薬剤師の給料が安いのは、田舎だから、とは限りません。厚生労働省の統計で都道府県別に見ると、広島県の約693万円が東京都の約572万円を上回っています。
安く感じる原因は、地域よりも「どの業態の、どの職場にいるか」のほうが大きいことが多いです。昇給の幅や役職の手当は、同じ地域の中でも職場ごとにかなり違います。
僕は地方の調剤薬局で管理薬剤師をしている、たろうです。新卒で入った内科門前の調剤薬局Aは、1年目が約380万円、4年目でも420万円でした。この記事では、統計と僕の実額を分けて並べ、給料が安い原因の切り分け方と、引っ越さずに上げる方法を書きます。
- 調剤4年→DS2年→調剤4年
- いまは管理薬剤師(34歳)
- 転職を3回経験し、うち2回は失敗。
- 3回目で年収480万→610万にアップ
- 人気転職エージェント5社を全部利用
「同じ失敗をしてほしくない」という思いで、薬剤師のリアルを本音で書いてます。
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薬剤師の給料は田舎だから安いのか|県別の年収と人手不足で確かめる
「田舎だから安い」が本当かどうかは、県ごとの年収と、どこで薬剤師が足りていないかを見ると判断しやすくなります。
県別の年収は都市ほど高くない
厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査(都道府県別の表)から、薬剤師が多い地域の年収を出すとこうなります。月の所定内給与の12か月分に年間賞与を足した額で、残業代は入っていません。
| 都道府県 | 年収の目安 | 平均年齢 |
|---|---|---|
| 広島 | 約693万 | 41.7歳 |
| 愛知 | 約622万 | 36.4歳 |
| 東京 | 約572万 | 40.3歳 |
| 大阪 | 約547万 | 41.9歳 |
| 神奈川 | 約531万 | 37.3歳 |
| 北海道 | 約522万 | 40.0歳 |
| 福岡 | 約515万 | 40.5歳 |
東京や神奈川が上位に来るわけではなく、都市部ほど高い、とは言えません。一方で北海道や福岡は東京より低く、「地方なら高い」とも一概には言えない並びです。
この表は県全体の平均なので、同じ県の中の市街地と郡部の差までは分かりません。平均年齢も県ごとに違いますし、人数の少ない県は年によって数字が動きます。自分の年収と比べるなら、県の平均より「通える範囲の求人がいくら出しているか」のほうが確かです。
不足は地方と病院に偏っている
厚労省が2023年に示した薬剤師偏在指標は、業務量に対して薬剤師が足りているかの目安です。1.0を下回ると「足りていない」側になります。
- 薬局:東京1.42・神奈川1.25
- 薬局:青森0.88・福井0.73
- 病院:全国0.80(全県で1.0未満)
薬局は都市部に人が集まり、地方で足りない傾向です。病院はどの都道府県でも足りていません。人が足りない地域や業態では、条件を上げてでも採りたい職場が出やすいと考えられます。
ただ、足りない職場ほど一人あたりの負担が重い、という面もあります。人手不足の中身は薬剤師不足なのに現場が回らない理由で詳しく書いています。
物価の差は最大でも1.08倍
「田舎は物価が安いから給料も安くていい」と言われることもあります。総務省の消費者物価地域差指数(2024年)では、いちばん高い東京都が104.0、いちばん低い群馬県が96.2でした。
全国平均を100とした指数で、差は最大でも1.08倍です。持ち家の家賃換算は含まない数字なので、住まいの事情で実感は変わります。それでも、物価の差だけで年収の差を説明するのは難しいと思います。
薬剤師の給料が安く感じる本当の原因|業態と職場の差
地域で説明しきれない差は、たいてい業態と職場から来ています。どちらが原因かで打つ手が変わるので、ここを切り分けます。
安い原因は業態と職場固有のこと
病院と薬局の給与は、厚生労働省の第25回医療経済実態調査で比べられます。令和6年度の給料と賞与を足した額です。
- 一般病院の薬剤師:約581万
- 保険薬局の薬剤師:約479万
- 薬局の管理薬剤師:約725万
平均で見ると、病院は薬局より高く出ています。「病院の給料は安すぎる」という声は、若手のうちの話として語られることが多い印象です。この平均には年齢や経験の違いも入っているので、自分の年代の求人額で比べてください。
ドラッグストアは、同じ条件で比べられる公的な統計を見つけられませんでした。僕がDS併設の調剤薬局Bに移ったときは年収550万円でしたが、月の残業は45時間ありました。年収の数字だけで比べると、この差を見落とします。
同じ業態でも、会社によって昇給の仕組みや役職手当の額は違います。自分の給料が安いのは地域のせいか、業態のせいか、今の会社の仕組みのせいか。ここを分けないと、対策を間違えます。
居続けると昇給が止まる現実
いちばん効いてくるのが、昇給の幅です。僕の調剤薬局A時代は、昇給が1回あたり月額5千〜1万円でした。年収にすると、1年に10万〜15万円ずつしか増えません。
