明日が薬局見学、という状態でこのページを開いている人に向けて書きます。先に質問から出します。
紙に書き写して持っていくのは、この5つで足りると思います。
- 常勤の薬剤師は何人ですか
- 今回の募集は欠員ですか増員ですか
- 1日の処方箋枚数と主な処方元は
- 閉店後に残るのは誰ですか
- 他店への応援勤務はありますか
なぜこの5つなのか、返ってきた答えをどう読むのかを本文で説明します。書いているのは地方の調剤薬局で管理薬剤師をしているたろうです。いまは見学を受け入れて案内する側で、応募者の一次面接も担当しています。
そして同時に、見学の提案を自分から断って失敗した側でもあります。その話も書きます。
なお、この記事は転職で薬局を見に行く人向けです。薬学生の見学や実務実習の事前訪問とは、聞くことがかなり違います。
- 調剤4年→DS2年→調剤4年
- いまは管理薬剤師(34歳)
- 転職を3回経験し、うち2回は失敗。
- 3回目で年収を480万円→610万円にアップ
- 薬剤師向けの人気転職エージェント5社を全部利用
「同じ失敗をしてほしくない」という思いで、薬剤師のリアルを本音で書いてます。
詳しい筆者の経歴はこちら
薬局見学は、質問を決めてから行かないと職場紹介で終わります

見学を受け入れる側から言うと、質問を持ってこない人の見学は、こちらのペースで進みます。調剤室を見てもらって、機械の説明をして、雰囲気を感じてもらって、30分ほどで終わります。
悪気があってそうしているのではありません。案内する側は「何を知りたいか」が分からないので、説明できることから順に説明するだけです。結果として、店の外形は伝わって、中身は伝わらないまま終わります。
ここで、僕自身の失敗を書いておきます。2回目の転職のとき、僕はドラッグストア併設の薬局を早く抜けたくて焦っていました。担当者から職場見学をすすめられたのに、「日程が合わない」と自分から断りました。実際は、合わせようと思えば合わせられました。早く決めたかっただけです。
入った薬局は、2ヶ月で辞めました。
管理薬剤師たろう長いあいだ求人票に騙されたと思っていました。でも読み返したら、嘘は1行も書いてありませんでした
問題は、書かれていた内容ではなく書かれていなかったことでした。常勤の薬剤師が何人いるのか。今回の募集が欠員補充なのか増員なのか。前任者がいつ辞めたのか。どれも求人票には載りません。そして、見学に行けば聞けたことでした。
求人票に載らない理由は、こちら側にいると分かります。僕の会社では求人原稿を書くのは本部で、店から上げるのは「欠員の理由」「希望する勤務時間帯」「常勤かパートか」の3点だけです。店に文面を書き換える権限はありません。求人票の「アットホーム」で僕が見落とした4行の話は別記事に分けていますが、要するに細かい事情は店の中にしか無いということです。
だから見学は、店を見る時間ではなく、求人票に載らない情報を取りに行く時間だと考えたほうがいいです。そのためには質問を先に決めておくしかありません。
転職前の薬局見学で、薬剤師が質問すべき5つ


