薬剤師が自分から「異動したい」と言うのは、わがままではありません。ただ、希望が通るかどうかは言い方より先に、行き先の店の空き・今の店の後任・決める人に話が届いているか、の3つで決まります。
「上司に相談して、前向きな理由で伝える」だけだと、話が上司のところで止まることがあります。この記事では、相談のあと店と本部で何が起きるか、人間関係や体力が理由のときにそのまま言える文例、返事を待つ期限(目安は次の定期の異動1回)まで書きます。
辞めるほどではないけれど、この店はもう出たい。そう思って検索した人は、まず下の表で、自分の理由が異動で片づく型かどうかを見てください。
| 異動したい理由 | 異動で解決するか | 最初に動く先 |
|---|---|---|
| 特定の人と合わない | しやすい(店単位の話) | 直属の上司かエリア担当 |
| 上司からの暴言・無視 | 異動願いより相談が先 | 会社の相談窓口・人事 |
| 通勤・結婚・介護 | しやすい(行き先が明確) | 上司へ、日取りが見えた時点で |
| 忙しすぎる・体がきつい | 店だけの問題なら○ | 上司。症状があれば受診も |
| 在宅などの経験を積みたい | しやすい | 面談・自己申告 |
| 給与・評価・会社の方針 | しにくい(会社単位の話) | 異動より転職の検討 |
僕は地方の調剤薬局で管理薬剤師をしている、たろうです。スタッフのシフトを組み、欠員が出れば本部へ報告を上げる側にいます。僕自身が異動を願い出た経験はないので、人を動かされる店の側から見えることとして読んでください。
会社の都合で動かされて困っている人は向きが逆なので、薬剤師の転勤・異動が多い理由と断れる範囲を読んでください。
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- 調剤4年→DS2年→調剤4年
- いまは管理薬剤師(34歳)
- 転職を3回経験し、うち2回は失敗。
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「同じ失敗をしてほしくない」という思いで、薬剤師のリアルを本音で書いてます。
詳しい筆者の経歴はこちら
薬剤師が異動したいとき、希望が通るかは3つの条件で決まる

異動の希望が通るのは、行き先の空き・今の店の後任・決める人への伝達の3つがそろったときです。熱意や言い回しは、その3つがそろったあとで効いてきます。
前提として、誰をどの店に置くかを決めるのは会社です。就業規則に定めがあって実際に異動が行われており、勤務地を限定する約束がなければ、会社は本人の個別の同意なしに配置を決められる、というのが裁判例の基本的な考え方になっています(厚生労働省「確かめよう労働条件」配置転換の裁判例)。裏返すと、働く側に「この店へ移してもらう権利」が用意されているわけではありません。
だから異動の希望は、権利の主張ではなく、会社が動きやすい材料をそろえて出す相談になります。そろえる材料を、3つ順番に見ていきます。
悩む男性異動って、自分から言い出していいものなんでしょうか。わがままだと思われそうで…。
行き先の店に空きがあるか
行き先に枠がなければ、どれだけ理由が正当でも異動は動きません。薬局は1店舗あたりの薬剤師が数人なので、誰かが抜けるか、処方箋が増えて増員が決まるかしないと、席そのものができないからです。



理由が正しくても、席がなければ動けません。もどかしいですが、ここが出発点です。
知恵袋で異動願いについての相談を読むと、回答する側も、希望先に空きがあるかどうか次第で、何年か続けて出すつもりでいたほうがいい、という趣旨のことを書いています。希望が悪いのではなく、枠が出るタイミングと合うかどうかの話なんですよね。
ここから言えるのは、行き先は店名1つではなく条件で出したほうが通りやすいということです。「◯◯店」と指定すると、その1店に空きが出るまで待つことになります。次のような条件で出せば、会社が当てはめられる店が増えます。
- 自宅から車で30分以内
- 常勤の薬剤師が2人以上
- 在宅に対応している店
今の店の後任が立つか
あなたが出たあとの店が回るかどうかも、会社は同じ重さで見ます。異動は、出す店から見れば欠員だからです。
薬局には、人が動くたびに届出が発生するという事情もあります。管理薬剤師でなくても、その薬局で働く薬剤師の氏名や週あたりの勤務時間数が変わると、会社は30日以内に変更を届け出る決まりです(医薬品医療機器等法10条1項、同法施行規則16条)。出す店と受ける店の両方で、この手続きが要ります。