同じ賃金構造基本統計調査で、経験1〜4年の薬剤師の年収は約493万円です。4年目で420万円だった僕は、このペースのままでは統計の線に届かない計算でした。
昇給の幅が小さい職場では、待つより動くほうが早いことが多いです。年代別の数字は薬剤師10年目の年収を明細つきでまとめた記事も参考にしてみてください。
僕の実額を公開|地方の調剤で何年働いて何万だったか
抽象論だと判断しにくいと思うので、地方で働いてきた僕自身の実額を並べます。あくまで僕個人の数字なので、統計の平均とは分けて読んでください。
| 時期 | 職場 | 年収 |
|---|---|---|
| 1年目 | 調剤A | 約380万 |
| 2年目 | 調剤A | 約395万 |
| 3年目 | 調剤A | 約405万 |
| 4年目 | 調剤A | 420万 |
| 28歳 | DS併設B | 550万 |
| 30歳 | 調剤C | 480万 |
| 30歳〜 | 調剤D | 初年度610万 |
新卒で入った内科門前の調剤薬局Aは、4年働いて420万円で頭打ちでした。統計では、25〜29歳で経験1〜4年の薬剤師は約480万円です。僕の数字はそれよりはっきり低めでした。
ただ、平均より低いのは職場の給与水準の問題で、「平均より安い=自分がダメ」ではありません。平均との差が気になる人は、平均より給料が低い原因と挽回法を実明細で見てみるで、原因と取り返し方を整理しています。
その後、DS併設の調剤Bに移って550万円まで上がりました。月45時間の残業つきです。お金は増えたのに使う時間も気力もなくて、「俺、何のために年収上げたんだっけ」と暗い部屋でぼーっとしていました。
Bを早く抜けたくて焦って移ったCは、480万円に下げたうえに2ヶ月で辞めています。今の調剤薬局Dは提示560万円から交渉して初年度610万円になり、2年目で管理薬剤師になりました。地方にいたままでも、職場を変えることでここまでは動きました。
田舎の薬剤師が給料を上げる現実的な抜け道
引っ越さずにできることを、上がる幅が大きい順に並べます。
同じ地域内で職場を変えるのが早い
いちばん動くのは、引っ越さずに同じ地域の中で職場を変えることです。昇給が止まった職場に残るより、次の職場の提示額で仕切り直したほうが早い。僕も調剤Aで止まっていた給料を、移ることで動かしました。
ただし、提示額だけで決めると失敗します。僕はいま管理薬剤師として、欠員が出たときに本部へ募集を上げる側にいます。求人票の文面を作るのは本部で、店から上げるのは欠員の理由・勤務時間帯・常勤かパートかの3点だけです。
だから求人票には、現場の忙しさまでは出てきません。応募する前に、次のことは見学や面接で確かめてください。
- 常勤薬剤師は何人か
- 欠員補充か増員か
- 前任者はいつ辞めたか
- 月の残業は実際何時間か
地方だと、近くの求人を自分だけで集めるのは意外と大変です。たとえばMC-ファーマネットは、公式のQ&Aで、全国26拠点でUターン・Iターンにも対応し、住居や周辺地域の情報も伝えると案内しています。担当者が職場見学や面接をセッティングする、とも書かれています。僕自身は使っていませんが、地方で見学つきで比べたい人には合う使い方です。
管理薬剤師など手当を取りに行く
職場を変えずに底上げするなら、役職の手当です。僕の会社の管理薬剤師手当は月3〜5万円で、年にすると36万〜60万円になります。僕は今の調剤薬局Dに入って2年目で管理薬剤師になりました。
ただ管理薬剤師はラクではありません。在庫や使用期限の管理から、行政の指導の矢面まで全部かぶります。監査の前日は普通に胃が痛いです。手当ぶんの責任は確実にある、と思っておいたほうがいいです。
今の職場に管理薬剤師の空きがなさそうなら、「管理薬剤師候補」として募集している職場を探すのも一つの手です。年収を上げる方法の全体は薬剤師が年収を上げる方法6つで比べています。
派遣・パートも比べてみる
正社員にこだわらないなら、派遣やパートも比べる候補になります。時給で働く形なので、家庭の事情で時間を抑えたい人にも合いやすいです。
ただ、派遣の求人は多くありません。MC-ファーマネットの公式Q&Aでも、派遣は正社員やパートより少なく、産休の代わりなど1年未満のものが多いと書かれています。賞与が基本ないことや、契約満了で職場が変わることも前提にしておく必要があります。
僕は転職活動のとき、派遣専門のファル・メイトにも登録していました。派遣専門ファル・メイトの登録レビューにそのとき分かったことを書いています。派遣に強い会社も含めた選び方はエージェントの選び方をまとめた記事で整理しています。
給料が安くても、それでも今の職場に残ったほうがいい薬剤師
ここまで「動こう」という話をしてきましたが、全員が転職すべきとは思っていません。動かないほうがいいケースもあります。
たとえば、給料は安いけれど人間関係が良くて定時で帰れる職場。これは数字に出ない価値がとても大きいです。僕は逆に、焦って雰囲気を確かめずに移った職場で、2ヶ月で辞めることになりました。
