「薬剤師いらない」は、半分だけ本当です。薬剤師の資格がなくなることは、今の法律のもとでは考えにくいです。一方で、薬をそろえる・数える・詰めるといった「作業」は、機械や薬剤師以外のスタッフへ移す方向で制度が動いています。
厚生労働省の推計では、2045年に薬剤師の供給が需要を約2.4万〜12.6万人上回る見込みです。ただし病院の薬剤師は、今も全都道府県で足りていません。「いらない」と言われているのは、資格ではなく「処方箋どおりに数えて渡すだけ」の働き方です。
僕は薬剤師歴10年目・34歳の管理薬剤師のたろうです。調剤薬局で4年、ドラッグストア併設の調剤で2年働き、今の調剤薬局で4年目になります。この記事では、厚労省の資料と2026年の調剤報酬改定を読みながら、現場で見てきたことと合わせて整理します。
- 調剤4年→DS2年→調剤4年
- いまは管理薬剤師(34歳)
- 転職を3回経験し、うち2回は失敗。
- 3回目で年収480万→610万にアップ
- 人気転職エージェント5社を全部利用
「同じ失敗をしてほしくない」という思いで、薬剤師のリアルを本音で書いてます。
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「薬剤師はいらない・なくなる」と言われる5つの理由|どこまで本当か検証する
「薬剤師いらない」という言葉には、煽りも混ざっています。ただ、火種になっている制度や数字は実在します。よく挙がる理由は次の5つです。
- 調剤の自動化・AIの進化
- 薬剤師の人数の増えすぎ
- オンライン服薬指導の普及
- 調剤報酬の引き下げ圧力
- 患者から「渡すだけ」に見える
薬剤師が世間からどう見られているかは、世間が抱く薬剤師のイメージを現場目線で答え合わせした記事でも検証しています。
調剤自動化とAIは薬剤師を奪うのか
これは半分本当です。自動分包機やピッキング支援、画像による監査システムは、多くの薬局に入ってきています。
機械だけではありません。2019年の厚労省通知「調剤業務のあり方について」が出ています。薬剤師の指示と最終確認を前提に、PTPシートの薬の取りそろえなどを薬剤師以外が行えると整理されました。
さらに2025年の改正薬機法で、調剤業務の一部を外部の薬局へ委託できる仕組みが入りました。都道府県知事等の許可が条件です。施行は公布後2年以内です(厚労省の改正概要)。
ここで移されているのは「作業」であって「判断」ではありません。0402通知も、薬剤師以外に任せられるのは「判断を加える余地に乏しい機械的な作業」に限っています。
飲み合わせや用量の確認、体調の変化の聞き取り、医師への疑義照会は、薬剤師の仕事として残ります。だから危ないのは、仕事の中身が「作業」に偏っている薬剤師です。
過剰供給と「2045年問題」の実際
元ネタは、2021年に厚労省の検討会で示された「薬剤師の需給推計(案)」です。2045年の数字は次のとおりでした。
| 2020年 | 2045年 | |
|---|---|---|
| 需要 | 32.0万人 | 33.2万〜40.8万人 |
| 供給 | 32.5万人 | 43.2万〜45.8万人 |
差を取ると、2045年に約2.4万〜12.6万人の供給過剰です。SNSでよく見る「10万人余る」は、この幅の上のほうを切り取った言い方です。
需要の幅が広いのは、対人業務が増えるかどうかで結果が変わるからです。推計は、今後10年ほどは需要と供給が同程度で推移し、その後に供給が上回ると見ています。
つまり「全体では余る方向」なのは事実です。ただし、どこでも同じように余るわけではありません。この点は後の章で数字を出します。
オンライン服薬指導と報酬減の影響
オンライン服薬指導は、薬剤師を不要にする仕組みではありません。画面越しでも説明し、話を聞くのは薬剤師です。変わるのは、働く場所の縛りのほうです。
影響が大きいのは調剤報酬です。2026年度改定で「門前薬局等立地依存減算」が新設されました。対象は、都市部の門前や医療モール内で新しく開き、処方箋の集中率が高い薬局です。
