薬剤師の給料が上がらないのは、あなたの能力より、薬局のお金の流れの問題です。薬局の売上は国が決めた点数で決まり、その6割超は薬代として出ていきます。国の調査では、保険薬局(法人)の給与費は収益の18.2%、利益率は4.9%でした。
その結果、薬局で働く薬剤師の平均給料は、令和5年度から6年度で0.3%しか伸びていません。頑張りが足りないのではなく、給料に回せるお金の枠が小さいんです。
僕は現職で管理薬剤師をしていて、店の数字を本部に報告する立場です。給料を決める側ではありませんが、店の数字と給料の距離は毎月見ています。この記事では、上がらない構造を5つに分けて、2026年の改定で何が変わるかまで整理します。
「昇給額はどのくらいが普通か」「就業規則のどこを見ればいいか」を知りたい人は、薬剤師の昇給額の目安と就業規則での確かめ方にまとめています。
- 調剤4年→DS2年→調剤4年
- いまは管理薬剤師(34歳)
- 転職を3回経験し、うち2回は失敗。
- 3回目で年収480万→610万にアップ
- 人気転職エージェント5社を全部利用
「同じ失敗をしてほしくない」という思いで、薬剤師のリアルを本音で書いてます。
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薬剤師の給料が上がらない5つの理由|薬局のお金の流れで見る
先に5つを並べます。どれか1つではなく、たいてい全部が重なっています。
- 売上の値段を国が決める
- 薬価改定で利ざやが縮む
- 収益の6割超が薬代に消える
- 給料が跳ねる役職は店に1つ
- 薬剤師が増えて需給が緩む
理由1:売上の値段を国が決める
調剤薬局の売上の大半は、国が決める調剤報酬です。処方箋1枚でいくらもらえるかは点数で決まっていて、薬局が自由に値上げすることはできません。
そのうえ、点数は「何をしたか」に付きます。薬剤師個人がどれだけ丁寧でも、算定できる項目が増えなければ売上は増えません。営業職のように「売った分だけ自分の給料も上がる」形になっていないんです。
算定できても、給料に反映されるとは限りません。僕の会社は、かかりつけ薬剤師として算定しても手当はゼロでした。ピーク時は同意患者さんを約30名持っていましたが、給与明細は変わりませんでした。
管理薬剤師たろう本部から降りてくる件数目標をスタッフに割り振る側もやりましたけど、手当がない以上「頑張ってね」としか言えないんですよね。
理由2:薬価改定で利ざやが縮む
薬局の収益には、薬そのものの代金(薬剤料)も含まれます。薬の値段である薬価は国が決め、改定のたびに引き下げられてきました。2026年度の改定も薬価は▲0.86%です(日本薬剤師会のコメント)。
薬価が下がると、仕入れ値との差で出ていた利ざやも薄くなります。調剤報酬の本体が少し上がっても、薬価の引き下げで打ち消されやすい。これが「会社の売上は伸びているのに給料は伸びない」と感じる理由の一つです。
理由3:収益の6割超が薬代に消える
ここが一番知ってほしい数字です。厚労省の第25回医療経済実態調査(概要)で、保険薬局(法人)の収支の内訳を見ると次のとおりです。
| 項目 | 収益に占める割合 |
|---|---|
| 医薬品等費 | 63.2% |
| 給与費 | 18.2% |
| その他の経費 | 12.1% |
| 利益(損益率) | 4.9% |
売上が100あっても、63は薬の仕入れに出ていきます。薬剤師と事務さんの給料を全部合わせても18ほど。残る利益は5もありません。
つまり、給料を大きく上げる余地は、利益を削るか売上を増やすかしかない。利益率が5%前後の商売で、人件費だけを毎年大きく上げ続けるのは難しいんです。会社がケチかどうか以前に、構造として余白が小さいと言えます。
ちなみに同じ調査では、法人の店舗数によって利益率に差があります。令和6年度は2〜5店舗の法人が3.2%、20〜49店舗が10.2%でした。小さな薬局ほど給料を上げる余裕が小さくなりやすい、という見方もできます。
理由4:給料が跳ねる役職は店に1つ
同じ調査で、保険薬局(法人)の平均給料(令和5年度)は、管理薬剤師が約725万円、それ以外の薬剤師が約479万円です。差は大きいですよね。
ただ、管理薬剤師は薬局ごとに1人です(医薬品医療機器等法で、薬局には管理者を置くことになっています)。店に薬剤師が5人いても、給料が跳ねる席は1つ。前任者が辞めるか、新しい店ができない限り空きません。