管理薬剤師の場合は、もっと動きにくいんでしょうか?
あなたが管理薬剤師なら、後任の管理者を決めないと店が開けられないので、話はもう一段重くなります。その段取りは管理薬剤師の変更届を誰がいつ出すかにまとめました。「来月から移りたい」が通りにくいのは、あなたの評価ではなく、後任と手続きの時間が足りないからです。
決める人まで話が届くか
異動を決めるのは、たいてい店の上司ではありません。店舗を複数持つ薬局では、人の配置は本部やエリアの責任者が決める会社が多いと思います。
僕の立場で言うと、欠員が出て募集をかけるときでさえ、店から本部へ上げるのは「欠員の理由」「希望する勤務時間帯」「常勤かパートか」の3点だけです。求人の原稿を書くのも本部で、店に決める権限はほとんどありません。人の配置も同じで、店の管理薬剤師にできるのは、聞いた話を上へ伝えるところまでだと考えてください。



意外かもしれませんが、店には人の配置を決める権限がほとんどありません。
つまり、上司に話しただけでは、決める人に届いたかどうかは分かりません。伝言の途中で「ちょっと愚痴を聞いた」くらいに薄まることもあります。あとで書く「口頭だけで終わらせない」が大事になるのは、このためです。
異動の希望を聞いたあと、店と本部で起きること


希望を聞いた上司がまず考えるのは、あなたの気持ちより先に、来月以降のシフト表です。冷たく聞こえるかもしれませんが、内側を知っておくと、返ってくる反応を読み違えずに済みます。
人が1人抜けると、まず管理薬剤師が自分の休みや予定を削って穴を埋めることになります。「新人が辞めると自分のシフトが消える」というのが、この仕事の実感です。上司が一瞬渋い顔をしたとしても、それはあなたを責めているのではなく、穴の埋め方を計算している顔だと思ってください。



渋い顔をされても、あなたが責められているわけではありません。安心してください。
そのあとの流れは会社によって違いますが、上司はエリアの担当や本部へ話を上げます。本部の側では、行き先の枠と、今の店の後任を同時に探すことになります。1人動かすと別の店からもう1人動かす必要が出る、玉突きになりやすい作業です。
もう1つ、会社は退職を重く見ています。僕は以前、新人が辞めたとき、本部から定着率のことで詰められました。そういう会社にとって、「辞める前に異動の相談が来た」は悪い知らせではなく、まだ手が打てる知らせだと僕は受け取っています。
動かせる見込みが立つと内示が出て、引き継ぎと届出に入ります。話してから実際に動くまでに時間がかかるのは、この順番を踏むからです。
かかりつけの担当患者がいる人は、この引き継ぎに担当の切り替えが加わります。異動でも元の店での扱いは退職と同じなので、かかりつけ薬剤師の退職と担当患者の引き継ぎで確かめられます。



上司の反応が鈍くても、それで「通らない」と決まったわけじゃないです。決める人まで届いたかどうかを、別の形で確かめましょう。
異動の希望は誰に・いつ言うか


言う相手は直属の上司が基本で、時期は「動きたい月の直前」ではなく「人が動く前」です。上司その人が原因のときだけ、順番を変えます。
最初は直属の上司でいい
理由が上司本人でないなら、最初に話すのは店の管理薬剤師や薬局長でかまいません。頭越しに本部へ言うと、あとで同じ店で働き続ける間の空気が悪くなるからです。
切り出しは短くて大丈夫です。忙しい時間帯を外して、「今後の働き方のことで、10分ほどお時間をいただけますか」と頼んでください。投薬の合間に立ち話で言うと、相談ではなく愚痴として処理されます。
話の最後に、「この話は、エリアの担当の方にも伝えていただけますか」と一言添えてください。上司で止まるのを防げますし、上司の側も上げてよい話だと分かって動きやすくなります。
上司が原因なら窓口へ
上司からの暴言や無視が理由なら、その上司に異動願いを出す必要はありません。エリアの担当、人事、会社の相談窓口のどれかへ直接話してください。
厚生労働省のパワハラ防止の指針は、会社に相談窓口を決めて周知することを求めています。事実が確認できたときの対応の例として、被害者と行為者を引き離すための配置転換も挙がっています(事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針)。相談したことを理由に不利益な扱いをしない、と定めて周知することも会社の務めです。



