薬剤師が有給を取れない一番の理由は、休む人の代わりがいない人数でシフトが組まれていることです。あなたの頼み方や性格の問題より、店の人員の問題であることがほとんどです。
ただ、法律上の線ははっきりしています。会社にできるのは、忙しい日の有給を別の日にずらすことまでです。取らせないことはできません。年10日以上の有給がある人には、会社が年5日を必ず取らせる義務があり、違反には罰金もあります。
僕は地方の調剤薬局で管理薬剤師をしていて、スタッフのシフトを組む側にいます。この記事では、取りにくくなる理由、違法になる線、シフトを組む側から見て通しやすい頼み方、職場を変えるときの確かめ方の順にまとめます。
- 調剤4年→DS2年→調剤4年
- いまは管理薬剤師(34歳)
- 転職を3回経験し、うち2回は失敗。
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「同じ失敗をしてほしくない」という思いで、薬剤師のリアルを本音で書いてます。
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薬剤師が有給を取れないのはなぜ?シフトを組む側から見た理由
取れない理由をたどると、ほとんどが「1人休んだ日を埋める人がいない」に行き着きます。シフトを組む側から見ると、休みの希望を断りたいわけではなく、埋める駒がないという感覚に近いです。
人員がギリギリで代わりがいない
調剤は薬剤師にしかできません(薬剤師法19条)。事務さんに鑑査を代わってもらうことはできないので、薬剤師が1人抜けると、その分は残った薬剤師がかぶります。
薬局に置く薬剤師の数は、省令で「1日平均の処方箋枚数÷40」以上と決まっています。開いている時間は、調剤する薬剤師が常に店にいることも求められます(薬局並びに店舗販売業及び配置販売業の業務を行う体制を定める省令1条)。
この基準には、誰かが休む日の分は含まれていません。基準ちょうどの人数で組んでいる店では、1人の有給がそのまま「開けられるかどうか」の問題になります。休みづらさは気合いで解決する話ではなく、配置の問題です。
人が足りない店では、有給より先に日々の休憩が削られていきます。薬剤師の昼休みが取れないときの違法の線や、体調不良でも休めない職場の構造も、根っこは同じです。
繁忙期と門前の影響を受けやすい
門前のクリニックが混む時期は、処方箋も一気に増えます。インフルエンザが流行る冬や花粉の春は、希望を出しても「今は勘弁して」と押し返されやすい時期です。
門前が休診の日に合わせて有給を入れるよう言われることもあります。店が閉まる日なら誰にも迷惑がかからない、という理屈です。ただそれでは自分で日を選べないので、休んだ実感が残りにくいんですよね。
取る文化がそもそも根付いていない
先輩が誰も有給を使っていないと、自分だけ申請するのは気まずいものです。誰も口にしないのに「取らないのが普通」という空気ができている職場は、わりとあります。
こういう店では、上司に悪気がなくても「みんな取ってないし」で流れがちです。取れないのは人数と空気の問題で、あなたが悪いわけではありません。
管理薬剤師たろう上が取らない店では、下は言い出しません。だから管理薬剤師が先に取るのが一番効くと思っています。
統計で見た有給の取れ方
厚生労働省の令和7年就労条件総合調査では、2024年の有給取得率は全体で66.9%でした。産業別では「医療,福祉」が68.4%、「卸売業,小売業」が59.9%です。
統計の分類では、調剤薬局もドラッグストアも「小売業」に入ります(日本標準産業分類)。ただ小売業全体の数字なので、薬局だけの取得率ではありません。病院勤務なら「医療,福祉」側です。業界全体で見ると、取れない人が珍しいわけではないことは分かります。
薬剤師に有給を取らせないのは違法?年5日義務と時季変更権
有給は、労働基準法39条で決まっている権利です。入社から6か月続けて働き、出勤すべき日の8割以上出ていれば、正社員なら10日が付きます。そこから1年ごとに増えて、6年6か月で20日になります。
| 勤続 | 付与日数 |
|---|---|
| 6か月 | 10日 |
| 1年6か月 | 11日 |
| 2年6か月 | 12日 |
| 3年6か月 | 14日 |
| 4年6か月 | 16日 |
| 5年6か月 | 18日 |
| 6年6か月以上 | 20日 |
会社は、労働者が請求した時季に有給を与えなければなりません(労働基準法39条5項)。許可制ではないので、理由を伝える必要もありません。有給を取った人の賃金を減らすなど、不利益に扱うことも禁じられています(同法附則136条)。
