ドラッグストアが多いのは、安い食品で人を集めて薬や化粧品で利益を取る仕組みに、処方箋を受ける調剤の併設と、同じ地域に固めて出す出店戦略が重なっているからです。
数字で見ても、全国の店舗数は約2万3千店、業界の売上は10兆円を突破しています。「最近やたら増えた」という感覚は気のせいではありません。
僕は調剤薬局で働く管理薬剤師で、28歳から2年間はドラッグストア併設の調剤にいました。業界の公表データに、中で働いて分かったことを足して説明します。
- 調剤4年→DS2年→調剤4年
- いまは管理薬剤師(34歳)
- 転職を3回経験し、うち2回は失敗。
- 3回目で年収480万→610万にアップ
- 人気転職エージェント5社を全部利用
「同じ失敗をしてほしくない」という思いで、薬剤師のリアルを本音で書いてます。
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ドラッグストアは本当に多い?店舗数と売上を数字で確認
日本チェーンドラッグストア協会の会長は、2026年の年頭所感で、全国の店舗数を約2万3000店、売上高を10兆円としています。協会が毎年まとめている実態調査で、2025年に初めて10兆円を超えたと発表されました。
悩む男性協会の発表だけでなく、国の統計でも本当に増えているのかな?
国の統計でも増え方は確かめられます。経済産業省の商業動態統計では、2025年度のドラッグストアの販売額は約9兆5294億円、店舗数は2万468店でした。前の年度より販売額は5.4%、店は479店増えています(経済産業省 商業動態統計の時系列データ)。この統計は50店舗以上か年間販売額100億円以上の会社が対象なので、協会の数字より小さく出ます。
協会は2030年に売上13兆円・3万5000店を目標に掲げています(協会の事業計画の基本テーマ)。業界としては、まだ増やす前提で動いているわけです。
コンビニより多いの?
店の数だけなら、コンビニのほうがずっと多いです。日本フランチャイズチェーン協会の集計では、2025年12月末のコンビニは正会員7社で5万6054店あります(同協会のコンビニエンスストア統計)。
ドラッグストアはその半分以下です。それでも売上は10兆円規模で、約12兆円のコンビニ(同じ統計で2025年に12兆583億円)と、店の数の差ほどには離れていません。
数の割に「多い」と感じやすいのは、次のような見え方のせいだと思います。
- 新しい大型店が多い
- 看板が遠くから目に入る
- 幹線道路沿いに並んでいる
- 同じ看板が近くに何軒もある
最後の「同じ看板が近くに何軒も」は、偶然ではなく会社の作戦です。理由4で詳しく書きます。



数はコンビニの半分以下なのに、多く感じるのは見え方のせいなんだ。
ドラッグストアがこんなに多い5つの理由
ここからは、なぜここまで店を増やせるのかを5つに分けて見ていきます。どれか1つではなく、5つが重なっているのがポイントです。
理由1:調剤併設の医療×小売
最近のドラッグストアは、店の奥に処方箋を受け付ける調剤カウンターがある店が増えました。
経済産業省の商業動態統計では、2025年度のドラッグストアの調剤医薬品の販売額は約1兆65億円で、前の年度より12.6%増えています。全体の販売額の伸び(5.4%)より速いペースです。
会社が調剤を付けたがるのは、処方箋を持った人が定期的に来てくれるからです。薬ができるのを待つ間に、洗剤や夕飯の材料もついでに買っていく。
病院帰りの人が毎月来る店になれば、売上の土台が安定します。医療で人を呼び、小売で買ってもらう形です。
理由2:食品で集客し薬で利益を取る
ドラッグストアで卵や牛乳、冷凍食品が驚くほど安いのには理由があります。
食品は利益が薄くても、毎日のように来店してもらうきっかけになります。そのついでに、利益の厚い医薬品や化粧品を買ってもらう。これが基本の稼ぎ方です。
スーパーのように食品だけで利益を出す必要がないので、食品を安くできます。この安さでスーパーやコンビニの客を取り込み、出店できる場所を広げてきました。
ただ、どの会社も食品を安くすれば、安さだけでは差がつかなくなります。食品を増やすだけでは勝てなくなってきたという見方もあります。
理由3:高齢化で処方箋需要が伸びる
高齢になるほど、飲む薬の種類は増えがちです。僕の祖母も10種類以上の薬を飲んでいました。
しかも今は、病院でもらった処方箋を外の薬局で受け取る人が8割を超えています。日本薬剤師会の集計では、2023年度に初めて80%を超えました(同会の「医薬分業進捗状況」)。
処方箋は、体の不調がある限り景気に関係なく出続けます。人口が減っても、高齢の人が多い地域ほど需要が読みやすい。だから住宅地やクリニックの近くに調剤併設の店が出ていきます。
理由4:地域集中のドミナント戦略