窓口に直接話したら、わがままだと思われないでしょうか?
このルートなら、あなたが「異動したい側」として頭を下げる話ではなく、会社が対応すべき話に変わります。日付・言われた言葉・その場にいた人の記録が材料になるので、先にメモを始めてください。線引きと社外の窓口は薬局のパワハラの相談先に書いています。
会社の窓口が動かないときや、社外で相談したいときは、労働局の総合労働相談コーナーが使えます。相談は無料で、匿名でもかまいません。個別のケースで会社の対応が妥当かどうかは、僕には判断できないので、そこで確かめてください。



店長が原因なのに、その店長に「異動したい」と言うしかないと思っていました…。
時期は幅を持たせて早めに
希望は、動きたい時期のかなり前に、幅を持たせて出すのが通りやすいです。行き先の枠と後任を探す時間を、会社に渡せるからです。
定期の異動がいつあるかは会社ごとに違うので、まず自社の時期を確かめてください。確かめる場所は3つあります。
- 自己申告書や面談の時期
- 同僚が過去に動いた月
- 就業規則の異動の項
シフトを組む側から言うと、「4月に必ず」より「春から夏のあいだに」と言われたほうが、ずっと調整しやすいです。結婚や引っ越しのように日が決まっている場合は、日取りが見えた時点で言うのがいちばん早い手です。
口頭だけで終わらせない
面談で話したら、その日のうちに内容を文字で残してください。口頭だけだと、決める人に届いたか、いつ言ったかが、あとで誰にも確かめられなくなります。
自己申告書に異動希望の欄がある会社なら、そこにも同じ内容を書きます。欄がなければ、上司あてのメールや社内チャットで十分です。



送る文面は、このくらいの短さで足ります。例を置いておきます。
「本日はお時間をいただきありがとうございました。お話しした異動の希望を、念のため文面でもお送りします。理由は通勤時間、希望は自宅から車で30分以内の店舗、時期は来春から夏までのあいだで、エリアご担当の方にも共有いただけると助かります。」
採用担当の言葉を信じて勤務エリアの区分を選んだのに、配属が聞いていた話と違った、という相談も知恵袋にありました。口約束は、言った人が異動や退職でいなくなると消えます。希望も返事も、文字にしておくのが自分を守る方法です。
異動したい理由別・そのまま使える伝え方の文例


伝える中身は、理由が何であっても5つで足ります。続けたい意思、事実としての理由、行き先の条件、時期の幅、引き継ぎへの協力です。
- この会社で続けたい
- 理由は事実だけ
- 行き先は条件で
- 時期は幅で
- 引き継ぎはやります



「前向きな理由に言い換えましょう」と言われても、人間関係や体力の話は言い換えようがなくて困ってました。
通勤・結婚・介護のとき
生活の事情は、いちばん伝えやすく、会社も動きやすい理由です。日付と場所という、動かせない事実があるからです。
「来年3月に結婚して、◯◯市へ引っ越す予定です。この会社で続けたいので、◯◯市から通える店舗への異動を相談させてください。時期は2月から4月のあいだで調整でき、引き継ぎの資料はこちらで作ります。」



