処方箋が1日10枚も来ない日。やることが終わって、カウンターの内側で立っているだけの時間。「このままだとスキルが落ちて、いざというとき転職できないんじゃないか」と不安になりますよね。
先に答えると、暇な薬局で鈍りやすいのは処理の速さと処方の幅です。薬歴の質や説明の力は、むしろ暇な時間で伸ばせます。怖いのは暇そのものより、何もしないまま年単位で過ぎることです。
この記事では、暇さを数字で測る方法、落ちる力と伸ばせる力、今の薬局でできる対策、残るか動くかの基準を順に書きます。求人票を出す側で、応募者の一次面接もしている管理薬剤師の立場から、転職のときに説明できる形にすることを意識しました。
暇でつらい気持ちそのものや、罪悪感の整理は調剤薬局が暇すぎてつらいときの記事で書いています。こちらはスキルと今後の動き方の話です。
- 調剤4年→DS2年→調剤4年
- いまは管理薬剤師(34歳)
- 転職を3回経験し、うち2回は失敗。
- 3回目で年収480万→610万にアップ
- 人気転職エージェント5社を全部利用
「同じ失敗をしてほしくない」という思いで、薬剤師のリアルを本音で書いてます。
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薬局が暇すぎるかは薬剤師1人あたりの処方箋枚数で測る
「暇すぎる」と感じても、どのくらい暇なのかは人によって基準が違います。前に激務の職場にいた人ほど、普通の薬局でも暇に見えるものです。まず数字で現在地を確かめると、焦りの大きさが適正かどうか分かります。
目安は法令の「1人40枚」
薬局の薬剤師の人数には、省令で決まった下限があります。前年の1日平均の処方箋数を40で割った数以上の薬剤師を置く、というルールです(眼科・耳鼻咽喉科・歯科の処方箋は3分の2で数えます)。
出典:薬局並びに店舗販売業及び配置販売業の業務を行う体制を定める省令 第1条(e-Gov法令検索)
40枚は「これ以上は1人で持たせない」という上限側の線で、適正な忙しさの基準ではありません。それでも、自分の薬局を測る物差しにはなります。
- 1日の処方箋枚数を数える
- その日の薬剤師数で割る
- 1か月分を並べて見る
たとえば薬剤師2人で1日30枚なら、1人15枚です。枚数は同じでも、処方の種類数や一包化、在宅の有無で重さは大きく変わります。数字は「暇かどうか」より「前より減っているか」を見るために使ってください。
経営が危ない暇かの見分け方
暇な薬局で気になるのが「この店、潰れないか」という不安です。僕は店の数字を本部に報告する立場ですが、枚数が少ないこと自体より、減り方と人の動きのほうが気になります。
- 枚数が1〜2年減り続けている
- 門前の医院に変化がある
- 辞めた人の補充がない
- 他店への応援が増えた
昔から一定して少ないなら、その薬局はその規模で回っている可能性があります。逆に、減り続けたうえで人も減っているなら、暇は一時的なものではありません。どの段階から本当に危ないのかは、調剤薬局が潰れる前兆を3段階に分けた記事で順番に整理しています。
薬局が暇すぎると薬剤師のスキルは落ちるのか、正直なところ
ここが一番気になるところですよね。落ちる部分と、落ちない部分があります。分けて考えると、何を補えばいいかが見えてきます。
落ちるのは処理速度と薬の引き出し
処方箋をさばく速さや、珍しい薬・多剤併用への対応力は、扱う数が少ないと鈍ります。経験の量の問題なので、暇な環境では避けにくい部分です。
もう一つは幅です。内科門前だけにいると、その科の薬には強くなりますが、ほかの科や在宅、無菌調剤の経験は積めません。これは暇だからというより、環境が限られているから起きることです。暇でも症例の濃い薬局なら、事情は違ってきます。
落ちない・むしろ伸ばせるもの
逆に、時間があるから伸ばせる力もあります。添付文書やガイドラインを腰を据えて読むこと、服薬指導の言い回しを考えること、薬歴を読み返して次回の確認事項を書くこと。忙しい薬局では後回しになりやすい部分です。
処理の速さは、忙しい職場に移れば数か月で戻る人が多いと思います。一方で、1人の患者さんを丁寧に追いかけた経験は、暇な時間がないと作りにくいものです。暇は使い方しだいで武器になります。
面接で困るのは「説明できない」こと