年5日は会社の義務
2019年4月から、年10日以上の有給が付く人には、会社が付与日から1年以内に5日を取らせる義務ができました(労働基準法39条7項)。本人が申し出なくても、会社が日を決めてでも取らせる仕組みです。
- 対象は年10日以上付く人
- 管理職やパートも含む
- 違反は30万円以下の罰金
- 罰則は対象者1人ごと
罰則は労働基準法120条です。厚労省のわかりやすい解説では、対象の労働者1人につき1罪として扱うとしています。ただ労基署はまず是正の指導をする、とも書かれています。
請求された時季に有給を与えなかった場合は、別の罰則です。6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金になります(同法119条)。「うちは有給がない」「取らせない」は、法律上は通りません。
時季変更権は「ずらす」だけ
会社に認められているのは「時季変更権」です。請求された日に休ませると事業の正常な運営を妨げる場合に限って、別の日に変えられます。厚労省は例として、同じ期間に多くの人が休みを希望して全員には与えにくい場合を挙げています。
ずらすための権利なので、有給そのものを消すことはできません。代わりの日も示さずに毎回断る運用は、この権利の範囲を超えている疑いがあります。慢性的な人手不足を理由にずらすのが認められるかは、個別の事情で判断が分かれるところです。
計画的付与で決まる日もある
労使協定を結べば、会社が有給を取る日を計画的に決めることもできます(39条6項)。店の夏季休業や年末年始に有給をあてる形です。令和7年の調査では、この制度がある企業は40.8%でした。
ただし計画的付与に回せるのは、5日を超える部分だけです。最低5日は、自分で好きな日に取れる分として残ります。「有給は全部お盆に使う決まり」という職場は、就業規則と協定を一度確かめてみてください。
パート薬剤師の有給日数
パートでも有給は付きます。週の所定労働時間が30時間未満で、週4日以下(年216日以下)の人は、働く日数に応じた日数になります。これを比例付与といいます。
| 勤続 | 週4日 | 週3日 | 週2日 | 週1日 |
|---|---|---|---|---|
| 6か月 | 7日 | 5日 | 3日 | 1日 |
| 1年6か月 | 8日 | 6日 | 4日 | 2日 |
| 2年6か月 | 9日 | 6日 | 4日 | 2日 |
| 3年6か月 | 10日 | 8日 | 5日 | 2日 |
| 4年6か月 | 12日 | 9日 | 6日 | 3日 |
| 5年6か月 | 13日 | 10日 | 6日 | 3日 |
| 6年6か月以上 | 15日 | 11日 | 7日 | 3日 |
週4日なら3年6か月、週3日なら5年6か月で10日以上になるので、そこから年5日の義務の対象になります。週30時間以上働くパートは、正社員と同じ表です。
有給の時効は2年です(115条)。使わなかった分は翌年に繰り越せますが、2年たつと消えます。未払いの残業代とあわせて確認したい人は、薬剤師の残業代が出ないときの線引きも参考にしてください。
薬剤師が退職前の有給消化を拒否されたときの対処
「辞めるんだから有給は無理」と言われても、在籍している間は有給を取る権利があります。沖縄労働局のQ&Aでは、退職日より後に時季を変えることはできないので、請求どおり与えなければならないと説明しています。
揉めやすいのは、残りの有給と引き継ぎの期間がぶつかるときです。管理薬剤師の立場で言うと、困るのは有給そのものより、いつから誰が抜けるのかが見えないことです。
- 残りの有給日数を確かめる
- 最終出勤日と退職日を決める
- 引き継ぎ表を添えて伝える
- 申し出はメールで残す
この順に出てくると、シフトを組む側は穴の大きさを計算できます。それでも拒まれるなら、勤務先を管轄する労働基準監督署や、各地の総合労働相談コーナーに相談できます。
退職を伝える時期と有給消化の段取りは、退職手続きと有給消化の段取りにまとめています。
交渉そのものを自分でやりたくない場合は、代わりに話をしてもらう選択肢もあります。ただし依頼先の種類によって、有給の交渉ができるかどうかが変わります。その線引きは退職代行の3種類と薬局側の手続きを整理した記事で条文つきで説明しています。
薬剤師が有給を通しやすくする頼み方|シフトを組む側の本音