日付と場所を先に伝えるのがポイントです。会社が段取りを組みやすくなります。
介護や子育てが理由のときは、週に何日・何時に何が必要かまで具体的に言ってください。会社が人の配置を変えるとき、子の養育や家族の介護の状況に配慮することは法律にも書かれています(育児・介護休業法26条)。会社が配置を変える場面についての定めですが、事情を知らなければ会社は配慮のしようがありません。
配偶者の転勤についていく場合は、休職や退職との比べ方も絡みます。順番は夫の転勤で薬剤師を辞める前に確認することに分けて書きました。
近い店に空きが出ず、通勤が遠いまま辞めたいと考え始めたら、退職の前に失業給付の扱いと時給の計算を確かめてください。薬剤師で通勤が遠いから辞めたいときの判断にまとめています。
人間関係がつらいとき
人間関係が理由でも、異動の相談はしてかまいません。言い方のコツは、相手の人柄ではなく、起きた事実と仕事への影響を話すことです。
「◯月ごろから、電話対応や機械の操作が自分に集中していて、投薬を止める場面が増えています。店の中で分担の相談もしましたが、変わりませんでした。この会社では続けたいので、別の店舗で働く選択肢があるか相談させてください。」
言う前に、手元のメモで3つをそろえておきます。
- いつから起きているか
- 何が起きているか
- 自分が何を試したか
「あの人が嫌いだから」と言うと、聞いた上司は誰の味方をするかという話に巻き込まれます。「この事実があり、こう試して、変わらなかった」の形なら、上司はそのまま本部へ上げられます。
知恵袋には、できないことを断らないままだと、どの店へ行っても便利に使われる、という趣旨の回答がありました。耳が痛いですが、異動の前に一度、店の中で分担を口に出しておくことは、相談を通す材料にもなります。
忙しさ・体力が限界のとき
体がもたないという理由も、異動の相談に使えます。知恵袋にも、体力のことでは異動願いを出しにくい、という趣旨の相談がありましたが、黙ったまま倒れるほうが、会社にとっても困ります。
「この3か月、閉局後の残業が続いていて、腰と足の痛みで通院しています。今の店の枚数だと、この先も続けるのが難しいです。処方箋枚数が少ない店か、常勤が複数いる店への異動を相談させてください。」



この文例、気持ちではなく事実と条件だけでできているのに気づきましたか?
「暇な店へ行きたい」ではなく、残業時間・通院・症状という事実と、続けるために必要な条件を言うのがポイントです。受診しているなら、医師の意見を紙でもらっておくと話が進みやすくなります。
会社には、働く人が安全に働けるよう配慮する義務があります(労働契約法5条)。健康診断などで医師の意見が出たときに会社が検討する対応の例として、労働安全衛生法は「就業場所の変更」「労働時間の短縮」を挙げています(66条の5)。一人で店を回していて限界なら、一人薬剤師がきついときの辞め時の見分け方も先に読んでみてください。
経験を広げたいとき
在宅や別の診療科を経験したい、という希望は、会社にとっても受け取りやすい話です。行き先の条件がはっきりしているからです。
「在宅の訪問を経験したいと考えています。今の店では機会がないので、在宅に対応している店舗への異動を希望します。時期は次の定期の異動に合わせていただければ十分です。」
注意点が1つあります。本当の理由が人間関係なのに、聞こえのいい理由だけを言うと、希望どおりの業務で、同じような空気の店に動くことがあります。避けたい条件があるなら、「常勤が複数いる店」のように、条件の形で一緒に伝えてください。
異動しても変わらないケースと、行き先の確かめ方


理由が店ではなく会社全体にあるときは、異動しても同じことが起きます。どの店も人が足りない、評価や給与の仕組みに納得できない、という場合です。
知恵袋の回答にも、同じ会社の別の店でも状況は似ていた、一人薬剤師の店に移ると今より休めなくなる、という声がありました。今の店には休みを取りやすいという良さがあるのに、それを手放して悪いほうへ動く心配は、もっともだと思います。



今の店の良さを手放してまで動くのか。ここは悩ましいところです。
僕は2回目の転職で、担当の方からの職場見学の提案を「日程が合わない」と自分から断り、入った薬局を2か月で辞めました。早く抜けたくて焦っていて、行き先を見ないまま決めたのが原因です。異動も転職も、行き先を確かめずに動けば同じ失敗になります。
社内の異動には、転職にない強みがあります。応援で他の店に入る機会や、社内の人に聞ける機会があることです。行き先の候補について、次の5つを見ておいてください。
- 常勤の薬剤師は何人か
- 1日の処方箋は何枚くらいか
- 一人になる時間帯はあるか
- 定休日と閉局時間
- 最近辞めた人がいるか
行き先が内科クリニックの門前なら、枚数が少なくても冬の波や一包化で重くなることがあります。内科の門前薬局がきついかの確かめ方も見てから決めてください。
応援そのものを頼まれて迷っているときは、薬剤師の応援勤務(ヘルプ)を断れるかどうかを先に確認してください。行き先を見る目的で1〜2回入ってみるのは、異動願いを出す前の下見として、いちばん確実な方法です。