僕は今の薬局で、応募してきた薬剤師の一次面接を担当しています。面接する側として知りたいのは、前の職場が忙しかったかどうかより、そこで何をしてきたかを具体的に話せるかどうかです。
暇な薬局にいた人が困るのは、スキルが足りないことより「何をしていましたか」に数字や例で答えられないことだと思います。次の質問に、今の自分が答えられるか試してみてください。
- 1日の処方箋は何枚か
- 主な処方科と薬はどれか
- 疑義照会で覚えている例
- 患者さんを追いかけた例
- 今、勉強していること
答えに詰まる項目が、暇な時間で埋めるべきところです。処方箋枚数や処方科を職務経歴書にどう書くかは、薬剤師の職務経歴書の書き方の記事に記入例をまとめています。
暇な薬局で薬剤師がスキル不安になる前にやること
辞めるかどうかを決める前に、今の薬局でできることがあります。お金もリスクもかからない順に並べました。
- 薬歴と服薬指導を磨く
- 研修認定の単位を集める
- 在宅や他科に触れる
- 市場価値を一度ためす
薬歴と服薬指導の質を1段あげる
枚数で勝負できないなら、1枚あたりの質で勝負します。前回の薬歴を読んでから投薬に出る、次回に確かめることを1行残す。地味ですが、忙しい薬局ほど雑になりやすい部分です。
続けるコツは、全部の患者さんでやろうとしないことです。1日1人だけ丁寧に追いかけると決めれば、数か月後には面接で話せる例がいくつか手元に残ります。場面別の言い回しは服薬指導の会話例の記事が練習素材に使えます。
研修認定の単位を集める
目に見える形で残すなら、研修認定薬剤師が入口になります。日本薬剤師研修センターの新規認定は、申請日から遡って4年以内に40単位以上が条件です。更新は3年で30単位以上、各年5単位以上が必要です。
単位集めは、忙しい職場だとどうしても後回しになります。僕は現職の薬局で研修認定を取りましたが、時間があるうちに進めておくほうが楽なのは間違いないです。種類や費用は認定薬剤師とは何かを解説した記事にまとめています。
在宅や他科の処方に触れる
幅が狭くなる問題は、勉強だけでは埋まりにくいです。会社に在宅対応の店舗や別の科の門前があるなら、応援勤務や在宅の同行を自分から申し出てみる手があります。
会社によって仕組みは違うので、まずは管理薬剤師やエリアの担当者に「ほかの科の処方も経験したい」と伝えるだけで十分です。在宅がどんな仕事かは在宅薬剤師がきつい場面をまとめた記事で先に確かめておくと、手を挙げるか判断しやすいです。
自分の市場価値を一度ためす
「スキルが落ちて転職できないかも」という不安は、確かめていないから膨らむことが多いです。転職エージェントに話を聞くだけでも、今の経歴でどんな求人があり、年収がどのくらいで動けそうかが分かります。
これは「今すぐ転職しろ」という話ではありません。最初に「情報収集です」と伝えれば、残る判断のための材料集めとして使えます。動かなくても、現在地がわかるだけで不安は減ります。
給料とスキルの頭打ちに焦った薬剤師の僕が失敗したこと
ここからは僕の話です。きれいな成功話ではありません。
新卒で入ったのは、内科クリニックの門前にある調剤薬局Aでした。4年いて、給料もスキルも頭打ちだと感じるようになりました。
給料は1年目約380万円、4年目で420万円。昇給は1回あたり月額5千〜1万円でした。これは地方の内科門前だった僕個人の実額で、世間の平均より低めです。
その焦りが裏目に出ます。年収550万円に釣られてドラッグストア併設の調剤Bへ移り、今度は月残業45時間の激務で消耗しました。閉店後の品出しで夜10時まで残る日もあり、お金は増えたのに使う時間も体力もない状態です。
今ふり返ると、Aで感じた頭打ちは、転職しなくても研修認定の単位や薬歴の積み上げで少しは手を打てた部分でした。頭打ちを「年収の数字」だけで解決しようとしたのが失敗だったと思います。
管理薬剤師たろう激務を経験すると「定時で帰れるって実はぜいたくだったな」って後からわかるんですよね。
暇な薬局に残る薬剤師・動いたほうがいい薬剤師の分かれ目
暇=即転職ではありません。給料、成長、心の余裕の3つで見て、自分がどちらに近いか当てはめてみてください。
今は無理に動かなくていい人
