労働者全体の平均は1,476円です(令和6年賃金構造基本統計調査の概況)。薬剤師はその約1.8倍なので、「高い」と感じるのは自然です。
同じ表を見ると、パート薬剤師の平均は53.6歳、1日6.0時間・月14.1日の勤務です。ベテランの多い集団の平均なので、ブランク明けや経験の浅い人がそのまま2,639円になるとは限りません。
正社員を時給にすると
一方で、正社員の薬剤師を時給に直すと、印象は少し変わります。僕の過去の年収で計算してみました(月の所定を160時間と仮定)。
- 調剤薬局A:約2,190円
- DS併設B:約2,240円
Aは4年目の年収420万円、Bは年収550万円で、Bは月45時間ほどの残業を足して割っています。ボーナス込みでも、パートの平均2,639円より低いんです。
パートの時給が高いのは、賞与や退職金が少ない代わりに、1時間の単価で払われているからでもあります。統計でもパート薬剤師の年間賞与は平均9.5万円でした。「時給だけ見ると高すぎる」と感じたら、年収と働く時間までセットで比べてみてください。薬剤師の給料が割に合わないかを時給で検証した記事で、この計算の前提を詳しく書いています。
薬剤師の時給が高い3つの理由
①調剤は薬剤師しかできない
薬剤師法第19条は、薬剤師でない人が販売や授与の目的で調剤することを禁じています(医師などの例外あり。薬剤師法)。事務さんや登録販売者に、調剤そのものを代わってもらうことはできません。
薬剤師になるには、6年制の薬学部を出て国家試験に受かる必要があります。すぐに人を増やせない資格なので、1時間の単価が下がりにくいんです。
②処方箋40枚に1人の基準
薬局には、1日平均の処方箋40枚ごとに薬剤師を1人以上置く決まりがあります(薬局並びに店舗販売業及び配置販売業の業務を行う体制を定める省令)。眼科・耳鼻咽喉科・歯科の処方箋は、3分の2枚として数えます。
つまり薬剤師が1人辞めると、その薬局は人数の基準を満たせなくなることがあります。管理薬剤師の僕の感覚でいうと、新人が辞めたら、まず僕の休みのシフトが消えます。
残った人で埋められないとき、薬局は時給を上げてパートを募るか、派遣に頼るしかありません。「高い時給を払ってでも、今月の穴を埋めたい」という事情が、高時給の求人を生んでいます。
③地方と病院で人が足りない
「薬剤師は余っている」という話もよく聞きます。ただ厚生労働省が2023年に出した薬剤師偏在指標では、足りている地域と足りない地域の差がはっきり出ています(厚生労働省 事務連絡「薬剤師偏在指標等について」)。
- 薬局は全国で1.08
- 東京は1.42、大阪は1.12
- 1.0未満が28府県
- 病院は全国で0.80
指標は1.0が目標で、下回るほど薬剤師が足りない地域です。薬局で最も低いのは福井県の0.73でした。病院は47都道府県すべてで1.0を下回っています。
都市部の薬局は人が集まりやすく、地方や病院は集まりにくい。この差が、地域ごとの時給の差になって表れます。
薬剤師の派遣で時給3,000円が出る仕組み
派遣の7割が3,000円以上
2026年9月24日に、派遣・パートの求人を多く扱うファル・メイトの公開求人を、時給の下限で絞り込んで数えました。
| 時給の下限 | 派遣 | パート |
|---|---|---|
| 全件 | 5,326件 | 5,080件 |
| 2,000円以上 | 5,284件 | 4,262件 |
| 2,200円以上 | 5,275件 | 832件 |
| 3,000円以上 | 3,841件 | 83件 |
| 3,500円以上 | 1,273件 | 12件 |
| 4,000円以上 | 240件 | 3件 |
派遣は約72%が時給3,000円以上です。一方でパートは、約3分の2が下限2,000〜2,199円の求人でした。3,000円以上は83件で、全体の2%に届きません。
「派遣3,000円」は珍しい話ではなく、派遣という働き方の標準的な数字です。直接雇用のパートと同じ土俵で比べると、話がかみ合わなくなります。なお求人の金額は「〜」付きの下限で、1社分の数字です。
派遣の時給が高いわけ
派遣の時給が高いのには、仕組みの理由があります。
- 産休代替など期間限定
- 急ぎの欠員の穴埋め
- 賞与や退職金が前提でない