見学を断った僕が言うのも何ですが、行き先を1日見るだけで分かることは多いです。社内ならそれがやりやすいんですよね。
社内の店なら、応援に入って下見ができます。他社の店は中に入れないので、同じ5つを誰かに聞いてもらうことになります。
転職エージェントには、常勤の人数や最近辞めた人がいるかなど、求人票に載らない条件を聞いてもらえる場合があります。「どの店も人が足りない」「給与の仕組みに納得できない」と理由が会社全体にある人は、異動の返事を待つあいだに外の条件を並べておくと、期限が来たときに迷いません。
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異動が通らないとき、転職へ切り替える線


切り替える目安は、自分で決めた期限を過ぎても返事がないとき、理由が会社単位のとき、通える範囲に行き先がないとき、体調に出ているときの4つです。期限を決めずに待つのが、いちばん消耗します。
返事を待つ期限を決める
相談したら、いつまで待つかを自分の中で先に決めてください。期限がないと、「検討します」のまま時間だけが過ぎていくからです。
目安は、次の定期の異動を1回です。そこで名前が出なければ、こちらから一度だけ確かめます。
「◯月にご相談した異動の件ですが、その後の見通しを教えていただけますか。難しい場合は、その理由と、いつごろなら可能性があるかも伺いたいです。」
「通らないなら辞めます」と最初から言う必要はありません。脅しに聞こえると話がこじれます。期限を過ぎて理由も時期も返ってこなければ、それが会社の答えだと受け取って、次の準備に移れば足ります。
切り替えを考える4つの場合
次のどれかに当てはまるなら、異動を待つより、外を調べ始めたほうがいいと思います。
- 期限を過ぎても返事がない
- 理由が会社全体にある
- 通える範囲に店がない
- 体調に症状が出ている
4つめだけは扱いが違います。眠れない、出勤前に動けないといった症状が出ているなら、異動の返事を待たずに受診して、休むことを先に考えてください。異動も転職も、体が戻ってからで間に合います。
店が1つか2つしかない薬局にいる人は、そもそも行き先がありません。その場合は最初から、今の店で条件を変える相談か、転職かの二択になります。
異動と転職で変わるもの
異動の強みは、積み上げた勤続が途切れないことです。転職すると、有給休暇と育児休業の扱いがいったん入社時点に戻ります。
| 比べる点 | 社内で異動 | 転職 |
|---|---|---|
| 有給休暇 | 残日数と勤続が続く | 入社6か月後に10日から |
| 育児休業 | 勤続が続くので影響なし | 入社1年未満は対象外の会社も |
| 会社の方針・給与の仕組み | 変わらない | 変わる |
| 行き先の情報 | 応援や社内で聞ける | 見学と質問で確かめる |
有給休暇は、法律上の最低ラインが「入社から6か月続けて勤め、8割以上出勤すると10日」です(労働基準法39条)。入社時に前倒しでくれる会社もあるので、転職先ごとに確認してください。
育児休業は、労使協定があれば、入社1年未満の人を対象から外せる決まりになっています(育児・介護休業法6条)。近いうちに出産を考えているなら、転職より異動のほうが制度を使いやすい場合があります。会社ごとの取りやすさの見方は産休・育休が取りやすい薬剤師の職場の条件に書きました。
面接では異動の相談が効く
結局転職することになっても、異動を相談した事実は無駄になりません。一次面接をしている僕は、退職理由を聞くとき、辞める前にその人が何をしたかを見ています。
残業が深夜まで続き、異動を願い出たが通らずに辞めた。次の面接では、退職理由に対して自分で努力した面が見えない、という趣旨の理由で見送られた。(知恵袋で読んだ相談の要旨)
この相談を読んで思ったのは、願い出たこと自体は伝わっていても、中身が伝わっていないのでは、ということです。いつ、誰に、何を頼み、どう返ってきたかまで言えると、「環境のせいにして辞めた人」ではなく「手を打ったうえで決めた人」に見えます。だから相談の記録を残しておいてほしいんです。



「異動を願い出ました」だけで終わらせないでください。いつ・誰に・何を、まで言います。
外を調べるなら、在職のまま始めてください。進め方は薬剤師が在職中に転職活動をするときの不安と対策にあります。転職エージェントは、他社の店の常勤の人数や欠員の理由など、自分では確かめにくいことを代わりに聞いてもらう使い方が合います。
理由が特定の1人だけで、社内に行き先の候補があり、まだ誰にも相談していない人は、登録を急がなくて大丈夫です。比べる段階に来た人だけ、薬剤師の転職エージェントの比較を見てください。僕が転職で実際に使った5社の良かった点と気になった点も、そこに書いています。
参考記事:薬剤師転職エージェントおすすめ3選|5社使った管理薬剤師のガチレビュー!