立地だけで処方箋を集めるやり方は、点数で評価されにくくなっています。利益が出にくい薬局では、人員の見直しが進む可能性はあります。どの薬局に身を置くかで、同じ資格でも立場が変わる時代です。
患者から渡すだけに見える理由
ネットの掲示板などで「薬剤師いらない」と書かれるとき、多いのは患者側の目線です。待たされたのに、棚から薬を出して渡されただけに見える。その感覚は、僕も分からなくはありません。
見えにくいのは、渡す前の確認です。日本薬剤師会の平成27年度全国薬局疑義照会実態調査を見てみます。疑義照会があったのは処方箋の2.56%で、薬学的な照会の74.88%で処方が変更されていました。
およそ40枚に1枚は、薬剤師が医師に問い合わせている計算です。薬剤師法も、処方箋に疑わしい点があれば医師に問い合わせることを義務としています。
ただ、確認の結果を患者さんに伝えなければ、「渡すだけ」に見えるのは当然です。見えない仕事を言葉で伝えることも、これからの薬剤師の仕事だと僕は考えています。
管理薬剤師たろうどの理由も「資格が消える」ではなく「作業だけの働き方が減る」という話だと思います。
「薬剤師いらない」の答え:消えるのは資格ではなく“作業だけの働き方”
薬剤師法第19条は「薬剤師でない者は、販売又は授与の目的で調剤してはならない」と定めています(医師などの例外あり・e-Gov法令検索)。機械や事務スタッフが作業を担っても、調剤の最終責任を負う人は必要です。
一方で、数えて渡すだけの仕事は、薬剤師1人あたりの必要量が減っていきます。需給推計も、対人業務に時間を回すには、調剤業務を機械化や他の職員の活用で効率化する必要があると書いています。
なので「薬剤師 いらない」への答えはこうです。作業が中心の働き方なら、居場所は狭くなります。判断と説明で役に立っているなら、国の方向とは合っています。
この問いは、薬剤師って本当にすごいのか、それともすごくないのかという話ともつながっています。
「自分いらないかも」と感じた職場と、役割が変わった職場|薬剤師の僕の10年
同じ僕でも、職場によって「自分の仕事、いる?」の感じ方はまったく違いました。3つの職場を順に書きます。
調剤薬局A:頭打ちの4年
24歳で入ったのは、内科クリニックの門前にある調剤薬局Aです。年収は1年目が約380万円、4年目で420万円。昇給は1回あたり月額5千〜1万円で、給料もスキルも頭打ちに感じていました。
今振り返ると、あのころ感じていた「このままでいいのか」は、資格の問題ではありませんでした。同じ内科の処方を受けて、確認して渡す。その繰り返しの中で、自分の判断が役に立った実感を持てていなかったのだと思います。
ドラッグストアB時代:数だけで消耗
28歳でドラッグストア併設の調剤Bへ移りました。年収は550万円に上がりましたが、仕事は調剤に加えてOTCの接客、レジ、品出し。週の半分は遅番で、閉店後の品出しで夜10時になることもあり、月の残業は45時間でした。
「俺、何のために年収上げたんだっけ」と、暗い部屋でつぶやいた夜を覚えています。
あの働き方では、患者さん一人ひとりと話す時間を作る余裕はなかったと思います。忙しさと価値の実感は別物だと、ここで知りました。
現職D:かかりつけ30名と改定
今働いている調剤薬局Dは、在宅対応もある薬局です。ここで研修認定を取り、かかりつけ薬剤師として同意をもらった患者さんは、ピーク時で約30名いました。
管理薬剤師になってからは、本部から降りてくる同意件数の目標(月5件前後)を、スタッフに割り振る側も経験しました。ちなみに、うちの会社にかかりつけ手当はありません。
2026年6月の改定で、かかりつけ薬剤師指導料は廃止されました。その後、本部から来る指示は「同意件数」から「フォローアップの実績件数」に変わっています。
同意書を何枚集めたかより、薬を渡したあとに何をしたかが問われる。現場にいて、評価の軸が「作業の量」から「関わりの中身」に移っているのを感じます。
「なくなる薬剤師」と「残る薬剤師」を分ける境界線3つ|あなたは今どっち側?