「同じチェーンが歩いて数分の距離に2軒ある」。これはドミナント戦略と呼ばれる出店の仕方です。
特定の地域に店を集中して出すと、商品を配送するトラックの効率が上がり、チラシや看板の効果も高まります。
自分の店同士で客を分け合ってでも、ライバルが入り込む場所を先に埋めてしまう狙いもあります。すぐ近くに同業が並ぶような激戦区が生まれるのはこのためです。



近くに自社の店を並べるのは、配送の効率とライバル対策の両方をねらった出店なんです。
シフトを組む側の目で見ると、近くに同じ会社の店があるのは人のやりくりにも効きます。急な休みが出たとき、隣の店から応援を回しやすいからです。薬剤師がいないと調剤を開けられない併設店では、とくに大きい利点になります。
近所の店がこの作戦で出ているかは、次の3つで見当がつきます。
- 同じ看板が車で数分の距離にある
- チラシやアプリのクーポンが共通
- 片方の店にだけ調剤がある
3つ目に当てはまるなら、2つの店で役割を分けていると考えられます。処方箋は調剤のある店、まとめ買いは売場の広い店、と使い分けて構いません。
裏を返すと、同じ会社の店が近すぎる地域では、どちらかが閉まって1店にまとまることもあります。通っている店が小さいほうなら、もう一方の店の場所と調剤の有無だけ先に見ておくと慌てません。
理由5:登録販売者で出店しやすく
意外と知られていないのが、薬を売るルールの変化です。
2009年までに施行された改正薬事法で、市販薬は危険度に応じて第1類〜第3類に分けられました。そして「登録販売者」という資格の人が、第2類・第3類を売れるようになりました(厚生労働省 医薬品販売制度の変遷)。
風邪薬や胃腸薬、痛み止めの多くはこの第2類・第3類です。薬剤師を置かなくても、登録販売者がいれば多くの市販薬を売れる店が開けるようになりました。
薬剤師は採用が難しい職種です。その壁が低くなったことが、店を一気に増やせた土台になっています。なお、第1類医薬品は今も薬剤師しか売れません(厚生労働省 医薬品の販売制度)。



市販薬は登録販売者、処方箋は薬剤師。この分担が店を増やす仕組みを支えています。
ドラッグストアが地方の幹線道路沿いに目立つ理由
駅前より、郊外の幹線道路沿いにドラッグストアが並んでいると感じる人も多いと思います。これも立地の選び方に理由があります。
車社会と広い駐車場が相性抜群
地方は車での移動が中心です。広い駐車場のある大きな店を道路沿いに出せば、車で数キロ先の人まで来てくれます。
郊外は土地が広く取りやすく、家賃も都心ほど高くありません。食品・日用品・薬を一度にまとめ買いする使われ方とも合っています。
コンビニ・スーパーとの違い
同じ「近所の便利な店」でも、稼ぎ方が違います。
- コンビニ:近さと24時間営業
- スーパー:生鮮食品の品ぞろえ
- ドラッグストア:薬と安い日用品
ドラッグストアは、利益の厚い薬や化粧品があるぶん、食品や日用品を安くできます。「ここで全部そろって、しかも安い」となれば、車で来る人は寄り道しなくなります。
一方で、生鮮食品はスーパーほど充実していない店が多いです。最近は生鮮を置く店も出てきていて、スーパーとの境目は少しずつ薄れています。
ドラッグストアの薬剤師がレジにも立つ理由|併設店で2年働いた僕の話
ここからは、僕が28歳から2年間働いたドラッグストア併設の調剤で見たことです。利用する側にも関係する話に絞ります。
薬剤師がいないと調剤は開かない
処方箋の薬を用意できるのは薬剤師だけです。市販薬なら登録販売者で売れますが、調剤カウンターは薬剤師がいる時間しか開けられません。
だから会社にとって薬剤師は、調剤併設の店を増やすための欠かせない人員です。僕が新卒の調剤薬局から移ったとき、年収は420万円から550万円に上がりました。
ドラッグストアが薬剤師の給料を高めに出すのは、それだけ人が足りないからだと思います。
店長の給料が気になる人は、併設薬局から見ていたドラッグストア店長の年収の本音にまとめています。
調剤だけじゃない、レジも品出しも
ドラッグストアで、白衣の人がレジを打っていて驚いたことはありませんか。僕もまさにそれをやっていました。
処方箋の調剤に加えて、市販薬の相談に乗り、人が足りなければレジに入り、閉店後は品出しもする。段ボールを開けていたら夜10時、という日もありました。
週の半分は遅番で、残業は月45時間ほど。少ない人数で広い売場と調剤の両方を回すので、薬剤師も小売の戦力として数えられていました。
僕には合わず2年で離れましたが、接客や売場づくりまで幅広く関われるのを楽しめる人もいます。忙しさは店の立地や処方箋の枚数で大きく違います。
DSの調剤を使うときのコツ
中にいた立場から、利用する人に知っておいてほしいことを3つ挙げます。
- 調剤の受付時間を確かめる
- お薬手帳を毎回出す
