産休も育休も法律で決まった制度なので、どの薬局・病院にもあります。取りやすい職場かどうかの差は、制度の有無ではなく1人抜けても回る人数と、復帰した人の前例で決まります。
外から確かめる手がかりもあります。従業員300人超の会社は、2025年4月から男性の育休取得率を毎年公表する義務があり、厚生労働省の「両立支援のひろば」で調べられます。くるみん認定の有無も目安になります。
僕は管理薬剤師として店のシフトを組み、応募者の一次面接も担当しています。人が長く抜けるとシフト表のどこに穴が空くかを知っている立場から、見抜き方と転職前の注意点をまとめます。
- 調剤4年→DS2年→調剤4年
- いまは管理薬剤師(34歳)
- 転職を3回経験し、うち2回は失敗。
- 3回目で年収480万→610万にアップ
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「同じ失敗をしてほしくない」という思いで、薬剤師のリアルを本音で書いてます。
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薬剤師の産休育休が「取りやすい職場」と「制度だけある職場」の違い
読者が本当に知りたいのは、制度があるかではなく「気まずくならずに取れて、ちゃんと戻れるか」だと思います。先に制度の土台を確認してから、差がつくところを見ていきます。
制度はどの職場にもある
産休は労働基準法65条で決まっています。産前6週間(双子以上は14週間)は請求すれば休めて、産後8週間は原則として働かせてはいけない期間です。勤続年数に関係なく、パートでも取れます。
育休は育児・介護休業法の制度で、原則として子どもが1歳になるまで取れます。保育園に入れないなどの事情があれば、最長2歳まで延ばせます。こちらは勤続期間などの条件があり、転職を考えている人ほど注意が必要です(入社1年未満の扱いで説明します)。
妊娠を伝えた人を不利益に扱うことは、男女雇用機会均等法9条で禁止されています。報告のタイミングや、報告後に守られるルールは薬剤師の妊娠報告のタイミングの記事にまとめました。
出典:e-Gov法令検索「労働基準法」「育児・介護休業法」「男女雇用機会均等法」
「取得実績あり」の落とし穴
求人票の「産休育休取得実績あり」は、それだけでは判断材料として弱いです。過去に1人でも取っていれば「あり」と書けるからです。
大事なのは何人が取って、何人が戻ってきたかです。取得しても復帰せずに辞める人が続く職場は、戻れる環境が整っていないサインかもしれません。
「実績はありますか」ではなく、「直近3年で何人が取って、何人が復帰しましたか」と数字で聞くのがおすすめです。
管理薬剤師たろう「実績あり」の二文字より、人数を聞いたほうが職場の本当の姿が見えます。
シフト表で見る穴の大きさ
シフトを組む側から見ると、産休と育休を続けて取る人が出ると、常勤1人分の枠が1年前後空きます。数日の有給とは規模が違います。
この穴を埋める方法は、だいたい次の3つです。
- 残りの薬剤師で分け合う
- 他店舗から応援を回す
- 派遣や新規採用で補う
1つ目しか手段がない職場では、休みに入る本人が「同僚に負担をかける」と感じやすくなります。取りやすさの差は、本人や周りの人柄より、この埋め方の選択肢の数で決まる部分が大きいと僕は考えています。
産休育休が取りやすい薬剤師の職場を公表データで確かめる方法
求人票や面接の言葉だけでなく、会社が公的に出している数字も使えます。応募前に自宅で確認できるので、最初のふるい分けに向いています。
300人超は育休率を公表
育児・介護休業法の改正で、2025年4月から常時雇用する労働者が300人を超える会社は、男性の育休取得率を年1回公表する義務があります。それまでは1,000人超の会社だけが対象でした。
公表先として国が勧めているのが、厚生労働省の「両立支援のひろば」です。会社名で検索すると、男性の育休取得率や、会社によっては女性の取得率・平均取得日数、次世代法の行動計画まで見られます。
義務になっているのは男性の数字です。ただ、配偶者が出産した男性社員が実際に休めている会社は、人が抜ける前提でシフトや応援を組めている可能性が高いと思います。女性の数字しか見ないより、職場の体制が読み取りやすい指標です。
出典:厚生労働省・都道府県労働局「2025年4月から、男性労働者の育児休業取得率等の公表が従業員が300人超1,000人以下の企業にも義務化されます」、両立支援のひろば
くるみん認定の基準を読む
「くるみん」は、子育てサポートの基準を満たした会社を厚生労働大臣が認定する制度です。求人票や会社の採用ページにマークが載っていることがあります。
2025年4月からの新しい基準では、くるみん認定に次のような条件があります。
- 男性の育休取得率30%以上
- 女性の育休取得率75%以上
- 有期雇用の女性も75%以上
- 月の残業に上限の基準
男性の基準は、育児目的の休暇を含める場合は50%以上です。残業は、フルタイム全員の平均が月30時間未満、または25〜39歳のフルタイムの平均が月45時間未満という基準です。
