薬剤師の昇給が、1回あたり月5千〜1万円ほどで止まるのは珍しいことではありません。厚生労働省の調査でも、医療・福祉の賃上げ額は1人平均で月5,589円と、全産業の半分以下でした。
僕(34歳・管理薬剤師・薬剤師歴10年目)も、新卒で入った調剤薬局では昇給が1回あたり月5千〜1万円で、4年間で年収は40万円しか増えませんでした。
この記事では、昇給額の公的データと僕の実額を分けて並べます。そのうえで、昇給しにくい理由、自分の職場が今後上がるかの確かめ方、年収を動かす手を順に書きます。
- 調剤4年→DS2年→調剤4年
- いまは管理薬剤師(34歳)
- 転職を3回経験し、うち2回は失敗。
- 3回目で年収480万→610万にアップ
- 人気転職エージェント5社を全部利用
「同じ失敗をしてほしくない」という思いで、薬剤師のリアルを本音で書いてます。
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薬剤師が昇給しないのは普通?公的データで確かめる
薬剤師だけの昇給額を出している統計はありません。なので、業種別の賃上げ額と、経験年数ごとの給与の差の2つから見ていきます。
厚生労働省の令和7年賃金引上げ等の実態に関する調査では、1人平均の賃金の改定額(月額)がこう出ています。
- 全体:13,601円
- 卸売業,小売業:12,183円
- 医療,福祉:5,589円
対象は常用労働者100人以上の民間企業で、定期昇給とベースアップの両方を含みます。薬剤師以外の職種も入った数字なので、目安として見てください。病院は「医療,福祉」に入り、全体の半分以下の額でした。
同じ調査で、医療,福祉の企業のうち定期昇給の制度があるのは84.2%です。ただ、その中身は「業績評価など」が68.8%で、「自動昇給」は31.7%でした(複数回答)。昇給の制度があっても、毎年決まった額が上がるとは限らないということです。
もう一つは、令和6年賃金構造基本統計調査の薬剤師の欄です。月の所定内給与は、経験0年32.8万円、1〜4年35.1万円、5〜9年39.3万円でした。区分の真ん中どうしで比べると、経験1年あたり月1万円前後の差です。
2つを合わせると、1回あたり月5千〜1万円の昇給は低めではあっても、珍しい額ではありません。気にしたほうがいいのは、昇給ゼロの年が何年も続く、理由の説明がない、といったケースです。
管理薬剤師たろう昇給しないのは普通、でも「だから放置」でいいかは別の話なんですよね。
薬剤師の僕の昇給額と年収の推移|調剤薬局A時代の実額
新卒で入った調剤薬局A(内科クリニックの門前・地方)時代の、僕の年収です。
- 1年目:約380万円
- 2年目:約395万円
- 3年目:約405万円
- 4年目:420万円
基本給の昇給は1回あたり月5千〜1万円ほどで、年に直すと6〜12万円です。年収は1年目から2年目で約15万円増えていても、毎月の給与明細で見える変化はこの程度でした。4年いて「給料もスキルも頭打ちだな」と思ったのが正直なところです。
これは僕個人の実額(地方・調剤)で、統計の平均とは別物です。上の賃金構造基本統計調査では、薬剤師の経験1〜4年の年収は約493万円(残業代を除く)で、僕の実額はかなり下でした。職場の規模や地域でも差が出ます。
2年目の昇給額と、6月から住民税で手取りが減る仕組みは薬剤師2年目の年収・昇給額で試算しています。
昇給と同じくモヤつきやすいのがボーナスです。薬剤師のボーナスが少ないと感じたときの考え方は、調剤とDS両方の実額で別にまとめています。
「平均より下なのかも」と気になっている人は、平均より給料が低くなる原因と挽回法をまとめた記事もあわせてどうぞ。
なぜ薬剤師は昇給しないのか|4つの構造的な理由
ここで扱うのは給料の額そのものではなく、毎年の昇給額(去年からの伸び)が小さい理由です。頑張りが足りないせいだと思っている人もいるかもですが、たぶん違います。
初任給が高いぶん伸びしろが小さい
薬剤師は新卒の時点で高めの給料からスタートします。ありがたい話ですが、最初から天井に近い位置にいるとも言えます。
スタートが高い分、その後の伸び幅は小さくなりがちです。月5千円の昇給でも、会社側の理屈としては成り立ってしまいます。初任給が良いことと、その後伸びることは別の話です。
調剤報酬で薬局の売上に上限がある
保険調剤の売上は、国が決める調剤報酬の点数で決まります。薬局がどれだけ頑張っても、処方箋1枚で得られる額はおおむね決まっています。
営業職のように「売れば売るほど給料が上がる」仕組みにはなりにくく、改定で点数が下がる項目もあります。給料の原資が増えにくいので、昇給も渋くなります。転職しても、この事情からは完全には逃れられません。
資格職で評価の差がつきにくい
薬剤師の業務は、誰がやっても一定の質を保つことが求められる仕事です。安全が最優先なので正しいことですが、給料の面では差がつきにくい方向に働きます。