給料に大きな不満がなく、暇な時間を勉強や単位集めに使えている人は、無理に動かなくていいです。枚数が少ない薬局は1枚あたりに時間をかけられるので、監査も投薬も落ち着いてできます。
子育てや介護で、今は定時で帰れることが最優先という人もそうです。焦って動いて激務を引くより、よほど賢い選択です。残ることは逃げではありません。
動くことを考えたほうがいい人
次のどれかに当てはまるなら、動くことを考えてもいい時期だと思います。
- 枚数も人も減り続けている
- 給料がはっきり低い
- 暇が続き気持ちが沈む
- 他科や在宅に移る道がない
特に「出勤前から気が重い」ほどなら、無理を続けないでください。暇は忙しさとは別の形で人を消耗させます。給料が低いかどうかは、薬剤師の給料が安いと感じたときの記事で相場と比べられます。
動くなら見学で枚数を確かめる
暇から抜けたい気持ちは、判断を鈍らせます。僕は転職2回目で、職場見学の提案を「日程が合わない」と自分から断り、入社2ヶ月で退職しました。求人票に嘘は書かれていませんでしたが、常勤が何人いるか、欠員の補充なのかは書かれていませんでした。確かめなかったのは僕です。
次の職場を見るときは、1日の処方箋枚数と薬剤師の人数を聞いて、この記事の1人あたり枚数で比べてください。暇すぎる職場から激務の職場へ振り切る失敗も防げます。見学で聞くことは薬局見学で質問すること5つの記事にまとめています。
中小の調剤薬局の求人を中心に見たいなら、公式サイトで中小の調剤薬局・病院を強みとして挙げているファゲットが候補になります。僕自身は使っていないので、見学の段取りや枚数の確認を頼めるかは、最初の面談で聞いてみてください。
ほかのエージェントとも比べたい人は、各社の違いを薬剤師転職エージェントおすすめの記事にまとめています。
- 薬局が暇すぎるのは恵まれてる証拠ですか?
- 体力的には恵まれています。ただ給料や成長が止まっているなら、楽さと引きかえに失っているものもあるので、両面で見てほしいです。
- 暇な薬局にいるとスキルは落ちますか?
- 処理の速さと処方の幅は鈍りやすいです。薬歴や服薬指導の質は暇な時間で逆に磨けます。放置しなければ大丈夫です。
- どのくらいから「暇すぎる」と言えますか?
- 決まった線はありません。1日の処方箋枚数を薬剤師数で割り、前より減っているかを見るのが現実的です。法令の40枚は1人あたりの上限側の目安です。
- 暇すぎてつらい時間の過ごし方は?
- 添付文書を読む、薬歴を読み返す、研修認定の単位を集めるなどがあります。単位は時間があるうちに進めておくと楽です。
- 暇な薬局は潰れやすいですか?
- 暇なだけでは判断できません。枚数が減り続けている、辞めた人の補充がないなど、減り方と人の動きを合わせて見てください。
- 暇な薬局はすぐ辞めたほうがいいですか?
- 給料に不満がなく勉強に使えているなら、急いで辞める必要はありません。焦って動くと僕のように失敗しやすいので慎重に。
- 暇すぎて精神的に病んできました、どうすれば?
- 無理を続けないでください。暇も人を消耗させます。まず市場価値を確かめて選択肢を持つだけでも、気持ちが楽になることがあります。
- 暇な薬局出身だと面接で不利ですか?
- 暇だったこと自体より、何をしてきたかを数字や例で話せるかが大事だと思います。処方箋枚数や処方科、丁寧に追いかけた例を準備しておきましょう。
- 暇な薬局かどうかは入る前にわかりますか?
- 見学や面接で1日の処方箋枚数と薬剤師の人数を聞けば、ある程度わかります。実際の待合室の様子を見るのが一番確実です。
- 転職するか迷う段階でも相談していいですか?
- 大丈夫です。最初に情報収集だと伝えれば、求人や年収の相場を知る目的でも使えます。その場で転職を決める必要はありません。
薬局が暇すぎてスキルが不安な薬剤師へのまとめ
暇な薬局で鈍るのは処理の速さと処方の幅で、説明の力や薬歴の質は伸ばせます。まず1人あたりの枚数で現在地を測り、面接で説明できる実績を暇な時間で作ってください。
- 暇さは1人あたり枚数で測る
- 減り方と人の動きも見る
- 鈍るのは速さと処方の幅
- 薬歴・単位で実績を作る
- 面接で話せる例を用意
- 動くなら見学で確かめる
僕は頭打ちに焦って年収だけで動き、激務と2ヶ月退職を経験しました。暇な今の時間は、次を落ち着いて選ぶための準備期間にもできます。