ただし、2027年3月末までは旧基準(男性10%以上など)でも申請できる経過措置があります。また、認定は会社全体の数字なので、配属される店舗の人数までは分かりません。くるみんは「会社として土台がある」目安にとどめて、店舗の状況は別に確かめてください。
出典:岡山労働局「くるみん認定基準の主な改正内容(令和7年4月1日施行)」
中小薬局は直接聞く
300人以下の会社には公表の義務がないので、個人薬局や数店舗規模のチェーンは、ひろばに数字が出ていないことが多いです。数字がないこと自体は悪いサインではありません。
この場合は、見学や面接で次の7条件を直接確かめることになります。自分で聞きにくいときは、転職エージェントに代わりに確認してもらう方法もあります。
管理薬剤師が教える|産休育休が取りやすい職場を見抜く7条件
シフトを組む側から見て「ここなら人が抜けても回せる」と考える職場の条件を、7つに絞りました。①と⑤は構造の話なので、特に優先して確認してください。
- ①薬剤師の人数に余白がある
- ②子育て中の人が今も働く
- ③時短の実例が複数ある
- ④復帰後も近い店舗に戻れる
- ⑤応援や派遣の仕組みがある
- ⑥店のトップの考え方
- ⑦数字で具体的に答えられる
①薬剤師の人数に余白がある
いちばん大きいのがここです。1人抜けても処方箋を回せる人員かどうかで、休みに入るときの空気がほぼ決まります。
見るべきは、店全体の人数より時間帯ごとの薬剤師の人数です。昼は3人いても、夕方や土曜に1人になる時間帯がある店は、誰かが長く抜けると即座に詰まります。
面接では「夕方と土曜は薬剤師が何人いますか」と聞いてみてください。求人の募集理由が欠員補充か増員かも、余白を測る材料になります。求人票の読み方は「アットホーム」の求人票で僕が見落とした4行に書いています。
②子育て中の人が今も働く
子育てしながら働いている薬剤師がすでにいるかどうかは、生きた実績です。その人が普通に働けているなら、職場として両立が当たり前になっている証拠と言えます。
逆に、同年代のスタッフが多いのに子育て中の人がほとんど残っていない職場は、両立できずに辞めている可能性があります。見学のときに、スタッフの年代や勤務時間の幅をそれとなく見ておくと参考になります。
③時短の実例が複数ある
育休を取れても、復帰後にフルタイムしか選べないと続けるのが難しくなります。3歳未満の子を育てる人は、1日原則6時間の短時間勤務を使えることが法律で決まっています。
2025年には改正があり、残業免除が小学校入学前まで広がり、3歳から小学校入学前の「柔軟な働き方」の措置も始まりました。制度の中身はワンオペ育児で限界の薬剤師向けの記事で表にしています。
法律で使える制度でも、店で実際に使われているかは別です。「今、時短で働いている方は何人いますか」と聞いて、人数と勤務時間が具体的に返ってくる職場は安心材料が多いです。
④復帰後も近い店舗に戻れる
見落とされやすいのが、復帰後の配属です。育休明けに保育園の送迎が間に合わない店舗へ異動になると、戻っても続けられません。
元の店舗か、通いやすい近隣店舗に戻れる方針かを事前に確認しておきましょう。店舗数の多いチェーンは選択肢が多い反面、人手の足りない店へ回される可能性もあるので、方針を言葉で確かめておくと安心です。
⑤応援や派遣の仕組みがある
先ほどの「穴の埋め方」の話です。ヘルプの薬剤師を回せる本部の機能や、派遣を入れる予算がある会社は、残ったスタッフにしわ寄せがいきにくくなります。
「誰かが長く休むとき、人員はどうやりくりしていますか」と聞いて、仕組みで答えられる会社は信頼できます。「みんなで頑張ってカバーしています」という答えだけなら、残った人の負担で回している可能性があります。
⑥店のトップの考え方
同じ会社でも、店舗の管理薬剤師によって空気は変わります。シフトを最終的に組むのは店のトップなので、その人が産休育休を「想定内のこと」と考えているかは大きいです。
見学や面接では、配属予定の店舗の管理薬剤師と話せるか確認してみてください。休みの話題を出したときの反応は、会社の制度説明よりも本音が出やすいところです。
⑦数字で具体的に答えられる
最後は、ここまでの質問に数字で答えられるかです。取得人数、復帰人数、時短の人数を濁さず答えられる職場は、実態が伴っていると考えていいと思います。
ただ、店の面接官がその場で全社の数字を持っているとは限りません。一次面接をする立場から言うと、会社全体の取得人数は本部の人事が持っていることが多いです。
その場合は「後日で構わないので教えてください」と頼めば十分です。後から数字を出してくれるかどうかも、判断材料になります。
業態別|薬剤師の産休育休の取りやすさを比較
「結局どの業態が取りやすいのか」という疑問にも答えておきます。あくまで傾向の話で、最後は配属店舗の人数で決まる点は変わりません。
大手チェーン調剤薬局