まず社内で相談して、期限を決めて、だめなら外を見る。順番が分かって少し楽になりました。
薬剤師が異動したいときのよくある質問
- 入社1年目や2年目でも、異動を希望していいですか?
-
希望を出すこと自体に、法律上の年数の制限はありません。ただし配属から日が浅いと、会社は育成の計画を理由に動かしにくくなります。介護や転居のように動かせない事情があるなら早めに伝え、そうでなければ面談や自己申告の時期に合わせて出すのが現実的です。
- 異動願いを出すと、評価が下がりますか?
-
会社によるので、一律には言えません。シフトを組む側から見ると、困るのは希望を出されることではなく、ある日いきなり「辞めます」と言われることです。続けたい意思と引き継ぎへの協力を一緒に伝えておけば、悪い受け取られ方にはなりにくいと思います。
- 異動したら、自分で届出が必要ですか?
-
薬局の変更届は会社(薬局開設者)が出すので、本人の手続きではありません。保険薬剤師の登録は、登録している地方厚生(支)局の管轄を越えて異動したときに、管轄変更の届出が要ります。同じ厚生局の管轄内の異動は、令和3年2月の省令改正で届出が不要になりました(関東信越厚生局の案内で確認)。
- パートでも異動を希望できますか?
-
希望を伝えることはできます。僕はパートとして働いた経験がないので、シフトを組む側から見える範囲で答えます。パートは契約書の就業場所が「◯◯店」と決まっていることが多く、店を変えるなら契約の書き換えになるので、更新の時期に合わせて相談すると話が進みやすいです。
- 妊娠中で今の店の業務がきついです。異動を頼めますか?
-
労働基準法65条3項は、妊娠中の女性が請求した場合、会社は他の軽い業務に転換させなければならないと定めています。店を移ることまでを約束する条文ではありませんが、立ち仕事や一人の時間帯を減らす相談の根拠になります。伝える時期は薬剤師の妊娠報告のタイミングも参考にしてください。
- 地元に戻りたいのですが、県外への異動は希望できますか?
-
会社に店があるかと、あなたの雇用区分で決まります。エリア限定の区分で入っていると、区分の外への異動は制度の外になりがちなので、区分の変更ができるかを人事に確かめてください。採用のときに聞いた口頭の説明ではなく、就業規則と書面で確認するのが確実です。
- 「異動できないなら辞めます」と言っていいですか?
-
最初の相談では言わないほうがいいと思います。会社が動く前に退職の話として処理され、異動の検討が止まることがあるからです。期限を過ぎても返事がなく、本当に退職を決めた段階で、事実として伝えれば足ります。
- 病院薬剤師の部署異動も、同じ考え方でいいですか?
-
僕は病院で働いた経験がないので、言える範囲は限られます。行き先の枠・今の部署の後任・決める人に届くか、という3つの条件と、事実と条件で伝える言い方は同じように使えると思います。決める人が薬剤部長なのか人事なのかは病院ごとに違うので、まずそこを確かめてください。
まとめ:薬剤師が異動したいときは、条件と期限をそろえて相談する


異動の希望は、わがままではなく、辞める前に打てる手です。通るかどうかは、行き先の空き・今の店の後任・決める人に届くかの3つで決まります。
- 行き先は店名でなく条件で出す
- 時期は幅を持たせて早めに言う
- 上司が原因なら相談窓口へ
- 面談のあと文字で残す
- 行き先は応援などで下見する
- 待つ期限を自分で決める
今日できるのは、自分の理由を表に当てはめることと、行きたい店の条件を3つ書き出すことです。そのうえで、上司に10分だけ時間をもらってください。
あなたが、辞めるか我慢するかの二択ではない道を選べますように。
上司に10分もらう前に、もう1つだけ。異動が通らなかったときの行き先が見えていると、「検討します」を待つ時間が少し楽になります。
理由が会社全体にある人や、通える範囲に行き先の店が少ない人は、下の3社から1社だけ選び、書き出した店の条件3つをそのまま伝えて、通える範囲にどんな求人があるかを聞いてみてください。合わなければ断ってよく、異動が通れば今の会社に残ればいいだけです。3社とも登録・相談は無料です。
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