薬局は派遣会社に「派遣料金」を払い、派遣会社がそこから時給を払います。料金と賃金の差(マージン率)は、派遣会社が公開する決まりです(厚生労働省「派遣元事業主・派遣先の皆様」)。薬局から見ると、派遣は時給以上にお金がかかる手段です。
それでも使うのは、②で書いたように人数の基準を割るわけにいかないからです。長く雇う前提ではないぶん、その期間の時給に上乗せされる、と考えると分かりやすいと思います。
地方ほど3,500円以上が多い
同じ日に、派遣求人を都道府県別にも数えました。3,500円以上の割合は、偏在指標の低い地域ほど高い傾向です。
| 地域 | 派遣求人 | 3,500円以上 |
|---|---|---|
| 東京 | 668件 | 180件(27%) |
| 大阪 | 725件 | 19件(3%) |
| 愛知 | 260件 | 85件(33%) |
| 福岡 | 553件 | 65件(12%) |
| 北海道 | 100件 | 52件(52%) |
| 秋田 | 20件 | 10件(50%) |
| 愛媛 | 30件 | 23件(77%) |
地方は件数こそ少ないものの、出ている求人の単価が高めです。大阪は件数が多い一方、3,500円以上はわずかでした。住んでいる地域で「3,000円が普通かどうか」は、かなり変わります。
高時給の派遣の注意点
時給だけで決めると、あとで困りやすい点もあります。
- 同じ職場は原則3年まで
- 単発派遣には条件がある
- 病院は原則派遣できない
- 契約が切れると収入が途切れる
同じ事業所の同じ組織単位で派遣として働けるのは、原則3年までです(厚生労働省「派遣期間制限について」)。派遣会社に無期雇用されている人は対象外です。
31日未満の単発派遣(日雇派遣)は原則禁止です。本業の年収500万円以上、世帯年収500万円以上で主たる生計者でない人、60歳以上、昼間学生などに限って認められています(厚生労働省の改正Q&A)。
病院などでの医療関係の業務は、紹介予定派遣などを除いて派遣が禁止されています(厚生労働省「派遣労働者として就業できない業務があります」)。薬剤師の派遣先は、薬局やドラッグストアが中心です。
もう1つ、時給が高くても週の勤務時間が短いと、社会保険に入れないことがあります。手取りで比べる前に派遣薬剤師の社会保険はどう決まるのかを解説した記事で、自分の勤務条件を当てはめてみてください。
薬剤師のパート時給が上がらない3つの原因
ここからは、自分の時給を上げたい薬剤師向けの話です。月給や年収まで含めて「給料そのものが上がらない」と感じている人は、薬剤師の給料が上がらない原因とその対処法のほうが当てはまるかもしれません。
①時給表に上限がある
パートの時給は、会社ごとの時給表で決まっていることが多いです。表の上限まで来ていると、何年働いても頭打ちになります。
まずは入社時の労働条件通知書や就業規則で、昇給の有無と時期を確かめてください。「昇給あり」と書かれていても、金額や基準まで決まっているとは限りません。
②店では時給を決めていない
これは求人を出す側に立って分かったことです。僕の職場で欠員を募集するとき、店から本部に上げるのは「欠員の理由」「希望する勤務時間帯」「常勤かパートか」の3つだけ。求人票の文面は本部が作ります。
時給は、店から上げる項目に入っていません。管理薬剤師に「時給を上げてほしい」と言うだけでは、決める人まで届かないことがあります。チェーンなら、本部の人事や上長の面談で話が上がるかを先に確かめるのが近道です。
③地域の相場を知らない
上の表のとおり、時給は地域でかなり違います。統計の2,639円は全国の平均なので、自分の地域の求人と並べないと高いか安いかは分かりません。
求人サイトで同じ市内・同じ業態のパート求人を5件ほど見て、時給の下限を書き出してみてください。自分の時給がその中でどこにいるかが、交渉するか動くかの判断材料になります。
薬剤師が時給を上げる3つの選択肢
①今の職場で交渉する
いちばん手間が少ないのは、今の職場での交渉です。材料は次の3つを用意すると話がしやすくなります。
- 地域の求人の時給の下限
- 勤続年数と今の時給
- 引き受けている業務
在宅の訪問や、人の少ない時間帯のシフトを引き受けているなら、それも材料になります。②で書いたとおり、話を持っていく相手は「時給を決められる人」です。
②派遣に切り替える