薬剤師の数が多く、応援の仕組みもあることが多いので、産休育休との相性は比較的いいです。300人を超える会社なら、両立支援のひろばで育休の数字を確認できるのも強みです。
一方で、会社の制度が手厚くても、配属店舗がいつもギリギリの人数なら話は別です。会社の規模だけで安心せず、店舗の時間帯ごとの人数まで確認してください。
中小・個人薬局
ここは職場による差がとても大きいです。経営者の理解が深く、柔軟に支えてくれる職場もあれば、人員に余白がなくて取りにくい職場もあります。
特に一人薬剤師の店舗は要注意です。自分が抜けると店を開けられない構造だと、応援の当てがない限り、休むこと自体が大きなハードルになります。
公表データがないぶん、人数と経営者の考え方を直接確かめる必要があります。
ドラッグストア・病院|一長一短
ドラッグストアは大手なら制度も人員も整っている一方、閉店時刻が遅く、復帰後の時短が組みにくい店舗もあります。僕がドラッグストア併設の調剤にいた頃は週の半分が遅番で、閉店後の品出しまであると夜10時になる日もありました。お迎えのある生活とは両立しにくい働き方です。
病院は制度が整っていることが多い反面、当直や夜勤がある職場では育児との両立に工夫がいります。公立病院は公務員としての育休制度になるので、細かい条件は募集要項で確認してください。
産休育休が取りにくい薬剤師の職場の特徴と、転職のタイミングの注意点
逆に、取りにくい職場の特徴と、転職を考えている人が見落としやすい制度の条件もまとめておきます。
取りにくい職場のサイン
次のような点が重なる職場は、制度があっても実際には取りにくいことが多いです。
- 人員がいつもギリギリ
- 一人薬剤師の時間帯がある
- 子育て中の人がいない
- 時短の前例がない
- 人の入れ替わりが激しい
こうしたサインの多くは、転職前の職場見学で確かめられます。見るべきところは職場見学のチェックリスト記事にまとめています。
入社1年未満は育休対象外も
産休育休のために転職を考えている人に、いちばん知っておいてほしいのがここです。転職直後は育休を取れないことがあります。
育児・介護休業法6条では、会社が労使協定を結んでいれば、次の人を育休の対象から外せます。
- 入社して1年未満の人
- 1年以内に退職が明らかな人
- 週の勤務が2日以下の人
応募先がこの協定を結んでいるかは、就業規則を見ないと分かりません。3歳未満の時短勤務や残業免除にも、同じように1年未満の人を外せるルールがあります。
妊娠中や妊娠を近く考えている場合は、まず今の職場で取れないか確かめるのが先だと思います。転職するなら、内定前に「入社直後に育休や時短を申し出た場合も対象になりますか」と確認してください。
シフトを組む管理薬剤師が考える、産休育休に強い職場の共通点
ここからは、管理薬剤師として店の人員を見ている立場からの考えです。
今の職場では、退職者が出たときの求人票の文面は本部が作り、店から上げるのは「欠員の理由」「希望する時間帯」「常勤かパートか」の3点だけです。つまり求人票の段階で、店の人数の余裕は応募者にほとんど見えません。
だからこそ、産休育休の取りやすさは応募者の側から聞きにいくしかないと考えています。一次面接をする側としても、夕方の人数や時短の人数のような具体的な質問には答えやすいです。「産休育休は取れますか」と聞かれるより、店の実態をそのまま伝えられます。
シフト表で見ると、休みに強い店と弱い店の差は、特別な制度より「普段から1人分の余白を持っているか」にあります。余白のある店は、有給も産休も同じ延長線で回せます。余白のない店では、どんなに理解のある上司でも、休む本人に申し訳なさを感じさせてしまいがちです。
僕自身、2回目の転職では職場見学を自分から断って入社を決め、2ヶ月で辞めています。人数や空気は、その場に行って聞かないと分からないというのが、そのとき身にしみたことです。
産休育休が取りやすい職場を転職で探すときのエージェントの使い方
ここまでの条件を、在職中に1社ずつ自分で確かめるのは大変です。公表データのない中小薬局ほど、外から分かる情報は少なくなります。
転職エージェントを使うなら、最初の面談で次のように条件を伝えておくと、ミスマッチが減ります。
- 育休の取得・復帰人数
- 時短で働く人の有無
- 夕方・土曜の薬剤師数
- 入社直後の育休の扱い
「この4点を応募前に確認してほしい」と頼めば、自分では聞きにくい数字も担当者経由で確かめられます。答えが返ってこない求人は、その時点で候補から外す判断もできます。
中小の調剤薬局や病院を中心に探したい人には、ファゲットがあります。僕自身は利用していませんが、公式サイトでは中小の調剤薬局・病院の求人を強みとしています。公表データが出ていない規模の職場こそ、担当者に数字を確認してもらう使い方が合うと思います。
ほかのエージェントとも比べて選びたい人は、比較記事から探してください。子育てとの両立を重視する場合は、複数社に同じ条件を伝えて、返ってくる情報の具体性を比べるのがおすすめです。
子育てと両立しやすい職場の条件は、ママ薬剤師の転職の記事でも整理しています。
- 産休と育休はどう違うんですか?