それ以外の薬剤師は、社内の給与テーブルに沿って少しずつ上がるだけです。テーブルに上限があれば、どれだけ仕事ができてもそこで止まります。「同じ店に長くいるほど伸びない」と感じるのは、この席の少なさが大きいと思います。
理由5:薬剤師が増えて需給が緩む
厚労省の薬剤師の需給推計では、全国で見ると今後しばらくは需要と供給が同程度で、将来は供給が需要を上回る見通しです。人が集まりやすい場所ほど、会社は給料を上げなくても採用できます。
一方で同じ資料は、地域の偏りがあり、特に病院を中心に不足感があるとも書いています。どこで働くかで給料の天井が変わるのは、この偏りのせいです。後半の打ち手につながる話なので覚えておいてください。
薬剤師の給料の伸びを統計で見る|上がらないのは「伸び方」の問題
「上がらない」といっても、ゼロではありません。問題は伸び方がゆるいことです。令和6年賃金構造基本統計調査から、薬剤師の年収(所定内給与×12+賞与・残業代を除く)を経験年数別に出すとこうなります。
| 経験年数 | 年収の目安 |
|---|---|
| 1〜4年 | 約493万 |
| 5〜9年 | 約555万 |
| 10〜14年 | 約600万 |
経験を10年積んでも、1〜4年目との差は100万円ほど。しかもこれは、転職や昇格で上がった人も含めた平均です。同じ職場で役職なしのまま働くと、伸びはもっとゆるくなりやすいと思います。
医療経済実態調査でも同じ傾向です。保険薬局(法人)の薬剤師の平均給料は、令和5年度の約479万円から6年度は約480万円。伸び率は0.3%で、管理薬剤師も0.2%でした。
僕個人の数字でいうと、新卒で入った調剤薬局Aの年収は1年目約380万→4年目420万でした。昇給は1回あたり月額5千〜1万円ほど。地方の内科門前の薬局だったので、統計の平均より低めです。
自分の年収が年代・業態でどのあたりかを知りたい人は、薬剤師の年収を業態別・年代別にまとめた記事で現在地を確かめてみてください。
2026年の調剤報酬改定で薬剤師の給料は上がるのか
2026年6月の改定は、これまでより賃上げを意識した中身です。ただ、自動的に全員の給料が上がる仕組みではありません。
賃上げ用の点数が新設された
厚労省の令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】によると、「調剤ベースアップ評価料」が新設されました。薬剤師や事務職員の賃上げを図るための点数で、処方箋の受付1回につき4点。2027年6月以降は2倍の8点になります。
ポイントは、薬局が届出をしないと算定できないことです。賃金の改善を行う体制が施設基準になっています。自分の薬局が届出をしたのか、それがどう給与に反映されるのかは、職場ごとに違います。
気になる人は、上司や管理薬剤師に「ベースアップ評価料は届出していますか」と聞いてみてください。管理薬剤師でも答えを持っていなければ、本部に確認してもらう話です。
門前頼みの新規出店には減算
同じ改定で「門前薬局等立地依存減算」(調剤基本料から▲15点)もできました。2026年6月1日以降に新規開設する薬局が対象です。薬局が密集する都市部や医療モールにあり、特定の医療機関からの処方箋が85%を超える場合などに減算されます。
それ以前から指定を受けている薬局は、当面は対象外という経過措置があります。今の職場の給料がすぐ下がる話ではありません。
ただ、「病院の前に店を出せば処方箋が集まる」というやり方には、国がはっきり歯止めをかけ始めました。門前の出店で店を増やしてきた会社は、今後は店舗数の伸びが鈍るかもしれません。店が増えなければ、管理薬剤師の席も増えにくい。長い目で見ると、給料が伸びる会社とそうでない会社の差は広がると僕は見ています。
薬剤師の給料が上がらない職場で取れる打ち手4つ
構造が分かると、効く打ち手も絞れます。給料の枠が小さい場所で頑張り続けるより、枠そのものが違う場所や席に移るほうが動きます。
- 業態を変える
- 管理薬剤師など役職を狙う
- 人が足りない地域・職場へ動く
- 転職時に年収交渉をする
業態を変える
調剤薬局・ドラッグストア・病院・企業・派遣では、そもそも給料の出どころが違います。ドラッグストアは市販薬や日用品の売上もあるので、調剤報酬だけに頼る薬局とは枠の大きさが変わります。