冒頭に挙げた5つを、順番に説明します。全部で30分あれば聞ける量にしてあります。
①常勤の薬剤師は何人ですか。今日は何人出ていますか
最初にこれを聞きます。人数は、その店の忙しさと余裕をいちばん素直に表す数字だからです。
ポイントは、在籍数だけでなくその日の出勤人数もセットで聞くことです。常勤3人と言われても、シフトの都合で日によって1人になる店があります。見学の日にたまたま全員そろっていると、実際より賑やかに見えます。
あわせて、事務員(医療事務)が何人いるかも聞いてください。事務の人数は薬剤師の負担に直結します。事務が薄い店では、薬剤師が入力も電話も受付もやることになります。
②今回の募集は欠員補充ですか、増員ですか。前任の方はいつまでいましたか
この2つは、僕が自分の失敗から学んだ質問です。聞きにくいと感じる人が多いですが、聞いていい質問です。
増員なら、処方箋が増えているか、業務を広げようとしている店です。欠員補充なら、誰かが辞めています。辞めた理由まで答えてもらえるとは限りませんが、そこは求めなくて大丈夫です。知りたいのは理由そのものではなく、「今その穴が空いたまま何か月たっているか」のほうです。
半年前から欠員のままなら、入った瞬間から人手不足の中に入ります。先月までいたのであれば、引き継ぎができる可能性があります。同じ「欠員補充」でも、入ったあとの景色がまったく違います。
③1日の処方箋枚数と、主な処方元を教えてください
枚数だけでは忙しさは決まりません。同じ40枚でも、内科の門前と、精神科や小児科、皮膚科では中身が変わります。だから処方元とセットで聞きます。
ここで一緒に聞いておくといいのが、在宅です。
- 在宅をやっているか
- 月に何件くらいか
- 誰が訪問しているか
- 訪問中の店内は何人体制か
在宅は求人票に「在宅あり」の4文字で済まされがちですが、実務の負担はここで大きく変わります。訪問に出ている間、残った人が店を回すことになるからです。
④閉店後に残るのは誰ですか。何時ごろに出ますか
残業時間を直接聞くと、たいてい「月10時間くらいですかね」という平均が返ってきます。平均は、いちばん長い人といちばん短い人を混ぜた数字です。
知りたいのは分布のほうなので、誰が残っているかを聞きます。管理薬剤師だけが毎日残っている店なら、その負担がいずれ自分に来る可能性があります。全員が交代で残っているなら、業務量が多いということです。
昼の休憩も同じ聞き方をします。「休憩は取れますか」ではなく、「昼はどうやって回していますか」と聞くと、実態が出やすいです。交代で取るのか、閉めるのか、電話は誰が受けるのか。
⑤他店への応援勤務はありますか。どのくらいの範囲ですか
複数店舗を持つ会社では、これが後から効いてきます。応援そのものは珍しくありませんが、頻度と距離が想定と違うと生活が変わります。
月に1回、車で15分の店に行くのと、週2回、高速を使って1時間の店に行くのでは、同じ「応援あり」でも別物です。移動時間の扱いや交通費の精算も店によって違うので、聞けるなら聞いておきます。
ここまでが5つです。もし未経験の業態に移る、あるいは長く現場を離れていた場合は、6つ目として最初の数か月に誰と組んで何をするのかを足してください。ブランクからの復帰では、この質問の重みが他より大きくなります。
見学で返ってきた答えは、中身より具体の粒度で読みます


質問より、こちらのほうが大事かもしれません。返ってきた答えをどう読むか、です。
基準は単純で、数字と固有名詞が出てくるかどうかです。毎日そこで働いている人なら、細かい数字はすぐ出ます。出てこないときは、答えたくないか、その人が現場を把握していないかのどちらかです。
| 質問 | 粒度の高い答え | 気をつけたい答え |
| 人員 | 常勤3人、今日は2人 | 足りてますよ |
| 募集 | 欠員で、前任は先月まで | まあ、いろいろありまして |
| 枚数 | 1日40枚、内科と整形 | 忙しい日もあります |
| 残業 | 閉店後は私が30分ほど | ほとんどないです |
| 応援 | 月1回、車で20分の店 | たまにありますね |
右側の答えが返ってきたら、その場でもう一段だけ聞きます。「先月でいうと何回くらいですか」のように、期間を区切って数字を求める形です。ここで数字が出れば問題ありません。
もうひとつ、答えの読み方で見ておくところがあります。誰が答えているかです。
- その店の管理薬剤師が答えている
- 本部の採用担当が答えている
- 間に入っている担当者が答えている
現場の細かい話は、店の管理薬剤師がいちばん正確です。給与や制度の話は本部のほうが正確です。両方いる場でどちらにも同じ質問をして、答えが食い違ったときは、そこを確認してから進めたほうがいいです。悪意ではなく、単に情報が共有されていないことが多いのですが、入ってから困るのはこちらです。
複数の店を見る予定があるなら、聞いた答えはその場で同じ形に書き留めてください。記憶は必ず混ざります。紙を縦に区切って、左端に質問、右に店の名前を並べるだけで比較表になります。
| 聞いたこと | A薬局 | B薬局 |
| 常勤/当日 | ||
| 欠員か増員か | ||
| 枚数と処方元 | ||
| 閉店後に残る人 | ||
| 応援の頻度と距離 | ||
| 答え方の粒度 |
薬局見学で聞きにくい質問は、聞く相手を変えれば普通の確認になります