制度の流れと現場で見てきたことを、自己診断できる3つに整理します。
境界線①:対人で不安を解けるか
目の前の患者さんが何に不安を感じているかを聞き取り、分かる言葉で説明する。ここは機械に任せにくい部分です。
「薬を渡して終わり」なら危険側、「不安を残さず帰す」まで踏み込めるなら残る側です。高校生のころ、祖母は10種類以上の薬を飲んでいました。薬剤師さんの説明で祖母が安心した姿が、僕が薬剤師を目指したきっかけです。
境界線②:処方に意見を返せるか
処方をそのまま通すだけなら、チェックの多くはシステムでも補えます。
残るのは、飲み合わせや生活の事情を踏まえて「この量はこの人には多いかも」と医師に返せる薬剤師です。疑義照会を面倒な手続きではなく、専門性を出す場面として扱えるかが分かれ目です。
境界線③:在宅・多職種と組めるか
2015年の「患者のための薬局ビジョン」は、対物業務から対人業務へのシフトを掲げました。在宅対応や医療機関との連携も、薬局の目指す姿に入っています。
医師・看護師・ケアマネジャーと一緒に患者さんを支える場では、薬の専門家の出番が増えます。薬局の中だけで完結する働き方より、外とつながる働き方のほうが国の方向と合っています。
3つとも自信がなくても、落ち込まなくて大丈夫です。僕も調剤A時代は、胸を張って○と言えるものはありませんでした。これは才能より、やらせてもらえる環境があるかで伸び方が変わる力です。
2045年に薬剤師は10万人余る?AI・調剤自動化・過剰供給が働き方に与える影響
「薬剤師 なくなる」の核心である需給の話を、もう一歩踏み込みます。全体の数字より、自分がどこにいるかのほうが大事です。
余るのは薬局、病院は不足
厚労省は2023年に、都道府県ごとの薬剤師偏在指標を公表しました。1.0を下回ると、必要な業務量に対して薬剤師が足りない状態です。
| 区分 | 全国の指標 |
|---|---|
| 病院薬剤師 | 0.80 |
| 薬局薬剤師 | 1.08 |
| 全体 | 0.99 |
病院薬剤師の指標は、全都道府県で1.0を下回っていました。いちばん高い京都府でも0.94、青森県は0.55です。
薬局薬剤師も、県によっては1.0を下回ります。「余る」と「足りない」が、業態と地域によって同時に起きているのが今の姿です。
危ないのは都市部×作業特化
2026年度改定の厚労省の概要資料には、気になる記述があります。薬局ビジョンから10年たっても、いわゆる門前薬局の割合はむしろ増えた、というものです。
集中率85%以上の薬局の割合は、2015年の32.5%から2024年には39.3%になりました。これを受けて、都市部の過密地域で新しく開く薬局の評価を下げる見直しが入っています。
ここに作業の機械化と委託が重なります。影響をいちばん受けやすいのは、都市部の門前薬局で、作業が中心の働き方だと僕は見ています。
AIや自動化と将来性の関係は、薬剤師の将来性をAI時代の視点で見直した記事でも詳しく整理しています。
将来性のある働き方は在宅・専門
同じ2026年度改定で、点数が手厚くなったのは在宅と対人の実績です。主な見直しは次のとおりです。
- 在宅薬学総合体制加算の引上げ
- 在宅訪問の算定間隔を週1回に
- 医師との同時訪問の評価を新設
- 無菌製剤の増点を小児に拡大
- かかりつけは実績重視へ転換
在宅薬学総合体制加算は、1が15点から30点、2の個人宅が50点から100点になりました。無菌製剤処理加算の増点は、15歳未満の小児まで広がっています。
進む方向は大きく3つです。
- 在宅医療に関わる
- 得意な分野を1つ持つ
- 同じ患者さんを継続して見る
在宅に必要な条件は、訪問薬剤師になる条件をまとめた記事に書いています。
難しい資格を先に取るより、まず対人や在宅を実際にやらせてくれる場所にいること。そのほうが近道だと、僕は考えています。



資格より先に「やらせてもらえる環境」を取りにいくのが正解だと思います。
“いらない”と言われない側に回るために、明日から薬剤師がやるべき5つのこと
「で、自分は何をすればいいの?」への答えを、明日から始められる形で5つにまとめました。
- 投薬で「不安」を1つ拾う
- 疑義照会を1件出してみる
- フォローアップに手を挙げる
- 得意分野を1つ作る
- 今の職場の将来性を見直す
1つ目から3つ目は、今の職場のままでできます。投薬で「何か気になることはありますか」と一言足す。気になった処方は遠慮せず問い合わせる。在宅や服薬後のフォローアップの話が出たら手を挙げる。
4つ目は、糖尿病・在宅・小児など1分野を「この人に聞けば早い」と言われるところまで深めることです。