時給の数字だけなら、派遣がいちばん上がりやすい選択です。上の求人では、パートの多くが2,000円台前半、派遣の多くが3,000円以上でした。
その代わり、3年ルールや契約の切れ目があり、賞与や退職金はあてにできません。僕自身は転職活動のときにファル・メイトにも登録しましたが、職場の雰囲気を確かめてから決めたくて、派遣ではなく正社員を選びました。ファル・メイトの評判と単発の条件も参考にしてください。
派遣を考えるなら、派遣と転職の両方を扱うアプロ・ドットコムや、紹介予定派遣も扱うMC-ファーマネットもあります。僕はこの2社を使ったことはないので、公式の求人と条件を見て判断してください。紹介予定派遣は、派遣で働いてから直接雇用に移るかを決められる形です。
③パートのまま職場を変える
賞与や長く働ける安心も欲しいなら、パートのまま時給の高い職場へ移る手があります。地域の相場より明らかに低いなら、交渉より早いこともあります。
ただ、時給だけで職場を選ぶのはおすすめしません。僕は年収に釣られてDS併設の薬局に移り、残業で時給に直すとほとんど変わらなかった経験があります。応募の前に職場見学を入れて、人数と忙しさを自分の目で確かめてください。パートの時給の上げ方は薬剤師パートの時給相場でも詳しく書いています。
エージェントごとの違いは、転職で5社使った僕の比較にまとめています。
薬剤師の時給に関するよくある質問
- 薬剤師の時給3,000円は本当にありますか?
-
あります。2026年9月24日にファル・メイトの公開求人を数えると、派遣の約72%が下限3,000円以上でした。ただ直接雇用のパートでは、3,000円以上は2%未満です。
- パート薬剤師の平均時給はいくらですか?
-
令和6年賃金構造基本統計調査では、短時間で働く薬剤師の1時間あたり所定内給与は2,639円です。平均年齢は53.6歳なので、経験の浅い人はこれより低く出ることがあります。
- なぜパートより派遣のほうが時給が高いんですか?
-
派遣は産休代替や急な欠員など、期間を決めて穴を埋める働き方だからです。賞与や退職金を前提にしないぶん、その期間の時給が高く設定されます。薬局は派遣会社に料金を払うので、時給以上にお金がかかっています。
- 派遣で同じ薬局にずっと勤められますか?
-
同じ事業所の同じ組織単位で働けるのは、原則3年までです。派遣会社に無期雇用されている場合は対象外です。長く同じ職場にいたいなら、紹介予定派遣や直接雇用のパートも比べてください。
- 単発で時給3,000円以上の仕事はできますか?
-
31日未満の単発派遣は原則禁止で、本業の年収500万円以上・60歳以上・昼間学生などの条件に当てはまる人だけが働けます。管理薬剤師は、原則としてほかの場所で薬事の実務に就けません。詳しくは薬剤師の単発バイトは原則禁止?に書いています。
- 病院で派遣の薬剤師として働けますか?
-
病院などでの医療関係の業務は、紹介予定派遣などの例外を除いて派遣が禁止されています。薬剤師の派遣先は、薬局やドラッグストアが中心です。
- 扶養の範囲内でも薬剤師パートはできますか?
-
できます。時給が高いぶん、少ない時間で扶養の目安の年収に届く点には気をつけてください。社会保険の加入条件は2026年10月に変わる部分もあるので、派遣薬剤師の社会保険の記事で確認してから時間を決めると安心です。
- 自分の時給が相場より低いか確かめる方法は?
-
同じ市内・同じ業態のパート求人を5件ほど見て、時給の下限を書き出すのが手早いです。全国平均の2,639円は、地域差や年齢の差を含んだ数字なので、目安にとどめてください。
薬剤師の時給が高い理由と上げ方のまとめ
薬剤師のパート時給は平均2,639円で、パート全体の約1.8倍です。調剤が薬剤師にしかできず、薬局に置く人数も決まっているので、欠員を埋めるための時給が高くなります。
派遣3,000円は、派遣では標準的な数字です。その代わり、3年ルールや契約の切れ目、賞与がないことを受け入れる働き方でもあります。
自分の時給を上げたいなら、地域の求人と並べて位置を確かめ、時給を決められる人に交渉するか、職場を変えるかを選んでください。関連記事として、派遣薬剤師のメリット・デメリット、薬剤師が年収を上げる方法もどうぞ。
相談先を選ぶときは、転職で5社使った僕が比べた薬剤師転職エージェントのおすすめから、1〜2社に絞ると動きやすいです。