「人間関係はどうですか」と正面から聞ける人は、あまりいません。聞いたところで「みんな仲がいいですよ」としか返ってきません。
人間関係は質問で聞くものではなく、見学中に観察するものだと思っています。僕が受け入れる側として見られていると感じるのは、このあたりです。
- スタッフ同士の話しかけ方
- 事務と薬剤師の距離
- 案内役以外の人が挨拶するか
- 調剤室の整理のされ方
- 休憩室の様子
観察のときに1つだけ守ってほしいことがあります。調剤室は患者さんの情報が置いてある場所です。写真を撮る、薬歴の画面をのぞき込む、棚の中身を勝手に見る、これは避けてください。案内する側がいちばん困るのがここです。見たいものがあれば「見せてもらえますか」と一言かけるだけで問題になりません。白衣や上履きが要るかどうかも、日程を決めるときに聞いておくと当日あわてません。
ただ、30分で分かることには限界があります。だから僕は、雰囲気の判断を1回の見学だけに頼らないほうがいいと思っています。ここは、自分が2ヶ月で辞めた経験からの話です。あのときは見学すら行っていないので、限界以前の問題でしたが。
もうひとつの手は、聞きにくい項目を間に入っている人に回すことです。求人を紹介してくれた担当者がいるなら、見学の前後に確認を頼めます。退職理由、定着の状況、人間関係の評判。本人が店に直接聞くと角が立つ項目でも、担当者が聞けば通常のやり取りです。
面接の場での逆質問とは、聞く内容も聞き方も変わります。面接で何を聞けるかは逆質問を3つに絞る話のほうにまとめてあります。見学は現場の話、面接は条件と将来の話、と分けて考えると整理しやすいです。
薬局見学の場では答えが出ない質問もあります


受け入れる側として、正直に書いておきます。見学で聞かれても、その場で答えられないことがあります。
給与の具体額、昇給の仕組み、賞与の実績。このあたりは本部の管轄で、店の管理薬剤師は決める立場にありません。僕も自分の店の求人の文面を書き換えられないくらいなので、金額の確約はできません。答えをはぐらかしているのではなく、権限が無いのです。
ここで大事なのは、口頭の答えを条件として持ち越さないことです。労働時間、休日、賃金といった条件は、最終的に書面で示されます。見学や面接で聞いた話と書面が食い違っていたら、入社前に確認してください。入ってから直すのは、こちらが理由を作らないといけなくなります。
入社初日にどんな違和感が出るかは、初日の違和感が当たった回と外れた回のほうに書きました。見学で確かめたことと、初日に感じることは、意外とずれません。
薬局見学を断られたとき、薬剤師は何を判断材料にするか


見学を希望して断られることがあります。これをどう受け取るか、という話をします。
断られた=悪い店、とは限りません。患者さんがいる場所なので、感染症が流行している時期や、人手が薄い日は受け入れられないことがあります。日程の調整がつかないだけのこともあります。
そもそも見学の話が出ていない場合は、自分から頼んで大丈夫です。応募の前でも後でも、「応募を決める前に一度お店を見せていただけますか」と伝えれば、それ自体が失礼になることはありません。断られたとしても、その断り方が情報になります。
見るべきなのは、断り方に理由と代案があるかです。
- 理由を説明して別日を出す
- 短時間なら可能と条件を示す
- 理由も代案も出てこない
3番目が続くときは、その1件を追いかけるより、他を見たほうが早いです。見学を受け入れる余裕が無いというのは、それ自体が店の状態を表しています。
そして、ここまでの確認を全部ひとりでやると、応募のたびに店へ電話することになります。薬剤師向けだとファゲットのようなサービスで、最初に「見学ができない求人は紹介しなくていい」と条件を渡しておく使い方があります。届く求人の数は減りますが、面接室だけで判断する回数も減ります。ただし、すべての求人で人員体制や退職理由まで分かるとは限りません。分からないものは分からない、と返ってくることもあります。
断っておくと、僕はこのサービスを転職で使った本人ではありません。運営元と条件を調べたうえで紹介しています。僕が実際に使った会社の話と、いま申し込める会社の比較はエージェントを使い比べたレビュー記事のほうに分けてあります。
見学が明日に迫っている人は、登録より先に質問を5つ書き写すほうが効きます。そちらが今日の本題です。
薬局見学の質問について、薬剤師からよく聞かれること