速く正確に調剤できる人とふつうの人で、給料が倍違うことは基本起きません。さっきの調査のとおり、定期昇給の多くは「業績評価など」で決まります。評価の物差しがあいまいな職場ほど、頑張りが昇給に出にくくなります。
役職ポストが少なく昇格しにくい
給料を大きく動かすのは役職です。ただ、薬局の管理者(管理薬剤師)は1店舗に1人で、エリア長クラスはもっと少ない。ポストが空かないと、実力があっても待つしかありません。
僕は現職の調剤薬局Dに入って2年目で管理薬剤師になり、管理薬剤師手当が月3〜5万円つきました。昇給の数年分が一度に乗る額です。逆に言うと、役職に就くまでは昇給だけで大きく増やすのは難しいということです。
役職に就いても手当がつかない職場もあります。求人票のどこを見れば手当の有無が分かるかは、管理手当そのものがつかない職場の見分け方に書きました。給料全体が上がらない理由をもっと広く知りたい人は、薬剤師の給料が上がらないのはなぜかも参考にしてください。
薬剤師の職場が昇給するかは就業規則で確かめる
「うちは今後も上がらないのか」を知るいちばん確かな方法は、職場の就業規則と給与規程を読むことです。噂や同僚の話より、書かれているルールを先に見ます。
就業規則の「昇給」の欄を読む
常時10人以上の労働者がいる事業場では、就業規則に「昇給に関する事項」を書くことが労働基準法第89条で決まっています。会社は就業規則を掲示や書面などで労働者に周知する必要もあります(第106条)。
見るのは次の3点です。
- 昇給の時期と回数
- 昇給の幅や号俸の表
- 昇給しない場合の条件
「業績により昇給しないことがある」と書かれていれば、昇給ゼロの年はルールの範囲内です。薬局チェーンでは、就業規則とは別に給与規程や評価制度の資料があることも多いので、あわせて確認してください。
昇給ゼロは違法なのか
法律で毎年の昇給が義務づけられているわけではないので、昇給しないこと自体がすぐ違法になるわけではありません。昇給の有無や条件は、就業規則・給与規程・雇用契約で決まります。
規程では「毎年必ず◯円昇給」とあるのに行われていない、といった場合は話が別です。まず人事や本部に根拠を聞き、納得できなければ労働基準監督署などの相談窓口に聞いてみてください。
上司や本部に聞く3つのこと
規程を読んでも分からないときは、評価面談などの場で次の3つを聞くと、この先の見通しが立ちます。
- 何を満たせば昇給するか
- 昇給の上限はあるか
- 役職に就く道はあるか
答えがはっきりしない、上限にもう届いている、役職の空きがない。この3つがそろうなら、今の職場で待っていても年収は大きく動かない可能性が高いです。
薬剤師が昇給しないまま働き続けるとどうなるか
昇給しない職場で何もせずにいると、年収はほぼ横ばいのまま進みます。僕の新卒時代は、4年で40万円しか増えませんでした。
怖いのは、年齢だけ上がって市場価値が伸びていない状態になることです。同期が役職や別の業態で年収を伸ばす中で自分だけ横ばい、という差は数年後にじわっと効いてきます。
この「同期だけ伸びていく感じ」がしんどい人は、なぜ同期と給料の差がつくのか僕の本音を読んでみてください。差がつく仕組みが分かると、ムダにへこまずに済みます。
僕はこのまま行くのが嫌で、28歳で年収550万円に釣られてドラッグストア併設の薬局に転職しました。これが大失敗でした。月残業45時間の激務で、お金は増えたのに使う時間も体力もなくなりました。
だから「昇給しない=すぐ転職」も危険です。動くにしても、何を基準に動くかを先に決めないと同じことになります。
薬剤師が昇給しない現状を変える4つの打ち手
昇給を待つ以外で年収を動かす方法は、大きく4つあります。
役職を取りにいく
年収を一段上げる王道は役職です。僕の職場では管理薬剤師手当が月3〜5万円で、年にすると数十万円の差になります。
ただ責任は重いです。監査の前日は胃が痛いし、自分の調剤を止めて卸や本部の電話に走る日もあります。年収と引き換えに負うものがあることは、正直に言っておきます。
今の職場でポストが詰まっているなら、役職前提で別の薬局に移る手もあります。昇格待ちの時間も人生なので、待つだけが正解とは限りません。
業態を変える
調剤薬局、ドラッグストア、病院、企業などで、給料のレンジはけっこう違います。同じ免許でも、どこで使うかで天井が変わります。
DSは年収が高めな求人が多い一方、忙しいことも多いです。僕はそれで失敗したので、年収と働き方をセットで比べるのを強くおすすめします。業態ごとの年収と向き不向きは、調剤・DSで働いた僕の経験も交えて別記事にまとめました。
転職時に年収交渉する
僕にいちばん効いたのが、転職のタイミングでの年収交渉でした。昇給を月5千円ずつ積むより、転職の1回で上げるほうが早いことが多いです。
現職に移るとき、提示560万円を交渉で610万円まで上げてもらえました。自分では言い出しにくい話を、エージェントに間に入ってもらって動かした形です。伝え方やタイミングは薬剤師の年収交渉のやり方に書いています。