5つ目がいちばん大事で、今の職場が、判断と対人の仕事をさせてくれる場所かを見直すことです。見るポイントは次の4つです。
- 作業の機械化が進んでいるか
- 事務スタッフと分担できているか
- 在宅の実績があるか
- 服薬後の連絡を誰がしているか
作業に追われて対人に時間を回せない職場だと、努力しても伸ばしにくいです。自分の年収の位置も知りたい人は、薬剤師の年収の現実も判断材料になります。
薬剤師が今の職場で消耗していくのが不安なら|環境を変えて市場価値を上げた僕の選択
「やることは分かった。でも今の職場では対人も在宅もやらせてもらえない」。そう感じるなら、問題は努力より環境かもしれません。
僕は調剤Aで頭打ちを感じ、年収に釣られてドラッグストア併設のBへ移って消耗しました(失敗1回目)。焦って移った調剤Cは入社2ヶ月で退職しています(失敗2回目)。
Cのときは、職場見学の提案を「日程が合わない」と自分から断っていました。出勤前に胃がキリキリして、駐車場で車を停めたまま動けない朝もありました。
3回目で変えたのは、選ぶ基準です。条件より人間関係と職場の雰囲気を優先し、応募前に必ず職場見学を入れました。当時使ったエージェントの担当には、過去2回の失敗を全部話しています。
結果、提示560万円から交渉して初年度年収610万円で、在宅対応もある今の薬局Dに入りました。2年目で管理薬剤師になり、残業も減って、長女の寝顔を見られる日が増えました。
見学で何を確かめるかは、職場見学で見る・聞く14項目にまとめています。在宅の件数や、事務スタッフとの分担はその場で聞けます。
いきなり転職しろという話ではありません。ただ、今の職場では作業しかできないと感じるなら、情報だけでも集めておく価値はあります。対人や在宅に力を入れる職場は、探せば見つかります。
中小の調剤薬局や病院の求人を見たい人には、ファゲットという選択肢があります。公式が強みとして挙げているのが、中小の調剤薬局・病院の求人です。僕自身は使っていないので、担当者との相性は自分で確かめてください。
ほかのエージェントとの違いは、転職エージェントの比較記事にまとめています。
「もう働きたくない」ほど疲れているなら働きたくないときの抜け道を。他職種も考えるなら薬剤師の異業種転職も読んでみてください。
「薬剤師いらない」に関するよくある質問
- AIで薬剤師の仕事はなくなりますか?
-
全部なくなるとは考えにくいです。取りそろえや一包化などの作業は、機械化や委託が進みます。調剤は薬剤師法で薬剤師の業務とされ、判断や説明は薬剤師に残ります。
- 2045年に薬剤師は本当に余りますか?
-
厚労省の需給推計では、2045年に供給が需要を約2.4万〜12.6万人上回る見込みです。ただ病院薬剤師は全都道府県で不足しており、業態と地域で差があります。
- 調剤は薬剤師以外でもできるようになったの?
-
2019年の厚労省通知で、PTPシートの薬の取りそろえなど機械的な作業は薬剤師以外も行えると整理されました。薬剤師の指示と最終確認が前提です。調剤そのものの責任は薬剤師にあります。
- 2026年の改定で薬剤師の仕事はどう変わった?
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かかりつけ薬剤師指導料が廃止され、フォローアップなどの実績を評価する形になりました。在宅の評価は引き上げられ、都市部の門前薬局の新規開設には減算が新設されています。
- 「いらない」と言われやすい薬剤師の共通点は?
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仕事の中身が取りそろえや確認の作業に偏っている人です。対人、在宅、専門分野のどれかに軸を持つと、制度の流れと合う働き方になります。
- 今の職場で消耗するならどうすればいい?
-
資格を捨てる前に、業態か職場を1段階ずらすことを考えてみてください。見学で在宅の実績や作業の分担を確かめると、判断しやすくなります。
まとめ:薬剤師は「いらない」のではなく「役割が変わる」|残る側に立つために
- 消えるのは資格でなく作業
- 2045年は最大約12.6万人過剰
- 病院薬剤師は全県で不足
- 改定は在宅と対人の実績を評価
- 働く場所で役割は変わる
数えて渡すだけの仕事は、機械や他のスタッフに移っていきます。不安を聞き取り、処方に意見を返し、在宅や多職種と組む仕事は、制度の上でも評価が上がっています。
明日からできる小さな一歩を積みつつ、今の職場が作業しかさせてくれないなら、場所を見直すことも選択肢に入れてください。僕は2回失敗しましたが、選ぶ基準を変えてから働き方が変わりました。
僕の転職失敗からのやり直しの全記録はこちらの自己紹介記事に書いています。