産休は労働基準法の制度で、産前6週間(請求制)と産後8週間の休業です。勤続年数に関係なく取れます。育休は育児・介護休業法の制度で、原則子どもが1歳になるまで取れますが、労使協定で入社1年未満の人などが対象外になる場合があります。
- 求人票の「産休育休取得実績あり」は信じていい?
過去に1人取れば「あり」と書けるので、それだけでは判断材料として弱いです。直近で何人が取得して何人が復帰したか、数字で聞いてみるのがおすすめです。
- 会社の育休取得率はどこで調べられますか?
厚生労働省の「両立支援のひろば」で会社名を検索できます。2025年4月から、従業員300人超の会社は男性の育休取得率を年1回公表する義務があります。300人以下の会社は義務がないので、見学や面接で直接確認してください。
- くるみん認定がある会社なら安心ですか?
男女の育休取得率や残業時間の基準を満たした会社なので、会社としての土台がある目安にはなります。ただし会社全体の数字なので、配属される店舗の人数や空気までは分かりません。店舗単位の確認は別に必要です。
- 一人薬剤師の薬局でも産休育休は取れますか?
権利としては取れます。ただ自分が抜けると店を開けられない構造なので、応援の薬剤師を回せる仕組みがあるかどうかで現実の取りやすさが大きく変わります。
- 妊娠中ですが、今から転職して育休は取れますか?
会社が労使協定を結んでいると、入社1年未満の人は育休の対象外にされることがあります。妊娠中の転職は体調の負担も大きいので、まず今の職場で取れないか確認するほうが安全な場合が多いです。
- 復帰後に時短勤務はできますか?
3歳未満の子を育てる人は、1日原則6時間の短時間勤務を使えます。ただし労使協定で入社1年未満の人などを外せるほか、店での運用にも差があるので、今まさに時短で働いている人がいるかを確認すると実態が分かります。
- 面接で産休育休のことを聞くと印象が悪くなりませんか?
「取れますか」と聞くより、「時短で働いている方は何人いますか」のように具体的に聞くと、長く働く前提の質問として伝わりやすいと思います。それでも嫌な顔をされるなら、入社後も理解を得にくい職場かもしれません。
- 育休中にもらえるお金はありますか?
雇用保険から育児休業給付金が支給されます。2025年4月からは出生後休業支援給付金や育児時短就業給付金もできました。支給には条件があるので、厚生労働省の「育児休業等給付について」やハローワークで確認してください。
- パートでも産休育休は取れますか?
産休はパートでも取れます。育休も、期間の定めのある契約なら子どもが1歳6か月になるまでに契約が終わることが明らかでないことなど、条件を満たせば取れます。週2日以下の勤務などは労使協定で対象外になる場合があります。
まとめ|薬剤師の産休育休が取りやすい職場は「制度」より「運用」で見抜く
産休育休はどの職場にもある制度です。見るべきは、1人抜けても回る人数と、実際に取って戻ってきた人がいるかです。300人超の会社なら公表データで、中小なら見学や面接で数字を確かめてください。
- 「実績あり」より人数を聞く
- 300人超は公表データを見る
- 人員に余白がある職場が強い
- 時短で働く人がいるか
- 一人薬剤師の店舗は要注意
- 入社1年未満は対象外も
転職を考えているなら、入社直後の育休の扱いだけは内定前に必ず確認してください。まずは気になる会社の名前を、両立支援のひろばで検索するところから始めてみてください。