派遣やパートで時給を取りにいく
働き方を柔軟にしたい人は、派遣やパートで時給を取りにいく方法もあります。派遣は正社員より時給換算で高めの求人が多いです。
一方で、賞与や退職金がない、契約が切れることがある、という面もあります。安定を取るか時給を取るかは、人によります。パートで「時給が上がらない」と感じている人は、薬剤師パートの時給相場と上げ方を先に見てください。派遣の良し悪しは派遣薬剤師のメリット・デメリットにまとめています。
派遣と正社員の両方の求人を扱う会社には、アプロ・ドットコムがあります。どちらにするか決めきれない段階で、時給と月給の求人を並べて比べるのに向いています。
薬剤師が転職で年収を上げるなら|焦らず動くのが結局いちばん近道
年収を一気に動かしやすいのは転職です。でも、ここで焦ると僕のように失敗します。
僕は転職を3回して、うち2回失敗しています。1回目は年収に釣られたDSで激務、2回目は焦って決めた薬局が人間関係最悪で2ヶ月で退職しました。
3回目でうまくいったのは、選ぶ基準を変えたからです。条件だけで選ぶのをやめ、職場見学を必ず入れ、当時使ったエージェントの担当に過去の失敗を全部話しました。
昇給が理由で動くなら、転職先の昇給の仕組みも確かめてください。求人票の「昇給あり」だけでは、幅も条件も分かりません。僕の職場でも求人票の原稿は本部が作っていて、店の管理薬剤師が書き足すことはできません。面接や内定の段階で、さきほどの3つの質問を転職先にもしてみてください。
求人を探すなら、中小の調剤薬局や病院が中心のファゲットがあります。僕は使ったことはありませんが、条件の確認や年収の相談を担当に任せられるので、自分で聞きにくい昇給の中身を確かめたい人に向いています。



登録=即転職じゃないので、相場を知るだけでも今のモヤモヤはだいぶ晴れますよ。
いきなり1社に決めず、何社か比べてから選ぶのがおすすめです。各社の違いは比較記事にまとめてあります。
- 薬剤師が昇給しないのは自分の職場だけですか?
多くの場合、あなたの職場だけではありません。初任給が高く、調剤報酬で売上に上限があるため、業界全体として昇給は小さくなりやすいです。
- 昇給は月いくらくらいが普通ですか?
厚労省の令和7年の調査で、医療,福祉の1人平均の賃金改定額は月5,589円、全産業では13,601円でした。僕の調剤薬局A時代は1回あたり月5千〜1万円でした。
- 昇給ゼロの年があるのは違法ですか?
法律で毎年の昇給が義務づけられているわけではありません。昇給の条件は就業規則や給与規程で決まるので、まず規程の「昇給」の欄を確認してください。
- 頑張れば昇給は増えますか?
評価の物差しがはっきりしている職場なら反映されます。ただ資格職で差がつきにくく、役職を取るか業態を変えるほうが年収には効きやすいです。
- 昇給しないなら今すぐ転職すべきですか?
焦って転職するのはおすすめしません。僕は年収だけで決めて失敗しています。規程と役職の見通しを確かめ、相場を知ってから動くほうが安全です。
- 転職で年収はどのくらい上がりますか?
条件次第です。僕は提示560万円を交渉で610万円まで上げてもらえました。昇給を待つより一度で動きやすいのは確かですが、必ず上がる保証はありません。
- 管理薬剤師になればどのくらい増えますか?
僕の職場では手当が月3〜5万円で、年にすると数十万円の差です。手当の額や有無は職場で違い、責任も増えるので、年収だけで判断しないほうがいいです。
- パート薬剤師の時給が上がらないのはなぜですか?
時給の見直し時期や基準が決まっていない職場があるためです。雇用契約書や就業規則で見直しの有無を確かめ、上がらないなら派遣や別の職場の時給と比べてみてください。
- 派遣のほうが正社員より稼げますか?
時給換算では高めの求人が多いです。ただ賞与や退職金がなく、契約が切れることもあるので、安定とのバランスで考えてください。
- 何年も昇給しないまま働くとどうなりますか?
年収が横ばいで固定されやすいです。年齢だけ上がって市場価値が伸びない状態は、数年後にじわっと効いてきます。早めに方向性を決めておくと安心です。
まとめ|薬剤師が昇給しないのは普通、でも放置はしないでほしい
薬剤師の昇給が月5千〜1万円ほどで止まるのは、あなたのせいでも職場だけの問題でもなく、業界の構造が大きいです。ただ「普通だから」で放置すると、年収は横ばいのまま固定されます。
まず就業規則で昇給の条件を確かめ、今の職場で上がる道があるかを見てください。道がないと分かったら、焦らず基準を決めて動けば大丈夫です。
- 月5千〜1万円の昇給は普通
- 医療福祉の賃上げは月5,589円
- 昇給の条件は就業規則で確認
- 年収は役職・業態で動く
- 昇給待ちより転職交渉が効く
- 焦って決めると失敗する
僕がどうやって年収を130万円上げたのか、その全体の流れは自己紹介記事にまとめています。