見学を案内していて、実際に出てくるものを並べます。
- 薬局見学で質問しすぎると、印象が悪くなりませんか?
-
案内する側としては、質問がある人のほうが助かります。何を知りたいか分かるので、説明の順番を変えられるからです。数の目安は5つ前後、時間にして10分ほど。それ以上は相手の業務を止めるので、残りは後日メールで聞くほうが印象は良くなります。
- 前の人が辞めた理由を聞いてもいいですか?
-
聞くこと自体は問題ありません。ただ、個人の事情に関わるので詳しくは答えられないことが多いです。理由より「いつまで在籍していたか」のほうが答えやすく、判断にも使えます。空いている期間の長さで、入ったあとの忙しさが変わります。
- 見学は選考に含まれますか?
-
会社によって扱いが違います。見学だけの位置づけのところもあれば、その場で面接に近いやり取りが入るところもあります。どちらか分からないときは、日程を調整する段階で「面接も兼ねますか」と確認しておくと、準備の仕方が決まります。
- 給与や賞与のことは見学で聞けますか?
-
店の管理薬剤師には決定権が無いので、その場で確定的な答えは出にくいです。金額や制度は本部の担当か、間に入っている担当者に聞くほうが確実です。いずれにしても、労働時間・休日・賃金の条件は最終的に書面で示されるので、口頭の話と食い違っていないかを入社前に確認してください。
- 人間関係は見学で分かりますか?
-
30分で分かることには限界があります。質問で聞き出すより、案内役以外の人が挨拶するか、事務と薬剤師がどう話しているか、といった様子を見るほうが情報量があります。判断を1回の見学だけに預けず、担当者から聞ける評判と合わせてください。
- 見学の所要時間はどのくらいですか?
-
30分から1時間が多いです。患者さんの少ない時間帯に設定されることが多く、そのぶん店の本当の忙しさは見えにくくなります。だからこそ、その場の印象ではなく、処方箋枚数や出勤人数といった数字で聞くほうが当てになります。
- 質問はメモを見ながらでもいいですか?
-
問題ありません。むしろ準備してきたことが伝わります。緊張して半分忘れて帰るより、紙を見ながら5つ聞いて帰るほうがずっといいです。答えもその場で書き留めてください。複数の店を見ると、記憶は必ず混ざります。
- 見学のあとに追加で聞きたくなったらどうしますか?
-
その日のうちに、担当者か採用窓口へまとめて送るのがいちばん通りやすいです。時間が空くほど聞きにくくなります。聞き漏らした項目と、見学中に気になった点を分けて書くと、相手も答えやすくなります。
まとめ:薬局見学は、質問を5つ書き写してから行く


見学は、店を見せてもらう時間ではなく、求人票に載っていない情報を取りに行く時間です。質問を決めずに行くと、案内する側のペースで30分が過ぎて、外形だけ分かって終わります。
この記事の要点をまとめます。
- 質問は5つ、紙に書いて持つ
- 人員は在籍数と出勤数を聞く
- 欠員か増員かは聞いていい
- 枚数は処方元とセットで聞く
- 残業は誰が残るかで聞く
- 応援勤務は頻度と距離を聞く
- 答えは数字が出るかで読む
- 聞きにくい項目は担当者に回す
- 条件は最後に書面で確かめる
今日やることを1つに絞るなら、上の5つをメモに書き写すところまでです。答えを書き留める欄も作っておくと、店を比べるときに効きます。
僕は見学を断って2ヶ月で辞めました。3回目に転職したときは、応募の前に必ず見学を入れると決めて、そこから変わりました。変えたのは店選びの運ではなく、確かめる手順のほうです。面接で実際に聞かれた質問と答え方も見学とセットで準備しておくと、当日あわてません。