権利があっても、同じ店で働き続けるなら角を立てずに取りたいものです。ここからは、毎月シフトを組んでいる立場から「これなら入れやすい」と感じる出し方を書きます。法律上は理由も段取りも要りません。あくまで、通りやすくするための工夫です。
シフトを組む前に出す
シフトは、休みの希望を先に置いてから残りを埋めていきます。組む前に出た希望なら、ほかの人の出勤日を少し動かすだけで入ります。
困るのは、シフト表を出したあとの申請です。誰かの休みを出勤に変えてもらう交渉が必要になるので、組む側の返事も渋くなりがちです。翌月のシフトを作り始める前に出すだけで、通り方はかなり変わると思います。
口頭ではなく記録に残す
忙しい調剤室で口頭で伝えた希望は、組む側が本当に忘れることがあります。社内の申請様式があればそれを使い、なければメールやチャットで日付を送っておくのが確実です。
記録があれば、「聞いていない」で流されることもありません。あとで退職時の消化や労基署への相談が必要になったとき、いつ請求したかを示す材料にもなります。
第2希望と引き継ぎを添える
繁忙期にどうしても重なりそうなら、第2希望の日を一緒に書いておくと、組む側は断らずに調整できます。在宅の訪問や定期の一包化など、自分しか把握していない仕事があれば、その日の段取りも一言添えておくと安心されます。
理由は書かなくてかまいません。「私用のため」で十分です。
「年5日の分」として頼む
年5日を取らせるのは会社の義務なので、取れていない人がいると困るのは会社側です。「今年まだ5日取れていないので、この日に入れたいです」と伝えれば、組む側も断る理由を探しにくくなります。
会社は、労働者ごとに有給の管理簿を作って保存する義務があります。自分の残り日数が分からないときは、管理簿で何日残っているか確認してほしいと頼んでみてください。



欠員が出ると、真っ先に消えるのは管理薬剤師の休みです。だから組む側も、本音では全員が休める人数がほしいんですよね。
連勤が続いて休みの並びそのものがおかしいときは、薬剤師の連勤とシフトの直し方で、相談の伝え方をまとめています。
それでも有給が取れない薬剤師が職場を変えるときの確かめ方
記録で出しても、年5日の話をしても変わらない。そういう職場は、店の努力では埋まらない人数で回っている可能性が高いです。有給が取れるかどうかは、個人の頑張りより人員体制でほぼ決まるので、次の職場は「人数」から見るのが近道です。
28歳から2年いたドラッグストア併設の調剤は、月45時間ほど残業があり、週の半分が遅番でした。年収だけで選んだ結果です。その反省から、今は条件より先に人と体制を見るべきだと考えています。
先に確かめるべきは人員体制
見るのは、処方箋の枚数に対して薬剤師が何人いるかです。1日平均の枚数を40で割った数が、置かなければならない最低人数です。実際の人数がそれと同じなら、1人休むだけで基準ぎりぎりになります。
近くの店舗から応援を出せるチェーンか、パートの薬剤師が何人いるかも大事です。1人薬剤師の店は、応援の仕組みがなければ構造的に休めません。拘束時間の長さも同じ原因から来るので、拘束時間が長い職場の特徴もあわせて見てみてください。
職場見学で空気を見る
休みの取りやすさは、現場の空気に出ます。見学では、壁のシフト表に休みの印がばらけているか、スタッフ同士が声をかけ合っているかを見てみてください。
2回目の転職で入った調剤薬局Cは、見学をしないまま決めて入社2か月で辞めました。見学の提案を「日程が合わない」と自分から断っていたんです。有給が付く6か月にも届かずに辞めたので、見学を省いたつけは大きかったと思っています。
求人票に無い3点を聞く
いまの店で欠員募集を出すとき、店から本部に上げるのは「欠員の理由」「希望する時間帯」「常勤かパートか」の3点だけです。求人の文面は本部が作るので、有給の取りやすさまでは書かれていないことが多いです。
だから面接や見学では、書かれていないことを聞くのが大事です。
- 常勤の薬剤師は何人か
- 欠員補充か増員か
- 去年の有給取得の実績
自分では聞きにくければ、転職エージェントの担当に確認してもらう方法もあります。ファゲットは、公式サイトで中小の調剤薬局や病院の求人を強みとして挙げている紹介会社です。僕は使ったことがありませんが、少人数の店を比べたい人は、登録時に「店の薬剤師の人数と有給の実績を知りたい」と伝えておくと話が早いと思います。
ほかの会社も含めて比べたい人は、エージェントの比較記事にまとめています。
薬剤師の有給が取れないときのよくある質問
- 有給を申請したら理由を聞かれました。答える義務はありますか?