短い期間で転職を重ねると、次の面接で理由を聞かれやすくなります。年収の差を取りに行って、働きやすさを丸ごと失うなら、それは損かもしれません。
給料の不満が「金額そのもの」なのか「割に合わない忙しさ」なのか、分けて考えてみてください。後者なら、転職より働き方の見直しで解決することもあります。
焦って失敗した薬剤師の僕が、地方転職で唯一やってよかったこと
僕は転職を3回して、そのうち2回はっきり失敗しています。なので成功者の話ではなく、やらかした人間の話として読んでもらえたらと思います。
2回目の転職を焦って決めたとき、出勤前に毎朝胃がキリキリして、駐車場に車を停めたまま動けない日がありました。妻に「2ヶ月で辞めた」と言えなくて、天井をにらんで眠れない夜もありました。
長いあいだ「求人票に騙された」と思っていました。でも本当は、DSを1日でも早く抜けたくて、職場見学の提案を自分から断っていたんです。騙されたというより、確かめなかったんですよね。
3回目で変えたのは、会社ではなく自分の選び方でした。応募前に必ず職場見学を入れ、当時の担当者に過去2回の失敗を全部話しました。そのうえで提示560万円を交渉してもらい、初年度610万円で今の職場に入っています。
地方で職場を変えるなら、見学の段取りと条件の交渉を頼める転職サービスを1社は持っておくと、地雷を踏む確率は下がると思います。合わなければ担当を変えてもらえばいいので、比べるところから始めてみてください。
薬剤師の給料が安い・田舎の年収についてよくある質問
田舎で給料が安いと悩む薬剤師の方から出やすい疑問に、先回りで答えておきます。
- 田舎の薬剤師は本当に給料が安いですか?
一概には言えません。令和6年賃金構造基本統計調査から算出すると、広島県は約693万円で東京都の約572万円より高く、北海道や福岡県は東京都より低めでした。地域より業態や職場の差が大きいことが多いです。
- なぜ同じ薬剤師なのに職場で年収が違うのですか?
業態と、会社ごとの昇給の仕組みや役職手当で差が出ます。医療経済実態調査では病院の薬剤師が約581万円、保険薬局が約479万円、薬局の管理薬剤師が約725万円でした。年齢や経験の違いも含んだ平均です。
- 今の職場で待っていれば給料は上がりますか?
職場の昇給の仕組みしだいです。僕の新卒の職場は昇給が1回あたり月額5千〜1万円で、4年目でも420万円でした。昇給の幅が小さい職場なら、待つより職場を変えるほうが早いことが多いです。
- 引っ越さずに田舎のまま給料を上げられますか?
できます。同じ地域での転職、管理薬剤師などの手当を取りに行く、派遣やパートも比べる、の3つが現実的です。僕も地方にいたまま、職場を変えて年収を上げました。
- 病院薬剤師の給料は安すぎるのですか?
医療経済実態調査の平均では、病院は約581万円で保険薬局の約479万円より高く出ています。「安い」は若手の時期の話として語られることが多い印象なので、自分の年代の求人額で比べるのがおすすめです。
- 給料を上げるためにDSへ移るのはアリですか?
年収は上がることがありますが、働き方とセットで考えてください。僕はDS併設の調剤薬局で年収550万円になった一方、月45時間の残業で時間も気力もなくなりました。
- 給料が安くても残ったほうがいい場合はありますか?
あります。人間関係が良く定時で帰れる職場は、数字に出ない価値が大きいです。不満が金額そのものか、割に合わない忙しさかを分けて考えてみてください。
- 転職で年収はどのくらい上がりますか?
地域・業態・経験で大きく変わります。僕の場合は、前の職場の480万円から、提示560万円を交渉して初年度610万円になりました。
- エージェントは田舎の求人も扱っていますか?
扱っています。たとえばMC-ファーマネットは、公式のQ&Aで全国26拠点でUターン・Iターンにも対応すると案内しています。見学や面接の段取りを頼めるかも、登録前に確かめておくと安心です。
- 焦って転職して失敗しないコツはありますか?
給料だけで選ばないこと、応募前に職場見学を入れること、担当に過去の失敗や本音を正直に話すことです。僕は見学を自分から断って、2ヶ月で辞めた職場があります。
まとめ|田舎の薬剤師が給料を上げるためにまずやること
薬剤師の給料が安いのは、田舎だから、とは限りません。県別の年収では広島が東京を上回り、薬剤師の不足は地方と病院に偏っています。安く感じる原因は、業態と今の職場の昇給・手当にあることが多いです。
僕も地方の調剤で420万円の頭打ちから、職場と選び方を変えて610万円まで来ました。地方にいたままでも、やり方を間違えなければ上げられます。
- 田舎=安いとは限らない
- 県別では広島が東京より上
- 安い主因は業態と職場
- 同じ薬局で待つと頭打ち
- 近道は同じ地域で職場を変える
- 見学なしで決めない
まずやることは、自分の給料の低さが地域・業態・職場のどれから来ているかを切り分けること。そのうえで、焦らず見学つきで動けば、地雷を踏む確率はぐっと下がります。同じ後悔をする人が1人でも減ったらうれしいです。