- 待ち時間は買い物に使う
1つ目が一番大事です。店が夜遅くまで開いていても、調剤は薬剤師の勤務に合わせて先に閉まることがあります。店頭や公式サイトで調剤の受付時間を見ておくと、行ってから困りません。
2つ目は、別の病院の薬との飲み合わせを確かめてもらうためです。薬局を使い分けている人ほど、手帳を1冊にまとめておくと安心です。
3つ目は併設店ならではの使い方です。処方箋を渡してから店内で買い物をしている間に、薬を用意してもらえます。
ドラッグストアはこんなに多くて大丈夫?今後と淘汰の話
「さすがに多すぎて、潰れる店も出るのでは?」と気になる人もいると思います。これからは、店を増やす段階から、大手がまとまっていく段階に入っています。
市場は飽和、これからは再編へ
経済産業省の商業動態統計で見ると、販売額の伸びは2023年度の8.9%から、2024年度は6.1%、2025年度は5.4%と落ち着いてきました。まだ伸びてはいますが、出店できる場所は少しずつ減っています。
象徴的なのが大手同士の統合です。2025年12月、ツルハホールディングスとウエルシアホールディングスが経営統合しました。統合後のグループの国内店舗数は5652店で、うち3338店が調剤を扱っています(2026年8月末時点、ツルハホールディングスの公式サイトの表示)。
「近所の店の看板がいつの間にか変わった」ということは、これからも起こりそうです。
淘汰されるのは弱い店から
同業が密集する地域では、客の取り合いに負けた店から閉店や統合が進みます。安売りに耐えられる資本の大きさや、調剤で安定した売上を持つ店ほど残りやすい構図です。
利用する側から見ると、行きつけの店が閉まったり、調剤だけ別の店に移ったりすることもあり得ます。処方箋を出している店なら、閉店の案内を見かけたら早めに次の薬局を相談しておくと安心です。
閉店や調剤の移転の案内を見たら、やることは3つです。
- 手元の薬が何日分あるか数える
- 次に使う薬局を決めておく
- お薬手帳を必ず持っていく
薬局が変わっても、処方箋があれば薬は受け取れます。困るのは、これまでの薬の記録が新しい薬局に無いことです。手帳が無いと、飲み合わせの確認を一からやり直すことになります。
普段あまり出ない薬を飲んでいる人は、新しい薬局に在庫が無いこともあります。受診の前に電話で薬の名前と量を伝えておくと、取り寄せが間に合いやすいです。
薬剤師として、調剤薬局とドラッグストアのどちらで働くか迷っている人は、調剤薬局とドラッグストアの将来性を10年スパンで比べた話も読んでみてください。
ドラッグストアが多い理由に関するよくある質問
- ドラッグストアと薬局は何が違うのですか?
-
処方箋の薬を出せるのが「薬局」です。ドラッグストアは市販薬や日用品を売るお店の呼び方で、調剤を併設している店は店内に薬局があると考えると分かりやすいです。
- 処方箋はドラッグストアの調剤に出してもいいですか?
-
はい。保険薬局であれば、どこに処方箋を出すかは自分で選べます。受付時間と、必要な薬の在庫があるかは事前に確かめておくと安心です。
- ドラッグストアとコンビニはどちらが多いですか?
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店の数はコンビニのほうが多く、ドラッグストアはその半分以下です。売上ではドラッグストアが10兆円を超えています。
- ドラッグストアの食品はなぜあんなに安いのですか?
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食品で来店してもらい、利益の厚い医薬品や化粧品で稼ぐ仕組みだからです。食品単体で大きな利益を出す必要がないため、安くできます。
- ドラッグストアはこれからも増え続けますか?
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業界は2030年に3万5000店を目標にしていますが、伸びは緩やかになっています。大手同士の統合も進んでいて、店の数より「どの会社が残るか」の段階に入っています。
ドラッグストアが多い理由のまとめ
ドラッグストアが街にあふれているのは、1つの理由ではなく、いくつもの仕組みが重なった結果です。
- 処方箋も受けて来店を増やす
- 食品で集客し薬で利益を取る
- 高齢化で処方箋が増え続ける
- 同じ地域に固めて出店する
- 薬剤師なしでも薬を売れる
店の数そのものはコンビニの半分以下です。それでも多く感じるのは、新しく大きな店が道路沿いや近所に固まって建っているからです。
これからは店を増やす時代から、大手がまとまっていく時代に移ります。近所の店の看板が変わったら、それは業界の再編の一場面だと思って見てもらうと面白いかもしれません。