僕は調剤薬局の420万から、ドラッグストア併設の調剤薬局に移って550万になりました。ただそこは月の残業が45時間で、お金は増えたのに時間も体力もなくなりました。上がる業態には、上がる理由があることも多いです。
業態ごとの仕事の中身と選び方は、4つの薬局で働いた僕の職場の選び方にまとめています。
管理薬剤師など役職を狙う
理由4で書いたとおり、給料が跳ねるのは役職の席です。僕の今の職場では、管理薬剤師手当は月3〜5万円ほど。年にすると数十万円の差になります。
その分、発注・在庫・監査・シフト・採用面接まで背負います。監査の前日は胃が痛いし、自分の調剤を止めて卸や本部の電話に走る日もあります。「責任は増やしたくない」人には向きません。
役職に就いても手当が付かない職場もあります。応募前の確かめ方は手当がつかない職場の見分け方を参考にしてください。
人が足りない地域・職場へ動く
理由5の裏返しで、薬剤師が集まりにくい地域や職場は、条件を上げてでも人を確保しようとします。派遣は時給で働くので、人が足りない場所ほど条件が上がりやすい働き方です。
派遣の時給の実際は、僕が転職活動で使った派遣会社について公開求人を確かめたファル・メイトの評判と求人の確認記事に書いています。引っ越しが要ったり、職場の体制が薄かったりもするので、家庭の事情と合わせて考えてください。
転職時に年収交渉をする
入る前の交渉は、入った後の昇給よりずっと動きます。社内の給与テーブルに乗る前に、最初の位置を決められるからです。僕は今の職場に入るとき、提示560万を交渉して初年度610万にしてもらいました。
自分で「あと50万」とは言いにくかったので、エージェントの担当者に間に入ってもらいました。やり方は提示560万を610万にした年収交渉のやり方に書いています。
給料に釣られて転職して失敗した薬剤師の僕の話
打ち手を並べましたが、給料だけ見て動くと失敗します。僕は2回やりました。
1回目は28歳のとき。新卒の調剤薬局で給料が頭打ちになり、年収550万に釣られてドラッグストア併設の調剤薬局へ移りました。調剤しながらOTCの接客、レジ、品出し。週の半分は遅番で、閉店後の品出しで夜10時。月の残業は45時間でした。
2回目は30歳。そこを早く抜けたくて、年収を480万に下げてでも別の調剤薬局Cへ移りました。職場の空気が合わず、2ヶ月で辞めています。
長いあいだ「求人票に騙された」と思っていました。でも本当は、職場見学の提案を「日程が合わない」と自分から断っていたんです。後で求人票を読み返すと、嘘は書かれていませんでした。書かれていなかったのは、常勤が何人いるか、欠員の補充かどうか、前任者がいつ辞めたか、でした。
3回目は、年収より職場の雰囲気を優先し、職場見学を必ず入れ、担当に過去の失敗を全部話しました。それで今の職場にたどり着いています。ほかの人の失敗例は薬剤師の転職失敗談をまとめた記事にあります。
薬剤師が給料を上げに動く前に確認すること
動くかどうか迷っている段階なら、給料に不満を感じたときに動く前に確かめておきたい5つを先に読んでおくと、勢いで決めずに済みます。
求人を見る段階では、次の3つを確認してください。
- 高い年収の裏にある働き方
- 欠員補充か増員か
- 職場見学で店の空気
1つ目は、残業・休み・人員の数です。高い給料には、たいてい理由があります。
2つ目は、僕が今、求人を出す側にいて分かったことです。うちの会社では、求人票の文面は本部が作り、店から上げるのは欠員の理由や希望の勤務時間帯くらいです。求人票に書かれない情報は、聞かないと出てきません。常勤が何人か、前任者がいつ辞めたかは、面接か担当者経由で確かめてください。
3つ目は、僕が2回目にサボったことです。空気はその場に立たないと分かりません。
求人を比べるなら、エージェントは2〜3社を並べて使うのがおすすめです。たとえばファゲットは、公式サイトで中小の調剤薬局や病院の求人を強みとしています。僕自身は使っていないので、登録するなら「欠員補充か」「常勤は何人か」を担当に聞いて、答えの具体さで判断してみてください。
ほかのエージェントとの違いは、薬剤師転職エージェントのおすすめ比較にまとめています。
薬剤師の給料が上がらない理由に関するよくある質問
- 薬剤師の給料は本当に一生上がらないんですか?