-
ありません。有給は労働者が請求した時季に与えるもので、理由は条件になっていません。「私用のため」で十分です。
- 「うちは有給がない」と言われました。本当ですか?
-
6か月続けて働き、8割以上出勤していれば、労働基準法39条で有給は付きます。会社の方針でなくすことはできません。
- 希望日をいつも別の日に変えられます。違法ですか?
-
会社は、事業の正常な運営を妨げる場合に限って日をずらせます。代わりの日も示さず毎回断るなら、その範囲を超えている疑いがあります。まず申請を記録に残し、年5日が取れているかを確かめてください。
- 管理薬剤師も年5日の対象ですか?
-
対象です。厚労省の解説では、管理監督者も有給の対象労働者に含まれるとしています。年10日以上付いていれば、会社は年5日を取らせる必要があります。
- パートでも有給は取れますか?
-
取れます。週30時間未満で週4日以下なら、働く日数に応じた日数が付きます。週30時間以上なら正社員と同じ日数です。
- 入社したばかりですが有給はありますか?
-
法律上は入社6か月で付きます。入社時に前倒しで付ける会社もあるので、就業規則を確認してください。
- 退職時に有給を全部消化したいです。可能ですか?
-
在籍中なら請求できます。会社は退職日より後に日をずらせないので、請求どおり与える必要があります。引き継ぎの段取りを先に示すと揉めにくくなります。
- 有給を取ると評価が下がりそうで怖いです。
-
有給を取った人を賃金の減額などで不利に扱うことは、労働基準法で禁じられています。精皆勤手当や賞与の計算で欠勤扱いにするのも同じです。
- 一人薬剤師の店です。物理的に休めません。
-
開いている時間は薬剤師が常にいる必要があるので、応援の仕組みがないと休めないのが実情です。店を閉めるか応援を出すかは会社が決めることなので、まず本部に相談してください。仕組みがないなら職場を変えるのも選択肢です。
- 有給を消化しきれず消えそうです。
-
有給の時効は2年なので、前年の残りは翌年まで使えます。年5日すら取れていないなら、会社の義務違反にあたる可能性があります。
- 転職先で有給が取りやすいか、どう見抜けばいいですか?
-
処方箋の枚数に対する薬剤師の人数と、応援の体制を聞くのが一番です。求人票には書かれていないことが多いので、見学や面接、エージェント経由で確かめてください。
薬剤師が有給を取れないときのまとめ
薬剤師の有給が取れないのは、多くの場合、休む人の代わりがいない人数で店を回しているからです。それでも会社にできるのは日をずらすことまでで、年5日は会社が取らせる義務があります。
まずはシフトを組む前に、記録に残る形で希望を出してみてください。それでも変わらないなら、人数と応援体制から次の職場を選び直すのは自然な判断です。
- 原因は代わりがいない人数
- 年5日は会社の義務
- 会社ができるのは「ずらす」まで
- 退職前の消化は拒めない
- シフトを組む前に記録で出す
- 変わらないなら人数で選び直す
僕は転職で2回失敗して、3回目でようやく腰を据えられる職場に移りました。同じ失敗をする薬剤師を1人でも減らしたくて、このブログを書いています。