ゼロではありませんが、同じ職場・同じ立場のままだと伸びはゆるやかです。統計では経験1〜4年で約493万円、10〜14年で約600万円でした。大きく動くのは、業態や役職が変わるときや、転職で最初の位置を決め直すときです。
- 2026年の改定で薬剤師の給料は上がりますか?
賃上げを目的にした「調剤ベースアップ評価料」が新設されました。ただ薬局が届出をして算定する仕組みなので、全員の給料が自動で上がるわけではありません。自分の薬局が届出しているか、上司や本部に確かめてください。
- 薬局の利益はどのくらいなんですか?
第25回医療経済実態調査では、令和6年度の保険薬局(法人)の損益率は4.9%でした。収益のうち医薬品等費が63.2%、給与費が18.2%です。法人の店舗数によって利益率に差があります。
- 資格を取れば給料は上がりますか?
認定に手当を付ける職場もありますが、付かない職場もあります。僕の会社はかかりつけ薬剤師として算定しても手当はゼロでした。資格で上げたいなら、手当の有無を就業規則や面接で先に確かめてください。
- 今の職場で昇給交渉するのはアリですか?
アリですが、給与テーブルに上限があるとそこで止まります。昇給のルールは就業規則に書かれているので、まずそこを確認するのが先です。確かめ方は昇給の記事にまとめています。
- 管理薬剤師になれば年収はどのくらい上がりますか?
統計では、保険薬局(法人)の平均給料は管理薬剤師が約725万円、それ以外の薬剤師が約479万円です(令和5年度)。僕の職場の手当は月3〜5万円ほど。その分、発注・在庫・監査・シフトまで背負います。
- ドラッグストアに移れば給料は上がりますか?
上がることは多いです。僕も420万から550万になりました。ただ月45時間の残業で、時間も体力もなくなりました。金額だけでなく、残業と業務の範囲をセットで確かめてください。
- 転職すると年収が下がることもありますか?
あります。僕も激務から抜けるために、550万から480万に下げて転職しました。しかもその職場は2ヶ月で辞めています。下げてでも動くなら、職場見学だけは省かないでください。
- 何年目で給料が頭打ちになりやすいですか?
職場によりますが、僕は新卒4年目あたりで「これ以上は伸びない」と感じました。昇給が1回あたり月額5千〜1万円だと、数年で頭打ち感が出ます。そのあたりで一度、今の環境を見直すといいと思います。
まとめ:薬剤師の給料が上がらないのは構造、動く場所を選べば変わる
薬剤師の給料が上がらないのは、売上の値段を国が決め、その6割超が薬代に消え、給料に回る枠が小さいからです。給料が跳ねる役職の席も、店に1つしかありません。
2026年の改定で賃上げ用の点数はできましたが、届出と給与への反映は職場しだいです。枠そのものを変えたいなら、業態・役職・入社時の交渉で動くほうが早い。ただし数字だけで決めず、欠員の理由と職場の空気は自分で確かめてください。
- 上がらないのは能力でなく構造
- 給与費は薬局収益の18.2%
- 跳ねる役職は店に1つ
- 改定の賃上げは届出しだい
- 動くなら業態・役職・交渉
- 欠員理由と見学は省かない


